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R&Dマガジン

R&Dフォーラム開催報告

『NTT R&Dフォーラム 2015』開催報告
Co-Innovation〜豊かで快適な2020をめざして〜

NTT研究所の研究成果を紹介する「NTT R&Dフォーラム2015」が、2月19日(木)〜20日(金)の2日間にわたり、NTT武蔵野研究開発センタ(東京・武蔵野市)で開催された。
今回は、「Co-Innovation〜豊かで快適な2020をめざして〜」をコンセプトに、代表取締役社長の鵜浦 博夫、代表取締役副社長 研究企画部門長の篠原 弘道両名による基調講演のほか、京都大学iPS細胞研究所の山中 伸弥氏による特別講演、ワークショップなどが行われた。
本年は下記の5つのテーマごとに、数多くの研究成果が紹介された。本稿では、展示の中から、多くの注目を集めていた研究をピックアップしてリポートする。

写真1

写真1 R&Dフォーラム会場となった武蔵野研究開発センタ入口

2020に向けたチャレンジ

本エリアでは、2020年を見据え、深い感動および新しい体験を提供するコンセプトや関連技術の展示が行われた。

写真2

写真2 「2020に向けたチャレンジ」のテーマパネル

周囲の状況を即時に予測し集団を最良ナビでおもてなし(おもてなし)

NTTでは、2020年に向けて、ビッグデータ分析を通じ、人・モノ・情報の流れを近未来予測し先行的に制御を行ない、例えば、イベントの混雑緩和など、人や交通の流れの最適化を目指す研究開発の取り組み「himico」を開始した。本研究はその具体例のひとつであり、、人気ブースへの最短経路など、人の流れが偏り混雑が起こりやすいイベント会場などにおいて、人の流れを観察して近未来の状況を予測し、複数シナリオによるシミュレーションを行うサイクルをリアルタイムに繰り返すことで、集団全体にとって最良となる誘導経路を導き出す。混雑などが発生する時間や場所の予測には、さまざまなデータ間の時空間相関の数理モデルに基づく。
展示では、「誘導なし」、「混雑後に誘導」、そして本技術を用いた「先行して誘導」という3つの方法ごとに混雑状況が異なっていく様子を示すデモが行われた。
今後は、スポーツ競技、コンサートや展示会場などのイベントで、大規模な人の移動や交通の流れ、ネットワークの流れの変動が重大な影響を及ぼす前に予測し、未然に防ぐ技術としての確立を目指す。

関連ニュースリリース:
ビッグデータ分析で人・モノ・情報の流れを近未来予測しいつでもどこでも快適な世界を目指す取り組み「himico」を開始 (別ウインドウが開きます)

写真3

写真3 最も混雑が少ない本技術を用いた「先行的誘導」(画面右端)

「いま見えるモノ」から広がる観光ナビゲーション(おもてなし)

本研究は、目の前の風景にスマートフォン、タブレット、グラス型デバイスをかざすと、利用者の状況(位置、行動履歴など)や属性(国籍、言語、性別など)に応じた情報を表示するというもの。見る角度や環境が異なっていても風景を同一視する「アングルフリー物体検索」と呼ばれる技術が用いられている。少数の画像登録だけでも準備できるため、手間をかけずに「モノを中心とした口コミ」を実現できる。
展示では、外国人が日本国内を観光しているという想定で、タブレットを和菓子店に向けると、画面下部に英語で通話可能か、クレジットカードは利用可能か、口コミ情報の有無といった情報が英語で表示されるデモが行われた。また、グラス型デバイスを想定したデモもヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用して行われ、顔を向けた先にある店舗の情報が表示される様子が体験できた。
利用シーンは、観光地での外国人旅行者や観光客向けのナビゲーション、商店街の店舗案内や街ぐるみイベントへの利用、展示会でのサポートや参加者の興味に応じたナビゲーション、スポーツイベントなどで混雑状況や利用者の嗜好に応じた会場案内などを想定している。

