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 NTT HOME > 365°トップページ > Vol.25 トップページ > 特集 より深く、より身近に。ICTが変えた、アートの世界。
特集 より深く、より身近に。ICTが変えた、アートの世界。
写真 石井さん

NTTアイティ株式会社
メディアサービス事業部
デジタルサイネージ部
主任
石井陽子 氏

「自分はあくまでも一研究者」という石井氏。現在はtenoripopを携帯電話やプリンタと連動させた、新たなコンテンツを構想中だという。

  手のひらやパンに情報を送る ユニークな発想から生まれた2つの作品
 まずは、2008年のインタラクティヴアート部門で栄誉賞を受賞した「火よ、さわれるの」。これは研究者と短歌作家のコラボレーションによって生まれた作品だ。
 手のひらを差し出すと、そこに現れたのは一首の短歌。ゆっくりとスクロールしながら文字が流れる。頭上から映像が投影されているだけなのに、なぜか、くすぐったく感じる。
 「これは、デジタルサイネージ(電子看板)として使われている映像装置『tenoripop』を使った作品です。この装置はセンサーが手のひらを感知して、その上にキャラクターや文字を投影することができます。さらに、右手と左手に異なる映像を映し出し、それを合わせて別の映像を映し出すことも可能です」
 説明してくれたのは、NTTアイティ株式会社でヒューマン・インターフェースに関する研究を行っている石井陽子さん。かつてNTTのサイバーソリューション研究所に所属していた頃、この不思議な装置、tenoripopを開発した。開発のコンセプトとなったのが、「情報を降らせるインターフェース」だという。
 「常々、人間にもっと優しい電気機器を作ってみたい、と思っていました。そのときメモ代わりに手のひらに筆記するシーンを思い出し、このコンセプトが思い浮かんだのです。インタラクティヴな映像表示システムとして開発されたものですが、アートの分野に応用することで、多くの人々にその価値を知ってもらえると考えました。そこで、短歌作家の穂村弘さんと一緒に『火よ、さわれるの』という作品を制作し、この作品がアルスで入賞したんです」
 情報を降らせたい、という研究者の発想が実にユニーク。先ほどの短歌も、雨のように手のひらの上で優しく流れていた。一文字一文字が消えていくさまを見ていると、まるで自分の体内に短歌が浸み込んでいくような不思議な感覚にも襲われる。人々の知覚、触覚を刺激するtenoripopは、アーティストの創造力をかき立てる新たなメディアテクノロジーといえよう。

写真 「火よ、さわれるの」
手のひらに映し出された「火」の文字が燃え上がっていく。熱さを感じることのない「火」と、映し出される文字に魅了されてしまう。写真撮影:太田拓実

写真 成田さん

成田達哉 氏

もともと視覚芸術に興味があり、なぜグラフィックが人の心を動かすのか?という理由を学びたくて大学では情報デザイン学科を選択したという。
 次に紹介するのは2009年のネクスト・アイデア賞を受賞した「テンキパン」。作者は多摩美術大学で情報デザインを専攻し、卒業後は若手クリエイターとして活躍中の成田達哉さん。現代社会における情報のあり方を問う、ユニークな作品だ。
 「その名の通り、今日の天気情報がわかるトースターです。インターネット上で配信されている天気情報を無線LANを通じて読み取り、晴れマーク、傘マークなどをパンに焼き付けるという仕組みです。作品の原点にあるのが、情報は何気ない生活の中にあるべきだ、という発想でした。『情報社会』と呼ばれる現代ですが、新たな情報を得るためにはツールの使い方を学んだり、別の情報を入手しなければならない、という面倒な一面もあります。それらをできるだけそぎ落としたいという考えから生まれたのが、テンキパン。これなら、パンを焼くという日常的な行為で天気を知ることができます」

写真 「テンキパン」
多摩美術大学美術学部デザイン学科の卒業制作として作られた「テンキパン」。インターネット上の「見ても触れられぬデジタル情報」を手で直接触り感知できる。不思議な作品だ。

 テンキパンから受ける印象は、鑑賞者それぞれによって異なると成田さんは言う。
 「ある人は豊かな情報社会を生み出すアイディアと評価し、またある人は、情報過多の現代社会を風刺している、と言います。この作品をどのように解釈するのかは、鑑賞者にゆだねています。ただ、そうした強いインパクトを与えられる作品を今後も生み出していきたいですね」


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