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R&Dマガジン

R&Dフォーラム開催報告

『NTT R&Dフォーラム 2016』開催報告
Open the Way〜2020とその先の未来へ〜

NTT研究所の研究成果を紹介する「NTT R&Dフォーラム2016」が、2月18日(木)〜19日(金)の2日間にわたり、NTT武蔵野研究開発センタ(東京・武蔵野市)で開催された。
今回は、「Open the Way〜2020とその先の未来へ〜」をコンセプトに、代表取締役社長の鵜浦 博夫、代表取締役副社長 研究企画部門長の篠原 弘道両名による基調講演のほか、国立情報学研究所 教授であり社会共有知研究センター センター長の新井 紀子氏による特別講演、ワークショップが行われた。
本年は下記の5つのテーマごとに、数多くの研究成果が紹介された。本稿では、多くの展示の中から、特に注目を集めていた研究をピックアップしてリポートする。

写真1

写真1 受付横の巨大なサイネージが公式アプリの魅力をアピール

未来を体感!2020の世界

本エリアでは、2020を見据えたコンセプトを具現化し、新しい経験として2020の世界を具体的に体感できるプロトタイプおよび関連技術の展示が行われた。

写真2

写真2 「未来を体感!2020の世界」のテーマパネル

R&DフォーラムShowcase(おもてなし)

R&DフォーラムShowcase」は、2020年を見据えて研究を続けてきた、革新的なUI・メディア技術を応用した情報提示技術やビッグデータ解析を活用した移動支援技術の成果を、R&Dフォーラムの会場を利用して実際に体験することができる試みである。
このShowcaseで中心的な役割を果たしたのが、スマホ(iPhone、Android)にインストールして利用できる「公式アプリ」。講演スケジュール、展示内容、会場地図といった静的な情報はもちろん、後述する「かざして案内」、「混雑マップ」や「Wi-Fi強度マップ」といった機能が、来場者のスマホをR&Dフォーラム案内端末に早変わりさせる。
「かざして案内」は、展示パネルにかざすと、展示内容の詳細、おすすめ動画、周辺マップ、展示パネルなどをスマホ上で確認することができる。NTT研究所が開発した画像認識技術「アングルフリー物体検索技術」が利用されており、前に人が立っていてパネル全体をスキャンできない状態であっても、特徴的な部分さえ見えていればパネルを特定して関連情報を表示することができる。
「混雑マップ」は、どこのブースが混雑しているのかを自身の現在地点とともにリアルタイムに表示してくれるもの。混雑しているブースを後回しにすれば、効率良く会場内を回ることができる。また、この公式アプリに表示されている「混雑マップ」と同様のマップが、場内に設置されたサイネージやエレベータタワーに投影されたプロジェクションマッピングにも表示されているので、会場の状態をどこからでも把握できる。
「Wi-Fi強度マップ」は、会場内で提供されているWi-Fiスポットのうち、どこのスポットがつながりやすいのかを地図上に示してくれるもの。電波の受信強度や通信速度などの情報を随時収集し、変動する無線環境の傾向を把握する「電波環境見える化技術」が利用されている。
会場中央には、運営者向けの混雑マップやWi-Fi強度マップに加え、ネットワークの利用状況や「かざして案内」アプリの使用状況といった、さまざまな情報がマルチコンソールでリアルタイムに表示され、運営時のオペレーションをイメージできる「Showcaseコックピット」と呼ばれるコントロールセンターのデモ展示もあった。
今後は、博物館、美術館、空港、駅などの公共施設での実証実験を通して、Showcaseで利用されていた各技術の実用化を目指す。

関連ニュースリリース:
NTT、2020年に向けた最新技術をR&DフォーラムShowcaseとして具現化
〜「想像していた未来」を目の前で体感〜 (別ウインドウが開きます)

写真3

写真3 上:公式アプリの「かざして案内」でパネルをスキャンすると、パネルの特徴から研究を特定し、関連情報が表示される/下:運営に必要な情報をリアルタイムで一覧表示する「Showcaseコックピット」

■R&DForumShowcase(4分18秒)

VR(Virtual Reality)体験でスポーツトレーニング(高臨場感通信)

