電子医療情報(EHR)の現状では、医療機関が導入するシステムの違いによって電子カルテや、機器同士の通信ができないなど閉じたネットワークの中で運用されることが多い。しかし、それらを統一する動きが各所で始まっている。


コンティニュアは2006年2月、健康機器メーカー、ICT関連企業、保険会社など、幅広い業種の企業などによって発足した。その目的は、人々が健康的な生活を送れるよう、血圧、体重といった個人のバイタルデータ※1を企業や病院が効率的に管理できるよう、医療・健康機器に搭載する通信機能の規格を統一しようというもの。コンティニュア対応機器であれば、メーカーの垣根を超えて、機器同士が計測データを相互に送受信できるのだ。2011年現在、参画企業数は230社近くにのぼり、今後のホームヘルスケア産業でのICTの利活用促進の鍵を握る団体として、その動向が注目を集めている。
コンティニュア設立当初より参画し、日本地域委員会の代表企業を務めるインテル株式会社の田上信介さんは、設立の背景を次のように語る。
「世界保健機関(WHO)のデータによると、全世界の人口のうち、体重過剰の成人は10億人いると言われています。また、慢性疾患の患者さんは現在8億6000万人に達し、医療費の75〜85%を占めています。これらに加えて高齢者層の増加、医師の偏在など、従来の医療体制のままでは解決が難しい問題がいくつもあります。こうした現状に対し、ICTを利活用して情報を共有することで、地域を選ばず健康に不安を抱えるすべての方へ、迅速かつ質の高い健康・医療サービスの提供をめざすのが、コンティニュア設立の主旨です」
コンティニュアでは現在、参画企業がシステムを開発・提供するうえで参照すべきガイドラインの策定をはじめ、新製品の相互運用性の検査、認定、コンティニュア製品の普及のための啓蒙活動など、幅広い活動を行っている。では、その先に広がる健康・医療サービスの可能性とはどのようなものなのだろうか。
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インテル株式会社
事業開発本部 デジタルヘルス事業部 事業開発部長 田上 信介 氏
コンティニュアに携わる以前は、健康・医療分野との接点はなかったという田上さん。「門外漢だからこその視点を大切に活動していきたいですね」
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コンティニュア対応機器には、コンティニュア認証のロゴマークがついている。写真はオムロンが発売している自動血圧計「HEM−7081−IT」。
※医療関係機関、健康事業者向けの商品です。一般発売はしておりません。
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「たとえば日々の暮らしの中でバイタルデータを計測し、インターネットを介して専門家に提供することで、異常値が出た場合にすぐに連絡を受けられるようなサービスの可能性を模索しています。また、地域ごとにユーザーのデータを集めて分析することで、地域によってかかりやすい疾病の傾向などもわかるようになるでしょう。さらに、これまで製薬業界においては、臨床患者さんはともかく健常者の長期にわたるバイタルデータの収集はほとんどできませんでした。しかしユーザーが日常的にコンティニュア製品をご利用いただければ、疾病にかかる以前のデータも集めることができます。これを活かせばさらに薬効のある新薬の開発をすすめるための基礎データになり得ると考えています」
ユーザーは、自分の健康状態を専門家に提供することで、「いつも見守られている」という大きな安心感を得られる。さらに、サーバに集められた膨大なデータの解析結果は、医療・新薬開発の最前線で貴重な統計データとして役立つことだろう。ユーザー、医療のプロフェッショナル、双方にとって大いなる福音をもたらす可能性を秘めているのが、コンティニュアなのだ。
実はコンティニュア設立以前もインターネットを利用して一般ユーザーと専門家をつなぐ健康管理サービスはあった。しかしこうしたサービスの運営を手がける事業会社(プロバイダ)は、メーカーが独自の設計基準で開発した機器ごとにシステムを構築しなければならず、その負担はかなりの額にのぼることが多かった。その上、同じ血圧計でも、測定する項目やデータの形式はメーカーによって異なるケースもあるため、情報の共有が難しかった。こうした現状を打破するために誕生したのがコンティニュア。参画企業各社が共通の規格で機器を開発することで、サービスプロバイダの効率的な情報収集、管理、さらにはサービス自体の質の向上を目指そうというわけだ。
「共通規格、といってもコンティニュアがゼロから規格を設計するのではありません。データ構造は、これまで健康器具メーカーが一般的に使用しているIEEE11073※2という規格を採用しています。またデータをパソコンに転送するための通信規格として、私たちは有線ではUSB、無線ではBluetooth、Zigbee※3を採用しました」
既存の規格を活かすことで、開発負荷が低減したこともあり、現在複数のメーカーが新製品の開発に成功している。では次に、実際の機器の特徴、具体的なソリューションについてみていこう。
※1 バイタルデータ/血圧、脈拍、体温、呼吸など、人体の生命活動に関する基本的な数値。生体情報。
※2 IEEE(アイトリプルイー)11073/IEEEとはアメリカの電気・電子技術学会のこと。ここで策定した各種技術の規格は、「IEEE」の後ろに数字がつけられて管理されている。
※3 Bluetooth、Zigbee/数メートル程度の機器接続に用いられる無線技術。ZigbeeはBluetoothに比べて伝送距離は短いが、コストが安い。
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