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R&Dマガジン

R&Dフォーラム開催報告

『NTT R&Dフォーラム 2017』開催報告
Open the Way〜2020とその先の未来へ〜

NTT研究所の研究成果を紹介する「NTT R&Dフォーラム2017」が、2月16日(木)〜17日(金)の2日間にわたり、NTT武蔵野研究開発センタ(東京・武蔵野市)で開催された。
今回も、昨年同様、「Open the Way〜2020とその先の未来へ〜」をコンセプトに、代表取締役社長の鵜浦 博夫、代表取締役副社長 研究企画部門長の篠原 弘道両氏による基調講演のほか、大阪大学教授でATR石黒浩特別研究所客員所長でもある石黒 浩氏による特別講演や3つのワークショップなどが行われた。
5テーマの研究成果発表に加えて、本年は新しい試みとしてインタラクティブ技術体験も行われた。本稿では、多くの展示の中から、特に注目を集めていた研究をピックアップしてリポートする。

写真1

写真1 R&Dフォーラム2017の会場入口

みえてきた2020とその先の社会

本エリアでは、2020とその先の社会に貢献する新たな利用シーンを具現化し、昨年よりも一歩近づいた2020の世界を具体的に体感できるプロトタイプおよび関連技術の展示が行われた。

写真2

写真2 「みえてきた2020とその先の社会」のテーマパネル

R&D Forum Showcase 2017(未来へつながるおもてなし)

「R&D Forum Showcase 2017」は、R&Dフォーラム2017の会場をフィールドに最先端研究の利用例を体験できる試みである。
画面上のエージェントに興味のある分野を話すことで、お勧めの展示とその順路を示してくれる「corevo for Reception」、展示内容に関するさまざまな問いかけに答えてくれるスマートフォンの公式アプリの機能「ボット説明員」、ドローンを用いた空中からの誘導案内「Sky Compass」が今回新しく展示された。
昨年に引き続き、混雑を回避する順路を示してくれる「混雑回避ナビ」、展示パネルにかざすと関連情報を表示してくれる「かざして案内」といった2つの公式アプリの機能、会場中央には混雑状況と、すいている展示会場をアドバイスする「人流誘導サイン」が壁面に表示されていた。
今後、これらの技術は博物館や美術館での展示説明を行ったり、空港や駅などですいている出口をサイン表示させたりすることで混雑回避を行うといった社会実証実験を推進し、技術の実用化をめざす予定。

写真3

写真3 お勧めの展示を教えてくれる「corevo for Reception」(左)、展示会場までの行き方も示してくれる(右)

写真4

写真4 混雑状況の表示と最適順路を教える「混雑回避ナビ」(左)、質問に答える「ボット説明員」(右)

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写真5 ドローンで空中から情報提示や誘導を行う「Sky Compass」

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写真6 空き情報を壁面に投影して知らせる「人流誘導サイン」

競技や講演をまるごとリアルタイムに届け感動を共有します「Kirari!」(2020の世界を感じる)

多くの反響を呼んだ2015年の発表から2年の月日が過ぎ、実用化に近い段階に入ったイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」。
これまでのデモでは、卓球、空手など2020を想定したスポーツ中継をイメージしたものが多かったが、今回は2016年に行われた歌舞伎とのコラボレーション事例が紹介され、Kirari!の利用例として新しい可能性が示された。
2016年5月、歌舞伎俳優 市川染五郎丈氏の姿をKirari!を使ってラスベガスから羽田空港のイベント会場へのリアルタイム伝送・舞台挨拶を行った、松竹株式会社との共同実験の模様などが紹介された。
さらに、昨年から向上したKirari!関連技術についても説明された。リアルタイムに被写体映像を抽出する「任意背景リアルタイム被写体抽出技術」は、狙った対象だけを切り抜けるよう、より精度が高くなった。また、「高臨場音像定位技術」は、会場の右前や左後など、任意の場所にて音が鳴っているような、よりリアルに音場を再現できるようになった。

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写真7 Kirari!の技術について語る開発者(右)の映像は研究所内の別室からの中継

平易な立体地図で目的地まで案内します「2.5D地図表現技術」(未来へつながるおもてなし)

