
バルト海に面し、九州ほどの大きさの国土に約135万人が住む小さな国、エストニア……。
この国は選挙もインターネットで投票できる、世界でも有数の電子政府システムを運用して注目を集めている。
なぜ、この国で世界でも例をみないほど先進的なICTガバナンスが成立したのか、その実情と背景をレポートする。

首都タリンで女優をしながら絵のショップを開いているレイラさん(56歳)が、1枚のプラスチックカードを見せてくれた。
「これは、国が発行するIDカードなの。エストニアの人はみんな持っているんだけど、身分証明書のほかに、健康保険証にも、車の免許証にもなるの。税金もこのカードでインターネットから支払えるのよ」
この会話に、ショップにいたカセさん(34歳)もカードをかざしながら会話に加わる。 |
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| バルト海の奥深くに位置するエストニア。フィンランドから文化的、社会的に大きな影響を受けており、両国は民族、言語が近い関係にある。両国間の距離は九州の福岡と対馬ほどである。 |
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「僕は、これで電車に乗ってるよ。1カ月の市内乗り放題チケットは180EEK(エストニア・クローン。1EEK=8.5円で、180EEKは約1500円)だけど、このカードなら40%オフ、すごく経済的だろ。しかも、ネットバンキングやネットショッピングもこのカードでできるんだ。EUの圏内ならパスポートにもなる。最高に便利だよ」
エストニアは2002年に、ICチップのついたこの「eID」の発行を始め、すでに、15歳以上の国民の7割以上が所持している。このICチップに埋め込まれた認証番号は手書きの署名と同等の効力を与えられており、さらにIDカード所有者にはeメールアドレスが発行され、政府と個人の連絡用にも使われる。
IDカードはエストニアの政府のポータルサイトでも威力を発揮しており、市民向けWebサイトでは、税金の申告や住民登録、家族手当の申請、自動車登録から病院の予約、学校への願書提出や合否の確認、求人案内への応募、土地の登記や建設認可までできる。さらに、会社の登記や入札への参加、税関への申告などもこのサイトを通して行われている。
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| カセさんのIDカード。カード自体には名前や生年月日などの基本情報だけが記載されている。その他の登録情報や病歴などはセキュリティのため、サーバー上のそれぞれのデータベースに格納されている。 |
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この充実したサービスを利用するための認証ツールこそが、先のIDカードである。パソコンに読み取り機をつなぎ、自分のIDカードを挿入しさえすれば、個人認証が簡単に行えるのだ。確定申告は90%近くの人がオンライン経由で行っているという。政府の公文書のダウンロードや、新しい法案に対する意見表明の場も提供されている。
2005年の地方選挙からは、インターネット投票もできるようになった。今年実施されたEU代議員選挙では、投票率が6.5%上昇したが、これにはインターネット投票が少なからず影響を与えたといわれている。
また政府の巨大データベースは、銀行や医療機関、交通機関など民間のデータベースとネットワークを組み、使い勝手を向上させている。
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