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R&Dマガジン

R&Dフォーラム開催報告

『NTT R&Dフォーラム 2018』開催報告
〜デジタル技術が彩る未来へ〜

NTT研究所の研究成果を紹介する「NTT R&Dフォーラム2018」が、2月22日(木)〜23日(金)の2日間にわたり、NTT武蔵野研究開発センタ(東京・武蔵野市)で開催された。
今回は、「デジタル技術が彩る未来へ」をコンセプトに、代表取締役社長の鵜浦 博夫、代表取締役副社長 研究企画部門長の篠原 弘道両氏による基調講演のほか、将棋棋士の羽生 善治氏による「AI時代の未来」と題した特別講演、3つのワークショップが行われた。
展示会場では、「メディア&UI」、「corevo」、「IoT」、「ネットワーク&セキュリティ」、「基礎研究」という、5テーマの研究成果が展示され、多くの来場者の注目を集めていた。本稿では、展示の中から、特に注目を集めていた研究をピックアップしてレポートする。

写真1

写真1 来場者でにぎわう「NTT R&Dフォーラム2018」会場受付

メディア&UI

「メディア&UI」というメインテーマを、さらに「新たな価値を創るメディア技術」、「202Xを彩るUI技術」という2つのサブテーマに分け、臨場感溢れるユーザ体験を実現するメディア処理関連技術や、一人ひとりに適したサービスを実現するユーザインタフェース関連技術の展示が行われた。

Kirari!のすべて「時空間を超える感動の共有」(新たな価値を創るメディア技術:D01)

2015年の発表以来、毎回斬新なデモで来場者の注目を集めてきた、超高臨場感通信技術「Kirari!」。今回のデモ展示は3部構成で行われた。
最初は、離れた場所の人や空間を、距離を超えてリアルタイムに伝送する「BEYOND DISTANCE」と名付けられたデモが実施された。本デモではオリンピック冬季競技大会が開催されていた韓国・平昌と日本・東京を高速ネットワークで接続し、Kirari! の通信技術を用いて平昌にいるレポーターが東京の会場に現れて日本代表選手団を応援する様子が紹介された。
続く「BEYOND FRAME」では、元オリンピック選手の高橋 大輔氏によるフィギュアスケートの実演がKirari! の要素技術を用いて行われた。本デモでは、アイスリンクに複数台配置された4Kカメラ映像をリアルタイムに合成した超ワイド映像を用いることで、アスリートの動きをすべてつかむ視聴体験を体感できる。また、映像に合わせてデモ会場の照明を同期させることで、映像内の演出が飛び出しているような臨場感を実現し、アスリートの卓越した動きを映像の枠を超えて表現した。
さらに、「BEYOND TIME」では、演出振付家MIKIKO氏が率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」によるダンス実演により、過去の自分と現在の自分という、本来なら共演できない者同士の共演が行われた。4Kカメラ映像から人物だけをリアルタイムに抽出し、その映像の再生時間をコントロールして投影することで、少し過去のダンサー自身のダンスと現在のダンサーが共演するという全く新しい演出が披露された。

写真2

写真2: 韓国・平昌にいるレポーターを東京・武蔵野のデモ会場に伝送する「BEYOND DISTANCE」

写真3/写真4

写真3 左: 目の前にスケートリンクがあるかのようなワイド映像でアスリートの動きの全貌がつかめる「BEYOND FRAME」
写真4 右: ダンサーが数秒前に踊った自身のダンスと共演する「BEYOND TIME」

歌舞伎シャウト:歌舞伎文化「大向う」の新感覚空間を作ります(新たな価値を創るメディア技術:C01)