本研究では、VR(Virtual Reality:仮想現実)を利用して、実際には立つことができない場所に入り込んだかのような体験を提供する。事前に複数のセンサで実空間の情報を取得しておき、それらを組み合わせることでリアルな仮想空間を構築する。
展示では、バッターボックスから見える風景をヘッドマウントディスプレイ(HMD)越しの仮想空間に再現していた。遠景で奥行き変化が少ないピッチャーは「実写」、奥行き変化の大きいボールは「CG」という2つの画像を合成することにより、本当にバッターボックスに立っているかのような、「リアル」なバッターを体験することができる。ボールが通過したあと振り返ると、キャッチャーのいる位置まで通っていったボールの軌道が確認でき、視線に合わせた立体感がよりリアルさを増していた。
野球以外にも、テニス、卓球、バドミントン、サッカーのPKなど、対戦型スポーツのシミュレーション練習のほか、エンターテインメントとしての利用を想定している。

写真4

写真4 上:HMDをつけると、グラウンドのバッターボックスに立っているかのようなリアルさ/下:ボールの軌道もCGでリアルに再現されている

■VRVirtual Reality体験でスポーツトレーニング(1分51秒)

競技や講演をまるごとリアルタイムに届け感動を共有します「Kirari!」(高臨場感通信)

あたかもその場にいるかのような超高臨場な体験をリアルタイムかつ遠隔で実現する、イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」。
1年前のデモは、あらかじめ収録された卓球のラリー映像を本物の卓球台と組み合わせて表示するコンセプトビデオのような位置付けだったが、今年は別会場で行われている空手演武をR&Dフォーラムの会場内でリアルタイムに再現するという、より実際の利用形態に近い形のデモが行われた。
今回の擬似3Dでのリアルタイム中継は、映像・音声とともに空間的な情報も同期伝送する超高臨場感メディア同期技術「Advanced MMT」、リアルタイムに被写体映像を抽出する「任意背景リアルタイム被写体抽出技術」、広範囲な視聴エリアに少ないスピーカ数で仮想的な音源を臨場感高く定位させる「高臨場音像定位技術」といった技術の開発によって実現されている。また、複数台の4Kカメラを並べて撮影した映像をリアルタイムに補正して、つなぎ合わせる「超ワイド映像合成技術」についてもデモが行われた。
今後は、トップアスリートの競技を世界中のパブリックビューイング会場で再現するなどの利用のほか、演劇、コンサートなどのエンターテインメント、講演やセミナーの中継サービスなど、幅広い用途での利用を目指す。

関連ニュースリリース:
2020年に向け、注目する選手個人を擬似3Dでリアルタイム中継!
〜 イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」の研究開発が進展 〜 (別ウインドウが開きます)

図1

図1 「Kirari!」を支える要素技術

■イマーシブテレプレゼンス技術”Kirari!”を活用したサービス(2分30秒)

騒音下での「聞こえない」、「認識できない」を解決します(高精細映像/音響)

2〜3個のマイクと音響信号処理を組み合わせることによって、100dBという工事現場のような騒音下でも、明瞭な音声通話や高精度な音声認識を可能にする「インテリジェントマイク技術」。
同技術に、口元と側頭部に設置したマイクから入力される音信号を利用して、口元の音のみを強調する処理、フィードバック型の雑音抑圧処理を追加し、クリアな音声を集音可能とした高騒音対応ヘッドセットマイク「R-Talk HS310」として製品化され、展示されていた。作業場所やヘッドセットの装着位置のずれを意識することなく利用できるので、音声コマンドを利用した機器の操作や、作業現場における外部との明瞭な音声通話といった用途での利用を想定している。
加えて、今回は同技術の別の利用例として、卓上マイクと組み合わせ、複数の話者が同時に会話しても対象者の会話内容だけを識別して抽出するデモも行われていた。人間には個別に聞き取るのが難しいような、声が入り乱れたやり取りでも対象者の音声だけを高い精度で識別し、多くの注目を集めていた。
ほかにも、工事現場・アミューズメント施設などの高騒音環境下において、無線機や携帯電話を接続したハンズフリー通話、音声認識と組み合わせた音声入力による作業記録作成、自動車内騒音下でのカーナビ向け音声認識、接客サービスなどのロボット、デジタルサイネージ向け音声認識、音声入力による作業記録作成といった農業のICT化など、さまざまな用途での実用化を目指している。

