株主通信 NTTis 2017.12

特集1 NTTグループのR&D

R&Dによる B2B2Xの価値創造

中期経営戦略「新たなステージをめざして2.0」の三本柱の一つであるB2B2Xモデルへの転換。他分野の事業者や自治体とのコラボレーションを通じてB2B2Xモデルを実現する上で、不可欠なのがR&D(研究開発)の力です。業界・分野ごとに異なる多様なニーズに応え、社会的課題の解決やライフスタイルの変革といった新たな価値の創出を通じて、NTTグループの成長を担うR&D活動をご紹介します。

NTTのR&D

NTTのR&Dは、「世界をリードする技術を生み出し、社会や産業、学術の発展に寄与していく」という理念のもと、3つの総合研究所において約2,500人の研究者により基礎研究からグループ各社のビジネス展開を支える研究開発まで、幅広く多様な研究を行っています。激変するICT分野では、短期の研究開発と中長期の研究開発のバランスを取りながら進めることが重要です。短期の研究開発は、常にマーケットを意識したスピーディな展開を行い、一方、中長期の研究開発は、将来の事業や社会へのインパクトを見極め、信念を持って技術を極めることにより、世界をリードする技術を生み出しています。

R&Dが支えるB2B2Xにおける 新たな価値創出

B2B2Xモデル拡大とR&Dの役割 B:NTTグループ × パートナー[オープン コミュニティ等]×コラボレーションによるイノベーション B:サービス提供者(異業種連携) [メインプレイヤー] 新たな価値創造 X:個人(会員 視聴者 来場者)企業(製造現場 店舗)

NTTが中期経営戦略で掲げるB2B2Xモデルを推進するにあたり、イノベーションが不可欠であり、R&Dはエンジンの役割を果たします。NTTは、多様なプレイヤーが参画し、サービス利用者の選択肢が広がる中で、自らが選ばれ続けるため、様々なパートナーの皆さまと一緒にコラボレーションを進め、新たな価値創出を推進する技術の開発に取り組んでいます。ここでは3つの切り口から、NTTのR&Dが創出した新しい価値の事例をご紹介します。

@新しいビジネス・価値の創造

「コネクティッドカー」の実現を支えるコラボレーション

ICT端末としての機能を有する自動車がネットワークにつながることで多様なサービスの創出が期待される「コネクティッドカー」。NTTは通信事業者として、「IoT(モノのインターネット)」が社会的に注目されるずっと前から、データセンターなどの最適配置やアプリケーションの制御などに関する技術開発を推進してきました。その中で培われた「エッジコンピューティング」といったNTTが保有する「ICTに関する技術」とトヨタ自動車株式会社が保有する「自動車に関する技術」を組み合わせて、将来の持続可能なスマートモビリティ社会の実現をめざしていきます。

NTTグループの技術が支えるコネクティッドカー TOYOTA 自動車に関する技術×NTTグループ ICTに関する技術 トヨタとNTTは、コネクティッドカー分野での技術開発・技術検証 及びそれらの標準化を目的に協業を推進 2018年実証実験予定 データ収集・蓄積・分析基盤 データセンター / エッジコンピューティング 安全 安心 IoTネットワーク / エッジコンピューティング 快適 最適 5G

健康長寿社会の実現に向けたコラボレーション

健康長寿社会の実現に向けては、東レ株式会社と共同開発した新しい機能素材「hitoe®」や、NTTグループのAI(人工知能)関連技術「corevo®(コレボ)」による貢献が期待されます。繊維でありながらも生体情報の計測を行うことができるhitoe®の技術は、医療の現場においては、その安全性と信頼性から、一般医療機器として登録されています。また、リハビリテーションの現場においては、患者にリハビリ用hitoe®ウェアを着用いただき、心拍数や運動中の姿勢などのデータをhitoe®が捉え、その情報をもとに効果的なリハビリプログラムを提供する共同実験を藤田保健衛生大学と進めています。
また、電話事業を通じて蓄積した音声に関する膨大な技術は、コミュニケーションロボットにも活用されています。雑音を取り除くことで音声認識性能の向上をめざす音声強調技術に加え、ユーザーの発話意図を理解し自然な対話を実現する自然言語処理技術などが、ロボットには難易度の高い「雑談対話」を可能にし、高齢者との対話を促進することで認知症の予防に貢献することが期待されます。さらに、ロボットと家電機器や健康機器などの他のICT機器を組み合わせてロボットサービスの高度化を可能にする「R-env:連舞®」を開発するなど、様々な生活改善の実現をめざした取り組みを進めています。

