Event Reports

「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」開催報告

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池邉 隆(いけべ たかし)†1/ 加藤 英男(かとう ひでお)†1/ 村元 厚之(むらもと あつゆき)†1/ 久田 正樹(ひさだ まさき)†2/ 堀田 健太郎(ほった けんたろう)†3/ 坂井田 規夫(さかいだ のりお)†4


NTT研究企画部門†1
NTTサービスイノベーション総合研究所†2
NTT情報ネットワーク総合研究所†3
NTT先端技術総合研究所†4

NTTは2018年11月26〜30日の5日間にわたり、NTT武蔵野研究開発センタにて、「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」を開催しました(26日、27日はプレスおよびNTTグループ社員向け内覧会)。ここでは本フォーラムの開催模様を紹介します。

フォーラム概要

NTTグループは“Your Value Partner”として、パートナーの皆様方とともに社会的課題の解決をめざしています。社会的課題の解決がデジタル化・スマート化された社会の実現へ貢献するものと考えています。「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」では、その取り組みに資する最新の研究成果について講演・展示を行いました。本年度は、“Trans-forming Your Digital Visions into Reality”をコンセプトに最新の研究成果を展示しました。

講演・ワークショップ

11月28日の基調講演では、澤田純 NTT代表取締役社長が、「Smart Worldの実現に向けて」と題して、グローバルな活動として、ローカルな社会(グローカル)の課題をデジタルトランスフォーメーション(DX)で解決する取り組み「スマートワールド」の実現に向けて、パートナーと連携し推進していくことを宣言し、各産業分野での現在の取り組みを紹介しました。ラスベガス市、デルテクノロジーズ社との最先端技術を活用した「スマートシティ」の取り組み、松竹株式会社との伝統芸能とICTを融合した「スマートエンタテインメント」、アクセンチュア株式会社をパートナーとして、コンビナートの生産性向上に取り組むJSR株式会社との「スマートマニュファクチュアリング」、自動運転を実現する基盤技術を開発するトヨタ自動車株式会社や船舶IoTプラットフォームを実現する日本郵船株式会社と株式会社MTIとの「スマートモビリティ」を紹介しました。さらに、NTTグループの中期経営戦略「Your Value Partner 2025」として、グローバルな競争力強化に向けたNTTグループのグローバルビジネス成長戦略について、顧客ビジネスの進化をサポートするとともに革新的創造に取り組むとし、研究開発の強化、グローバル化を行っていくことを表明しました。最後に、自らのDXを進め「Your Value Partner」となるべく邁進していくことを宣言し、講演を終えました(写真1)。
続いて、川添雄彦 NTT 取締役 研究企画部門長により、「世界をSMARTに、技術をNATURALに」と題して、「人がより人間としての価値を高める、人と地球に心地よい世界」をビジョンに、ナチュラルに技術を発展させていくNTT R&Dの方針を示しました。その中の象徴的な取り組みの1つとして、人を取り囲む環境が自律的に連携し、人との自然なやり取りが可能になる世界の実現をめざした、新たなプロジェクト「Point of Atmosphereプロジェクト」の発足を発表しました。続いて、R&Dによる世界一、世界初、世界に驚きを与える革新的な技術を生み出すために、パートナーとともに社会や産業のDXによる課題解決を通じて、スマートワールドを実現する「R&D for SMART WORLD」の取り組みを紹介しました。最後に、イノベーションを加速する取り組みとして、「研究成果のグローバル展開」「研究ターゲットのグローバル化」「海外に研究拠点を設立」の3つの施策を示し、海外の研究拠点として、量子計算科学の基礎研究に取り組むNTT Φ Laboratories、暗号情報理論の基礎研究を行うNTT CIS Laboratories、生体情報処理の基礎研究を行うNTT MEI Laboratoriesの3つの研究所を新たに設立することを表明しました(写真2)。
2018年度は、11月29日に2つ、11月30日に1つの特別セッションを開催しました。まず、Dimension Data Australia社のChief Technology OfficerであるDebra Bordignon氏が「Co-Innovating to Accelerate Trans-formation and Create New Value」と題し、オーストラリアで、パートナーとともに新しい価値を創造するClient Innovation Centre(CIC)での取り組みを紹介しました。Deakin大学、FLAIM Systems、Dimension Dataと共同で、実際の火災現場に近い状況をつくり出し訓練を可能とする仮想現実(VR)を活用した消防士訓練シミュレータFLAIM Trainer®に、NTTが開発したhitoe®を導入、取得した生理学データを活用することで、消防士を危険にさらすことなく効果的な訓練が可能となりました(写真3)。
続けて、岡本龍明 NTT フェローが「多様性とCOE - NTTの暗号研究:視覚障がい研究者ダッタ博士と語る」と題し、NTTセキュアプラットフォーム研究所が暗号分野において世界的に評価されている研究拠点、COE(Center of Excellence)であることを説明、その秘訣は多様性にあるとの考えを示しました。1988年に初めて外部の研究者を招聘して以降、ほぼ毎年国内外問わず多くの研究者を受け入れてきており、2015年以降だけでも、延べ55名20カ国以上の研究者が在籍してきた実績を挙げました(写真4)。代わって、Pratish Datta博士が登壇し、岡本フェローとの出会いからNTTの研究環境、生活の様子を紹介、世界中から集まった暗号研究の精鋭の研究者と最高の環境で研究できること、自然と助け合う環境であることを紹介しました。視聴覚障がい者でもあるPratish博士は、研究活動に対する十分なサポートが得られていることを述べるとともに、理論的かつ実用的で洗練された暗号の開発をめざし、これからもNTTで研究を続けていくことを表明しました(写真5)。
翌日には、everis社のChief Dis-ruption OfficerであるMarc Alba氏が「Leading in the Age of Digital Disruption」と題し、現在の世界は、銀行、医療、自動車、小売を含めすべての業界が再発明される状況であるとし、既存技術の改善ではなく、本質的な課題を解決する「革新的創造」が必要とされているとの認識を示しました。そのうえで、NTTグループで進めている革新的創造の取り組みとして、これまで、サービス提供者に委ねていた個人情報の所有権を個人に取り戻し活用することで新しいビジネスを創出するコンセプトを提案しました(写真6)。以上の講演によりNTT R&DやNTTグループの取り組みを紹介し、聴講されたお客さまからは好評をいただきました。