写真5

写真5 上:製品化されたインテリジェントマイク「R-Talk HS310」/下: 同時に会話をしても、それぞれの話者の会話だけを正確に集音するデモ

社会を変革するAI&IoT

本エリアでは、近年注目が急速に高まりつつあり、かつ社会を変革する原動力となりうるAIやIoTについて、NTT R&Dが考えるコンセプトとそれを実現する関連技術の展示が行われた。

写真6

写真6 「社会を変革するAI&IoT」のテーマパネル

自然な言葉で知りたいことを探せます(Agent-AI)

本研究は、単語や文の意味をベクトル化し、ベクトル空間上の距離で、意味の類似性を判定することにより、自然な言語での問い合わせに対して精度の高い情報を提供するもの。ベクトル化のための基準となる、自然言語を構造化したデータベース(コーパス)は、Web上にあるデータを元に自動生成されるため、手動で作成する必要はない。
展示では、「ブタクサが大量発生した」という問い合わせから、ベクトル空間上で最も距離の近いFAQである「雑草がすぐに生えて困っています」という問い合わせであることを識別するデモが行われていた。
利用シーンは、FAQ検索のほか、コンタクトセンターでのオペレータ支援、ロボットや対話エージェントでのユーザー発話に対する応答などを想定している。

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写真7 上:Webから生成したコーパスがベクトル空間で可視化されている/下:左上の入力された問い合わせに対して、左下に距離が近い順にFAQが表示される

■スムーズな情報提供を実現する発話理解技術(3分13秒)

ロボットやデバイスを連携させたサービスを簡単に実現「R-env: 連舞」(Agent-AI)

「R-env: 連舞」は、プログラミングに関する高度な知識をもたない人でも、実行させたい「アクション」を示すブロックをつないでいくだけで、ロボットやデバイスを連携して動かすサービスを実現できる技術。
開発は、Webブラウザ上のビジュアルなエディタ上で行う。また、JSONという軽量なデータ形式を、WebSocketという双方向通信を行うプロトコルでやり取りすることで、ロボットやデバイスを制御する。こうした、すでに多く普及しているWeb技術を利用することにより、多様なデバイスやWebサービスとの連携が容易となる。
展示では、特定のボタンを押すと、おもちゃ箱ロボットが手前まで移動し、箱からおもちゃを取り出すと別のロボットがあいさつをしたり、遊び終えて片付けるとおもちゃ箱が奥に戻って掃除ロボットが掃除を始めたりといった、複数のロボットを連動させるようなデモが行われていた。こうした、一見複雑そうな処理をさせる場合でも、プログラムはブロックをつなげるだけという簡単さで、慣れれば完成までにかかる時間は数分程度。
今後は、健康機器とロボットを連携させて健康チェックを行う介護分野、カラオケとロボットを連携させるエンターテインメント分野、カメラとロボットを連携させて顧客対応支援を行う窓口業務分野など、さまざまな分野での実用化を進めていく。

関連ニュースリリース:
ロボットやデバイスを連携制御できる技術「R-env:連舞™」のオープンな開発を推進
〜メーカーや開発者、サービス事業者と共に新たなデバイス連携サービスの実現を目指して〜 (別ウインドウが開きます)

写真8

写真8 アクションを示すブロックをマウスでつないでいくだけでプログラムの大部分ができあがる

■クラウド対応型インタラクション制御技術「R env:連舞」(3分4秒)

目の動きからユーザーの「ココロ」を推定します(Heart-touching-AI)

古くからのことわざに、「目は口ほどに物を言う」というものがある。この「いくら言葉でごまかしても目に本心が表れる」という意味のことわざを、科学的に実現したと言えるのがこの研究。
計測した眼球データの、「マイクロサッカード」と呼ばれる無意識に生じる微小な眼球運動と瞳孔径の変化に着目し、独自に考案したアルゴリズムで特徴を抽出する。これにより、顔画像、音楽の好み、注意状態、眠気などを推定することができる。
展示では、微妙に異なる2つの顔画像を数十秒ほど眺めているだけで、被験者がどちらの顔を好みと判断したかを当てるデモが行われていた。単純に見ている時間の長さなどだけから推定するよりもはるかに高い確率で好みを当てることができ、90%超の精度とのこと。
デモで使用していた機材より安価で簡易な計測器具でも一定精度の推定が可能なので、今後はドライバーの注意状態や眠気を推定し、適切なタイミングでアラートを出したり、スポーツ中の眼球データのフィードバックからメンタルコントロールで利用したりすることを想定している。