平面(2D)の地図に「高さ」情報を付加することで、自分がどこに進めばいいかをよりわかりやすく教えてくれる「2.5D地図表現技術」の展示。対象となる空間全体を厳密に3D再現するのではなく、道案内に必要となる2D情報に必要に応じて高さ方向を立体化していることから「2.5D」という呼称がついている。
案内するうえでの「わかりやすさ」を重視しており、目的地に向かうためには目の前にある階段を上る、ということを視覚的に示されるだけで、該当フロアの地図とシームレスにつながり、わかりやすさが格段に向上している。
展示では実証実験を行っている日産スタジアム内と東京メトロの表参道駅でのテモが行われていた。表参道駅については実証実験中(2月1日から3月26日まで)であり、東京メトロの公式アプリから実際に試すことができる。
今後は、訪日外国人に対する言葉によらない直感的な空港施設案内や複雑に入り組んだターミナル駅や地下街のナビゲーションでの利用をめざす。

写真8

写真8 2.5Dで表示された日産スタジアム内の案内図

脳科学とICTでアスリート脳を解明し鍛える「スポーツ脳科学プロジェクト」(センシングで変わるスポーツ)

スポーツのパフォーマンス向上には、「心・技・体」という3つの要素のバランスが不可欠ということがよく語られているが、科学的アプローチを用いたメカニズム解明が行われてきたのは、計測による数値化が容易な「体」(筋力・心肺機能)が主だった。
スポーツ脳科学プロジェクトは、AI関連技術corevoの研究開発の一環として、脳科学とICTを統合することでアスリートの無自覚的(潜在的)な脳の働きを解明し、これまでは未開拓だった「心」と「技」を支える脳を鍛えることを目的としている。これに向け2017年1月にスポーツ脳科学(Sports Brain Science:SBS)プロジェクトが組織として発足した。
現在、SBSプロジェクトでは、瞬間的な対人インタラクションが鍵となる競技である野球・ソフトボールに焦点を絞り、脳の潜在的な情報処理機能の解明をめざしている。例えば、チェンジアップボールを打てる選手と打てない選手の筋活動の違いを計測することで、打てる選手は「リリースから約0.25秒の時点でタメをつくってチェンジアップに対応している」ことを解明した。また、「マイクロサッカード」と呼ばれる無意識に生じる微小な眼球運動と瞳孔径の変化から球種を見極めるメカニズムの調査や、実際には実験が難しいビーンボールに対する反応はVR(仮想空間)を利用することで計測している。さらに、心拍数の変化からメンタルとパフォーマンスの違いについても研究している。
こうした多角的な特性の計測やパフォーマンス評価のフィードバックにより、アスリートのパフォーマンス向上につながるトレーニング法の確立をめざしている。

写真9

写真9 野球・ソフトボールをテーマに多角的な調査を実施

写真10

写真10 リサーチスペシャリストとして研究に加わっている元プロ野球投手の福田岳洋氏(写真中央)

新しい価値創造を加速するcorevo

本エリアでは、近年さまざまな分野で注目されているAI分野において、新しい価値創造を加速するエンジンとなりうるNTTグループのAI関連技術「corevo」の展示が行われた。

写真11

写真11 「新しい価値創造を加速するcorevo」のテーマパネル

ドライバが快適な運転ができるように支援します「corevo for Drivers」(ヒトと共創するAI)

3つのAI技術を融合してドライバのコンシュルジュとして機能し、運転が安全かつ快適になるよう音声ナビゲーションで支援を行う「corevo for Drivers」の展示。
休日のドライブを想定したデモでは、バイタルセンサから得られたデータの分析結果から睡眠状態や疲労度をドライバにフィードバックして注意喚起(Heart-Touching-AI関連技術)や、ドライブレコーダや自動車に搭載された各種センサからのデータ分析により危険な交差点や状況などの警告や、目的地を先読みしたナビゲーションの実施や立ち寄り先の提案(Ambient-AI関連技術)を行っていた。また、会話が途切れ途切れになっても合いの手を入れながら最後まで話をしっかりと聞くことで自然な対話を行う(Agent-AI関連技術)展示が紹介されていた。

図1

図1 3つのAI技術で安全かつ快適な運転になるようサポートする

写真12

写真12 会場で行われたデモの様子。休日のドライブを画面中央のロボットが音声でナビゲートする

あなたに役立つどこかの機器を選んでつなぎます「Tacit computing」(ヒトと共創するAI)