関連ニュースリリース:
3次元物体をどんな方向から撮影しても高精度に認識・検索し、関連情報を提示する「アングルフリー物体検索技術」を開発
〜スマホなどを看板や建物にかざすだけで、観光ナビゲーションサービスを実現〜 (別ウインドウが開きます)

写真4

写真4 町並みの模型にタブレットをかざすと店舗情報が表示される

「いま見えるモノ」から広がる観光ナビゲーション(約3分)

あなたに寄り添う「ものしりぬいぐるみ」(おもてなし)

会話からユーザーの意図を理解し、適切な情報を音声で提供する技術。ポイントになる技術は、大きく次の3つ。1つめは、ユーザー要求の意図を理解し、機械言語(データベースへのクエリーなど)に翻訳して問い合わせること。また、データベースからの回答を、要約生成技術を用いてコンパクトかつ自然な情報として伝えること。さらに、音声認識や合成技術により自然な音声インターフェースを実現していることである。
展示では、鎌倉を旅行しているという想定で、会話中の言葉から寺院や近隣にある店舗についての情報をぬいぐるみが自然な口語で提供するデモが行われた。また、言葉からユーザーの感情を読み取り、共感を示す応答を返すことでユーザーの感情をより高めるロボットも展示された。
観光地での音声ガイド、宿泊施設などでのコンシェルジュサービス、スポーツ会場で選手の情報を教えてくれる音声ガイドといった利用を想定している。

写真5

写真5 「古いね」というユーザーの問いかけに寺院の建造年や伝承について答えるぬいぐるみ「音姉」。下に見えるのはデータベースへのクエリー内容

あなたに寄り添う「ものしりぬいぐるみ」(約7分)

「この選手の情報を“今”知りたい」をかなえます!!(スタジアム観戦)

マラソンなどを沿道で観戦しているときに、他の観戦者がアップロードしてクラウド上に蓄積されているデータを参照することにより、目の前にいない選手のリアルタイムな情報を得ることができる研究。
別々に撮影された動画でも、メタ情報を利用して同一選手のものと認識させ、アングル変更に利用できる。また、タブレット内に表示されている任意の選手の情報をタグ表示させたり、タブレットをかざしている場所で過去に開催されていた競技イベントに関する情報も、アーカイブデータを参照して閲覧したりすることもできる。
展示では、マラソン観戦を想定し、別の場所で走っている選手の動画をリアルタイムで表示させたり、知らない選手をクリックすると情報をタグで表示させたりするデモが行われた。

写真6

写真6 目の前にいない選手のリアルタイム情報(今走っている場所の映像)を表示

「この選手の情報を“今”知りたい」をかなえます!!(約5分)

選手の気分で高臨場スポーツ観戦!(遠隔高臨場観戦)

本研究は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とヘッドホンを利用して、首を振るという直感的なユーザーインターフェースで360度の視聴体験を提供するというもの。あたかもフィールド上にいるかのような高臨場のスポーツ観戦体験を実現する。ユーザーが視聴しているエリアだけを高精細にすることで負荷を低減して映像を途切れさせない配信制御技術と特別なマイクロホンアレイで収集した音を方向ごとに分離させ、見ている方向にあわせて提供する技術の2つが要となっている。
展示では、サッカー観戦中に、自分が観たい方向に顔を向けると映像が追随するだけでなく、目の前でボールが蹴られればすぐそばで音が聞こえ、後ろで蹴られれば後ろから音が聞こえるという臨場感のあるデモが行われた。
利用シーンは、自宅にいながらフィールド内で自由な方向を向くことができる新しい視聴体験、ポータブルなHMDでスタジアムでの観戦中にフィールド視点でのリプレー映像の実現、実際の選手や審判の目線に近い映像での自由な視点変化で選手や審判のトレーニングへの活用などを想定している。

写真7

写真7 顔を向けた方向に合った映像と音がする臨場感のあるデモ

選手の気分で高臨場スポーツ観戦!(約2分)

