NTT Technology Report for Smart World

「NTT Technology Report for Smart World」の発表について

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上野 晋一郎(うえの しんいちろう)/ 前田 裕二(まえだ ゆうじ)/ 松野 恭士(まつの やすし)/ 芝 宏礼(しば ひろゆき)

NTT研究企画部門

NTT研究企画部門では、テクノロジーをナチュラルな存在に変え、世界を「スマート」にしていくための11のテクノロジーとR&Dの先進的な取り組みについてまとめた「NTT Technology Report for Smart World」を2019年5月9日に発表しました。この中では、革新的なネットワークの構想「IOWN」を提案しています。本稿では、本レポートの概要を紹介します。

スマートな世界とナチュラルなテクノロジーのために

わたしたちは、これからの世界を「スマート」に、その世界を支えるテクノロジーを「ナチュラル」なものにしていきたいと考えています。テクノロジーを発展させればさせるほど、これまでバラバラだったデータ/作業/人/産業はどんどん結びついていき「スマート」になっていくでしょう。領域を超えた結びつきはこれまでなら生まれ得なかった新たな共創を可能にし、その結果さらにスマートな世界は加速していきます。
スマートな世界では、老若男女や職業、人種を問わずあまねく人びとがテクノロジーの恩恵を受けられる必要があります。そのために、テクノロジーは「ナチュラル」なものでなければいけません。現在わたしたちが先端的なテクノロジーに触れる際はそれを使っていることを意識せざるをえませんし、ときには専門的な知識が求められる場合もあります。しかし、それではテクノロジーの恩恵を受けられる人と受けられない人の格差が生まれてしまうでしょう。だからこそ人びとが意識できないほど「ナチュラル」な存在になることがテクノロジーには求められているのです。

スマートな世界をつくる11のテクノロジー

わたしたちは技術をナチュラルな存在に変え、世界をスマートにしていくために11のテクノロジーを選定しました。すでに研究が進みさまざまな領域で実用化に取り組まれているテクノロジーから、これから大幅に伸びることが期待される萌芽期のテクノロジーまで。その11のテクノロジーがいかにスマートな世界をつくり上げるのかご紹介します。

01. 人工知能

いまや人工知能(AI)の「見る」「聞く」「話す」といった基本的な能力は実用レベルに達しつつあります。そのうえで、これからのAIは「価値観」を処理できる必要があるとわたしたちは考えています。多様な価値観に合わせていくつもの選択肢を提示できるAIは、より複雑な問題に対しても複数の解を提示し人間の思索を深めてくれるはずです。

02. 仮想現実/拡張現実

現在すでにさまざまなサービスやプロダクト、コンテンツが発表されている仮想現実/拡張現実(VR/AR)を、今後さらに広範な領域へ自然に導入していきたいとわたしたちは考えています。視覚のみならず聴覚や触覚、力覚、温度感覚などその他の感覚へアプローチしたり、リアルタイムの高速データ処理によって「空間」そのものを遠く離れた場所へ配信できる技術(Kirari!)にも取り組んでいます。

03. ヒューマン・マシン・インターフェース

スマートな世界のなかでアップデートされていくのは、プロダクトやシステム、サービスだけではありません。わたしたちはHMIの研究を通じて、「Point of Atmosphere(PoA)」のように人間と環境、ロボティックデバイスをナチュラルに組み合わせようとしています。現在構想している新たな技術があれば、人が失ってしまった身体機能の代替や通常は感知できない情報の活用も可能となります。

04. セキュリティ

ネットワークやIoTの普及によってサイバーテロのリスクが高まるなか、これまで主流だった「受動的」なセキュリティは日々進化するサイバー攻撃との「いたちごっこ」に陥りがちです。わたしたちはサイバー攻撃に対して能動的に対処する「アクティブディフェンス」に注力しています。サイバー攻撃に対して先んじて対処できる新たなセキュリティ技術が確立されるからこそ、スマートな世界はその真価を発揮できるのです。

05. 情報処理基盤

「スマートな世界」にとって、次世代型の情報処理基盤はいわば「インフラ」と呼べるテクノロジー。急速に進化していくテクノロジーをきちんと活用するためには、それに合わせて情報処理基盤も整備されなければいけません。膨大な量の情報をリアルタイムに処理するためのスケーラブルデータ処理技術や、業界を超えたデータの利活用を進めるために高効率なデータマネジメント技術の開発が現在進展しています。

06. ネットワーク

業界を越えてあらゆるプレーヤーが協業し膨大な量の情報が飛び交うスマートな世界は、新たなネットワークなしに成立しえないものです。より大容量、低遅延で、より強固かつ柔軟なネットワークであると共に、年々爆発的に増加している消費電力問題を解決する低消費電力なネットワークであるべきです。そのため、わたしたちは、ネットワーク全体のオール光化に注力し、新たなネットワークの実現を目指しています。

