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建物の延命化に貢献する小径ドリル型削孔試験機を用いたコンクリート強度試験方法の開発

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国内インフラの老朽化が社会問題と位置付けられている昨今において、建築物の適切な保存・修復方法を選定するための建物の延命化に関する技術開発は、今後重要性が高まっていくものの1つです。NTTファシリティーズでは、建物の延命化の取り組みの1つとして、鉄筋コンクリート造建築物(RC建物)への損傷が極めて少ない小径ドリル型削孔試験機を用いた構造躯体コンクリートの圧縮強度試験方法を開発しました。ここではその概要を紹介します。

高経年RC建物の状況と問題点

NTTグループが保有する通信用建物の建設のピークは高度経済成長時であり、1960年代後半から1970年代後半にかけて大量に建設されています。これらの建物の経過年数は50年を超えるものが急増する状況です(図1)。また、この年代に大量に建設された鉄筋コンクリート造建築物(RC建物)は日本国内全体でコンクリートの優良材料が不足し、品質において影響を受けているといわれています。
一般的な長期継続利用の建物は、これまでに数回、使用用途の変更や機能維持、経年劣化に伴う改修工事によって維持保全(メンテナンス)されますが、中には過酷な自然環境下等において、ほとんどメンテナンスが実施されておらず、建物の安全性が脅かされる状態のものもあります。

図1通信用建物の建設年別ビル数

図1  通信用建物の建設年別ビル数

建物の延命化に必要な性能および問題点

建物を維持継続するために必要な性能には、防災性、耐震性、耐久性、耐火性、快適性等さまざまなものがあります。特に地震が多い国内では、地震に対する強さを表す耐震性が比較的注目されています。また、長期に使う建物ほど、年月の経過による傷みの進みにくさを示す耐久性が重要になります。陸上競技に例えていえば、ハードルなどの障害(地震)に左右されず走りきる短距離ランナーに必要な能力が耐震性能、一方、障害(雨・風を含む自然環境)があっても、故障なく無事に走りきれる長距離ランナーに必要な能力が耐久性能といえるかと思います。
建物延命化にまず必要になるのが継続利用する建物が現時点でどれくらいの耐久性能を有しているかという現状把握です。しかし、現場で施工することが一般的なRC建物においては、前述の建設時代の背景などの影響により、新築時の施工会社の品質管理はもとより、セメント・骨材・鉄筋等材料の選定・供給方法に加え、立地環境条件等さまざまな要素により、現地で簡易に耐久性が判定できないのが現状です。特に多数の建物を所有するオーナー様からは、耐久性調査・診断を比較的精度良く、低廉・迅速かつ安全に把握できる現地調査手法が求められています。

これまでの耐久性調査・圧縮強度試験

従来の耐久性調査では、主にコンクリート躯体の壁面をコア抜きして圧縮強度等を調査する方法(コア採取法)を適用しています。具体的には、直径100mm程度のダイヤモンドコアボーラーを用いて壁面を掘削する方法が用いられており、壁面躯体等に穴を空けて実施し、その後、その採取した試験体を公的試験機関へ持ち込み圧縮強度試験を実施します(図2)。この方法には、事前にX線探査等で適切に埋設物探査を実施しないと、調査時にコンクリート内に埋設された鉄筋や配管を切断してしまうというリスクがありました。
また、この方法は現地でコアを採取する日には圧縮強度が分からず、後日、公的な試験機関での圧縮強度試験結果が著しく低いなどの異常が確認された場合には、再度、調査が必要になり、全体的な調査コストアップにつながる要因になります。

図2コア採取法による圧縮強度試験

図2  コア採取法による圧縮強度試験

提案する小径ドリルを用いた新たな調査方法

コンクリートに用いられている砂利や砂などの骨材はセメント部分に比べて強度が十分に強く、コンクリートの圧縮強度はセメント部分に依存するといわれています。そこで従来技術(1)を基に、セメント部分の強度からコンクリートの圧縮強度を測定することができる、小径ドリル型削孔試験機を用いたコンクリート強度試験方法(ドリル法)を開発しました(図3)。
このドリルの先端のビットはわずか直径3mmで一定の押し当て力・トルク値で深さ10mm程度削孔するだけで圧縮強度の測定が可能となります。これは従来のコア採取法(直径100mm)の寸法差約30分の1(体積比:約2万分の1)になります(図4)。
このドリル法の大きなメリットは短期間で現地でも圧縮強度の確認が可能なうえ、構造躯体・外壁への影響が極めて少ないことです。また、削孔径・深さが小さいため、X線撮影による埋設物確認が不要で、従来のコア採取法に比べて調査場所の制約を受けにくく、調査後の補修も簡単になります()。

図3小径ドリル型削孔試験機を用いたコンクリート強度試験方法

図3  小径ドリル型削孔試験機を用いたコンクリート強度試験方法

図4コア採取法とドリル法の寸法(サイズ)の違い

図4  コア採取法とドリル法の寸法(サイズ)の違い

表 作業内容の比較(4〜5階建のビルを想定)

作業内容の比較(4〜5階建のビルを想定)

このドリル法はもともとレンガや石材などの比較的均一な建築材料を評価するものでした。NTTファシリティーズではその技術を応用し、耐震性・耐久性調査で実施したコアサンプルを用いて、これまで約50ビルの圧縮強度試験を実施し、従来のコア調査技術との精度比較を行い、RC建物へのスクリーニング調査技術として、ドリル法の圧縮強度試験方法を開発しました。
ドリル法による圧縮強度試験は、耐久性診断および耐震性診断共に適用が可能であり、NTTファシリティーズは、今後も耐震・耐久性調査時に合わせて検証調査を継続実施し、さまざまな実構造物のデータを蓄積することにより、さらなる精度向上をめざしていきます。

今後の展開

今回はコンクリート建物への耐震・耐久性調査に適用可能なドリル法を用いた新たな圧縮強度の試験方法について紹介しました。今後は、耐久性調査にて実施する中性化調査、かぶり厚さ調査等の非破壊調査の技術開発を進め、調査精度の向上と、さらなるコストダウンを図ることで、建物の継続利用に向けた技術の普及をめざします。

■参考文献
  • (1) 藤森・長谷川・畑中・青木・朴:“小径ドリル型削孔試験機の改良とコンクリートへの適用のための検討、”日本建築学会技術報告集、Vol.23, No.53, pp.25-30, 2017。

◆問い合わせ先
 NTTファシリティーズ
  研究開発部 データマネジメント部門
  TEL 03-5669-0853
  FAX 03-5669-1652
  E-mail uesawa22ntt-f.co.jp

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