競技そのものをリアルタイムで世界に高臨場感配信(遠隔高臨場観戦)

さまざまな技術を組み合わせることで、パブリックビューイングでも目の前で競技が行われているかのような高臨場の配信を実現する「Kirari!」の展示。
「Kiarri!」は、NTTが開発した次世代映像圧縮規格(HEVC)などと、新たに開発に着手した高臨場感メディア同期技術「Advanced MMT」を組み合わせて、選手の映像・音声のみならず、選手の置かれた空間や環境の情報を伝送し、伝送先においてプロジェクションマッピング技術で、音とともに3D再現する技術である。
展示では、studioTED(スピン社)のホログラフィック技術Eyelinerと、NTTのリアルタイム波面合成技術の拡張により、ホール全体を利用して、Kirari!により卓球やサッカーなどの中継を行うという、大がかりなデモが行われた。三次元的に浮かび上がる被写体の映像と、浮かび上がった被写体と完全に一致するかのような音響設定、そして照明などの動きを組み合わせによって、まるで目の前にいるかのような臨場感の高さに多くの注目を集めていた。
トップアスリートの競技を世界中のパブリックビューイング会場で再現するなどの利用を想定している。

関連ニュースリリース:
あたかもその場にいるかのような超高臨場感をリアルタイムに世界へ配信
〜イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」の研究開発を推進〜 (別ウインドウが開きます)

写真8

写真8 卓球台だけが本物で、選手はホログラフィック映像、得点表示は大型ディスプレイ

バリューパートナーと拓く未来

本エリアでは、バリューパートナーとしてお客さまの事業変革に資するようなセンシング関連技術、音声系ユーザエクスペリエンス技術、ビッグデータ関連技術の展示が行われた。

写真9

写真9 「バリューパートナーと拓く未来」のテーマパネル

着るだけで生体情報が測定できる機能性素材hitoeの展開(センシングコラボレーション)

ナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングし、着るだけで心拍・心電図・3軸加速度の生体情報の常時モニタリングを可能にする機能性素材「hitoe」の関連展示。
「hitoe」は2014年12月に販売開始したゴールドウインより発売したウェア型の計測用デバイス「C3fit IN-pulse」シリーズに活用されており、NTTドコモ社より提供開始されたトレーニング支援サービス「Runtastic for docomo」と連携することで、正確に計測された心拍数に基づく、目的に合わせた効果的なトレーニングが可能となるほか、クラウド上に収集したデータのサービス利用やAPI/SDKの提供によるアプリケーション開発、健康管理や医療診断サポートへの展開など、幅広い分野での活用が紹介された。
今後は、リアルタイム分析を利用したスポーツトレーニングや睡眠時のアドバイスへの応用や、生体情報の常時モニタリングを通じて健康管理(疲労、ストレス、熱中症など)や医療診断サポートへの展開などを目指す。

写真10

写真10 hitoeを活用したウェア型の計測用デバイス「C3fit IN-pulse」シリーズ

着るだけで生体情報が測定できる機能性素材hitoeの展開(約8分)

レーザの光で食品の表示偽装を抑止する(センシングコラボレーション)

本研究は、食品にわずかに含まれる同位体元素(中性子の数だけが異なる原子)を分析することで、産地や原料の表示偽装がないかを判別するもの。NTTで開発したセンシング用レーザを中核とする高性能レーザガスセンシング技術が応用されている。食品・飲料品の表示偽装抑止、トレーサビリティシステムのほか、農産物等の産地認証・地理的表示保護制度、温室効果ガスのモニタリングや危険有害ガスのモニタリングなどが利用シーンとなる。
展示では、地域ごとに水の同位体元素の重さに違いがあることを利用してレモンの産地を特定する方法や、日本酒の原料が表示どおりになっているかを分析する方法について紹介された。
今後は、食品の同位体比率をデータベース化して情報を蓄積していくことで判別精度の向上や温室効果ガスの監視などへの応用なども期待される。

