株主通信 NTTis 2016.12

特集 B2B2Xビジネスの拡大

2020と地方創生を契機に新たな市場で成長をめざす 取締役 新ビジネス推進室長・2020準備担当 栗山 浩樹

Q
中期経営戦略の柱として「B2B2Xビジネスの拡大」を掲げた背景を教えてください。

B2B2Xビジネスモデル B(Business) NTTグループ[情報システム] [ブロードバンド] B(Business) 企 業 [個人向け情報サービス (例)デジタル映像配信 デジタル物販(チケット、グッズなど)] [企業向け情報ビジネス (例)デジタル広告 デジタル行動分析] 自動車 IoT AI・ビッグデータ X(C・B・G…)個人(Consumer) 企業(Business) 官公庁(Government)

B2B2Xビジネスの拡大により更なる成長をめざす
NTTグループは、これまでも事業構造を大きく変革してきました。市場や技術の変化を踏まえ、中期経営戦略として2004年には「ブロードバンド」、2008年には「グローバル」、2012年には「クラウド」をキーワードに掲げました。2000年度に売上高の約7割を占めていた音声収入が2割以下まで縮小する中、新たな収益源を開拓し、成長してきました。
最近では、産業競争力の強化や地域課題の解決に向けて、ブロードバンドと国内外の情報システムを組み合わせたビジネスこそが、NTTグループが今後の更なる成長を見出せる新しい事業であると考えています。そして、これまでのようにNTTグループのサービスを直接お客さまに提供するのではなく、他分野の事業者や自治体とのコラボレーションを通じて高付加価値サービスを創り出し、個人や企業、官公庁といったさまざまな国内外のお客さまに提供していく。それがB2B2Xビジネスなのです。

Q
2016年7月にJリーグ、DAZN(ダ・ゾーン)との「スマートスタジアム事業」における協業を発表しましたが、具体的な取り組み内容を教えてください。

Jリーグ、DAZN、NTTグループによる
共同記者発表会の模様

スタジアムの「スマート化」を推進
この事業は、ブロードバンドと情報システムを組み合わせて他分野のパートナーとのコラボレーションにより新しい付加価値をお客さまに提供するという点や、将来的に海外展開も含めた可能性を秘めているという点で、私たちがめざすB2B2Xビジネスの象徴的な事業です。
具体的には、全国のJリーグのホームスタジアムに対して、Wi-Fiなどの通信サービスやファンのための映像サービス、バーチャルリアリティをはじめとした新しい技術を駆使したエンタテインメント性の向上など、ICTによる「スマート化」を推進していく事業であり、NTTは既にJ1の大宮アルディージャのホームスタジアムであるNACK5スタジアム大宮で、スマート化を実施しています。高密度なWi-Fiの設置やコンテンツの一斉配信といった通信環境の整備はもちろん、スタジアムにいながらにしてリプレイ動画や特定選手の動きを追いかけてスマートフォンやタブレットで見ることができる映像サービスの提供も行っています。また、スタジアム周辺の飲食店などと連携し、観客向けのデジタルクーポンや、例えば地元のスポーツバーでファンが楽しむためのハイライト映像を配信するなど、地域活性化に寄与する取り組みも進めています。こういった取り組みを、J1クラブのホームスタジアムから順次進めていき、ICTを通じてチームや選手、試合の新たな魅力を発見していただくことでファン層を開拓し、スタジアムへの来場を促すとともに、地域とつながるスポーツ産業の発展に貢献していきたいと考えています。

二つの軸で「スマートスタジアム事業」を展開
今後の進め方には大きく二つの軸があると考えています。一つは、NTTグループ各社が総合力を発揮したリーディングケースを作り上げることです。もう一つは、実際のビジネスケースを積み上げていく中で、必要な機能をプラットフォーム化していくことです。NACK5スタジアム大宮をリーディングケースとして全国展開していく中で、さらにサービスやビジネスが発展していくようなプラットフォームづくりを進めていきます。

スマートスタジアム NACK5スタジアム大宮(大宮アルディージャホームスタジアム) ファン・サポーター 来場者 地域コミュニティ(地域商店街など) スポンサー イベント主催者 / 情報サービス [ファンサービス] ●バーチャルリアリティ子ども教室 ● マイレージポイント など [映像サービス] ● リプレイ ● マルチアングル ● 選手追いかけ など [eコマース(電子商取引)] ● デジタルクーポン配信 など / 情報プラットフォーム [顧客管理システム] ● ポイント ● クーポン ● 決済 など [高密度Wi-Fi、コンテンツ一斉配信 など]

Q
スポーツを核としたB2B2Xビジネスの可能性についてお聞かせください。

日本のスポーツ産業の成長性
今、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」を前に、日本全体が大きく変わろうとしています。政府は日本再興戦略の中で、「スポーツの成長産業化」を掲げていますが、日本のプロスポーツ産業の規模はアメリカの1割程度しかありません。20年前には日本と変わらない規模だったアメリカのプロスポーツ産業は、スタジアムのスマート化などのデジタル投資に早くから着手したことで大きく拡大してきました。映像サービスやeコマース(電子商取引)といったICTサービスの充実により、試合をより一層楽しめるスタジアム環境を整備したことで観客動員数が増加し、それが放映権料の上昇にもつながるという好循環を生みました。私は、日本のスポーツ産業も同じように成長していく可能性があると考えています。

  • NTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ゴールドパートナー(通信サービス)です。

スポーツを核にさまざまな領域へ展開
スポーツを核としたB2B2Xビジネスは、観光や健康など、さまざまな分野へ展開できる可能性を持ったビジネスだと考えています。観光の面では、NTTグループが既に全国に構築しているWi-Fiを活用して、スタジアムやその周辺コミュニティに多様な情報サービスを展開することで、街づくりをサポートしていきたいと考えています。また、健康の面では、スポーツ選手向けの先進的な治療やコンディショニングの手法を、一般の方々の医療や健康増進の場面に活かせるような情報サービスの創出など、さまざまな領域に広げていきたいと思っています。

Q
地方創生の面では、どのようなB2B2Xビジネスの取り組みを進めていますか。

地域課題の解決・街づくりをICTの活用でサポート(札幌市)
札幌市と2015年9月に締結した「さっぽろまちづくりパートナー協定」に基づいて、2016年2月に開催された雪まつりにおける人の動きのビッグデータ分析など、札幌市とともにICTを活用した地域課題の解決に取り組んでいます。また、アジア圏や世界での札幌ブランドの確立に向けて、2017年2月に開催予定の冬季アジア札幌大会について、大会前・中・後を通して市民や観客の皆さんが大会に参画し、盛り上げ、楽しむための仕組みづくりを、先進的なICTを活用してサポートしていきたいと思っています。

観光を軸にさまざまな分野で協働プロジェクトを開始(福岡市)
また、福岡市とは2014年秋から観光を軸にコラボレーションを行ってきました。アジアからの観光客が増えてきている中で、NTTグループは福岡市の訪日外国人旅行客への対応をWi-Fiの整備や、観光情報サービスの提供の面でサポートしてきました。その後、2015年4月に福岡市と包括連携協定を結び、教育や自然エネルギーなど、さまざまな分野で協働プロジェクトを始めています。
Wi-Fiを使った観光情報サービスの取り組みは福岡発で九州全体に広がっており、今では他の地方からも関心をいただいています。3、4年前には「日本ではWi-Fiが使える場所が少ない」との声が外国人観光客から聞かれましたが、Wi-Fiが使えるエリアはこの3年間で一気に広がり、ほぼ全国を網羅しています。

観光情報サービスの提供 [観光×交通×商業×ICT] 〜多言語対応 観光情報、ナビゲーション、デジタルクーポン、フリーWi-Fi認証サービスなど〜 観光スポットの人気度を見える化 / 旅行者の位置や属性などにマッチしたおすすめ観光情報を提案 © OpenStreetMap contributors ※写真提供:福岡市

Q
B2B2Xビジネスの将来の市場規模やNTTグループの業績への貢献について、どのようにお考えですか。

これからの15年間は産業のデジタル化により成長
今後はB2B2Xビジネスのようにブロードバンドと情報システムの間の境界が無くなり、一体的にサービスを提供していくビジネスがますます拡大していきます。そして、一体的なサービスの提供によって、デジタル化が可能となる領域がもっと増えてくると思いますが、デジタル化を進めるにあたってはスマート(いろいろな情報が簡単にとれ、活用できること)とユニバーサルデザイン(年齢・性別・言語・文化などにかかわらず快適に利用できること)が欠かせません。私たちは、B2B2Xビジネスを通じて、インタラクティブ(双方向)な情報配信や多言語対応などの情報サービスを提供し、産業のデジタル化のサポートをしていきたいと考えています。
政府が官民戦略プロジェクトで掲げる成長分野を積み上げると、増加が期待されている市場規模は100兆円近くになりますが、この中にはデジタル化がほとんど進んでいない産業分野が多く含まれていますので、そのブルー・オーシャン(競争の少ない未開拓市場)に先手を打って取り組むことで、大きく成長できるチャンスがあると見ています。
民営化から30年間、NTTグループは成長を続けてきました。初めの15年間は電話などの音声収入が中心でしたが、後半の15年間はブロードバンドで成長してきました。そしてこれからの15年間はブロードバンドと情報システムによる産業のデジタル化で、成長し続けていきたいと考えています。

B2B2X 市場の可能性 (注)「日本再興戦略2016」より 成長分野/増加が期待されている市場規模 スポーツの成長産業化(IT・健康・観光などとの融合・拡大)/ +10兆円 観光立国の実現 / +11兆円 第4次産業革命の実現(IoT・ビッグデータ・AI・ロボットなど) / +30兆円
世界最先端の健康立国へ / +10兆円 環境エネルギー制約の克服と投資拡大 / +10兆円 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 +9兆円

NTTグループならではの強みをシナジーとして発揮
大宮で始まったスタジアムのスマート化がJリーグとの協業によって全国展開していく中、既に海外からも強い関心が寄せられています。また、サッカーだけでなく、さまざまなスポーツの楽しみ方を変えていくことが、街づくりにもつながり、ひいては社会インフラをハード・ソフトの両面で変革していくことにもつながります。ブロードバンドや情報システムにとどまらず、不動産やエネルギーマネジメントなど、幅広い事業ドメインを持つNTTグループならではの強みをより一層発揮できる時代が来ており、グループ一丸となってB2B2Xビジネスに邁進していきます。