写真9

写真9 上:画面左端にある2つの顔画像のうち、どちらが好みと判断しているのかを推定する/下:カメラのモニターでマイクロサッカードや瞳孔径を計測する

■眼球運動・瞳孔径に基づくマインドリーディング技術(2分59秒)

集団を快適な巡回スケジュールでナビゲーションします(Ambient-AI)

本研究は、人流計測データと個々の施設利用需要から、集団全体が快適に回遊できるような巡回スケジュールを動的に計算するもの。さまざまなデータ間の時空間相関の数理モデルに基づいて混雑が発生する時間や場所を予測し、待ち時間の平準化と空きリソースを活用することで、顧客満足度の最大化を図る。 展示では、1万人が訪れる模擬テーマパークの32アトラクション(超人気3、大人気4、中人気20、人気5)を「誘導なし」で回ったケースと、「動的巡回誘導あり」で回ったケースで、アトラクション数、待ち時間、満足度などにどのような違いが出るかをシミュレーションするデモが行われていた。動的巡回誘導に従えば従うほど、待ち時間が減り、その分を多くのアトラクションを回ることができるため、結果として満足度も高いものになることが示された。 今後は、観光地、イベント会場、空港、商業施設などで利用することによる顧客満足度の向上や災害避難時の誘導支援などへの展開を目指す。

写真10

写真10 誘導なし(左)と比較して、誘導あり(中)のほうが高い満足度を示した(右)

■時空間予測技術と数理最適化技術による動的巡回スケジュール推薦(4分26秒)

身近なものをつないでコンピュータをつくります「Tacit Computing」(Network-AI)

昨今、「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)が注目を集めており、ネットワークを介して情報を集めることで新たな能力をもつモノが多く登場している。また、巨大で複雑なデータを集めた「ビッグデータ技術」や、多層的に機械学習を行う「ディープラーニング」など、AI(Artificial Intelligence:人工知能)の研究も再び活発になっている。
さらに、この2つの技術を融合して、プログラムが自らの判断で人間の活動を支援したり、代替したりする「自律制御型サービス」と呼ぶべきサービスが登場し始めようとしている。しかし、それは同時に、増え続けるIoTデバイスの管理やAIを使いこなす難しさ、そしてプライバシーの問題なども内包している。
本研究は、こうした問題に次の3つのアプローチで取り組み、「自律制御型サービス」を実現するもので、今回の展示ではそのコンセプトが発表された。

1. Sharing of Things:ネットワーク上のあらゆるモノを共有して利用し、サービスごとのIoTデバイスやAIマシンの設置を不要に
2. 揮発型ビッグデータ活用:ユーザーに関する膨大なデータを解析・学習に利用することで、必要な処理の精度向上
3. エリアセントリック:エリア内だけで処理することで、プライバシー情報の流通をユーザーの近くだけに食い止める

図2

図2 Tacit Computingの概念図

■Tacit computing:分散リソース最適活用技術(3分59秒)

多種センサを活用した工場内作業者支援(IoT)

本研究は、「モノのインターネット」である「IoT」にWeb技術を融合し、「WoT」(Web of Things)としてセンサ情報を扱えるエンジンを提供し、新たな価値創造を目指す。
昨今、広く利用されているWeb技術を利用することで、センサとWeb情報を複合的に扱える管理アプリケーションを容易に開発したり(開発効率性の向上)、スクリプトを差し替えるだけで製造工程の違いを吸収したり(カスタマイズ性の高さ)といった利点を得ることができる。また、クラウド通信によるタイムラグを防ぐため、エッジコンピューティングを活用し、クラウドよりも高速通信を行うことで、低遅延化、接続多様化も実現できる。
展示では、工場内のアーム機械を意図的に揺らすと、それをセンサが検知し、現場担当者のスマホに対応フローを表示させ、対象の機械の写真を撮って送信すると、揺れ方や地震といった関連情報とともに表示することで、スムーズに問題切り分けを行うデモが行われていた。
今後は、工場内でカメラとセンサを連携させた一括監視、工場内作業者の作業支援、本社部門と多拠点工場との情報共有といった利用シーンでの実用化を目指す。