写真11

写真11 上:食品中に含まれる水の同位体などから産地を識別/下:センシング用レーザを照射し、食品に含まれる同位体元素を分析

100dBの騒音下でもクリアに音声を集音(音声コラボレーション)

音の到来方向、周波数特性、時間的な変動特性を利用して、騒音下にあっても、目的の音だけをクリアに集音する研究。目的となる音声の到来方向だけのマイクで集音する「ビームフォーミング処理」と、そこに含まれる雑音成分を約1/10000にまでカットする「スペクトルフィルタ処理」という2つの技術を組み合わせ、少数(2〜3個)のマイクでも数十個のマイクを使ったビームフォーミングに匹敵する性能を実現する。これにより、100dBという、かなりの騒音下でも高精度な音声認識や明瞭な音声通話を可能にする。
展示では、工場内での作業を想定し、会話ができないほどの騒音下でも、スマートフォンへの音声指示が正確に認識されるデモが実演された。
利用シーンは、工場内や工事現場などの機械騒音下における音声認識を利用した機器操作やハンズフリー通話、カーステレオや交通騒音の中でのカーナビゲーションへの音声入力、さらに高速道路を走行中のうるさい自動車内における明瞭なハンズフリー通話を想定している。

写真12

写真12 会話できないほどの騒音下でも正確に音声が認識された

100dBの騒音下でもクリアに音声を集音(約3分)

グローバルクラウドの未来

本エリアでは、グローバル規模で柔軟・迅速かつ効率的なサービス提供を実現するクラウド基盤技術、安心・安全なサービス提供のためのセキュリティ技術の展示が行われた。

写真13

写真13 「グローバルクラウドの未来」のテーマパネル

ソフトウェア開発の生産性向上を実現する(ソフトウェア開発技術)

開発プロセスを共通化することで、NTTグループ全体でソフトウェア開発の生産性向上を目指す研究。OSS(オープンソースソフトウェア)を活用し、プログラムだけでなく、開発プロセスを支援する資材を提供する。
具体的には、設計工程を支援する作業要領・規約のほか、サンプルアプリケーション資材(ソースコード、各種設計書)などを提供する。また、今後は設計支援ツール、製造自動化ツール、テスト自動化ツールといった各種ツールの提供も行っていく予定。

写真14

写真14 共通化された設計プロセスを利用して作成したデモプログラム

クラウドを使ったITアプリケーション開発、運用の効率化(クラウド)

本研究は、アプリケーション開発・運用の土台となるPaaS(Platform as a Service)環境をお客様のプライベートクラウド上とNTTパブリッククラウドの両方に構築し、それぞれを連携させるもの。これにより、パブリッククラウド上にある開発・試験環境とプライベートクラウド上にある商用環境の差異をなくすことにより、開発期間を短縮したり、故障時のフェールオーバー、過負荷時のスケールアウトもシームレスに行ったりすることが可能となる。
利用シーンは、需要がどれくらいあるか判断が難しいビジネスのスタートアップでの利用、クラウドをバックアップリソースとして利用するといったものが想定される。

写真15

写真15 パブリッククラウドからプライベートクラウドへのデプロイもGUIで実行可能

クラウドを使ったITアプリケーション開発、運用の効率化(約7分)

大規模・高度なDDoS攻撃からお客様を守ります(セキュリティ)

アクセス過多などでサービスを無効化するDoS攻撃のうち、DNSやNTPのUDPパケットを増幅させて大量パケットを送りつける「反射型DDoS攻撃」と、少量のパケットながら応答を遅らせることで制限数いっぱいまでコネクションを埋める「Slow DoS攻撃」という種類の攻撃がある。こうした攻撃のパケットを半自動的に検知・遮断して、正常なパケットだけは通過させる「リジリエント・セキュリティエンジン」(RSE)と呼ばれる技術の展示。攻撃種別に応じて、適切な防御アクションをオペレータに提示も行う。
反射型DDoSへは、他ネットワークとの境界ルータ上で攻撃トラヒックを分散遮断し、正規通信に対してはSDNによる動的な例外設定を施すことにより、正規通信の誤遮断を回避する。Slow DoSへは、コネクション解析によりSlow DoS攻撃を高精度に検出する装置と連携し悪性通信だけを遮断する。
展示では、擬似的に発生させた2つのDoS攻撃を検知・遮断して、サービスが復旧するまでのシミュレーションデモが行われ、多くの来場者の注目を集めていた。

