KTN結晶を用いた波長掃引光源

技術領域
先端技術

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概要

近年、基幹ネットワークの大容量化は一段落し、メトロやアクセス系ネットワークの大容量化・高機能化を目的とした開発が進展しています。この実現には、光部品の小型化・省電力化・高機能化などが不可欠です。光デバイスの小型化や低電圧化を実現するために、電界を加えることにより高効率で屈折率が変化する電気光学結晶の開発が望まれていました。また、次世代のネットワークを革新する、高速で動作し高密度に集積可能な高機能光信号処理デバイスの実現に向けて、機能性の高い材料の開発が期待されています。

NTT研究所では、酸化物中で最大の電気光学効果を有するKTN結晶(KTa1-XNbXO3)の作製に成功し、光を操る基幹部品として開発を進めています。KTN結晶とは、カリウム(K)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)と酸素(O)からなる透明な光学結晶であり、1950年代に初めて合成され、光デバイスの性能を決定する電気光学効果が極めて大きい材料であることが知られていました。電気光学効果の大きさを表す電気光学係数は600pm/V以上で、従来から使用されている材料LiNbO3の20倍以上に達しています。この値は、光デバイスなどに応用したときに、サイズや駆動電圧を一挙に1桁以上向上させられる大きさです。しかし、結晶成長が難しく、実用的な光デバイス材料とは考えられていませんでした。

NTT研究所では、温度の精密制御により、50mm角という実用的な大きさでKTN結晶を安定的に得られる技術を確立し、KTNを用いた超小型・超高速なEO*1(電気光学)光偏向器を開発しました。この偏向器は、現在広く用いられている可動ミラー型偏向器と比べて100倍以上の高速性を有しており、通信分野をはじめとした各種領域向けモジュールへの応用が進められています。

このうち、KTN偏向器の高速駆動性が医療用途で用いられる光デバイスの要求条件に合致していることから、サブシステムとして光干渉断層計(OCT*2)用波長掃引光源を開発し、モジュールとしての高速駆動性(200kHz)とシステム要求(コヒーレンス長>7mm)を満たす光学特性を実現しました。このKTNを用いた高速OCT用波長掃引光源をOCTシステムに組み込むことで、小病理部位の3次元その場観察が可能になり、検査時の患者の身体的負担が著しく低減されました。

  • *1 EO: Electro-Optic
  • *2 OCT: Optical Coherence Tomography

図版