新たな歌舞伎鑑賞の提案をめざして行っている、松竹株式会社とNTTによる共同実験の一環となる「歌舞伎シャウト」のデモ。
歌舞伎では、役者が見得を切っているときなどに、観客が演じている役者の屋号などを大きな声で呼びかけ、芝居を盛り上げる「大向う」という慣習がある。たとえば、「成田屋」や「播磨屋」といった大向うが有名なものとして挙げられる。
しかし、大向うは声をかけるタイミングがずれてしまうと芝居を台無しにしてしまうことがあるため、よほど歌舞伎の観劇経験の豊富な人でないと大向うをかけるのは難しく、気が引けてしまう人も多い。
本展示では、設置されたメガホンに大向うをかけると、音声認識により大向うが文字となって役者へ飛んでいき、擬似的に大向うをかける体験をすることができる。画面に投影された仮想の歌舞伎俳優が相手なので気軽に大向うを楽しめるうえ、大向うをかけるタイミングが良いと画面上の役者が喜んでくれるという面白さもある。また、インテリジェントマイクにより騒がしい空間における大向うの確実な音声認識を実現したうえ、リアルタイム波面合成技術の利用によって大向うが観客の身体を通り抜けていくような感覚を体験することもできる。
最初は恥ずかしそうに声をかけていても、歌舞伎役者が喜ぶ様子を見ようと、夢中で何度も声をかける来場者も多く、ゲーム感覚で大向うという歌舞伎の文化を楽しめる展示となっていた。

写真5/写真6

写真5 左: 来場者は画面前に設置された疑似メガホンのトリガーを引きながら大向うをかける
写真6 右: かけた大向うは屋号に変換され、ステージに向かって移動していく様子が床に表示される

Swarm Arena:新たなスポーツ観戦体験を創造します(202Xを彩るUI技術:C02)

オーストリアに拠点を置く世界的なクリエイティブ・文化機関であるArs Electronica futurelabとNTTによる共同研究の一環である「Swarm Arena」の展示。Swarmは「群れ」を意味する英単語で、ボットやドローンの「群れ」により、新たなスポーツ観戦体験の創造をめざす。
展示では、六角形の映像ディスプレイを搭載したボット「グランドディスプレイボット」を利用した、「Virtual Arena」、「Augmented Arena」という2つのコンセプトデモが行われた。グランドディスプレイボットは六角形なので、それぞれのボットを蜂の巣のように連結させたり分離させたりして、目的に合わせた柔軟な情報提供を行うことが可能となる。
「Virtual Arena」は、遠隔地で行われているスポーツを「仮想観戦」するコンセプト。たとえば、遠隔地で行われているスポーツ選手の動きをグランドディスプレイで表現することで、物理的な動きとして観戦できる。
「Augmented Arena」は、目の前で行われているスポーツを「拡張観戦」するコンセプト。たとえば、走り幅跳びの記録をグランドディスプレイボットが着地点に1列に並んで表すことで、観戦をより拡張された形で体験できる。
動態展示はなかったものの、「フライングスクリーンボット」と呼ばれるドローン型ボットのSwarmにより、空中にディスプレイを構築し情報を表すこともできる。

写真7/写真8

写真7 左: グランドディスプレイボットが遠隔地のサッカー選手の動きを表現する「Virtual Arena」
写真8 右: グランドディスプレイボットが走り幅跳びの選手の記録をプレイバックする「Augmented Arena

多様な「ぶるなび」端末で、豊かな情報を伝える社会をめざします(202Xを彩るUI技術:F01)

NTT R&Dフォーラムの定番として、これまでもさまざまな形でデモを行ってきた「ぶるなび」の展示。
ぶるなびは、特殊な非対称振動によって「引っ張られる」感覚(牽引感覚)を生成する技術で、ナビゲーションやVRを応用したエンターテイメントなど、幅広い用途で利用が検討されている。
今回の展示では、「指先駆動型」と呼ばれる新方式の導入により、従来型よりも感覚の明瞭化と装置の小型化を実現した、新しいぶるなび(B4FF)が紹介された。また、モジュールが共通化され、歩行時のナビゲーションやVR(Virtual Reality:仮想現実)を利用したエンターテイメントまで、柔軟に対応することが可能となった。
デモでは、スマートフォンのぶるなび連携アプリで方向を指示すると、ぶるなびデバイスでその方向に引っ張られる感覚が得られるのを利用したナビゲーションの活用例や、スマートフォン上のアプリに映ったドライブシーンに合わせて左右にハンドルが回されたり加減速したりする感覚を楽しめるエンターテインメントの活用例が紹介された。