写真11

写真11 工場内の作業者のスマホに対応フローが表示される

■エッジコンピューティングを活用したWoT(Web of Things)(2分45秒)

リアルタイム通信・情報分析でぶつからない車を実現(IoT)

自動車や路肩インフラ設備からの情報を元に、「ディープラーニング」と呼ばれる人間のパターン認識と似た方式を用いる機械学習の結果を自動車にフィードバックすることにより、衝突回避走行を学習し、「ぶつからない車」を実現する研究。
この研究は、NTTがパートナー企業とICTを通じてコラボレーションすることで新たな価値を提供する「新たなステージ」の一環であり、トヨタ自動車株式会社の考える人工知能を使った将来の運転支援のコンセプトを、NTTのエッジコンピューティング技術と高信頼無線技術、Preferred Networks社(PFN)のディープラーニング技術とその分散処理技術の組み合わせにより成り立っている。
展示会場で行われていたのは、CES2016(米国ラスベガス、2016年1月6日〜9日)に出展されたコンセプトデモと同様のデモ。ランダムに走っている複数台のミニチュア電動車をモニターし、その情報を元にエッジサーバー上の人工知能が衝突を回避するための動きを学習して、無線アクセスを介して車にフィードバックするサイクルを繰り返していくと、4時間ほどでほとんどぶつからずに自律的に走行しあうようになる。各車の学習成果は共有されているため、学習時間を短縮できる。また、フィードバックに利用されている無線アクセス方式も複数用意しておくことで、高い信頼性を保つことができる。
今後は、動的で精密な交通空間情報の作成、交通渋滞などの分析・学習・予測、緊急時や災害時の車両の優先度付けなど、より高度な処理を行うことで、高度な運転支援をリアルタイムで行うために必要な情報を提供できるインフラ技術の確立を目指す。

関連ニュースリリース:
トヨタ・PFN・NTT、「ぶつからないクルマ」のコンセプトを具現化
〜自動車・路側インフラ設備から収集した情報をリアルタイムに分析・学習し、走行中の自動車に提供〜 (別ウインドウが開きます)

写真12

写真12 ランダムに走らせていても、まったくぶつからなくなったミニチュア電動車

■エッジコンピューティングとAi技術による高度運転支援(1分33秒)

次代のビジネスを支えるセキュリティ&クラウド

本エリアでは、急速なクラウドサービスの浸透や今後のIoT発展の流れを先取りし、バリューパートナーのビジネスを支える先進的なセキュリティ技術とクラウド関連技術の展示が行われた。

写真13

写真13 「次代のビジネスを支えるセキュリティ&クラウド」のテーマパネル

多種多様な機器がつながるIoTネットワークを安全に守ります(セキュリティ)

昨今、IoTデバイスの導入が進んでいるが、それは同時に脆弱性を狙われる可能性が高まることも意味する。にもかかわらず、IoTデバイスは限定的な処理能力しかないものが多いため、PCと同等のセキュリティ対策を実施するのは難しい。 本研究は、ネットワーク内にあるIoTデバイスの動作ログや通信ログなどを介して外部からIoTデバイスを監視し、普段と異なる挙動があった場合は管理者に通知することで、システムやネットワークへの攻撃に迅速に対応できるようにする。ログを利用した外部監視であるため、処理能力が限定されるIoTデバイスであっても導入でき、また導入時の追加・変更も最小限にとどめられる点が特長となる。 展示では、工場に導入されたIoTデバイスにDoS攻撃があった場合を想定して、検知から悪性通信の遮断や悪性デバイス排除などの防御アクションをオペレータに提示、実行するまでの一連の流れがスムーズに実施されるデモが行われていた。

写真14

写真14 工場内で異常を検知したことを伝えるデモ画面

■IoTネットワークにおける攻撃検知と制御技術(5分7秒)

グローバルの脅威情報をワンストップ提供・活用「GTIP」(セキュリティ)

