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NTTグループ

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ステークホルダーダイアログ2011

「人と地球のコミュニケーション」パートの対談に参加された2名の写真です。討議テーマは、環境負荷低減の取り組みです。

GDPを高めながら低炭素社会を実現するICTのポテンシャル

NTT環境エネルギー研究所の松岡茂登の写真を掲載しています。

松岡 茂登
NTT環境エネルギー研究所 所長

松岡 NTTグループは昨年11月に、2020年度に向けた環境ビジョン「THE GREEN VISION 2020」を公表し、「低炭素社会の実現」「循環型社会の形成」「生物多様性の保全」という3つの柱を掲げました。ビジョンを実現していくためには、R&D(研究開発)段階から3つのテーマに注力していく必要がありますので、持株会社が所管する各研究所では、共通のスローガンとして、CO2排出削減(Green of/by ICT)、省資源化(Green of/by Materials)、環境経営(Governance by Green)の3本柱で、環境負荷低減に向けた統合的なR&D活動を推進しています。もう少し具体的に言いますと、ICT機器やサービス自体の省エネを進める「Green of ICT」、ICTの利活用を通じて省エネを実現していく「Green by ICT」、また、素材や材料の観点で、廃棄物を削減する「Green of Materials」「Green by Materials」の活動を推進しています。そして、「Governance by Green」として、企業の活動も「Green」でなければ社会に受け入れられないという発想から、「Green」の側面でR&D(研究開発)をガバナンス(統治)・牽引する、引いてはNTTグループの経営までをもガバナンスすることをめざし、取り組んでいます。

東京大学大学院 工学系研究科准教授の松野泰也氏の写真を掲載しています。

松野 泰也
東京大学大学院 工学系研究科 准教授

松野 私は1996年から15年間、「ライフサイクルアセスメント用語解説」の研究に関わってきました。また、2001年からは東京大学で、マテリアルフロー分析による循環型社会の形成に関する研究に取り組んでいます。さらに、昨年からは生物多様性に関する研究も開始しました。
こうした経験から、NTTグループが掲げる3本柱は私にとって大きな関心事となっています。それぞれどのように取り組んでいらっしゃるのですか。

松岡 まず、「低炭素社会の実現」というテーマからお話させていただきます。
東京大学名誉教授の月尾嘉男先生が述べられていることなのですが、人類が今までに遭遇した3つの革命、「農業革命」「産業革命」「ICT革命」のなかで、農業革命と産業革命はGDPの増加と環境負荷の増加が比例していたのに対して、ICT革命だけは比例しない、デカップリングつまり分離した革命なのです。また、産業、運輸、オフィス、家庭など、GDPを押し上げるいろいろな活動分野からCO2が排出されますが、そのなかでICT産業が占める割合は1.5%〜2%弱に過ぎません。それでいて、ICTは残りの約98%の産業の生産性向上や省エネにも貢献している。これらのことは、ICTの利活用を社会全体で進めていけば、環境負荷を削減しながらGDPを増やし、生活を豊かにできることを示しています。
このように、ICTには、CO2排出量を減らす鍵となる技術が詰まっている。そんな自負を抱きながら日々ICTの研究にあたっています。

松野 私も、先日参加したパネルディスカッションで、「ICTで地球温暖化を抑制できる」と発言してきたばかりです。「Green of ICT」と「Green by ICT」の2つのアプローチに関して、ほぼ同様のことを述べてきました。

松岡 それは心強いですね。私はofとbyのなかでも、ICTの真骨頂は「by ICT」にあると考えています。オフィスのエネルギー利用を見える化して最適化するBEMS(Building Energy Management System)、家庭向けのHEMS(Home Energy Management System)、広範な地域の電力使用の最適化を実現するスマートグリッドなど、CO2削減効果が高い施策の中心に、各家庭・各事業所のエネルギー使用量を把握して全体を最適制御するICTが存在します。

松野 NTTグループの研究所では、具体的にどのような研究開発を進めているのですか。

松岡 例えば省エネについて、身近なところで言いますと、全国のお客さまに提供している光アクセスネットワーク装置「ONU」の低消費電力化というテーマがあります。現在は千数百万人のお客さまにご利用をいただいていますから、ONU1台の消費電力を少し下げるだけでも、日本全体で見ると大きな電力節減になります。ちなみに、一昔前のONUは10Wぐらい電力を使っていましたが、今は5Wを切るレベルにまで低減することができています。
また、光のトランスポートシステムなどを支えるデバイスのひとつに、波長分離多重方式のAWG合分波器という製品がありますが、波長多重光の入出力に関わる構造を工夫したことで、電気を介在させずに光をスイッチできるという低消費電力化につながりました。

松野 設備面ではどうですか。最近はクラウド環境が増えており、お客さまサイドにとっては省エネになりますが、一方の事業者サイドではデータセンタの負荷が大きくなっています。

