from NTT西日本

NTT西日本R&Dセンタにおけるデータの価値を高める取り組み

PDFダウンロードPDFダウンロード

NTT西日本は「企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進」「社会が抱える課題の解決」にICTを活用して取り組み、企業活動や人々の生活をより豊かにすることをめざしています。R&Dセンタでは、センサデータや既存のデータから価値を生み出す技術や、データ活用を身近にする技術の研究に取り組んでおり、社内外と連携したトライアルを通して、実フィールドへの適用や実用化にも取り組んでいます。ここではそれらの取り組み事例について紹介します。

データ活用への期待と難しさ

経済発展と社会課題の解決を両立し人間中心の社会をめざすSociety5.0では、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ロボット等の各技術の活用、業務や生活への適用が重要になります。特にIoT、AIの活用では人とモノ、モノとモノがつながり、新たな価値が生まれ、必要な情報が必要なときに提供される社会となります。NTT西日本でも新サービスへの期待の高まりを受けて、IoTやAIを活用した業務効率化やサービス創造に取り組んでいます。R&DセンタはIoTやAIを活用したさまざまな研究開発やトライアルに取り組んでいますが、社会生活や業務の現場への適用が容易ではないケースがあることも分かってきました。
例えば、行動やバイタルに関するデータ収集においては、デバイスの装着が必須となるケースが大半を占めています。しかし、生活の現場では利用者の装着忘れや、見守りが必要な利用者からの抵抗など、正確で緻密なデータ収集がままならない場合もあります。
収集したデータの活用においては、学習モデルを構築する際、大量の学習データと正解ラベルを準備する必要があります。しかし、十分なデータ量を確保できない場合もあります。また、業務の現場で長年にわたって蓄積されてきたデータは、AI導入を前提とせずに収集されており、統一的な表現になっていなかったり、そもそも正規化が困難な形式で蓄積されていたりする場合もあります。
R&Dセンタでは、AI活用を阻むこれらの要因に対応する技術の研究に取り組んでいます。より多様なデータを収集し、既存データと組み合わせたり、AIを意識せず蓄積してきた既存データをAI活用に適したものにすることでデータの価値を高め、Society5.0の実現を早められると考えています。ここでは、取り組み事例のいくつかについて紹介します。

さまざまなデータを容易に収集する取り組み

鏡に映るだけで健康チェック

社会課題の1つである生活習慣病に対して、「未病ケア・予防」等のニーズが高まっており、脈拍数等のヘルスケアデータの計測に関する取り組みが進んでいます。従来は脈拍数等の計測にはウェアラブルデバイス等のセンサーを身に着けることが必要でした。そこで、R&Dセンタでは、センサーを身に着けることなく容易に計測できるように、体温や脈拍数の非接触センシングに取り組んでいます。
現在は、脈拍の強弱を連続してセンシングし、脈波として計測する技術の研究に取り組んでいます。脈波を計測することでさまざまな値の推定値を算出できる可能性があることが最近の研究で明らかになっています。例えば、脈波から加速度脈波を算出しその形状を分析することで、「動脈硬化の進行具合」を推定できます(図1)。
脈波の計測には、撮影したカメラ画像を解析し、ノイズ除去、補正をする技術を採用しています(図2)。高精度な脈波を計測することでより正確な1次推定を実施し、鏡に映るだけで健康状態のチェックや生活習慣の提言ができる技術の実用化をめざしています。運輸業や製造業の工場、保育園、病院等、多数の人の安心・安全にかかわる業種においては、出社時の体調スクリーニングに活用できると考えています。

図1 脈波から推定できる項目

図1 脈波から推定できる項目

図2 カメラによる脈波推定技術

図2 カメラによる脈波推定技術

既存のデータを活用して学習データを準備する取り組み

施工写真から安全性を確認するAIの構築

業務の現場でのAI活用においては、NTT西日本グループの多様な業務でAIを活用し、効果の高いものをお客さまにも提供していくのが理想的です。R&DセンタではAIを活用した社内業務改善の一環として、施工写真からはしごやコーンなどの器具が正しく設置されているかを判定する「安全確認AI」の構築に取り組んでいます。しかし、既存の施工写真はAI活用を意図して蓄積しておらず、データ量が十分でないケースもあります。一方で、AIを構成する深層学習モデルの構築には、大量の学習データ(画像と正解ラベルの組)を準備する必要があります。
そこでR&Dセンタでは、「転移学習」や「データ拡張」を活用した、効率的な深層学習モデル構築技術の確立と、実データを用いた評価に取り組んでいます(図3)。
「転移学習」とは、ある問題を効率的に解くために、別の関連した問題のデータや学習結果を活用する技術です。転移学習により、大量の一般物体(車、植物、動物など)画像を用いて学習した特徴抽出器を、はしごやコーンの検出に利用することで、検出精度が向上します。
「データ拡張」とは、画像処理によってデータを水増しする技術です。これらの技術により、100枚程度の学習データから数千枚以上の学習データを用いた場合と同等の精度の深層学習モデルを構築可能とすることを目標にしています。
将来的には、社内業務の改善に向けたAI導入だけでなく、お客さまのAI導入のハードルの1つとなっている「正解データの準備」「深層学習モデル構築」等のプロセスを効率化し、AI活用の幅を広げたいと考えています。

