ページの先頭です。
コンテンツエリアはここからです。

AIは未来社会をどう変えていくのか?
その時「corevo®」は、どんな価値を創造するのか?

vol03
「ヒト」「モノ」のコミュニケーションを、AIで支援する「corevo®」の4つの方向性
メディアインテリジェンス研究所所長 小澤 英昭

「AI化」する技術と社会の未来に、「corevo」は、どう向き合うのか? 02:「ヒト」「モノ」のコミュニケーションを、AIで支援する「corevo」の4つの方向性

NTTインターコミュニケーション・センター (ICC)/《ドローイング・オペレーションズ・ユニット:ジェネレーション2(メモリー)》 [2017] スグウェン・チャン

ネットワークし、コミュニケーションしながら、
社会を支え、変えていくAI

近未来、AI「スカイネット」(※1)が突如人類に反乱。タイムマシンを開発し、現代に殺人アンドロイド「ターミネーター」を送り込み、人類側の反撃のキーパーソンであるジョン・コナーの母親、サラ・コナーの殺害をもくろむ…。「AI」、あるいは人工知能の進歩の先にある未来、というと、映画『ターミネーター』(※2)で描かれた未来のAIの姿を思い起こす人も少なくないでしょう。でもそれは、私たちの考えるAIのイメージとは大きく異なります。技術が進み、AIが浸透していった近い将来、私たちの社会はどうなっていくのでしょうか。

私たちは「AIがたった1つに集約される」とは考えていません。「スカイネット」のような、すべてを支配するAIではなく、むしろ、世の中の商品・サービスは、すべてがそれぞれ個別にAIを持っていくと考えます。たとえば、ここにあるカメラやICレコーダー、もっといえば、このペットボトルですら、みんなネットワークに繋がっていく。ネットワーク技術とコンピューティング技術の高度化がもたらす「IoT(Internet of Things)」(※3)の世界が、これからますます広がっていきます。その時には、すべてのデバイスにAIが搭載されるようになるのではないかと考えています。なぜAIを搭載するのかと言えば、全ての物は「人間の役に立ってほしいから」であり、AIが搭載されることで、いわば自律的に役立ってくれるようになるからです。カメラやレコーダー、あるいはペットボトルといった「モノ」と私たち「ヒト」、あるいは、「モノ同士」が常にコミュニケーションすることで、さまざまな価値が生まれます。たとえばICレコーダーからわかる会話の内容と、ペットボトルの中身や残りの液体の量、さらに空調の情報などから、「打合せの雰囲気が停滞しているから、気分転換のために適切なタイミングで飲み物のおかわりをおすすめする」といったように、モノがそれぞれの役割を理解し、状況に応じて人間の行動を支援してくれるようになるはずです。

AIとAI、あるいはAIとヒトとのコミュニケーションの基盤になるのは、ネットワークと通信です。私たちNTTはネットワークと通信の会社ですから、すべてのサービスがAI 化されれば、それは私たちが担うサービスの領域になってくる。逆に言えば、ネットワークと通信の会社が考えるAIの未来は、このように「ヒト」と「モノ」とが自由にコミュニケーションしあいながら、最終的には人間の役に立ち、人間が暮らしやすい社会を実現する、というものになっていくのは当然だともいえます。

そうした社会を実現するための取り組みの一つとして、今トヨタ自動車様と行っている「コネクティッドカー  」の研究があります。自動車のAIは「自動運転の技術」とイメージされがちですが、それだけでなく、車を取り巻く社会システムそのものを変えていく事が必要ではないかと考えています。例えば「新幹線は、なぜあんなにスピードを出していて、事故がないのか」という事を考えると、もちろん新幹線自身にも「CTC」や「ATC」(※4) と呼ばれる、速度を制御する集中コントロール、自動コントロールのシステムがあるのですが、一番大きい要因は「踏み切りのない専用の線路がある」ことでしょう。今システムが搭載された自動車に設置されたカメラやセンサーなどからわかる情報だけで状況判断し、危険予測するシステムでは、見通しの悪い交差点で見える範囲は、人間が運転するときと同じです。このような場合、人間が運転するのと、自動運転ではどちらがとっさの時に対応が安全なのかという、人間の能力とAIの能力の差を比較することにしかなりません。AIやIoTの技術によりもたらされるものは、いままで見えなかった所の状況が、自動車同士、信号、街の監視カメラなどさまざまなデバイス同士が通信しあい、AIによって分析・予測することで、人間が運転していても自動運転であっても、正しい状況判断ができるようになることなのではないでしょうか。たとえば交差点の向こうや茂みの影にいて自分の車からは見えない子どもの存在を、別の車や街の監視カメラの情報が教えてくれ、自動的に速度を落とすことができるはずです。コネクティッドカーの取り組みがめざしているのは、いわば新幹線における「専用の線路」を、AIやIoTの技術で作ることなのではないかと考えています。

※1:スカイネット
映画『ターミネーター』に登場する未来のAI(人工知能)。

※2:ターミネーター
1984年のアメリカ映画。「未来からやってきた殺人ロボット」ターミネーターと現代人との戦いを描く。ターミネーター役を演じる俳優、アーノルド・シュワルツェネッガーにとって代表作となった。

※3:IoT(Internet of Things)
さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、コミュニケーションしながらお互いに制御していく仕組みのこと。