松岡 まさに言われるとおり、データセンタは、右肩上がりで年数%ずつ消費電力が伸びています。その対策のひとつとして、消費電力の約4割を占める空調の省電力化に注力しています。暖かい空気の場所と冷えた空気の場所をきちんと分けて空調するアイルキャッピング技術用語解説や、暑いところだけ空調を効かすサーバと空調の連係制御技術など、すでに実用化されている技術も含めてさらなる省電力化を追究しています。また、電源についても、交流を直流にする高電圧直流給電システム「HVDC」を採用することで約15%のエネルギー削減が可能となっています。HVDCは、給電をAC100V〜200VからDC400V程度に変更することで、省エネ効果だけではなく、電源ケーブルの細径化を通じたコスト削減や省資源化も実現できると考えています。さらにICT機器についても、仮想化技術を採用してリソースを共有するなどして、30%〜60%のエネルギー削減を実現しています。こうした技術を全部まとめて適用し、環境に配慮したデータセンタをつくっていこうとしています。

松野 なるほど。ちなみに、今NTTグループは次世代ネットワーク「NGN」を活用したさまざまなサービスを展開していますが、こうしたネットワークの環境負荷削減効果はどういうものなのでしょうか。

対談中の松岡茂登の写真を掲載しています。

松岡 ご承知のように、「NGN」は、音声の電話網、インターネットのデータ網、映像サービスの映像配信網の3つを統合したネットワークで、すでに「フレッツネクスト」という名称で商用化していますが、統合することによって従来より大幅に消費電力を削減しています。また、閉じた形のネットワークですから安全性も向上します。また現在は、ルータなどのデバイス単体の消費電力を下げるだけではなく、ネットワークのアーキテクチャつまりトポロジーに関しても、例えばある所から別の所へ信号を送る時に、どういうルートを通ったら一番省エネになるか、ということを研究しています。

松野 省エネに関して日本の企業は、オイルショック以降、乾いた雑巾を絞るようなものといわれるほど取り組んできました。そのうえ、京都議定書によって日本企業は今後もCO2排出量を削減していかなければならない。そうすると、「そんなことしたらGDPが減って、日本の産業は衰えてしまう」というような意見が出てきます。これは当然のことで、GDPを下げてまで取り組むことは多くの人々が共感しないでしょう。やはり国の産業を守り、GDPを増やしていきたい。そうしたなかで、唯一ICT分野が、松岡さんが言われるように、GDPを伸ばしながら環境負荷を下げることができる。今のお話を聞いて、まさにGDPと環境負荷のデカップリング、そのポテンシャルを実感しました。
私は長年ライフサイクルを研究してきましたが、こうしたICTを社会に広げていくこと、「by ICT」をさまざまな領域で活用していくことが、まさにライフサイクル志向そのものです。私は、この考え方をみんなで共有してほしいと常に言い続けていますが、NTTグループにもぜひICTを利活用する効果をアピールしてほしいと思います。

松岡 CO2排出量の議論では、「この工場の」とか「この製品をつくるのに要したのは」と単体で議論されることが多いのですが、LCAの観点から、利活用のところまで考えて判断していただくことが必要なのです。

松野 日本が2050年にかけてネットワークでどのくらい電力を消費するかを私の研究室で試算したことがありますが、パソコンやデータセンタといった目につきやすいところの省電力化は比較的進む一方、スイッチやルータの消費電力が相対的に大きくなり、課題としてクローズアップされています。NTTグループには、こうした部分の省エネ技術について研究していることもアピールしてほしいと思います。

現在、このページの3分の1程度です。

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循環型社会の形成、生物多様性の保全への取り組み

松岡 「循環型社会の形成」に関する取り組みについてですが、NTTが保有している設備は、電柱からケーブル、中継器、とう道、無線鉄塔、局舎のビルまで多岐にわたりますが、設備の寿命を2倍に伸ばせば必要な資源は半分になります。そういう観点から、今私たちは、寿命を2倍に伸ばす塗料の開発や新たなメンテナンス方法の開発といった長寿命化技術に取り組んでいます。また、コンクリートなどの再利用技術や、貴金属やレアメタルの回収といったリサイクル技術にも注力しています。

対談中の松野泰也氏の写真を掲載しています。

松野 私の研究テーマであるマテリアルフロー分析はまさに循環型社会の形成に向けたものですので、ここでは割愛させていただくとして、生物多様性についてお話しします。 1992年のリオデジャネイロの地球環境サミットで、「生物多様性条約」「気候変動枠組条約」の2つが採択されて以来、気候変動枠組条約に関しては、1997年のCOP3で京都議定書が合意され、日本も低炭素社会に向けたさまざまな取り組みを実施してきました。ところが、一方の生物多様性は、同じ時期に採択されたにも関わらず、日本ではあまり注視されておらず、正直、私自身も大きな関心を抱いていたわけではありませんでした。
そうしたなか、昨年、名古屋で開催されたCOP10が契機となり、いろいろな企業で取り組みが始まったことは大いに歓迎すべきことです。