昨年、コンセプトが発表された「Tacit computing」の展示。「Tacit computing」は、IoT技術とAI技術を融合し、プログラムが自らの判断で人間の活動を支援・代替する「自律制御型サービス」の実現をめざす技術。
今回の展示では、2台の機器が動いている中、それを映しているスマートフォンやWebカメラから集めたデータをAI技術で分析することにより、ユーザが指定した任意の条件に適合するカメラを選択し、目的のものだけが映っている映像を表示するデモが行われた。
このデモで使われた複数のスマートフォンやWebカメラが、将来的にはさまざまな人が所有、または屋外に設置されている機器となって、ネットワーク上でつながることを目標としている。これこそが「自律制御型サービス」を実現するうえで重要な要素となる「Sharing of Things」(ネットワーク上のあらゆるモノを共有して利用し、サービスごとのIoTデバイスやAIマシンの設置を不要にする)の実現となる。
観客のスマートフォンでお気に入りのマラソン選手を中継したり、商店街や公園などの監視カメラを使って迷子を捜索したり、駅・デパート・商店街などの電光掲示板に通行人に合わせた広告を配信するといった、さまざまな用途での利用を想定している。

写真13

写真13 画面に「緑」を指定すると、緑の機器だけを映し続ける

次代のビジネスを支えるIoT&セキュリティ

本エリアでは、今後のIoT発展の流れを先取りし、バリューパートナーのビジネスを支える先進的なIoT関連技術とセキュリティ技術の展示が行われた。

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写真14 「次代のビジネスを支えるIoT&セキュリティ」のテーマパネル

オフライン環境でもIoT機器間のなりすましを防ぎます(セキュリティ)

近年、さまざまな分野でIoT(Internet of Things:モノのインターネット)機器の導入が進んでいる。IoT機器から得られるデータを分析することで、生産性や品質の向上、新しいビジネスモデルの展開などが進みつつある。 しかし、多くのIoT機器の導入が進み、それぞれが連携し合うようになり、適切な権限制御が行われないと、不正なIoT機器によるデータ盗聴や、意図しない不正な動きなどのセキュリティ被害を受ける可能性がある。 この研究は、IDベース暗号やペアリング演算の技術を用いることで、IoT機器間における権限の付加や取り消しを、状況に合わせて安全に変更することを可能とする。これにより、IoT機器間におけるなりすましや無許可動作を防ぎ、セキュアにIoT機器の連携を行うことができる。 展示では、ドローンの自動配達サービスを想定し、人間が介在しなくても許可された機器同士(ドローンと宅配ボックス)で作業するデモが行われていた。

図2

図2 IoT機器の権限検証イメージ

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写真15 会場に設置されたドローンの自動配達サービスを想定したデモ

医療用hitoeにより心疾患の早期発見をめざします「ウェアラブル生体センサhitoe」(IoT)

機能素材hitoeの医療分野での活用をめざす研究の展示。hitoeに医療用電極(hitoeメディカル電極)と医療用リード線(hitoeメディカルリード線)を装着することにより、着ているだけで医療品質の心電信号を取得できる。
テープなどの固定が不要なため、かぶれにくく、動きやすく、長時間の連続計測が可能となる点が特長となる。なお、hitoeメディカル電極とhitoeメディカルリード線は、一般医療機器としての届出・登録を完了している。
また、hitoeによる計測だけでなく、心電波形(R波とT波)の周波数を考慮して、それぞれに応じたフィルタを通すことにより、ノイズのある心電波形でも高精度のR波とT波を抽出する解析技術についても研究を進めている。
今後はこうした研究にクラウド技術を連携させ、医師が遠隔地から患者に診察を行える医療ICTサービスの提供をめざしている。

写真16

写真16 メディカル電極とメディカルリード線が装着された医療用hitoe

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写真17 フィルタを通すことにより、ノイズを低減し、精度の高い心電波形を抽出する

hitoeを着てスポーツの感動を共有します「ウェアラブル生体センサhitoe」(IoT)