写真1 澤田純社長講演

写真1 澤田純社長講演

写真2 川添雄彦取締役講演

写真2 川添雄彦取締役講演

写真3 Debra Bordignon氏講演

写真3 Debra Bordignon氏講演

写真4 岡本龍明フェロー講演

写真4 岡本龍明フェロー講演

写真5 Pratish Datta博士講演

写真5 Pratish Datta博士講演

写真6 Marc Alba氏講演

写真6 Marc Alba氏講演

研究成果展示

NTT R&Dフォーラム2018(秋)では、6つの展示テーマ「メディア & UI(User Interface)」「AI(人工知能)」「IoT(Internet of Things)」「ネットワーク」「セキュリティ」「基礎研究」を掲げ、124件の最新の研究開発成果を展示しました。NTTグループで取り組んでいる技術やパートナー企業とのコラボレーション成果も多数展示し、基礎研究分野から商用化に至った技術まで幅広い展示となりました。
各研究開発の成果を効果的に見ていただくために、展示テーマを主体にした展示会場だけでなく、展示テーマを越えて「スマートワールド」の取り組みを紹介する展示会場を新たに設置しました。これらの会場を中心に、趣向を凝らしたデモンストレーションや展示を来場者の方にご覧いただきました。

メディア&UI

(1) 新たなUXを創るメディア技術
高臨場感通信技術「Kirari!®」では、新たな感動の創出をめざしたシアター型展示に加え、競技空間を丸ごと伝送し、競技空間を四方からリアルタイム中継での観戦できる「Kirari! for Arena」、窓口業務の高臨場感化、4K×4によるスポーツワイド合成・経済化など利用シーンに合わせたラインアップを要素技術と併せて紹介しました(写真7)。
(2) 202Xを彩るUI技術
身近な移動を安心・便利にサポートする「ダイバシティ・ナビゲーション」の実現に向けて、高齢者や障がい者などの歩行者移動支援に必要なバリアフリー情報を低コストに収集・更新する技術や歩行ガイド技術を紹介しました。また、ロボットによる自然なプレゼンを実現するための技術などを紹介しました。

