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時間と空間を自在に予測するAI

vol02
都市の未来の姿を
AIで、便利で安全なものに変えていく
NTTサービスエボリューション研究所 宮本勝
NTTコミュニケーション科学基礎研究所 澤田宏

時間と空間を自在に予測するAI技術02:都市の未来の姿をAIで、便利で安全なものに変えていく

携帯電話による人口統計から
日本人の動きを予測する

――それでは「時空間予測技術」には、どのような応用の可能性があるのでしょうか。

宮本 たとえば今、NTTドコモと共同で、携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成される人口統計(※1)と我々の時空間予測技術を組合せることにより、日本全国の現在、及び数時間先のあるエリアにおける人数を予測する「近未来人数予測™」の実用化に向けて、実験を進めています。携帯電話ネットワークは電話やメールなどをいつでもどこでもご利用いただけるように、各基地局のエリア毎に所在する携帯電話を把握しています。この仕組みを利用して携帯電話の台数を集計し、ドコモの普及率などを加味することであるエリアにいる直近過去の人数を推計することができます。この統計データを用いて、現在、及び数時間先の人数を予測します。当然のことながら、プライバシーの問題には最大限配慮し、個人が特定されることのないよう、データを利用しています。

※1 本実験で使用する人口統計は、エリア毎や属性毎の集団の人数を示す情報であり、お客様個人を特定できる情報を一切含みません。したがって、この人口統計によりお客様の行動が他人に知られることはありません。尚、本実験で使用する人口統計は、モバイル空間統計ガイドラインを遵守しております。

活用イメージ

――その実験は、将来的にはどのようなサービスにつながるのですか?

宮本 すでに実証が進んでいるサービスとして「AIタクシー」というものがあります。要はタクシーの需要予測なのですが、人の流れやその他の情報を把握し、今後人がどこに移動していくのかを、10分単位で、現在から30分後等の直近の未来を予測します。未来の移動需要を予測ができていれば、タクシーの供給を最適にマッチングさせる準備ができ、タクシーのお客様の待ち時間を短縮することができる。そして、タクシー運転手はちゃんと集客できる。すでに行われた実証実験では、このサービスを使うことで、運転手一人当りの売上が伸びたという結果が出ています。あるいは「オンデマンド型バス」にも活用できます。地方では公共交通機関が次々と廃止されていて、大きな課題となっていますが、乗り合いバスを固定的な時刻表によって運行するのではなく、需要予測にもとづいて運行させることで効率的な運行が可能になる、というものです。あるいはカーシェアリングサービスの効率化にも、この技術が適用できるかもしれません。

関連リンク
人工知能を活用した「近未来人数予測」の実証実験を開始(NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2017/09/20_00.html

予測しながら、
対策し続けるAI

――この技術は、今後どのように発展していくのでしょうか?

澤田 これまでお話してきたのは、比較的通常の状態にあるというか、普段の生活の時空間を予測する技術なのですが、そうではなくて、特殊な時空間の予測にもこの技術を役立てようと、現在取り組んでいるところです。

――どういうことでしょうか?

澤田 たとえばコンサートや花火大会など、なんらかのイベントの時の人の動きは、日常のときとは明らかに違いますよね。人が非常に密集していたり、みんながある時間、ある目的のために一斉に動いたりする。こうした、いわば「非日常」の状態の人の動きは、普段蓄積されているデータを見ても、なかなかわからない。異常な混雑や、最悪の場合事故につながるような事態を予測し、手を打つことができたら、より安全・安心にイベントを楽しむことができますよね。

――しかし、そうした安全のノウハウは、イベント主催者がすでに蓄積しているのではないでしょうか?