写真9/写真10

写真9 左: アプリで方向を指示すると(左)、デバイスがその方向に引っ張られるように感じる(右)
写真10 右: 端末に表示されたドライバ視点の映像に合わせ、カーブなどでの遠心力を感じる

corevo

「corevo」というメインテーマを、さらに「人を支えるAI」「社会を支えるAI」「corevoを支える基盤技術」という3つのサブテーマに分け、新たな価値創造を実現するNTTグループのAI関連技術「corevo(コレボ)」に関連する展示が行われた。

機器の異常音監視システムが日々賢くなります(人を支えるAI:F09)

設備の保守保全や製品検査は、異常の見逃しが人命にかかわることもあるため、高い精度が求められる。しかし、目視での確認では見逃しを完全に排除することは困難なうえ、検査に多くの時間が必要となる。
この研究では、設備や製品などを動作させたときの「音」で異常を検知する。機器の異常な動作音を検知することで、工場設備の保守保全や製品検査の自動化・効率化を実現する。
これまでの機器の正常な動作音を収集するだけで機器の異常な動作音を検知する技術に加え、過去に異常と判断された機器や製品の動作音を追加学習して異常検知精度を向上し、見逃しの再発防止を可能にする新機能が追加された。
異常音を蓄積していけばそれだけ精度が向上していく点が、本研究の特長として挙げられる。さらに、単に音を収集するだけで検査できるため、検査対象の設備や製品に合わせた特別な装置を開発する必要がなく導入コストも低く抑えられる。

写真11/写真12

写真11 左: 工場の製品検査を想定したデモ
写真12 右: 製品を動作させ、データベース内の異常音と合致すると異常と検知する

AIタクシー:未来のタクシー乗車需要を予測します(社会を支えるAI:E11)

タクシーは、乗りたい人(需要)と人を乗せたいタクシー(供給)を効率良くマッチングさせるのが難しく、その傾向は電車遅延やイベントなどの突発的な需要が発生したときに、より顕著となる。また、タクシー運転手の経験や勘によっても乗車率にばらつきが出やすいといった問題もあった。
AIタクシーは、NTTドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成される人口統計(モバイル空間統計のリアルタイム版)、タクシーの運行データ、気象データ、施設データなどを、NTTのAIシステム「corevo」で解析することにより、タクシーの乗車需要を予測して配信する。
主に以下の4つの情報が配信される。
 1) 営業区域500m四方のエリアごとのタクシー乗車台数の予測値
 2) 乗客獲得確率の高い100m四方のエリアの情報
 3) 乗客獲得確率の高い進行方向
 4) 普段よりも人口が多い500m四方のエリア情報
AIタクシーは、東京23区・武蔵野市・三鷹市を営業エリアとするタクシー会社協同組合である東京無線と連携した実証実験を2016年に行っており、実験期間の4ヶ月で売上向上を確認できている。
また、名古屋市を営業エリアとするつばめグループと連携し、タクシー配車最適化システムの実証実験も行っている。

写真13/写真14

写真13 左: 人の流れからブロックごとのタクシー需要を数値化
写真14 右: AIタクシーの数値を近隣にいるタクシーの位置情報とともにマッピングしたつばめグループのカーナビ

Deep Learningを短時間で低コストに行います(corevoを支える基盤技術:E15)