AI

(1) 人を支えるAI
ロボットが人の言葉を正確に聞き取り、自然な対話を実現した「インタビュー対話ロボットtotto」、音声ならではの非言語情報(話者属性・感情・意図)を認識するエンジン「RexSense®」、お客さまとオペレータの通話音声の音声認識を行い、応対内容からシーンの推定、主題や用件など定義した要点をリアルタイムに抽出する技術などを紹介しました(写真8)。
(2) 社会を支えるAI
不特定多数の人が出入りする大規模商業施設において、AIを用いた空調制御によって、快適さを保ちながら空調コストを削減する技術、イベント時や観光・交通などさまざまな分野の誘導計画に対して、学習型人流シミュレータによる誘導策を提示する技術など、人の動きに基づき最適な制御を行うAI技術などを紹介しました。
(3) 基盤技術
Deep Learningの高速化を実現する学習基盤技術や膨大な空間情報データを画像群に変換して圧縮する技術、AIを配信しネットワークの適切な場所で動作連携させる技術などを紹介しました。

IoT

(1) Sense、 Connect & Drive
ヘルスケア分野をはじめ、さまざまな分野で活用領域を広げている機能素材「hitoe®」の技術や電波の届きにくい場所にあるセンサ端末からデータを確実に収集する技術など、モノから読み取ったコトをデジタル化し伝送する技術を紹介しました。
(2) Data & Software Logistics
製造、自動車、船舶の分野において、多種多様な機器とアプリケーション間の高速なデータ交換を実現するIoTデータ交換技術や大量のデータを低遅延に処理するためのリアルタイムな分散処理を実現するエッジコンピューティング技術などを紹介しました。
(3) Analytics & Prediction
監視区域近隣のマイクロデータセンタでの分析により、迅速なインシデントの検知と対応を実現する公共安全ソリューション、救急事案が発生しそうな地域・時間を予測し、救急隊を最適配置する救急隊運用最適化など、ビッグデータ解析と深層強化学習を組み合わせた最新の成果を紹介しました(写真9)。

ネットワーク

(1) 柔軟で高速なネットワーク
5Gの次を担う無線伝送技術や多様なニーズに応じたネットワークを生成するネットワークスライスなど、大容量化を支える技術や多様なサービス要件に対してネットワーク機能を最適に提供する技術などを幅広く紹介しました(写真10)。
(2) 迅速にサービス提供・復旧するネットワーク
サービス申し込みや故障などのさまざまな運用イベントをSLA(Service Level Agreement)に基づいて判断することで、ゼロタッチオペレーションや計画保守の範囲を最大化する運用技術やICTシステムの自動的な障害対応をめざし、監視・分析・制御・復旧の各フェーズで、Network-AIによるオペレータ業務を支援する技術などを紹介しました。
(3) ネットワーク・ITソリューション
ラスベガス市の公共安全ソリューションを支える「APIオーケストレータ」や他社とのコラボレーション展示など、ネットワーク機能を活用するソリューション例やサービス開発に今すぐ活用いただける技術を紹介しました。

セキュリティ

未知のサイバー攻撃に対する検知技術や個人情報匿名化技術など、サイバー攻撃への対策強化とデータ利活用社会の早期実現に貢献する、守りと攻めの先端セキュリティ技術を紹介しました(写真11)。

基礎研究

存在を意識させないデバイスをめざしている「透ける電池」、ことばの発達がゆっくりな子の特徴を明らかにする「幼児語彙発達分析技術」、難問を桁違いの性能で解く「LASOLV向けミドルウェア技術」、塗るだけで構造物の状態変化をセンシングする「塗装式劣化センシング技術」など、未来を見据え新原理・新概念の創出をめざした最先端の基礎研究を紹介しました(写真12)。

写真7 メディアとUI

写真7 メディアとUI

写真8 AI

写真8 AI

写真9 IoT

写真9 IoT

写真10 ネットワーク

写真10 ネットワーク

写真11 セキュリティ

写真11 セキュリティ

写真12 基礎研究

写真12 基礎研究

フォーラムを終えて

海外を含めより多くのお客さまにご来場いただけるように、開催時期を従来の春から秋へ変更し、1万5000名を超えるお客さまをお迎えすることができました。海外を含め多くのお客さまにご来場いただけた背景には、NTTのR&Dへの期待感の高まりがあるものと考えています。実際に現場やアンケートを通じても、R&Dに対する多数の期待の言葉をいただきました。皆様からいただきましたR&Dに対する強いご期待にこたえられるよう、今後も基礎研究ならびに新技術の開発や展開に一層努力してまいります。

村元厚之/加藤英男/池邉隆/坂井田規夫/久田正樹/堀田健太郎
(左から)村元 厚之/加藤 英男/池邉 隆/坂井田 規夫/久田 正樹/堀田 健太郎

◆問い合わせ先
 NTT R&Dフォーラム事務局
  E-mail rdforum-info-mlhco.ntt.co.jp

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