写真16

写真16 Slow DoSと判断し、アクセス元のIPアドレスなどの情報を表示

大規模・高度なDDoS攻撃からお客様を守ります(約7分)

ネットワークサービスの未来

本エリアでは、さまざまな人がより自在に利用でき、より使いやすいネットワークを実現する、連携・制御・大容量化技術、オペレーション技術、環境関連技術の展示が行われた。

写真17

写真17 「ネットワークサービスの未来」のテーマパネル

広域ネットワーク対応SDNスイッチをOSSとして提供(サービス共創ネットワーク)

従来はハードウェアで構成されていたネットワークをソフトウェアで構成することにより、動的な設定変更を可能にするSDN(Software Defined Network)。本研究は、このSDN技術を広域ネットワークに適用するために開発されたSDNソフトウェアスイッチ「Lagopus」の展示。並列処理や最新のI/O高速化技術を採用し、ソフトウェアでは実現が難しかった10Gbpsという高い通信性能が特長となる。また、大規模ネットワークへの適用に十分な100万フロールールの設定が可能で、データセンタやオフィスネットワークでの利用にも耐えうる機能ももつ。
「Lagopus」は、2014年7月よりオープンソースソフトウェア(OSS)として提供されており、公式サイトからダウンロードして無償で利用することができる。
Lagopus単独でゲートウェイやCPE(Customer Premise Equipment)としての利用、仮想スイッチとしてNFVと組み合わせることで高機能ソフトウェアアプライアンスの実現を利用シーンとして想定しており、今後はカスタマイズ性が高いプログラマブルネットワークとしての発展を目指す。

写真18

写真18 広域網で利用されるMPLSやPBB、QinQ、OpenFlow 1.3.4をサポート

広域ネットワーク対応SDNスイッチをOSSとして提供(約5分)

予測に基づきプロアクティブにネットワークを制御(サービス共創ネットワーク)

本研究は、物理空間上での人の流れやサイバー空間上での通信行動といった行動モデルに基づく生成メカニズムを用いてトラヒック予測を行い、リソースの割り当てやコンテンツ配置の最適化を行う。さらに、経路制御などでそうした予測外れにも耐性のある制御を組み合わせることで、トラヒックが変動しても安定したネットワーク通信を提供することができる。特に、イベントによるユーザー集中やサイバー攻撃などによるトラヒック急増に対して効果を発揮する。
展示では、トラヒック予測の様子や、リソースの割り当てやコンテンツ配置の最適化、予測外れ時の経路変更を行うデモが行われた。

写真19

写真19 上:ネットワークワイドのフローデータをリアルタイムに分析/下:予測外れにより突発的にトラヒックが上昇している様子(左上の画面)

被災しないネットワークを創る(サービス共創ネットワーク)

ネットワーク形状と災害時の分断確率との関係を評価する災害のモデル化する「空間情報数理」と物理的な位置関係を考慮したデータ冗長化を可能とする新しいサーバアーキテクチャ「MAGONIA」を組み合わせ、地震や台風などの災害が発生しても影響を受けない「被災しないネットワーク」を提供する研究の展示。リソースの配備変更や増強の際もサービス中断がないため、被災前に機能配備を変更することも可能となっている。
展示では、地域ごとの被災影響の予測が行われる様子や、レプリケーション先を被災影響の少ない地域に移動して冗長性を確保し続けるデモが行われた。
頑強性の向上を目指すデータセンタや分散コンピューティング環境下での利用、高い信頼性や拡張性が要求されるPaaSでの利用、さらに電話や動画配信など、さまざまなサービスへの展開を想定している。