NTTは、世界トップクラスのセキュリティ・クラウド技術をスピーディーに開発し、マーケットへ投入することを目的とした、北米研究開発拠点「NTT Innovation Institute, Inc.」(NTT I3:エヌ・ティ・ティ・アイキューブ)を2013年4月に設立している。このNTT I3における研究開発の成果のひとつが、本研究の「GTIP」(Global Threat Intelligence Platform)となる。GTIPは、NTT内外からリアルタイムに収集した400万件以上にも及ぶ世界最大規模の脅威情報を、機械学習や相関分析といったビッグデータ解析技術や独自のマルウェア解析技術を用いて分析し、その結果をAPIや可視化された形で提供するワンストップのセキュリティソリューション。
マルウェアの解析においても、ユーザーに対象ファイルが危険かどうかを伝えるだけでなく、サンドボックス上で実行した際の画面を元に、実際にどういう動きをするマルウェアなのかといった情報も提供するなど、非常に詳細なセキュリティ情報を提供する。
展示では、グラフィカルな画面を用いて脅威を分析し、迅速に情報提供するまでのデモが行われ、多くの来場者の注目を集めていた。

写真15

写真15 ブラックリスト情報のほか、グローバルな攻撃情報もリアルタイムで表示する

■脅威情報収集・分析・共有プラットフォーム(GTIP) (2分6秒)

さまざまな端末でアプリ画面の間違い探しを簡単に(ソフトウェア開発技術)

スマホ、タブレットで動作するアプリは、複数のデバイスがあるうえ、それぞれの中にもOSやブラウザの違いもあるため、非常に数多くのバリエーションが存在している。そのため、それぞれに対応したアプリを開発する際、目視によるUI確認テストでは、非常に煩雑な作業となるため見落としを防ぐのは難しい。
本研究は、各端末で動かしたアプリの画面をリファレンスとなる正しい画面と比較して、どんな差異(間違い)があるのかを自動検出してくれる。また、検出された間違いは、どのように間違っていたかの情報とともに、アプリの画面上でハイライト表示することもできるため、テストにかかっていた時間を大幅に短縮することができる。
さらに、アプリ画面の画像だけで間違いを自動で探し出すことができるため、現場への導入障壁が低いうえ、検証対象のアプリの実装技術に依存せずに利用できる点が優れている。

写真16

写真16 差異が画面上でハイライト表示されるので、場所がわかりやすい

■多様なクライアント端末向け全自動化技術(2分52秒)

高速、高機能な企業WANをソフトウエアスピードで構築「Cloud WAN」(クラウド)

「Cloud WAN」は、柔軟に機能拡張が可能なネットワークエッジ装置と、その装置の一元管理が可能なポータル機能を組み合わせて、高速で高機能な企業WANを実現するもの。前述のGTIPと同様、このCloud WANもNTT-I3の研究開発の成果物となる。 遠隔拠点に置かれたネットワークエッジ装置「Cloud WANエッジ装置」は、WANアグリゲーション機能を備え、インターネットとMPLS-VPN、光とLTEなど、複数のWAN回線を組み合わせることで、帯域単価が安く、可用性の高いネットワークを実現することができる。また、汎用サーバーでネットワーク機能の仮想化を行うNFV(Network Functions Virtualization)の機能も備えているので、ファイアウォールやWAN高速化といった仮想アプライアンス機能を送り込み、オンデマンドで機能拡張することができる。 こうしたCloud WANエッジ装置を一元的に管理するのが、シンプルで使いやすいインターフェイスを備えたポータル。このポータルから遠隔地にあるCloud WANエッジ装置の設定情報や仮想アプライアンスを管理できるので、拠点開設時、障害対応時の運用コストと、継続的な機能追加を両立できる。 利用シーンとしては、多くの支店をもつ企業で、各支店に設置するネットワーク装置や、マイナンバー対応などのセキュリティ対策として各拠点に設置するセキュリティアプライアンスとしての導入を想定している。

写真17

写真17 上:Cloud WANエッジ装置/下:Cloud WANエッジ装置を一元的に管理するポータル

2020とその先の未来を支えるネットワーク

本エリアでは、将来の通信ネットワークのあり方を変革するNetroSphere構想に基づいた即応性、柔軟性に富むネットワークの連携・制御・大容量化技術をはじめとする多様なネットワーク技術の展示が行われた。

写真18

写真18 「2020とその先の未来を支えるネットワーク」のテーマパネル

いろいろなアクセスサービスを”もっと簡単に追加/変更"します:FASA(NetroSphereの実現)