07. エネルギー

あらゆる産業のシステムを駆動させるために必要となるエネルギーはスマートな世界の「社会基盤」といえるでしょう。わたしたちも、環境に優しく大容量なだけでなく「インテリジェンス」をもつかのごとくみずから自由に流通しうるエネルギーの開発に取り組んでいます。そのために分散するエネルギーを仮想的に統括する「仮想発電所」によって効率的なエネルギー流通を行ない、同時に新たな電力ネットワークの研究にも着手しています。

08. 量子コンピューティング

従来のコンピュータをはるかに上回る性能を発揮することが期待されている量子コンピューティング技術は、ほぼすべての産業において活用されていくでしょう。わたしたちの量子コンピューティング研究も、「LASOLV」のように通常の量子計算とは異なる新たな概念が導入されています。こうした進化によって、単に高速・高度な情報処理が可能になるだけでなく、情報処理技術そのもののあり方が変化する可能性が生まれています。

09. バイオ・メディカル

生物学や化学の進展とともに、バイオテクノロジーも着実に進化を続けています。わたしたちも近年取り組みが加速しているのはバイオ・メディカルケアの領域。「hitoe」のような機能素材開発を行なうほか、2019年にはディーキン大学とウェスタンシドニー大学などオーストラリアの機関とパートナーシップを締結し今後も加速していきます。

10. 先端素材

これからの素材は固定的なものではなく、環境に合わせて柔軟に変化していく多機能素材が主流となっていくはずです。スマートな世界を構築するためには人々の多様なニーズに応えパーソナルな機能開発が求められるため、高速な素材開発も必要となるでしょう。わたしたちもまた、「先端薄膜材料」など実現が進んでいる素材を活用することで、より柔軟かつ多機能な独自の素材を生み出すことを目指していきます。

11. アディティブ・マニュファクチュアリング

3Dプリンティングが例に挙がることの多いアディティブ・マニュファクチュアリングは、今後より「パーソナル化」していくことでスマートな世界に欠かせないテクノロジーとなるでしょう。工業製品や建築資材のような構造物だけでなく、骨や臓器といった人間の「身体」さえも自在に製造可能とする「バイオプリンティング」、時間・状態の遷移に関する情報を盛り込むことで自己修復を可能にする「4Dプリンティング」も注目すべき技術。こうした技術が進化することで、よりパーソナルな製造が可能となるのです。

スマートな世界のスマートなわたしたち

11のテクノロジーが進化していくことによって、わたしたちの世界はこれから「スマート」なものになっていくでしょう。わたしたち一人ひとりの生活がスマートになるのはもちろんのこと、企業のあり方やそのビジネス、さらには社会全体がテクノロジーによって大きく変わっていくのです。本編では「すべてがパーソナルに」、「サービスが変わる、サービスに変わる」、「社会課題の解決へ向かって」の三つの視点で分析しています。

What's IOWN?

NTT R&Dは、新しいテクノロジーの研究開発に取り組むとともに産業競争力の強化や社会的課題の解決を目指しています。こうした世界をつくっていくためには、テクノロジーがより「ナチュラル」なものでなくてはいけません。そのためには人が無意識のうちに高度なテクノロジーの恩恵にあずかれるようにすること、そして一人ひとりの違いに合わせてテクノロジーを利用できるような環境をつくり上げることが必要となります。
このような将来像に向けて、NTT R&Dでは、新たなネットワーク構想として、IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)に取組んでいます。IOWNはフォトニクス技術をベースにした大容量、低遅延、かつ柔軟性、消費電力に優れた革新的なネットワークです。IOWNにより我々が世界をどう変えていくのか今後にご期待ください。

さ い ご に

NTT研究企画部門では今後も毎年テクノロジーの動向とNTT R&Dの戦略と取り組みについてまとめ発表していきます。また、今回発表した資料につきましてはNTT持株会社HP(1)よりダウンロードしていただくことが可能ですので是非ご覧ください。

■参考文献

上野晋一郎/松野恭士/芝宏礼/前田裕二
(左から)上野 晋一郎/松野 恭士/芝 宏礼/前田 裕二

テクノロジートレンドとNTT R&Dの動向をまとめた 「Technology Report for Smart World」冊子を発行しています。お客さまとのコミュニケーション等へ活用いただければと思います。

◆問い合わせ先
 NTT研究企画部門
  R&D推進担当/R&Dビジョン担当
  E-mail technology_report-mlhco.ntt.co.jp

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