写真20

写真20 上:ネットワーク形状から被災影響の受けやすさを評価/下:位置関係を考慮したデータ冗長化により被災してもデータを保全

多様なサービスを迅速・持続的に提供(サービス共創ネットワーク)

NTTでは、ネットワークを利用するお客様やサービス事業者に、いままで以上に多様なサービスを、迅速かつ高信頼、低コストに提供していくことを目指した将来の通信ネットワークの技術開発に関するコンセプトとして「NetroSphere(ネトロスフィア)構想」を策定した。NetroSphere構想では、ネットワークを構成する機能をできる限り小さい粒度の部品に分離・素材化し、それを自由に組み合わせることによって必要な機能や容量を柔軟に、経済的に構成することを目指しており、本項目で紹介する「マルチサービスファブリック」(MSF)は、その実現において必要となる、多様なサービスを迅速かつ持続的に提供するネットワークを実現する技術である。
ネットワークを、スイッチ群で構成される転送機能部とサービスを提供するサービス機能部、そしてそれらを制御するコントローラ部に分けることで、柔軟にサービスの機能を拡充することができる。また、市中にある汎用スイッチを利用できるため、設備コストや消費電力も大幅に低減できる。さらに、それらの汎用スイッチ群を光トランスポート技術と連携させることで冗長性の高いネットワークを実現している。
具体的な利点には、事業者からの多様なサービス要望にも迅速に対応可能なネットワークを構築できる、冗長性を保ち続けることで故障時にも緊急駆け付け修理が不要になるという点が挙げられる。

関連ニュースリリース:
NetroSphere構想:キャリアネットワークのあり方を変革する新R&Dコンセプトを策定
〜部品化したネットワーク機能を自由に組み合わせ、多様なサービス創出を支えるためのオープンな技術開発を推進〜 (別ウインドウが開きます)

写真21

写真21 故障しても経路変更により安定したネットワーク通信を提供

多様なサービスを迅速・持続的に提供(約4分)

環境に配慮したデータセンタ・通信ビルの将来像(サービス共創ネットワーク)

省電力で環境負荷の低いデータセンタや通信ビルを構築するためのICT装置、給電装置、空調装置などに関連する装置の展示。具体的には、ICT装置・給電装置・空調装置の連係制御による省電力化ならびに設備の効率的な運用を提供する「DCIM」、高効率・高信頼、低コストなシステムを実現する高電圧直流システム「HVDC」、マシンルームを自律的に巡回し、高精度かつ低コストで温度や風速を計測するロボット、災害時にも長時間の電源バックアップを提供する複数発電源の最適制御などが展示された。

写真22

写真22 上:高電圧にすることにより複数の太いケーブル(写真右)を1本の細いケーブル(写真左)へ変更可能/下:サーバールーム内を自走し、目的地に到着すると、バーを伸ばして温度などを計測するロボット

画面に飛び出すノウハウ!(スマートオペレーション)

パソコン画面の任意の場所に付箋のような注意書きを貼り付けられる研究。マニュアルよりも直感的に操作方法を指示したり、注意書きを残すことで誤操作を防止したりすることができる。既存のアプリケーションの変更が不要で、表示のオン/オフもワンタッチで切り替えることができる。
利点としては業務の効率化・正確性の向上や既存環境のまま仮想的なマルチ言語環境を構築できることが挙げられ、操作方法がわからないユーザーに対してマニュアルレスでナビゲーションできるようにしたいといったニーズに応える。

写真23

写真23 画面上に指示が書いてあるので、作業内容を直感的に把握できる

未来を見据えた基礎研究

本エリアでは、性能の極限を打破することによって生まれる新たなパラダイム、革新的な技術がもたらす全く新しい価値の創造を見据えた基礎技術の展示が行われた。

写真24

写真24 「未来を見据えた基礎研究」のテーマパネル

100ビットを超える光RAMチップ(極限追求)