「FASA」(Flexible Access System Architecture)は、専用装置を用いずに部品化し、それらを自由に組み合わせることで、サービス品質を維持しながら、サービス要件に応じて柔軟かつ低コストで提供する、新しいアクセスネットワークアーキテクチャ。
需要や環境の変化ヘの柔軟性、サービス提供期間の短縮化、ユーザー機器の多様化など、ネットワークサービスに求められる要素の変化に対応できる通信ネットワークの技術開発のコンセプトとして、NTT研究所は、2015年2月に「NetroSphere構想」を策定した。
しかし、アクセスネットワークにおいては、数多くのアクセス専用装置が導入されていることから、機能変更・追加への即時対応が困難で、かつ抜本的なコスト削減が進まないという課題があった。アクセスネットワークアーキテクチャの変革によってこれらの課題を解決し、NetroSphere構想の実現を目指して提唱されたのが、このFASAとなる。
「NTT R&Dフォーラム 2016」では、NetroSphere構想を具体化、可視化するための実証実験環境である「NetroSpherePIT」でのFASA実証実験を公開されており、OLTをPC上に実装した「仮想OLT」が展示されていた。これは、汎用ハード上の仮想化された環境にOLT機能の一部ソフトウェア部品化とハードウェア部品化によるプロトタイプの試作品となる。仮想OLTの実用化が進めば、ソフトウェアの更新だけで新機能をアドオンしたり、構成や伝送容量を切り替えたりすることが容易となるため、部品化や、サービス要件に応じた柔軟かつ低コストなネットワーク提供の実現に近づくことになる。
今後は、APIを順次公開して、さまざまなパートナーとの協調活動による普及を目指す。

関連ニュースリリース:
将来アクセスシステムの新コンセプトFASAを提唱
〜アクセス装置の部品化により、サービス事業者の「すぐにサービスを提供したい」に応えます (別ウインドウが開きます)

写真19

写真19 汎用的なPC上にソフトウェアを用いて構築された仮想OLT

■多様なニーズへ柔軟に対応する次世代アクセスアーキテクチャ(4分36秒)

サービス事業者の要望に柔軟に応じるネットワークを実現(スマートオペレーション)

現在、サービス事業者が新たなサービスを提供しようとすると、サービス設計以外にも、ネットワークの設計、ハードウェアの選定、置局の選定など、ネットワークにも数多くの検討が必要となるため、新サービスを構築・提供するまでに最低でも数ヶ月は必要となる。
本研究は、ネットワークの要素を「カタログ」として抽象化し、サービス要件をメニューから選べば、それにふさわしい構成を「ネットワーク抽象化制御エンジン」が判断して、自動でネットワークを構築するというもの。構築にかかる時間は、数分〜数時間程度なので、従来に比べるとはるかにスピーディーなサービス提供が可能となる。
支えているのは、大きく2つの技術。1つは、「ネットワークの自動設計」で、抽象化されたサービス要件を充足し、リソース効率が最適化されたネットワークを自動設計する技術。もう1つは、「要件から物理までの展開の全自動化」で、生成されたネットワーク設計に基づく、装置のconfig生成や、物理装置への展開を自動実施する技術。この技術を組み合わせることにより、「各機能をどこに置いて、ユーザーをどうつなぐか自動的に決める」を実現する。
展示では、既存のサービスにM2M-GWを追加し、end-to-endの遅延要件や起動時間といったサービス要件を設定するだけで、自動で仮想リンクが設定され、疎通確認できるデモが行われ、来場者の注目を集めていた。

写真20

写真20 上:追加されたM2M-GWカタログ(オレンジの四角)にサービス要件を入力する/下:追加されたM2M-GWカタログへの疎通(ping)を確認

■ネットワーク抽象化制御技術(5分33秒)

大容量化と省電力化を両立する400G/1T光伝送基盤網(つなぐ技術)

NetroSphere構想を実現するには、大容量伝送、省電力を実現する次世代光伝送基盤が不可欠となる。
100Gbpsを超える、次世代の400G/1T-bps級(Beyond100G:B100G)光伝送基盤の実現を目指しているのが本研究。具体的には、高速光キャリア信号を複数束ね、大容量B100G信号のマルチキャリア伝送方式を適用することによって、従来と比べて、1/4(bit当たり)以上の省電力な光伝送システムを実現している。
また、従来比の1/10まで小型化された「小型多値変調器」、高速・高感度の「集積光受信モジュール」などの光送受信デバイスと、強力な波形補正技術により長距離伝送実現し、多様なクライアント信号を伝送容量・対地の異なる光パスへ柔軟に収容する「DSP-LSI」が、これらの光伝送システムを支える。
実証実験では、400Gbpsの転送に成功しており、今後1Tbpsの転送実現に向けて、 デジタルコヒーレント方式による超高速光伝送技術、抜本的な省電力化に資する光電子デバイス技術、柔軟に機能拡張するシステム化技術の研究を行っていく。