澤田 これまで行われてきたのは、事前にシミュレーションをしておく、という手法です。道幅はこう、予想される来客数はこれくらい、そうしてシミュレーターの中で実際に道の上を歩かせて、この辺が混雑しましたね、ということで対策をする。確かにそういう技術は以前からありました。しかし私たちはこのシミュレーションをより「事実」に近づけたいと思ったのです。そのためには、実世界で取得したデータによって予測したい。そのための技術を開発しているのです。

宮本 従来のシミュレーションでは、人はA地点からB地点までの最短経路を通る、あるいは一番効率的に振る舞うことを前提にしています。しかし実際データを取ってみると、そんなに単純なものではないことが分かります。想定はできないのです。ならば実際のデータから学習するしかない。それが今開発している「学習型マルチエージェントシミュレーション」の基本的な考え方です。センシング技術が高度化し、またIoTによりあらゆる機器がネットに繋がる世界が実現しつつある今だからこそ可能な技術です。

――なるほど、ネットワークと技術の発展が、この技術を実用的なものにしているのですね。

宮本 私たちがドコモの近未来人数予測において応用している時空間予測技術は、「時空間変数オンライン予測技術」と呼んでいます。たとえば今から10分後を予測します。その1分後にまた、10分後を予測する。というように、逐次的に予測をし続けることを、オンラインと言っています。この技術を推し進めていけば、究極的には「予測しながら対策し続ける」ことが可能になる。つまり、予測をし続ける中で、トラブルの兆候があればどのように対策をすればよいのか、さらに対策した場合の効果についても、逐次的に予測を続けることが可能になるのです。これが実現すれば、極端に言えば混雑が発生しない世界を実現できるかもしれない。

――すでに導入した事例はあるのでしょうか?

宮本 まだまだ研究開発の入り口に立ったばかりで、アルゴリズムもデータもこれからですが、大規模なイベント会場や空港、駅周辺等、多くの人が集まる実フィールドで、パートナの皆様と共同で実証実験や調査を実施している状況です。実フィールドで実験や調査を行う上では、事前に入念に計画を立てるのですが、実際にやってみないと分からない多くの気づきがあります。例えば、大規模イベントにおいては、会場内の回遊効率化に着目して実験を行ったのですが、実は運営上の課題は、会場の中のみではなく、むしろ最寄駅の混雑の集中にあるのではないかということに気付かされました。また、スポーツイベント終了後の最寄駅の混雑を調査してみると、一斉に皆帰るので確かに混雑はするのですが、プロ野球やラグビーなどリピータが多いケースにおいては、皆慣れているためスムーズであり、問題がなく、施設オーナにとっては、初めて実施するイベントなどリピータが少ないイベントの人流の予測にニーズがあることに気づかされました。

――それはすごい気づきですね。

宮本 まこうした課題を抱えるパートナの皆様との協業を通じたリアルな知見・ノウハウを蓄積しながら、将来的にはより大きなイベントや、あるいは都市インフラにこの技術を適用し、より便利で、安心・安全な都市を作っていきたいと考えています。そのためには、データを分析するのみでは不十分で、やはり実世界を観察しないといけない。仮説を持って実世界を観察し、気づきを得る。それを研究にフィードバックする。その繰り返しです。私たちは、技術があるだけでは不十分と考えています。技術は、実世界の課題を解決するためにある。新しい技術が生まれる時、その技術で解決できる課題は、顕在化していないことのほうが多いと考えています。その課題を設定し、データを収集した上で、技術を磨くことで解決の方向性を探っていき、まだ世の中に存在しない新たな価値を創造することが、私たち研究者のミッションだと思います。

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宮本勝
宮本勝

プロフィール
日本電信電話株式会社サービスエボリューション研究所主幹研究員。1997年NTTに入社。ヒューマンインタフェース関連の研究に従事後、角川書店と連携した株式会社ウォーカープラスの立ち上げに参画。2009年NTT研究企画部門に異動後、プロデューサとしてビッグデータ関連のサービス創造を推進。2014年に研究所に戻り現職。

関連リンク
NTTサービスエボリューション研究所  
http://www.ntt.co.jp/svlab/mission/organization/Service_evolution.html
宮本勝
澤田宏

プロフィール
日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所協創情報研究部部長(上席特別研究員)。1993年NTTに入社。以来、計算機アーキテクチャ、信号処理、機械学習、データ分析の研究に従事。

関連リンク
NTTコミュニケーション科学基礎研究所  
http://www.kecl.ntt.co.jp/rps/index.html
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