図3 少ないデータからのAI学習モデル構築を実現する2つの技術

図3 少ないデータからのAI学習モデル構築を実現する2つの技術

既存のデータを業務の現場でAI適用に活用する取り組み

FAQ自動生成

NTT西日本の業務の中でもAI適用ニーズが高いものとして「コンタクトセンターにおけるヘルプデスク業務」が挙げられます。しかし、コンタクトセンターで長年にわたり蓄積されている対応履歴データはオペレーターごとの独自表記や省略表現などが膨大にあるケースがあります。これまでは頻度の多い問合せや対応方法を、スキルの高いオペレーターが手動でFAQ化していました。
R&Dセンタでは、FAQの自動生成に着目し、corevo®の技術を活用して既存の応対履歴データ(音声やテキスト)からFAQの候補となる質問(Q)および回答(A)を自動生成する技術の研究に取り組んでいます(図4)。
具体的には、問合せ内容を既存のFAQと比較するための「多様な表現の類似度を判定する技術」および、FAQを整形するための「表現のゆらぎを吸収する技術」の確立に取り組んでいます。
「多様な表現に対する類似度を判定する技術」については、テキストコーパスや大規模な意味辞書から学習した意味ベクトルを用いて、2つの文章(テキスト)どうしの同一性を算出する方式を用います。
「表現のゆらぎを吸収し、言い換えをする技術」については、対応履歴データの話し言葉に含まれると想定される日本語の表現のゆらぎについて、単語レベルおよび文字列レベルの正規化と変換を組み合わせ、FAQに向いた文章への整形を実現する方式を用います。これらの技術を確立することで、既存データの表現を統一的に正規化し、AI活用に適したものにすることをめざしています。

図4 コンタクトセンターにおけるFAQ自動生成

図4 コンタクトセンターにおけるFAQ自動生成

マニュアル検索の高速化

コンタクトセンターにおけるヘルプデスク業務では、FAQを参照するだけでなく、詳細な問合せに対してマニュアルを参照する業務もあります。マニュアルには料金表や仕様表といった表形式で記載される情報も多く、表の内容まで検索可能なシステムが望まれています。
R&Dセンタではcorevo®の技術を活用して深層学習により作成した表構造モデルを基に表の種別を自動判別し、質問に該当する表中セルをピンポイントで提示する技術の確立、中でも、「表を含む文書構造を理解した検索、表示の実現」と「マニュアル分割の自動化」などの技術に取り組んでいます。
「表を含む文書の構造を理解した検索、表示」では、深層学習により作成された表構造モデルを用いて表種別を自動判定します。図5のように、「サービス対応機器利用料」の表において「サービス対応機器」の「月額料金」が「無料」であると表の内容を理解することにより、質問に該当する表中セルをピンポイントで提示することが可能です。
質問文と回答候補の意味の近さで検索するため、マニュアル中の回答候補となる内容を意味ごとに分割することで検索精度が上がります。
「マニュアル分割の自動化」では、文書を数値化(ベクトル化)して、類似度を測定し、分割・結合を行うことで、膨大な量のマニュアル分割を自動化します(図6)。
これらの技術を確立することで、少ない稼働でコンタクトセンター業務の高度化や応対品質向上、顧客対応時間を短縮します。

図5 表構造モデルを用いた表種別の自動判定

図5 表構造モデルを用いた表種別の自動判定

図6 マニュアル分割の自動化

図6 マニュアル分割の自動化

今後の展開

ここでは、さまざまなデータをより簡易に収集し、既存データを整形したり応用したりすることでデータの価値を高めるR&Dセンタの取り組みについて紹介しました。
紹介した取り組みでは、技術検討や現場でのトライアルを推進する中で、さまざまな課題も浮かび上がってきています。今後は社内外と連携し、1つひとつの課題を解決しながら実際のユースケースへの適用を拡大し、技術的な知見を蓄え、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

◆問い合わせ先
 NTT西日本
  技術革新部 R&Dセンタ 開発推進担当/ユーザサービス担当
  TEL 06-6450-6451(受付時間:平日9:00〜17:00)
  E-mail ks-jimu-rdcwest.ntt.co.jp
  ※電話番号をお確かめのうえ、お間違いのないようお願い致します。

ページトップへ