映像に機能素材hitoeと他センサで取得した情報を統合して配信することで、より臨場感のあるスポーツ体験を可能にする研究の展示。
展示では、ロードバイクレースなどで、hitoeウェアで計測した心拍数を元に独自に算出した残存体力指標「HP」を表示し、選手本人にしかわからない余力を可視化していた。さらに、選手のメガネに取り付けられたカメラからの選手視点での映像、自転車に搭載された端末から得られたデータといったさまざま情報をレース映像とともに提供することで、視聴者により高い緊迫感・高揚感を与えていた。
さらに、スパッツのhitoe筋電計からの筋電も併用し残存体力や筋活動、筋疲労を可視化することで、日々のトレーニングをより精密なものとすることをめざしている。

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写真18 ロードバイクレースをイメージしたhitoeウェアのデモ。画面左下にHPが表示されている

多様な機械を連携させた工場のスマート化に貢献します(IoT)

近年、工場などで導入が進んでいるIoT機器からのデータを統一的に管理する基盤の展示。 IoT機器からのデータは小さなものが多いが、工場内に大量にあるIoT機器から継続的に送られてくるデータを合わせると非常に大規模なデータとなる。それらをすべてクラウド上のサーバで分析すると、転送や分析に時間がかかり問題の発見が遅れる可能性がある。 この研究では、2つの基盤を組み合わせることにより、製造現場におけるさらなる生産性向上と効率化の実現に貢献することをめざす。 具体的には、多種多様な機器からのデータを「IoTデータ交流基盤」が統一的に管理し、アプリが処理できる形に整形し、アプリを格納した「エッジサーバ」と呼ばれる機器に転送。エッジサーバはエッジコンピューティング技術により、クラウドサーバと比較して、よりスケーラブルで低遅延なデータ交流を実現する。 さらに、「アプリ配信基盤」が、さまざまなアプリをエッジサーバに配信することで、持続的に機能を進化させることができる。このアプリ配信には、コンテナ型仮想化技術の「Docker」のノウハウが活かされており、開発環境と動作環境の違いを意識することなく配信できるため、迅速かつ簡潔なソフトウェアアップデートが可能となる。

写真19

写真19 IoTデータ交流基盤の動作イメージ

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写真20 エッジサーバのデモ展示

ビッグデータを活用し、農業分野の新たな価値を創出します(IoT)

農業・水・環境インフラ分野にNTTのICT技術を組み合わせ、生産性の向上、コスト削減、新たな価値創出をめざす研究のコンセプト展示。
農業分野において、農場に設置したセンサから得られたデータを分析することで、適切なタイミングで散水、追肥を行い農作物の高品質化や生産性の向上をめざす。
また、ロボット/ドローンを活用し年間200億円以上とも言われる野生鳥獣被害からの農作物保護や、トラクタなどの農業機械に設置したセンサで故障検知を行いメンテナンスコストの削減をめざす。
さらに、地球シミュレータに代表されるスーパーコンピュータを用いた広域的な気象シミュレーションに、エッジコンピューティングによる地域に特化した気象シミュレーションを組み合わせることで、より高度な気象予測を行う。これにより、長期の日照時間・雨量のシミュレーションによる収穫量予測や1週間以内の局地的な天候予測による収穫日などを予測し全体作業管理などを行えるようにする。
水・環境インフラ分野においても、センサを設置して機械類の故障検知を行い稼働率の向上を図るなど、ビッグデータ活用による新たな価値創出に取り組む。

写真21

写真21 ドローンと連携して、野生鳥獣を威嚇して追い払うロボットのデモ展示

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写真22 ディスプレイ前に見えるアンテナやガイダンス装置、IoTコンセントレータをトラクタに設置する

改正個人情報保護法を見据えた「匿名加工情報」の作成と作成支援をします(セキュリティ)

現行の個人情報保護法が2005年4月に施行されてから12年が過ぎ、当時は想定されていなかった課題が顕在化するようになった。こうした状況を踏まえ、改正個人情報保護法が2017年5月に施行される。この改正個人情報保護法において、注目されている変更点として「匿名加工情報」があげられる。
匿名加工情報とは「個人を特定・復元できないように加工した個人情報」のことで、一定の条件を満たせば本人の同意なしに自由に利用することができる。これにより、匿名加工情報を活用した、サービス創出や利便性向上が期待されている。
この研究では、匿名加工情報の作成にあたり、これまで一般的に用いられてきた匿名化手法である「k-匿名化」ではなく、独自に開発した「Pk-匿名化」という手法を用いている。
「k-匿名化」では、データの「削除」(例えば特定できないよう名前を削除する)や「置き換え(一般化)」(例えば住所を都道府県表示までにする)という主に2つの技術で匿名加工を行う。一方、「Pk-匿名化」では、これらの技術に加えて、「置き換え(変更)」(住所を別のものに変更する)という、独自技術が盛り込まれている点が特長となる。
この「Pk-匿名化」の研究を進め、今後明確化される匿名化加工の基準を満たしつつ、匿名性と有用性を両立する匿名加工情報の作成をめざしている。

