NTTグループの技術戦略を統括する片山副社長に、NTTグループの研究開発(R&D)戦略について聞きました。

情報通信市場は様々な変化を遂げています。2012年11月に公表した新中期経営戦略では、グローバル・クラウドサービスを事業の基軸にすることや、ネットワークサービスの競争力を徹底的に強化することにより、収益構造を変革し、今後もNTTグループがお客様に選ばれ続ける“バリューパートナー”となることを掲げています。NTTのR&Dもこの基本方針に沿って取り組んでいきます。
グローバル・クラウドサービスを強化するために、まずは国内のR&D体制を2012年4月に整備しました。具体的には、安心・安全なクラウドサービスを実現するためのセキュリティに関する研究開発に特化した「セキュアプラットフォーム研究所」を新たに設けました。また、効率的にソフトウェア投資を行うとともにソフトウェア開発技術そのものを進化させることを目指し、各研究所に分散していたクラウド技術者とソフトウェアの基本技術者を再結集させた「ソフトウェアイノベーションセンタ」を設置しました。
これらの研究所では、クラウドサービスのためのセキュリティ技術やビッグデータ分析技術を中心に研究しています。セキュリティ技術については、クラウド上のデータの盗難や消失からデータを保護する秘密分散基盤、データの操作や移動を調査・追跡するフォレンジックスなどの研究開発を進めています。また、ビッグデータ分析では、絶え間なく流れてくる大量のデータに対応するリアルタイム分析基盤Jubatusや自然言語処理技術などの研究開発に取り組んでいます。
また、お客様企業のグローバルな活動を支えるサービスの拡大に合わせて、研究開発もグローバル展開を進めています。2013年4月には、ICT(情報通信技術)に関する情報・研究開発が集中している北米において、R&D拠点の拡大・強化を図るため、新会社「NTT InnovationInstitute Inc.」[呼称:NTT I³(アイキューブ)]を設立します。
「まだ形ができていないもの」、「何か新しいもの」を生み出そうとするときには、場所の問題は大事です。北米には、シリコンバレーに代表されるように、先進的な試みをしている企業が集中しています。風土や規制の問題なども考慮し、創造的な刺激が受けられる場所なら、次のステージに立つための努力が存分にできると考えています。
この北米のR&D拠点では、NTT(持株会社)の研究所だけでなく、これまでに買収した企業やグローバルに研究開発を行っているNTTグループ会社とも連携し、グループ全体でセキュリティの研究開発を行う体制を構築したいと思います。
スタート時点の資金として1億USドルを予定しており、当初は30名規模から始め、現地採用も積極的に実施し、できるだけ早期に100名規模の体制を整えていきます。

R&D部門として、NTTグループが保有するネットワークに関連する設備投資や費用を削減するための研究開発にしっかりと取り組みます。加えて、お客様視点での一番使い勝手の良いネットワーク構成と、事業者視点での費用対効果の一番高いネットワーク構成の両面から、固定通信・移動通信のシームレス(境目のない)な新しいネットワーク構成に関する研究開発に取り組んでいきます。
具体的な研究成果の一例として、アクセス系ネットワークについては、光通信に用いる世界最高密度の屋外配線用多心光ファイバケーブルの開発が挙げられます。高密度実装を実現するために新たに開発した光ファイバテープと、曲げによる光損失を抑制した光ファイバを用い、これまでのケーブル構造を抜本的に見直すことにより、光ファイバケーブル内の実装密度を極限まで高めることに成功しました。光ファイバケーブルの高密度化に伴う軽量化および細径化により、敷設作業の効率向上や光ファイバケーブル敷設スペースの有効利用などにより、ネットワークに関連する設備投資や費用の削減が期待されます。また、コアネットワークについては、1チャネルあたり毎秒100ギガビット級の光伝送方式の商用化に続き、世界最高水準の400ギガビット級光伝送技術の実用化に向けた共同研究開発に着手しています。これにより、超高速かつ低消費電力で柔軟性を兼ね備えた経済的なネットワークの実現を目指していきます。

エネルギー消費を減らす“グリーンICT”への取り組みに注力しています。電気通信はエネルギーがないと何もできない産業ですから、自ら節電に取り組み、使命としてエネルギー消費を減らしていかなければなりません。従って、電力への依存度を下げることや低消費電力化に向けた研究開発にも注力しており、例えばONU(光回線終端装置)の低消費電力化に取り組んできました。さらに、ネットワークの高信頼化や消費電力の削減、通信サービス復旧の迅速化を目的とした研究開発についても継続して取り組んでいかなければならないと考えています。
また、これからは太陽光発電装置を各家庭や学校などが設置し、自身で使うエネルギーを生み出し、余ったエネルギーを販売する事例も拡大していくと考えられます。電気自動車の普及なども進めば、エネルギーを作る所、使う所が今まで以上に広範囲にわたるようになります。
それをリアルタイムに制御するにはICTが一番適していますので、こういったところでNTTの技術力を発揮したいと考えています。
新中期経営戦略では、NTTグループがお客様から選ばれ続ける“バリューパートナー”となることを掲げています。クラウドやビッグデータという新しい技術が、世の中を大きく変え得る存在になっており、NTTグループもこの分野で、お客様にパートナーとして選ばれるだけの価値を提供したいと考えています。
クラウドサービスについては、NTTグループの持つ音声認識や言語処理技術を活用し、「しゃべってコンシェル」などの具体的サービスの提供につながるような研究開発を進めてきました。
今後もNTTグループのR&Dを結集し、具体的なサービスを世の中に出していくための研究開発を加速していく考えです。
このため、NTTグループのR&Dは、自社の研究開発力だけに頼る自前主義に固執せず、時には外の知恵も借りる、いわゆる「オープンイノベーション」※の推進を積極的に図っていきたいと考えています。オープンイノベーションを推進し、自社が保有する技術・知的財産と他社が持つ技術・知的財産を組み合わせることで、これまで以上に革新的で魅力あふれるサービスの提供を行っていきます。