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河口 真理子(かわぐち まりこ)
大和総研 調査本部 主席研究員
1986年一橋大学大学院修士課程修了(環境経済)、同年大和証券入社。94年に大和総研に転籍、企業調査を経て2010-2011年大和証券グループ本社広報部CSR担当部長。2011年7月より大和総研に帰任、2012年4月より調査本部主席研究員。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。
NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長。サステナビリティ日本フォーラム評議委員、エコアクション21審査人委員会認定委員、環境省・環境ビジネスウィメンの会メンバー、東京都環境審議会委員。
著書「SRI 社会的責任投資入門」日本経済新聞社(共著)、「CSR 企業価値をどう高めるか」日本経済新聞社(共著)など。
CSRというと、以前はコンプライアンスや環境マネジメント体制の構築とPDCAを回すというマネジメントの取り組みが中心でした。しかし4〜5年前から、本業を通じて社会的課題解決にどのように貢献するのか、それが企業価値向上にどのように結びつくか、という経営戦略としてのCSRが重視され始めました。その意味で、グループ全体で22万人以上、772の連結子会社を抱える巨大なNTTグループが、トップ自らが「ICTの利活用により社会的課題を解決」することがCSRの基本と明言し、その広範にわたるグループのCSR活動について「人と社会」「人と地球」「安心・安全」「チームNTT」という4つの領域と8つの重点活動項目を定め、定量指標の設定に取り組んでいることは、詳細版(Web)で紹介されている広範な活動事例と合わせてみると、まさにICT産業の社会的責任を示すベストプラクティスだと思います。
東日本大震災では、空気のような存在としてあまり意識していなかった健全な通信インフラの重要性と、張り巡らされたICTのネットワークの広さと深さに多くの人たちが改めて気づかされるきっかけとなりました。同時にその脆弱性などの課題も認識することとなりました。それに呼応し災害に強いネットワークサービスの強化、災害時のサービス拡充利便性向上などの対策および研究開発の強化に注力したことが、今回報告されています。それは、地震や干ばつ、洪水など自然災害が頻発している今の国際社会においては最も社会的ニーズに合致した活動の一つとして高く評価されます。
特集記事も興味深く拝見しましたが、紹介されているアフリカでのeラーニング、日本の遠隔医療共同実証トライアル、聴覚障がい児童向けの教育システム開発や、直流給電システム、「見守りサービス」などのプロジェクトは、ICTが解決すべき社会的課題の領域の広大さを実感させてくれます。また中国での事業に携わる各社キーパーソンの座談会をテレビ会議で実施したことは、出張にともなう環境・経済コスト削減につながるICT企業としてもアピールにもなる面白い試みです。詳細版(Web)に掲載されている座談会の概要からは、とくに経済発展とともに環境や格差などの問題も深刻化する中国で、従業員の多様性を確保しながら、日本の優れた環境や安全監視などの技術や、金融システムや物流などの社会的意義の高いプロジェクトをビジネスで提供しつつ中国社会の発展に貢献するための、現場の方々の努力が窺え、これは今後さまざまなBOPビジネスを推進していくうえでも貴重な体験になると思います。
しかしICTの社会的意義が広がる一方で、負の影響も無視できません。環境に関してICTは、スマート化など社会の環境負荷を削減すると期待しています。一方で、大宅氏との対談にあるように、NTTグループの電力消費量は日本の1%です。日本企業の代表として、IT機器の省エネ、エコビル、自然エネルギーへの投資および生物多様性配慮など、今の活動のさらなる強化をお願いいたします。また社会的問題として、電磁波の安全性、国内外で若年層に広がるネット中毒やゲーム依存症、親にとって頭の痛い子どものネット環境問題などがあります。当然これらに関して研究や啓発活動などされていることは理解していますが、あまり社会に浸透していないのが現状です。自動車、家電、パソコンなどの文明の利器は利便性とひきかえに、人の歩行能力や視力、聴力、体力、忍耐力、手先の器用さなどの機能を退化させます。時間空間を超えた情報の交換という究極の利便性をもたらすICTの光の部分(社会的意義)を育てる努力は充分に報告書から覗えます。今後はその陰の部分を特定して示し、それらの影響をいかに小さくし、あるいは修復するか、という点に関して、業界のリーダーとしての、積極的な活動とコミュニケーションを期待いたします。
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NTTグループCSR報告書2012の作成にあたっては、イラスト・写真や平易な言葉を用いて、ステークホルダーの皆さまにできる限り読みやすくわかりやすい記載となるよう努めました。特集では「ICTを通じた社会的課題解決」をテーマに、NTTグループが推進するグローバルICT事業について、世界各地での取り組み事例を取りあげるとともに、エネルギー・環境問題の解決に役立つ研究開発に焦点をあて、主な成果事例を掲載しています。
河口様より、NTTグループの広範なCSRの取り組みにおいて4つのCSRテーマ(取り組み領域)と8つの重点活動項目を定めるとともに、定量指標の設定に取り組んだことに対する評価をいただきました。さらに、東日本大震災の教訓を踏まえ、より信頼性が高く災害に強いネットワーク・サービスの実現に向けた研究開発や事業施策の取り組みに対し、「国際社会においては最も社会的ニーズに合致した活動」と高く評価いただいたことは、通信インフラを担う企業グループの社会的使命として、大いに励みになるお言葉として、受け止めさせていただきました。
また、ICTの利活用により、広大な領域において社会的課題の解決に貢献しつつも、一方で生じる「負の影響」に対し、グループでの取り組みを進めながらも「あまり社会に浸透していないのが現状」とのご意見をいただきました。貴重なご意見として真摯に受け止めるとともに、NTTグループのCSRを推進していくうえでの重要な課題と認識させていただきます。
NTTグループのCSRの基本となる、ICTを通じた社会的課題解決への貢献をさらに充実させていくためにも、ICTによる利便性だけでなく、それとひきかえに起こり得る「負の影響」を軽減していくことが、現代社会において果たすべき社会的責任、すなわちグループがめざす「安心・安全で豊かな社会の実現」につながると考えております。これらに対する現在の取り組み、例えば、自らの事業活動および社会全体における環境負荷の低減、情報セキュリティの確保・向上に向けた研究開発・サービス提供や、子どもや高齢者の方々が安心・安全にICTをご利用いただくためのサービス提供・啓発活動などをさらに強化しながら、さまざまな環境・社会問題への影響を特定し、改善する取り組みを進めるとともに、いかに社会へ浸透させていくかについて、グループ全体で議論・検討を進め、今後の取り組みへ反映していきたいと考えております。
河口様から、「ICT産業の社会的責任を示すベストプラクティス」と身に余るお言葉をいただきました。これに恥じないよう、NTTグループとしての社会的責任を確実に果たす努力をしていく所存です。今後も、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを大切にしながら社会の持続的発展に貢献するべく取り組んでまいります。
日本電信電話株式会社 CSR推進室
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