電気特性を利用している現行の一般的なメモリとは異なり、チップ内信号の配信に光を用いた光RAMチップ技術の展示。「波長多重型集積」技術と精密な「Siフォトニック結晶」技術の採用により、1mmのチップに100個を超える光のRAM(100bit)を集積可能となった。また、従来からの課題であった消費電力についても、105個で30mW程度という低消費電力化を実現した。ほかにも、Q値約100万かつ共振波長間隔の広い新型ナノ共振器や、集積状態で各ビットのランダムな読み出し/書き込み動作と長時間記憶が可能という特長をもつ。
今後は、光ルーティング処理におけるバッファメモリや光コンピュータのRAMとしての利用を目指す。

写真25

写真25 上:展示された光RAMチップダイ/下:デモ展示された光RAMチップが組み込まれた装置

引っ張る力を伝えるモバイルガジェット:ぶるなび3(革新技術)

ブルブルふるえることで「何かに引っ張られる」感覚(力覚)を伝えるモバイルガジェット「ぶるなび」が、多方向への力覚生成に対応し、かつ方向と力の大きさを素早く連続的に変更可能になった。今回は、こうした改良点をふまえて、釣り糸に見立てた「ぶるなび3」つきのひもを仮想的な水槽にたらして仮想の魚が食いつくと引っ張られるゲーム、仮想の犬にいろいろな方向にリードを引っ張られるゲーム、次に移動すべき位置を引っ張られる方向で指示されるゲームなどがデモ展示された。
利用シーンは、力提示を行うゲームインタフェース(魚釣り、犬の散歩など)、力覚コミュニケーション、力覚を使った秘密情報伝達、地図なし、音声なしで経路案内、眼の不自由な方などの歩行支援、経路案内などを想定している。

写真26

写真26 引っ張る方向で、人間に次に移動すべきマットを指示する

引っ張る力を伝えるモバイルガジェット:ぶるなび3(約5分)

スポーツのコツやメンタルを捉える!(革新技術)

スポーツの上達には、力みをなくしたり、身体の各部位をスムーズに協調連携させたりすることが大切となる。本研究では、身体に取り付けたウェアラブル生体電極により、静止状態で力んでいると音を鳴らしたり、各部位の筋肉の反応を音や波形にして伝えたりすることで、身体の使い方を「可聴化」・「可視化」する。展示では、プロと素人でボールを投げたときの音の違い、つまり筋肉の使い方の違いを比較するデモが行われた。
力の入れ方や体の使い方などのスキルトレーニングのほか、日々のコンディションチェック、リハビリやエンタメなどスポーツ以外での利活用といった用途での利用を想定している。

写真27

写真27 実際にボールを投げて筋肉の反応がどう音や波形で表現されるかを示すデモ

スポーツのコツやメンタルを捉える!(約8分)

NTT技術史料館特別展示

本年も、NTT武蔵野研究開発センタ内にある「NTT技術史料館」(http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/)に収められている史料のうちのいくつかが出展された。多くの来場者の目を引いたのが「モールス電信初号機」。これは、現在はスミソニアン・国立アメリカ歴史博物館に所蔵されていて、1835年に4マイル(約6.5km)の通信が可能だったと伝えられている機械のレプリカ。ただし、レプリカと言っても、単なるモックアップではなく、実際に通信できる点が特筆に値する。この発明から約180年経った現在、「NTT R&Dフォーラム2015」に出展されている最先端の通信技術に至るまでの発展を考えると感慨深いものがある。
「NTT技術史料館」では、毎週木・金曜の午後一般公開が行われているほか、随時魅力的なイベントが行われているので、機会があるればぜひ見学していただきたい。

写真28

写真28 上:NTT技術史料館からの特別展示ブース/下:通信可能なモールス信号初号機のレプリカ

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