昨今、さまざまな分野の業務にAI(人工知能)が導入され、大きな話題を呼んでいる。AIそのものは1950年ごろから研究されてきた技術で目新しいものではないが、最近になって注目されるようになった要因としてDeep Learning(深層学習)と呼ばれる機械学習系の技術が開発されたことが大きい。
Deep Learningは、人間の脳神経のニューロンを数理モデル化したニューラルネットワークを多層化したもので、入力されたデータの特徴を自ら解析して、音声、画像、自然言語の問題解決に大きな効果を発揮する。ただし、Deep Learningには、学習結果の不安定さや、学習に膨大な時間が必要になるという問題もある。
この展示で紹介されていたのは、こうした問題の解決をめざした技術で、Deep Learningの学習の安定化と高速化を実現できる。学習の安定化には、学習時に更新量が激増する個所を回避することによりモデルの挙動解析を安定化させることができる。また、高速化には、過去の更新を元に効率的に探索するよう、重みの更新方向に着目した高速化を行うことにより2〜5倍の高速化を実現している。

写真15

写真15: NTTが開発した開発した技術(左)を利用すれば、既存の技術(右)よりも学習時間が最大で1/5となる

IoT

「IoT」というメインテーマを、さらに「Sense, Connect & Drive」、「Data & Software Logistics」、「Analytics & Prediction」という3つのサブテーマに分け、今バリューパートナーとしてお客さまのビジネスを加速するIoT関連技術の展示が行われた。

ウェアラブル血糖センサ:終日モニタリングで健康管理します(Sense, Connect & Drive:G03)

血糖値は年1回の健康診断時に計るだけ、という人は少なくない。しかし、血糖値は1日の中でもさまざまな要因によって変化している。平常時は正常値の範囲内でも、食後に血糖値が急上昇して異常値となっていることもある。そのため、健康診断で行われる空腹時の検査だけでは血糖値の異常に気づかず、症状が進行してしまうことがある。
こうした状況を打開する可能性を秘めているのが、この「ウェアラブル血糖センサ」。最大の特長は、「針を刺さずに血糖値を計測できる」こと。従来の指に針を刺す血糖測定は精度の高い計測が行えるものの、連続測定が困難という課題があった。その点、ウェラブル血糖センサは、連続測定によって「隠れ糖尿病」の早期発見や、生活習慣病の予防につなげることができる。
針を刺さなくても血糖計測が可能なのは、「光音響」と呼ばれる技術を利用しているため。光信号を身体の計測部分に送ると、血糖量に応じて異なる電気信号が返ってくるのを利用して、血糖量を測定するという仕組みで計測している。
現在は、光音響技術による血糖計測の精度について実証実験を行っており、今後は、より快適な装着方法や小型化などの開発を進めていく。

写真16

写真16: ウェラブル血糖センサの利用イメージのデモ

畑作用AI除草ロボット:作物を踏まずに雑草の生長を抑制します(Sense, Connect & Drive:G05)

画像認識、ロボット制御、Deep Learning(深層学習)といったAI技術を利用して、畑作の除草を行うロボットの展示。
除草作業は手間のかかる作業であるため、ロボットなどの機械で自動的に行えるのが理想的だが、除草時に肝心の作物を傷めないようにしないと本末転倒となる。また、作物は曲がっていたり等間隔でなかったりするため、単純な仕組みでは実現が難しい。
この「畑作用AI除草ロボット」は、ロボットに取り付けられた単眼カメラで撮影した画像からAIを利用して作物の列をリアルタイムに画像認識し、作物を避けるように操舵角を制御することにより、作物を踏まずに走行させることができる。除草機構はロボット後部にアタッチメントとして取り付け、走行しながら掻きだすことで雑草の生育を抑制する形で除草を行う。
現在、実証実験を行っており、今後は作物間(株間、条間)に生えた雑草の除草など、現在の仕組みでは対応できない課題に取り組む。

写真17

写真17: ロボットそのものはまだプロトタイプ段階

コネクテッドカーへのサイバー攻撃を検知します(Data & Software Logistics:F12)