※4:「CTC」や「ATC」
いずれも列車運行を支援するシステム。「CTC(列車集中制御装置)」は、制御室など遠隔の一箇所から、ある区間の信号やポイントをコントロールするしくみ。「ATC(自動列車制御装置)」は、前の列車との間隔やその他の条件に応じて列車の速度をコントロールするしくみ。いずれも列車運行の安全性・効率・自動化に大きく貢献している。

脳の複雑さに分け入り、
最適化でヒトの能力を高めるAI

AI同士がコミュニケーションしあいながら、社会システムを変えていく、というお話をしましたが、もう1つのAIの進歩の方向性として、「人間」そのものの能力をとらえ直し、拡張していく、という方向性があります。たとえば第2回でお話した、「スポーツ脳科学プロジェクト  」は、スポーツを題材にしていますが、もう少し広くとらえれば「人間の能力」そのものを伸ばす方法論だとも言えます。「コツ」をつかめば上達が早い。ではその「コツ」とは、一体なんなのか。すでにわかっていることから言えば、コツを身につけるということは、ただ単に「カラダがおぼえる」のではなく、実は「脳」が変化している。ならば、脳を解明し、Heart-Touching-AIとして、人間の能力をもっと高めることができるのではないか。この時、AIは分析のためのツールでもありますし、分析した結果を人間にフィードバックするためのツールにもなると思われます。DNNなどによるAIは「単なるアルゴリズム」ではなく、例えば音声認識でいえば、人間の声をテキストにするという事象を実現するために、多数の人間の声を入力として集め、その声に対するテキストとをDNNで対応関係を学習していく事で、実現されます(第1回参照)。複雑な人間の脳のしくみが完璧にわからなくても、ある事象の計測結果と、別の事象の計測結果とをAIによって最適に紐付けることができれば、人間の能力を高めるフィードバックを「合成」することも可能になります。NTTデータが「インディカーレースでドライバーの生体情報を取得する実証実験を実施  」しているのも、AIによってレーサーの能力を高めるためです。従来はレース中に自動車の状況はセンサーで取得できても、自動車を制御するドライバーの情報が取れず不完全でした。車に余力があっても、人間に負担がかかりすぎていては、安全でかつ良いラップタイムを出すことはできません。ドライバーの生体情報を取得して、総合的に人間に返すべきフィードバック、車に返すべきフィードバックを分析することで、より安全でかつ高いパフォーマンスを上げていく事が可能になっていくものと考えています。コネクティッドカーのような「社会の能力を変えるAI」と、カーレースのような「個人の能力を高めるAI」、この2つの方向性は、それぞれ進歩していくものなのだと思っています。

関連リンク
スポーツ脳科学プロジェクト(NTT)
http://sports-brain.ilab.ntt.co.jp/
      
インディカーレースでドライバーの生体情報を取得する実証実験を実施(NTTデータ)
http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2016/012800.html

人と社会の可能性を広げ、意識を変えるAI
その時、「corevo®」が果たすべき役割とは

AIによって社会や個人が変わる。その先に待っているのは、社会や個人の意識の変化です。これまでの歴史を振り返っても、技術が社会や個人の意識を変えてきた例はいくらでもあります。たとえば最近でも、インターネットとスマートフォンの普及により「覚える事」の概念は大きく変わってきています。「知識を単純に覚える」事を問うような学習の意味は、どんどん薄れていき、教育の現場も、この変化への対応を迫られているのではないでしょうか。この変化をネガティブに捉えれば、「レポートの<コピペ>が容易な時代」であり、「<コピペ>を防止するような技術」で対抗するという事になりますし、ポジティブに捉えれば情報や知識は調べたうえで、「知識を活用する<知性>が育つ時代」として、「考える事や物事を俯瞰するような教育」をすべきだともいえます。どちらの方向に行くのが良いのかは、社会のコンセンサスが必要だと思いますが、社会意識や個人の意識の変化に応じて、次に求められる技術の方向性も変化するわけで、人間と技術の関係性の歴史は、このような応答を繰り返しているのではないでしょうか。

「AIは社会実装のフェーズに入る」と申し上げました。私たちは技術をベースに事業をしているわけですから、技術が社会にどのように適用されていくのか、その結果を自分たちで観察し、次の方向性を考えて社会に提案していく事が必要であり、この社会実装に向けた提案は研究者だけの課題ではありません。NTTグループ全体として、AIの社会実装を進め、その方向性を見守り、その時その時に必要とされる技術のあり方を探っていく。私たちがNTTグループのAI技術を「corevo®」と言うグループで一つのブランドに集約したのは、ネットワークからアプリケーションまで「社会のニーズに応答するAI」のあるべき姿を、グループ全体で探っていく、その意思表明の意味もあります。

小澤英昭
小澤英昭

プロフィール
日本電信電話株式会社メディアインテリジェンス研究所所長。平成3年NTT入社後、同社ヒューマンインタフェース研究所、サイバーソリューション研究所、 (株)ウォーカープラス、NTTレゾナントを経て現職。

関連リンク
メディアインテリジェンス研究所  
http://www.ntt.co.jp/md/
取材協力:
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]は、NTT東日本が運営するメディア・アートの展示を中心とした文化施設です。

オープン・スペース 2017 未来の再創造 2017年5月27日 - 2018年3月11日

ローカルナビはここからです。