
NTTグループでは、持続可能な社会づくりに貢献することを目指し、「NTTグループ・エコロジー・プログラム21」を1999年に制定しました。その3つの柱のうちの1つとなっているのが「最先端の環境技術の研究開発」です。その研究分野は、クリーンエネルギー、環境監視システム、低消費電力デバイスなど多種多様な分野に及んでいます。
また、こうした分野の研究にとどまらず、情報通信システムのライフサイクルアセスメントによる環境負荷の検証や、ITサービスの進展による環境貢献の定量的な把握など、情報通信そのものの環境影響評価に関する研究開発も実施しています。
携帯用新型燃料電池を試作
試作したマイクロ燃料電池(左)と水素充填機(右)
NTT環境エネルギー研究所は2005年2月、携帯電話に直接搭載できる水素ガスを燃料とした小型の固体高分子形燃料電池(マイクロPEFC)を試作し、携帯電話の実機で起動・着信・発信などに成功しました。またマイクロPEFCに自動で水素を充填する装置も併せて開発しました。
携帯電話など携帯用電子機器の高機能化・多機能化に伴って、電源となる電池の容量不足が問題になっています。そのブレークスルー技術として環境負荷の少ない燃料電池への期待が高まり、現在は燃料にメタノールを使うタイプの燃料電池の開発が注目されています。しかしメタノールタイプは、発電時に地球温暖化の原因となるCO2が発生し、出力密度が不十分で発電部の小型化が難しいという課題があります。マイクロPEFCは、水素ガスを燃料にすることで発電時のCO2発生がなく、現在のリチウムイオン電池並みの高出力を実現し、サイズのコンパクト化も可能です。
無線LANによる環境・防災監視系システム
情報通信ネットワークが十分に整備されていないところでも、環境や不法投棄などの状態を迅速に収集・監視できるようにすることは重要です。こうした要望に応えるためにNTT環境エネルギー研究所では、マルチホップ無線LANを利用した環境・防災系の監視システムの研究を進めています。
本システムは、約2km間隔に可搬型の無線装置を設置し、多段中継しながら無線ネットワークを拡張できるようになっており、遠距離でのネットワーク監視も可能となります。
このシステムを利用することで、ネットワーク未整備地域に光ファイバなどの有線ネットワークを敷設する場合に対し、工事や消費電力が削減されるため、約99%のCO2削減効果があります。さらに、これらのシステムは緊急時の防災監視においても有効です。

超低消費電力で高速動作する新型の「単電子メモリー」の開発に成功
NTT物性科学基礎研究所は、電子を1個ずつ操作して大容量の情報を記憶することができる新型の「単電子メモリー」の開発に成功しました。電子を1個単位で正確にメモリー領域(下図参照)に送り込み、電子の個数に情報を持たせることにより、素子1つの記憶容量を5倍に高めました。
この「単電子メモリー」では、従来のメモリーに比べ蓄える電子の総数を1万分の1程度に減らせるため、その分消費電力も削減可能で、環境面での負荷低減に役立ちます。また、室温でも動作し、特殊な材料や製法を用いずに既存の半導体加工技術で作製できるなどの特長も備えています。
現在はまだ素子レベルの基礎研究段階ですが、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)やフラッシュメモリーに代わる未来技術として注目されています。

CO2やNOxなどの検出に有効な高性能半導体レーザ光源を開発
2μm超レーザ光源(バタフライモジュール)
NTTフォトニクス研究所とNTTエレクトロニクスは、研究所が培ってきた光通信用光源の設計・製造技術を応用して、2.0〜2.1μmの発振が可能な半導体レーザ光源の開発に成功しました。
2μm超の波長帯には、環境分野において重要であるCO2やNOxなどの物質の光吸収が存在します。しかしこれまでは、この波長帯域で発振する小型で高性能な半導体レーザは存在しませんでした。今回新たに開発した2μm超のレーザ光源は、例えばCO2において、通信波長帯に比べて約2桁吸収強度が強い吸収線を利用できるなど、これまでの半導体レーザに比べ、大幅な感度向上を可能にします。
この2μm超の高性能半導体レーザ光源を、CO2やNOxなどのリアルタイムモニタや、自動車エンジンの排ガス制御システムなどへ利用することにより、従来よりも高精度なシステムを構築することができます。
IP接続サービスの環境効率とファクター
社会が持続的に発展するためには、より少ない環境負荷(例えばエネルギー消費量やCO2排出量など)でより多くの利益や価値を実現しようとする考え方があります。環境効率※1やファクター※2は、環境負荷の低減と価値向上という2つの側面の改善を定量的に表現する指標として提唱されています。
NTT情報流通基盤総合研究所ではライフサイクルアセスメント(LCA)により情報通信サービスの環境影響評価を実施しています。IP接続サービスについて、1秒あたりの情報通信量に関する環境効率とファクターを評価した結果、Bフレッツ、フレッツADSL、フレッツISDNの順に環境効率が優れており、フレッツISDNを基準とするファクターを計算するとBフレッツとフレッツADSLのファクターはそれぞれ2,360と79に飛躍的に向上していることがわかりました。今後もLCAによる環境影響評価を進め、環境負荷の低減と価値向上を目指していきます。

低消費電力化を達成した高臨場大画面を可能にするエンコード技術
NTTサイバースペース研究所は、従来のシステムに比べて消費電力で4分の1、サイズで6分の1という省電力化・小型化を可能にした高臨場大画面映像通信用一体型エンコード構成技術を開発しました。
エンコードとは、映像や音声データを所定のストリームに圧縮する装置のこと。従来のテレビの6倍以上の高精細画像を表示できるHDTV(High Definition TV)をさらに4倍上回る(縦2,160画素×横3,840画素)高臨場大画面映像を実現するためには、エンコードされた情報同士が適切に情報内容を感知して画質のばらつきを防ぐ必要があります。
NTTサイバースペース研究所は、協調符号量制御技術と専用LSIを開発して高画質化を実現しました。また、この専用LSIにより、装置全体の低消費電力化を実現しています。サッカーのサテライトスタジアムへのライブ伝送などが可能になり、記録・再生用途への適用も可能であるため、デジタルシネマ、ステレオ立体TVなどへの活用が期待されています。

環境負荷の低減を図ったシールドルームの開発
個人情報や機密データの保護のためには、データの暗号化などの情報セキュリティ対策、入退室管理などの物理的侵入対策が広くとられています。
最近、新たな対策として注目を集めているのが電磁波盗聴や電磁波攻撃から電子機器を守る「電磁波セキュリティ対策」です。NTTファシリティーズは2004年9月、データセンタなどのサーバ機器類の電磁波セキュリティ機能を高める電磁波シールドルーム「iDCシールドバウルト」を製品化しました。
従来の電磁波シールドは、構築に多額の費用がかかり、長期間の工期が必要で、しかも拡張性がありませんでした。本製品では、19インチキャビネットラックに耐震構造を持たせたうえで、簡易ながらもわずかな隙間からの電磁波漏洩を防ぐ金属パネル接合技術を用いることで、震度6強でも倒壊しない耐震性能を持つ軽量で経済性に優れた拡張性のある電磁波シールドルームを最短1日の設置工期で構築できるようにしました。
また、製造段階−使用段階−廃棄段階にわたった全ライフサイクルを対象とした環境影響評価の結果、iDCシールドバウルトの工法は、既存の工法と比較してCO2換算で排出量が57.1%も削減できることが分かりました。