コネクテッドカーとは、広域通信ネットワークに接続し、遠隔のサーバなどと連携する機能を搭載した自動車のことである。車両の状態や周囲の状況に関するデータをセンサで収集してエッジやクラウドのサーバで分析したり、その結果を自動車の制御システムにフィードバックしたりすることで、これまでの自動車とは異なる付加価値(自動運転の実現、最適な経路決定による渋滞の緩和など)を生み出すものとして期待されている。
その反面、ネットワークに接続することにより、コンピュータと同様、外部からのサイバー攻撃を受けるリスクも高まる。たとえば、攻撃者によりネットワーク経由で自動車を制御している電子部品のファームウェアが書き替えられ、自動車を乗っ取られてしまうといったことが起こる可能性がある。
この展示で紹介されていたのは、コネクテッドカーがサイバー攻撃を受けたとき、自動車内の異常な通信をリアルタイムに検知する技術である。異常検知は、機械学習を用いたAIで正常な通信状態を学習しておき、それ以外の通信が行われると異常な通信と判定する仕組みで実現している。
デモでは、実際の車と同じ車載通信プロトコルで制御できる2台のRCカーを使用し、攻撃者からの不正な制御命令を含む異常な通信を受けたときに、異常検知機能のないRCカーが制御不能な状態に陥るのに対し、異常検知機能を備えたRCカーでは、不正な制御命令を検知したあとに動作を停止させることで安全が保たれる様子が説明された。

写真18

写真18: 異常検知機能の有無によってRC カーの挙動の違いがわかるデモの様子

エッジコンピューティング技術を用いた次世代船舶IoTプラットフォーム(Data & Software Logistics:G14)

日本郵船株式会社(NYK)では、運航状態や燃費、機器の状態など、毎時間の船舶データをモニタリングして船と陸上で情報共有する船舶IoTプラットフォーム構想を掲げている。本構想では、船上の機器などから収集されたデータは、海事業界用のデータセンタ「ShipDC」に集められ、海事業界全体におけるビッグデータの活用機会を最大化することをめざしている。
しかし、船陸間の通信には主に衛星などの狭帯域通信が使われており、通信が途絶することもあるうえ、船内データの全てを陸上のデータセンタに送れるとは限らない。そのため、船舶の安全・効率的な運航を促進するためには、収集した詳細なデータを船上で分析/活用する環境の整備が重要である。
本展示は、船舶IoTプラットフォームに対して、NTTのエッジコンピューティング技術を活用するものである。具体的には、IoTデータ交流技術を利用して船内機器からのデータを船上のエッジサーバに収集し、エッジサーバ上で動作するアプリケーションが詳細データを活用することを可能とした。また、アプリケーションに新機能や更新が必要になったときには、NTTのアプリケーション配信管理基盤によって陸上から船上に随時ソフトウェアを配信し、その状況を管理できるようになるため、船上のIoTデータ活用環境を継続的に進化させることが可能となる。
このNTTのエッジコンピューティング技術を活用した次世代船舶IoTプラットフォームは、NYK、株式会社MTI、NTT、NTTデータの4社が連携し、2017年9月からNYKグループの内航船「ひだか」で行っていた実証実験で成功を収めており、今後の実用化が待たれる。

写真19

写真19: 船舶上でのIoTプラットフォームの動作イメージ

ネットワーク&セキュリティ

Deep Learningを活用し検知しづらい故障に迅速に対処します(スマートなネットワーク運用の実現:H03)

