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 NTT HOME > 365°トップページ > Vol.25 トップページ > 特集 より深く、より身近に。ICTが変えた、アートの世界。
特集 より深く、より身近に。ICTが変えた、アートの世界。
作品名:フリークエンシー&ヴォリューム
作者:ラファエル・ロサノ=ヘメル
鑑賞者の影を壁面に映し出し、その影の動きによってテレビやラジオ放送、無線の電波を受信する作品。左右に影を移動させることで周波数、影の大きさによって音量をコントロールする。鑑賞者が自ら電波空間に入り込み、電波にアクセスするような感覚を得ることができる。


芸術はすでに一部の好事家だけのものではない。
美術館や博物館に足を運ぶ人は多くなり、音楽鑑賞は「趣味」の代名詞ともいえる。
その芸術の世界に大きな変化が起こっている。
ICTを使った芸術作品、そしてICTがつないだ芸術と鑑賞者の新しい関係。
芸術をもっと身近に、もっと楽しむために、
これまでなかった、新しい芸術体験に迫っていこう。

特集1 新しい鑑賞法が続々登場!デジタル技術で美術館が変わる。ICTを使えば芸術作品が今まで以上に身近に楽しめる― 美術全集や展覧会のカタログなど、アートと深い関わりのある印刷業界が蓄積してきたノウハウを活用し、展開する実験的な試みの数々。いつもの芸術鑑賞とはちょっと違う、楽しい芸術の世界へご招待!

写真 三枝さん

凸版印刷株式会社
文化事業推進本部
デジタルコンテンツ部
主任 三枝太 氏

高精細大型映像VRコンテンツの企画・制作を担当。ナスカの地上絵など世界遺産のVRコンテンツ化においては直接現地を取材して制作している。

写真 山崎さん

凸版印刷株式会社
文化事業推進本部
デジタルコンテンツ部
課長 山崎千代乃 氏

文化遺産のデジタルアーカイブ化事業に携わる。「デジタルアーカイブ化の取り組みは10年くらい前から始まりました」とのこと。
  【ケース1 文化財のデジタル化】 仮想空間に再現された文化財に カラダごと包まれる!
 凸版印刷のトッパン小石川ビル内に設けられたVR※1シアター。シートに座ると荘厳な音楽が場内に流れ始める。視野いっぱいに広がる曲面スクリーンにまもなく映し出されたのは、15世紀末にヴァチカンに建てられたシスティーナ礼拝堂の内部。本物のようだが、高精細コンピュータ・グラフィックスで再現された空間だ。
 手渡されたコントローラーを操作すると、まるで自分が正面の祭壇画にどんどん近づいていっているような感覚になる。実物よりも明るく鮮やかな色彩に思わず目を奪われる。
 「右手を上げているのがキリストです。その手が指すほうへ視線を移してみましょう」と案内役の声。見上げるように画面を動かすと、そこには今にも大魚に飲み込まれそうな預言者ヨナの姿。続いて現れた壁面と天井を覆うフレスコ画は、天地創造にまつわる物語を描いたものだとわかる。
 さらにコントローラーで絵にぎりぎりまで近づいて細部を鑑賞する。あたかも自分が“高いやぐらに乗ってこれを描いているミケランジェロ”になったようだ。
 「実際のシスティーナ礼拝堂には大勢の観客が訪れるため、ミケランジェロの祭壇画や天井画をじっくり鑑賞することができません。それに、小窓からの光と薄暗い照明のため全体をこのようにはっきり見ることも不可能。美術の専門家の監修のもとに文化財の本来の色彩を再現しています」と話すのは、プログラム開発に携わり、今回の案内役も務めてくれた文化事業推進本部主任の三枝太さん。
 同社は印刷分野で培ってきた「高精細デジタル化技術」と「カラーマネジメント技術」を活かして、VRの開発に着手した。その背景には、歴史的な文化遺産をデジタルアーカイブ※2として残せないかという所有者側のニーズがあったようだ。VRシアターはデジタルアーカイブの公開手法のひとつである。

写真 トッパンVRシアターで上映されいてる「海のエジプト展」の様子
トッパンVRは、鑑賞者が楽しみながら理解を深める新しい展示手法として注目されている。「海のエジプト展」では海底に沈む遺跡や古代アレキサンドリアを幅14mの巨大スクリーンに再現、海底遺跡巡りや古代都市の空中散策を400名以上の鑑賞者が同時に疑似体験した。(「海のエジプト展」主催:朝日新聞社、TBS、「海のエジプト展」実行委員会 会場:パシフィコ横浜)

写真 「海のエジプト展」で来場者が画面を操作している様子
「海のエジプト展」では、鑑賞者が自らコントローラを操作し、あらゆる視点から貴重な文化財を体感できるコーナーも設置、人気を博した。(VR作品『海のエジプト 海底からよみがえる、古代都市アレクサンドリア』製作・著作:朝日新聞社・凸版印刷株式会社)

 デジタルアーカイブの目的は3つ、「保存」「研究」「公開」である。鑑賞場所など貴重な文化財の鑑賞条件には制約が多い。そのため、鑑賞者はその条件の下でしか文化財に接することができないことがほとんどである。しかし、写実性と臨場感あふれるデジタルアーカイブであれば、そうした条件にとらわれることなく、本物に限りなく近い芸術作品を楽しめる。
 同本部課長の山崎千代乃さんも「すばらしい文化財なのに暗かったり小さくてよく見えないといった理由で、その魅力に気づかずに来館者が素通りしてしまうことは意外と多いのです。また、拝観できない夜の銀閣寺、今は存在しない江戸城本丸御殿を見ることもデジタルアーカイブを活用したVRなら可能です」 と語る。
 今ではデジタルアーカイブによる作品鑑賞の利点が認められ、東京国立博物館、北京の故宮博物院などにもVRシアターが設置されている。
 山崎さんはデジタルアーカイブを基にしたVRの人気の理由を次のようにも分析する。
 「VRシアターは映画のようにただ映像を流すだけでなく、鑑賞者の反応に応じて映像のテンポを変えたり、説明を随時加えたりしながら公開できるのです」
 つまり、鑑賞者とのインタラクティブ性、さらにコミュニケーションをとりながらの芸術鑑賞がVRシアターでは可能なのである。

写真 VR作品『江戸城-本丸御殿と天守-』
凸版印刷が制作したVR作品は、国宝阿修羅像、世界遺産ナスカの地上絵をはじめ、23作品を数える。『江戸城-本丸御殿と天守-』もそのひとつだ。(制作・著作:東京都江戸東京博物館/凸版印刷株式会社)

※1 VR/Virtual Realityの略。仮想現実、仮想空間を意味し、主にコンピュータ・グラフィックス等を用い、観客の目前に実在空間を再現して臨場感あふれる体験をもたらす。VRシアターは土、日、土日に続く祝日に一般公開(問い合わせ:印刷博物館 03-5840-2300)。

※2 デジタルアーカイブ/三次元形状計測などの高度な計測技術を用いて文化財等をデジタルデータに変換し、管理、保存すること。さらに、素材データに編集や効果を加えてコンテンツ化したものも指す。


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●巻頭インタビュー
中村征夫
●特集
より深く、より身近に。
ICTが変えた、アートの世界。
・新しい鑑賞法が続々登場!
デジタル技術で美術館が変わる。
・作って、配信して、コミュニケーション!
これが、音楽の新しい楽しみ方!
・映像・音・光……。テクノロジーの進化が生み出した芸術「メディアアート」
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