健康長寿社会の実現 [早期回復] hitoeの活用による効果的なリハビリテーション リハビリ患者のモニタリング 効果的なリハビリプログラムの立案 [認知症予防]コミュニケーションロボットの活用による高齢者との対話促進 利用者を覚えて自然な対話 corevo:対話履歴 ユーザー情報データベース / 対話知識データベース [生活改善] ロボットと様々なデバイスの連携 corevo, R-env 多様なデバイスを連携・制御 家電機器、照明、健康機器等、ロボット

「おもてなし」を支えるコラボレーション

訪日外国人、高齢者ならびに障がいのある方など、誰もがストレスなく過ごせるバリアフリーの世界をICTで実現する「おもてなし」においてもNTTの技術が活躍しています。羽田空港では、スマートフォンをかざすだけで知りたい情報が利用者の母国語で提示される「かざして案内TM」サービスを実証実験しています。また、おにぎりなどコンビニエンスストアの陳列棚の商品にスマートフォンをかざすだけで、お客さまが商品を手にとることなく必要な情報を得られるシステムの共同実験を株式会社セブン&アイ・ホールディングスと開始するなど、「かざして」情報提供を行う取り組みを推進しています。
このほか、遠隔地でもあたかもその場にいるような臨場感を体感できるイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!®」を使って、歌舞伎などの伝統芸能の公演のほか、アーティストの音楽イベント模様などを遠く離れた会場にリアルタイムで伝送し、臨場感高く再現するなど、今まで体験したことがないような新感覚のライブパフォーマンスを通じて、新たな感動をお届けしています。

おもてなしに貢献する技術 空港での「かざして案内」 かざすだけ 案内情報:案内板の多言語訳、目的地への地図… コンビニエンスストアでの情報提供 かざすだけ 商品情報:商品説明、原材料、食物アレルギー情報… 訪日外国人にも安心

A経営効率化・リスクマネジメント

NTTグループのAI関連技術「corevo®」や新機能素材「hitoe®」は、既存業務の効率化やリスクマネジメントにも活用されています。corevo®の「聞く技術」「聞き分ける技術」「理解する技術」は、雑音下での音声認識や多言語、方言や特殊なイントネーションの識別に加え、日本語特有の多様な表現や話者の感情までをも理解する能力を備えています。言葉少なく静かに怒っている気持ちもcorevo®はきちんと読み取ることができます。このようなcorevo®の技術が認められて、損害保険ジャパン日本興亜株式会社のコンタクトセンターにcorevo®の音声認識技術を活用した「ForeSight Voice Mining®」というAI音声認識システムを導入いただく予定となっています。
また、安心・安全な業務運営を支援するリスクマネジメントの視点では、hitoe®を作業着に組み込むことで、hitoe®が読み取る生体情報をもとに、夏場の作業現場などの厳しい環境下における作業者の体調管理や安全管理を行うサービスを、東レ株式会社や株式会社大林組と開発しています。

思考・行動の支援による業務効率化、安心・安全な業務運営の支援 [コンタクトセンターにおけるAIソリューション] 音声認識技術・感情認識技術・発話理解技術(FAQ検索) お客さま→コンタクトセンター:音声や感情を認識して通話傾向を分析 通話に応じたFAQを自動検索→通話音声ログ(corevo) / [従業員の体調管理と安全確保] 機能素材hitoe→生体データ、各種センサーデータ→リアルタイム監視→従業員への指示、安全性改善 等