Deep Learning(深層学習)を異常検知に用いることで、閾値などのルールベースによる検知では見逃されていたサイレント故障などの検知を可能にするとともに、切り分け時間を短縮することで故障によるサービス影響を抑える技術の展示。
従来のICTシステムに対する異常検知では、CPU使用率などのリソース情報やトラヒック量などに対して、あらかじめ閾値などのルールを設定しておき、ルールに該当した場合に異常として通知するルールベース方式を利用しているものが多い。
しかし、ルールベースによる異常検知では、リソース情報などの大量の数値情報に対して異常を検知するルールを作成して監視する必要があるため非常に大きな手間がかかるうえに、設定したルールに該当しない未知の故障あるいはサイレント故障などには対処できないという問題がある。
この技術では、ルールを用いるのではなく、平常時のネットワークの状態をDeep Learningで学習しておき、ネットワークが平常とは異なる状態になったことを検知することで異常として通知する。そのため、ルールには該当しないような未知の故障やサイレント故障も平常時の状態との乖離から検知できる。
また、要因推定技術を用いて異常に寄与しているパラメータを特定することにより、これまで故障個所の切り分けにかかっていた時間を短縮し、故障によるサービス影響を小さくできる点も特長となっている。

写真20

写真20: Deep Learningによって平常時のネットワーク状態を学習し、乖離具合によって故障を検知する

予兆検知技術でプロアクティブ大容量光ネットワークを実現します(ネットワークの高速化を支える技術:H19)

大容量光ネットワークを実現するためには、大容量伝送に対応した高性能なデバイスとそれを支える技術が不可欠となる。
また、高性能な光送受信デバイスに加え、長距離の光ファイバを伝送したときに顕著になる波長分散や偏波分散の影響、デバイスの温度変化に伴う特性変化など、さまざまな光信号劣化にも対応する必要がある。デジタル信号処理によりこうした光信号の劣化に対応して通信の信頼性を保つデバイスがDSP(Digital Signal Processor)で、このDSPにより大容量伝送と伝送距離伸長が可能となる。
この展示は、フレーマを統合したDSPがこれまで伝送後の光信号を補償するために使用していたモニタリング技術を、故障の検知に応用するもの。故障したデバイスが直前にどのような通信を行っていたのかをDSP内でモニタされているデータを調査して蓄積していくことで、従来検知できなかった故障をその予兆段階で検知し、故障後保守から予防交換のようなプロアクティブ保守への転換を実現する可能性がある。
今回はコンセプト展示で、DSPのモニタリング機能で得られた情報を予兆検知に利用する具体的な方法は、今後の研究課題となる。

写真21/写真22

写真21 左: 最先端の変復調技術による1Tbps級の大容量伝送と400Gbps伝送距離伸長を実現するDSP
写真22 右: 大容量かつ柔軟な光ネットワークを実現する光送受信デバイス

人と通信の振る舞いによりあらゆる不正アクセスを許しません(柔軟・効率的なネットワーク:H36)

人や通信の振る舞いを分析する他企業の技術とNTTの技術を組み合わせることにより、不正アクセス対策を行う技術の展示。
人の振る舞いは、端末の操作方法などを指す。たとえば、スマートフォンのスワイプのやり方も人によって異なる。また、通信の振る舞いは、ネットワーク上での行動などが挙げられる。たとえば、ECサイトであれば、普段の買い物の個数や金額などにも人それぞれの特徴がある。
こうした人と通信の振る舞いに、NTT独自の不正アクセス分析精度向上技術を組み合わせて判別を行うことで、従来の技術よりも高い精度で不正アクセスを検知可能となる。
パスワードなどとは異なり、振る舞いは他人が盗むのは難しく、本人も意識せずに認証できる。そして、それらの情報を複数組み合わせて判定することで識別精度を高めている点が本研究の特長となっている。

写真23/写真24

写真23 左: 振る舞いを登録済みの本人が操作すると「正常」と判定される
写真24 右: 振る舞いを未登録の他人が操作すると「異常」と判定される

ブロックチェーンで企業の枠を超えた適切な情報連携を可能にします(IoT/AI時代におけるセキュリティ:H44)