図3

図3 匿名化加工のイメージ

2020とその先の未来を支えるネットワーク

本エリアでは、豊かな未来の共創へ向けて、NetroSphere構想に基づいた即応性、柔軟性に富む多様なネットワーク関連技術やクラウド関連技術の展示が行われた。

写真23

写真23 「2020とその先の未来を支えるネットワーク」のテーマパネル

柔軟なネットワークがビジネスコラボレーションを加速します(サービス共創ネットワーク)

デバイスの多様化やIoT技術の進展など、サービス事業者を取り巻くビジネス環境はさまざまな変化への対応が必要となっている。
この研究は、こうした現状にサービス事業者が適応していけるような柔軟なネットワークを提供することをめざす。具体的には、次の4つの機能を組み合わせて実現する。

1.サービス事業者が行っている複数のネットワーク事業者の申し込み・設定などを、ワンストップオペレーションが一元的に受け付ける一括制御機能
2.よりダイナミックでさまざまなサービスを柔軟に実現するNWスライス機能と、スライス振り分け機能
3.安心安全なネットワークを実現するための、セキュリティ一元管理・運用機能
4.全研究所の技術をAPIとして試用することで、タイムリーかつ低コストなサービストライアル環境を実現できるサービス試験開発の場「アトリエN」機能

これらにより、複数事業者のネットワーク/クラウド、サービスをマッシュアップした新規サービスの提供や、サイバー攻撃リスクから顧客情報を守る革新的なネットワークセキュリティサービスを提供することが実現可能となる。

図4

図4 サービス共創ネットワークの概念図

汎用品で柔軟ネットワーク ホワイトボックスもOK!「マルチサービスファブリック:MSF」(ネットワークの高度化・効率化を支える技術)

スケーラビリティに富んだ新しいネットワークを提供する技術「マルチサービスファブリック:MSF」。今回新しく展示された、ホワイトボックススイッチ上で実装されたMPLS機能が来場者の注目を集めていた。
「ホワイトボックススイッチ」は、ハードウェア上で、ソフトウェアを自由に選択・開発できる汎用的な通信装置のこと。キャリアのネットワークの仮想化にはMPLS技術を用いた転送が不可欠となるが、MPLS機能はこれまで市中のホワイトボックススイッチに本来備わっていたにもかかわらず利用できなかった。
本研究では、ホワイトボックススイッチ上のMPLS機能を利用可能にするソフトウェアを研究所で開発したことにより、ホワイトボックススイッチでTbps級の仮想化ネットワークを構築できる可能性がある。ネットワークの構成装置の汎用化および部品化をめざすNetroSphere構想の実現に向けて大きく進んだことになり、キャリアネットワークの仮想化の加速により、多様なサービスの迅速かつ高信頼、低コストでの提供が可能となる。

写真24

写真24 汎用品を最大限に活用して実現したホワイトボックススイッチ

保守者ノウハウを学習して障害箇所をすぐに見つけます(ネットワークの高度化・効率化を支える技術)

従来の大規模ネットワークにおける障害対応は、アラームの分析、導通試験による障害箇所の切り分けなど、多くの作業の品質が保守者のスキルに依存してしまう傾向にあった。
この研究は「自動障害箇所推定技術」と呼ばれ、属人化していた障害対応のノウハウをルール化し、障害箇所を可視化することで、これまでは数時間〜数日を要していた分析・切り分け作業時間を大幅に短縮し、障害復旧の迅速化による保守業務の負担軽減(OPEX削減)をめざす。
この技術の肝となるルール化は、保守者が日々行っている障害対応を蓄積して学習させているが、数が増えることで精度が向上する。また、ルールの学習に必要になる、アラームの特徴点の抽出にはNTTが開発したAI技術「corevo」を用いて自動化している。
今後は、キャリアやデータセンタ、大学といったさまざまなネットワークでの実運用をめざす。また、将来的にはネットワーク同士でルールを共有可能なクラウド型サービスの提供も検討している。

