

編集部 夏木さんといえば「かっこいい女」の代表格として、特に若い女性から支持されていますが、ご自身ではそれをどのように感じているのでしょうか?
夏木 自分では全然かっこいいなんて思わない。『カッコいい女!』というタイトルの本を出していますけど、それはかっこよくなりたいという願望からなんです。歌手としてデビューした頃は、周囲にいわれたことを何とかこなしているだけで歌を楽しむ余裕さえありませんでした。そういう意味で、あの頃の「夏木マリ」は好きではありません。今、バンドを組んで、本当に好きな歌を唄っていますが、「心の叫び」とでもいうような境地を目指しながら唄えるので、とても楽しんでいます。と同時に、ジャニス※の歌をかりながら、本物の歌手になるまでの修行が始まっています。
編集部 歌手として人気を得た後、ドラマや映画でも存在感を示すようになりましたが、俳優となった頃を振り返ってどう思われますか?
夏木 演劇についての話をすると、俳優となってから、さまざまな舞台に出演する機会をいただいて、たくさんの演出家に出会ったんです。たくさんの演出を受けた分だけ迷いました。ですが、俳優としての時間経過を振り返ってみたとき、それは自分自身の経験不足、力量不足によるものだと気付きました。
編集部 それで、ライフワークともいうべき『印象派』シリーズなど、演出家としてのキャリアもスタートさせたわけですね。
夏木 舞台の空気は好きなのに、違うイデオロギーにのみこまれて、なんだか「群れている」だけの気持ちになってきて、それがダメでした。それならばと、一人の舞台で身体表現を模索してみようと思い立ちました。私は、やりたいと思ったら、すぐやってみないと気がすまない。それでいっぱい失敗もしました。でも、「失敗したって死にゃしないんだから」と思うと何でもできますね。

編集部 現在は、クリエイションすべてを手がける『印象派』の準備に全力を注がれていますね。
夏木 93年から始めた『印象派』シリーズを10作上演してひと区切りというところから、新たな試みとなる公演にする予定です。これまでの一人舞台と違うのは、オーディションやワークショップで集まったプレイヤーたちと一緒に創る舞台であることです。チームで創るという活動では、私のほうが教えを受けるところもたくさんありますね。だから、大変ですが刺激的な日々を過ごせているかな。
編集部 一人での表現を追求する形で始めた活動で、また集団創作へと戻ってきたといえますね。
夏木 『印象派Vol.6』(2002年)で、高野山の僧侶による声明(しょうみょう:音律を付けて唱されるお経)とコラボレーションした頃から、「夏木マリ」を観てもらいたいというだけでなく、「作品」としての公演を見て欲しいと、意識するようになりました。私は表現者の肉体は楽器だと思っているんですけど、あらゆる試みを行ううちに、いろいろな音色のハーモニーも創り出したいという気持ちが高まってきました。
※ジャニス/ジャニス・ジョプリン。1960年代を代表する、アメリカ合衆国のロック・シンガー。
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