写真21

写真21 小型多値変調器(手前上)、集積光受信モジュール(手前下)、DSP-LSI(奧)

■Beyond100G高速光ネットワーク構築へ向けた先端技術(3分48秒)

未来を切り拓く基礎研究

本エリアでは、科学的な知見の蓄積を通じた物理性能の極限追究や新原理の創出により、新しい価値の創造やパラダイムシフトの誘発を目指す基礎研究の展示が行われた。

写真22

写真22 「未来を切り拓く基礎研究」のテーマパネル

高速の電子の動きを捉えて内殻電子の世界を探ります(極限追求)

原子内の電子は、樹木の年輪のように複数の軌道で原子核の周りを回っている。この電子の中で、最も内側で原子核のすぐ側を回っているのが内殻電子で、運動が非常に高速であることから、いまだに知られていないことが多い。
本研究は、アト秒(10-18秒=100京分の1秒)という、想像を絶する超高速で光るレーザー光源を開発し、内殻電子の動きの観測を可能にするもの。アト秒パルスは、サファイアにチタンを混ぜた結晶を媒体とするレーザーから発生したパルスを圧縮器で圧縮し、さらに単一アト秒パルス発生装置にかけることで発生させることができる。
内殻電子の観測は、内殻電子操作を用いた新物質の創生といった基礎研究分野への利用や、超高速応答が可能な光デバイスの開発といった産業分野への応用などの利用シーンが想定されている。

図3

図3アト秒パルス発生の概念図

物体のアピアランスを光でインタラクティブに操作「変幻灯」(革新技術)

本研究は、錯覚を利用し、静止しているものが動いているような印象を与える光投影技術。仕組みは、対象の表面にある模様の輪郭だけを半透明な線で描画し、その輪郭線を陽炎のようにゆらゆら揺らした動きのパターンをプロジェクターで投影すると、投影された対象の模様が揺れることで動いているように見えるというもの。 これまでは絵画などの平面のものだけに適用可能だったが、立体的なものにも同様の効果をもたらすことが可能となった。さらに、ユーザーの動作や声などに応じて、動きの印象を与える試みも行っている。 展示では、食品サンプルのラーメンや書籍にプロジェクターから動きパターンを投影すると、ラーメンから湯気が出て作りたてのように見えたり、書籍の表紙に描かれた手のイラストが手を振っているように見えたりするようなデモが行われていた。 今後は、ディスプレイ中の商品に動きを与えることで目立たせたり、壁や床などのインテリアの質感を変化させたりすることで空間の雰囲気を演出するといった用途での実用化を目指している。

図4

図4 変幻灯の動作原理

■変幻灯:視知覚を利用し、止まった対象を錯覚で動かす光投影技術(3分33秒)

NTT技術史料館特別展示

今回も、NTT武蔵野研究開発センタ内にある「NTT技術史料館」に収められている史料のうちのいくつかが出展された。回ごとに異なる史料が展示されており、本年の目玉となったのが「80回線磁石式交換機」。 これは、交換手が手動で2つの電話機をつなぐ交換機で、電話機ごとに内蔵された乾電池から通話電流を供給して通話する方式のもの。手動の交換式と聞くと、どうしても遠い昔のことのように感じてしまうが、実際に磁石式交換式が完全に姿を消したのは昭和54年(1979年)とのことで、近年まで現役だったことに驚きを覚えた。 電話通信の発展の一翼を担ってきた交換機の姿は威厳すら感じさせるものだったが、同時に、最先端の研究であふれる会場内にあって、どこかホッとさせてくれる存在でもあった。

写真23

写真23 上:図53 中央にあるグレーの機械が「80回線磁石式交換機」/下:さまざまな年代の公衆電話のミニチュアに混じって「Kirari! for Mobileペーパークラフト」も展示

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