写真25

写真25 可視化され、候補として提示された障害箇所

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写真26 蓄積されたルール一覧の例

未来を切り拓く基礎研究

本エリアでは、物理性能の極限追求・新原理の創出と地球環境・人にやさしい技術の研究開発により、社会に変革をもたらすことをめざす基礎研究の展示が行われた。

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写真27 「未来を切り拓く基礎研究」のテーマパネル

光を使って難問を解く量子ニューラルネットワーク

量子ニューラルネットワークは、光パラメトリック発振器(OPO)を用いた、現行のコンピュータとはまったく異なる方式のコンピュータ。近年の社会課題と同じように多数ある選択肢の中から最適なものを選び出す、「組み合わせ最適化問題」と呼ばれる難問を高速に解くことができる点が特長。
展示では、この量子ニューラルネットワークを用いて、組み合わせ最適化問題の一種である、2000ノードのMax-Cut問題を1万分の1秒以下の時間という短時間で算出する仕組みについてのデモと説明が行われていた。
創薬における候補化合物の探索や通信ネットワークのリソース最適化時等も組み合わせ最適化問題と同様の計算モデルが利用できるため、こうした分野での開発に効果を発揮することが期待されている。

図5

図5 量子ニューラルネットワークの仕組みとMax-Cut問題

インタラクティブ技術体験

変身歌舞伎

歌舞伎をテーマにした、さまざまなインタラクティブ技術を体験できる展示。
ブースに入ると最初に目に飛び込んでくるのが、明るさの動き情報をプロジェクタで投影すると、対象が動いているように見える「変幻灯」を応用したもの。歌舞伎のお面に「変幻灯」の技術を適用することで、お面の表情が変化しているように見える。一昨年の展示では絵画などの平面への投影だったが、昨年より表面が立体的なものにも動きをつけられるまで研究が進んでいる。
続いて、顔に隈取りのあるお面をつけた様子を撮影すると、そのあとはお面を外しても、隈取りが素顔に表示される体験ができる展示。撮影した画像と顔を単純に合成しているのではなく、高精度に立体物を認識・検索する「アングルフリー物体検索技術」で認識した隈取りの特徴をAR重畳という手法で表示しているため、口を開けたり、顔の向きを変えたりすると、隈取りの模様もそれに追随する。
最後に、大きな顔型模型で目を引いたのが、AX(Amplified eXperience)。AXは、特徴を強調することにより、見る人にインパクトを与える技術。この前で撮影したお面の画像を壁に設置された顔型模型にプロジェクションマッピング技術で投影したあと、歌舞伎の見得など、さまざまな表情に変化させ、多くの来場者の注目を集めていた。

写真28

写真28 「変幻灯」で上2段に並んだお面の表情が変化する

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写真29 お面を持って撮影すると(左)、素顔にお面の隈取りが合成して表示される(右)

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写真30 壁に設置された大きな顔型模型(左)に、隈取りされた顔が投影され、表情を変化させる(右)

「Mixed Reality技術」による新たなスポーツ体験の提供

この展示では、「高臨場映像技術」、「触覚技術」、「機能素材hitoeによる生体情報収集・解析技術」といった技術を応用した「Mixed Reality技術」をスポーツで体験できた。
サッカーのゴールキーパー体験やロードバイクの共有体験がある中、ひときわ多くの来場者の注目を集めていたのが、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手が実際に打ったサーブをVR(仮想空間)で体験できる展示。
錦織選手が来日中に撮影・収集したデータを元に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)越しで錦織選手のサーブにVRで挑戦する。奥行変化の少ない錦織選手は「実写」で、奥行変化の大きいテニスボールは「CG」でという2つの画像を合成し、ボールの軌道とラケットの振りから当たり具合を段階的に判定(Excellent〜Bad)していた。
また、当たったと判定されたときに、ラケットに装着された装置から振動を感じるのはもちろん、腰に巻いたベルトにも振動装置がついており、身体にもラケットの反動が振動として感じられるようになっており、非常にリアルな体験を行うことができた。

写真31

写真31 実際に錦織選手が打ったサーブを体感できた

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