Bサステナブルな事業運営を支えるネットワーク

B2B2Xモデルを実現していく上ではネットワークも不可欠です。IoTの進展に伴いさらに多くの「モノ」がつながっていき、社会インフラとしてもネットワークの重要性がより一層増していく一方、投資の効率化や労働人口減少に伴う保守要員の減少への対応なども同時に必要とされており、従来の運用方法からの転換が求められます。NTTでは、サステナブルな運用を構築するために、ネットワーク機能をソフトウェアで効率的に実現する革新的な取り組みを推し進めています。また同時に、ネットワークの開発についても、Google Inc.やFacebook, Inc.などとともにコンソーシアム活動などを推進し、技術の共通化や共同開発による開発・投資コストの削減にも取り組んでいます。

未来に向けたR&D

ここまで応用技術を中心に紹介してきましたが、NTTは基礎研究も重視して研究開発に取り組んでいます。なぜなら、現在様々なAI関連技術をNTTグループが保有できているのは、過去数十年の長い基礎研究・開発の歴史の上に発展しているからです。その観点では、今役立つ技術のみを研究開発するのではなく、5〜10年後に役立つ基礎研究にもバランス良く取り組んでいく必要があると考えています。
今現在進めている基礎研究の一つが、光を使った新しい仕組みのコンピュータの研究です。既に従来型のスーパーコンピュータはすばらしい計算速度を誇っていますが、このスーパーコンピュータを使っても解くことが難しい問題があります。例えば、「組み合わせ最適化問題」とされている問題は、通信ネットワークの最適化や創薬などに利用できると期待されています。創薬では、様々な元素の組み合わせで効能などが変わるため、その効能を計算機で予測することで創薬開発の効率を劇的に上げることができます。しかし、構成元素が増えるほど、その組み合わせ方は天文学的に増えてしまうことから、現代コンピュータでは最適な組み合わせを選び出すことは極めて困難でした。こうした新しいコンピュータの登場が、将来、交通渋滞の解消や新薬の開発、さらには最適な生産計画の立案など、様々な社会的課題の解決に役立つことを期待しています。

アスリートのパフォーマンスの構成要素 従来のスポーツ科学の主なターゲット [体:筋力 心肺機能 障害予防] スポーツ脳科学プロジェクトのターゲット [技:巧みな協調運動 正確な状況把握 瞬時の意思決定] [心:やる気 緊張・リラックス 駆け引き] アスリートの脳の情報処理を理解し、脳を鍛える

また、もう一つの基礎研究の事例として、スポーツ脳科学の研究があります。スポーツで重要とされる「心・技・体」のうち、従来のスポーツ科学の研究では主に「体」の部分が注目されていますが、本研究では、科学的に解明されていない部分が多く、脳と密接な関係のある「心・技」に焦点を当てています。優れたアスリートの脳はどのように精神状態を調節し、身体運動を制御しているのか、脳の情報処理を解明することで、勝つための「心」と「技」を支える脳を鍛えることをめざしています。東京六大学野球選手や元プロ野球選手、ソフトボールの日本リーグ選手などの協力を得て、様々な実験に取り組んでいます。例えば、優れた打者の動作を詳細に分析すると、投手の手から球が離れた0.1秒後までに、打者の脳はとるべき身体の動きを判断していることが分かりました。ウェアラブルセンサーなど最先端の情報通信技術を活用しながら、アスリートが持つ潜在的な脳情報処理メカニズムの解明に取り組んでいます。
こうした基礎研究が実際にサービスとなって開花するまでには、何年もの時間がかかります。しかし、こうした研究の中に、将来、社会システムを大きく変えるイノベーションの種が秘められていると考えられています。

NTTでは今後も、事業領域の拡大も含めてNTTグループの成長エンジンとしてR&Dにしっかりと取り組み、更なる企業価値向上へと努めてまいります。