ブロックチェーン技術は、暗号通貨の先駆けかつ代表格であるビットコインを支える中核技術として提案された、P2P(Peer to Peer)型のネットワークで非中央集権的に取引の台帳を形成するための技術である。従来からの集中管理によらずに信頼性を確保するため、あらかじめ定められた規則により台帳の正しさをそれぞれが検証可能なうえ、緩やかな同期により、それぞれが完全な台帳を保有する点に特徴がある。また、それぞれが保有する台帳を同時に改ざんすることが困難なため、構造的な改ざん耐性も有している。
ただし、通常のブロックチェーンのままでは、参加者全体に取引の情報を公開することが前提となるため、企業間の情報連携での利用を促進するためには適切なアクセス制御を実現することが課題となっていた。
本研究では、暗号化技術を利用したアクセス制御用のモジュールやその設定情報を適切に配置することで、証拠性や非中央集権性というブロックチェーンの特性を活かした細やかなアクセス制御を実現している。また、特定のブロックチェーン実装に依存しない方式として作られており、複数の実装で利用が可能である。
展示では、サプライチェーンにおける一場面として、ある会社の見積もりを複数社に依頼した場合の情報連携を例に、依頼元の会社はすべての情報にアクセス可能、受注会社は受注に関連する情報にだけアクセス可能、見積もりを提出したが受注できなかった会社は受注会社がどこかという情報だけにアクセス可能など、個別のアクセス制御を実現して企業間の情報連携にブロックチェーンを利用できることを示すデモが行われた。

写真25

写真25 非中央集権性を担保したブロックチェーン向けアクセス制御方式

写真26

写真26: サプライチェーンにおける見積もりにおいて適切な情報だけを参照可能にするデモが行われた?

基礎研究

未来を拓く基礎研究や地球環境・人にやさしい技術の研究開発により、社会に変革をもたらすことをめざす先端研究の展示が行われた。

自由特徴点画像生成:深層学習で顔の属性を編集・生成します(B03)

深層学習(Deep Learning)で得られた情報を元に、属性を制御することで画像内の顔の表情を変化させる研究。
たとえば、画像の表情を笑顔に変更するなら、従来の方法では「口角を上げる」といった、人間が考える笑顔の条件を画像に与えて加工する必要があった。しかし、本研究の方法は、複数の画像データから笑顔を構成している特徴を深層学習で抽出するため、人間が条件を与える必要がない。また、抽出された特徴は数値化された属性となるため、笑顔度合いの調節や、他の属性とのブレンドも可能となる。
生成モデルには、従来の「GAN」(Generative Adversarial Network)という手法をベースにNTTが改良した「CFGAN」(Conditional Filtered GAN)を使用しており、生成器に属性の潜在変数、フィルタリング構造を導入することにより、簡易な情報から属性の詳細な表現を獲得できるようになっている。

写真27

写真27: 画面中央のスライダを動かすと性別、笑顔度、年齢などを加味された表情に変わる

土に還る電池と回路:回収困難なセンサはどうすればよいか?(B05)

IoTの普及とともに、昨今はあらゆるものにセンサやデバイスが搭載されるようになっている。しかし、たとえば鳥インフルエンザの感染経路の調査などで渡り鳥にセンサをつけた場合など、調査対象によっては使用後にセンサを回収できないことも多くなっている。そして、そうしたセンサやデバイスに搭載されている電池はそのまま自然に残ったままとなってしまい、電池内の有害物質で環境に悪影響を及ぼしてしまうことが懸念されている。
本研究では、自然に分解される素材を利用することで、環境に害を与えない電池を開発することをめざす。電池を構成する素材に肥料成分や生分解材料だけを使用しており、時間とともに分解されるため、使用後に回収できなくても環境に影響を与えない。
今後は、出力電力や電池容量などの性能向上を行いながら、現行の電池よりも高めとなっている製造コストを低減させることが研究課題となる。

写真28

写真28: 内部に水が染み込むと発電する

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