松岡 NTTグループの環境ビジョンもそうした動きのひとつで、今、R&Dサイドでも方針をつくり、これから「生物多様性の保全」に取り組んでいこうとしているところです。松野先生ともご一緒させていただいていますよね。

松野 NTTグループの環境エネルギー研究所の方にも入っていただき、産業界から10社ぐらい集めて、産官学の研究会を立ち上げたところです。そこでまず取り組んでみてわかったことは、定量化の難しさです。温暖化問題に関しては比較的定量化しやすく、CO2排出量はどれだけ化石燃料を使ったかさえカウントすれば定量化できました。それに対して、生物多様性は定量化が非常に難しい。遺伝子まで含めると数百万、それ以上の膨大な数のものを守り、維持していかなければならない。そうなると、データベースやモニタリングが活躍する領域になりますから、ICTなしでは生物多様性を守れない。環境エネルギー研究所には、ぜひそうした観点から生物多様性の基盤の整備をお願いしたいと思います。

松岡 確かに生物多様性は、ICTが関与する部分がたくさんあります。重要なのは、皆が好き勝手に発言するのではなく、共通の認識をもって生物多様性の話ができるか、だと思いますので、LCAと同様、基盤づくり、標準化に力を入れていきたいと思っています。

松野 日本企業の環境報告書やCSRレポートを見ても、生物多様性に関してはまだ「工場の敷地に木を植えました。池をつくりました」あたりに止まっているのが多いのも現状です。NTTグループには、具体的に何ができるかお手本を示していただき、日本の企業の生物多様性への取り組みを今後ともリードしていってもらいたいと思っています。

現在、このページの3分の2程度です。

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スマートグリッドの実現に向けて

松岡 この度の、東日本大震災の影響により、エネルギーの安定供給や再生可能エネルギーについて、改めて国家レベルでの議論が成されています。被災された方々に対しては本当に心が痛みますが、同時に、私たちはグリーンR&Dを推進し、持続可能な社会をICTでリードすることで悲しみを希望に変えていくことが責務であると考えています。 とくに「スマートグリッド」のR&Dに関しては、次世代のビジネス創出基盤という観点からだけでなく、事業を行う前提となるBCP(事業継続計画)を支えるインフラになるという観点から、一層強化していかなければならないと考えています。

対談中の様子の写真を掲載しています。

松野 スマートグリッドの位置づけが変わってきた、ということですか。

松岡 はい。震災前は、スマートグリッドは、実現することでエネルギーを効率化するさまざまなサービスが展開されるビジネス創出基盤として注目されていました。ちなみに、これはインターネットも同じで、普及するに従ってネットワーク自身がビジネスの創出基盤になっていきました。

松野 確かにそうですね。そうしたビジネス創出基盤がBCPを支えるインフラになるというのは、つまりはスマートグリッドの特性である分散発電という発想にあるのですね。

松岡 その通りです。今までの集中発電は、一方向送配電でしたが、スマートグリッドは分散発電です。燃料電池や太陽電池、蓄電池などのデバイスが地域を主管する発電所のみならず、各家庭・各事業所に普及すれば、電気を今より効率的かつ安定的に供給することができるというわけです。

松野 震災でだれもが「一極集中してはいけない」と考えさせられました。東京への一極集中をなるべく分散して、地域にスマートなグリッドとネットワークがあるということが、今後の日本の基盤を支えるうえで重要だと思います。こうした安全・安心の観点からは、電力ネットワークだけでなく、いわゆるテレワークもそうですが、みんなが分散して仕事をしていれば、どこかで災害の被害を受けたとしても、ネットワークさえつながっていれば業務の80%ぐらいは残りの人でカバーできます。これはサプライチェーンに関しても同様です。

松岡 さらにNTTでは今、家庭内の電気を直流化していく実験を進めています。燃料電池も太陽電池も蓄電池も直流なのだから、全部直流で合わせた方が良いのではないかという発想で、交流よりも10%ぐらい省エネになります。そこで、国内約40社に参加いただく「宅内直流給電アライアンス」を組んで、国際標準化をめざしています。また、蓄電池などのデバイスの研究も重要です。今はリチウムが用いられていますが、リチウムは資源問題からは切り離せませんので、ポスト・リチウムつまりリチウムを使わない電池の研究に着手しています。

松野 基盤技術の研究開発に取り組まれているNTTグループの研究所には、大きな敬意を抱いています。企業は最先端を走ることで収益を最大化することを目標にしますが、そうした最先端の技術で国民の安全を支え、環境に配慮したインフラを支えるという、根幹の部分を強化しているところが、NTTグループの研究所の貴重性、ユニークなところだと思います。NTTグループには「THE GREEN VISION 2020」と言わず2050年まで、低炭素社会、循環型社会、生物多様性を推進していただきたいと思っています。

用語解説
ライフサイクルアセスメント(LCA)
製品やサービスの環境負荷を、資源の採取から生産、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの全プロセスで評価する手法
アイルキャッピング技術
空調からの冷気とICT機器からの暖気を物理的に分離し、冷房効率を向上させる技術

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