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「つなぐコラム」“地球にちょうどいい暮らし方”

第2回 気候変動問題と私たちにできること池原 庸介

第1回のコラムでは、エコロジカル・フットプリント(人間活動による地球への負荷)は増加の一途を辿っており、現在私たちは「地球1.6個分」の生活をしていることを紹介しました。この地球1.6個分のエコロジカル・フットプリントの中で最も大きな割合を占めているのが「二酸化炭素吸収地」です。これはつまり地球にとって、排出される二酸化炭素による負荷が大きいことを意味しています。と同時に、温室効果ガスである二酸化炭素による地球温暖化が、極めて大きな地球環境問題となっていることも示しています。

近代において工業化が進む前は、二酸化炭素の排出量と吸収量の収支が合っていたので問題は生じませんでした。ところが産業革命以降は、石炭や石油など、二酸化炭素を排出する化石燃料を大量に燃やすようになり、排出量と吸収量の収支がずれてきました。現在では、人間活動による二酸化炭素の排出量は、地球が吸収できる量の2倍を超えています。地球が吸収しきれない二酸化炭素は大気中にたまり続け、温暖化がどんどん進行していく、というのが温暖化の仕組みです。

グラフ:増加が続くエコロジカル・フットプリント[出典:グローバルフットプリントネットワーク]

増加が続くエコロジカル・フットプリント[出典:グローバルフットプリントネットワーク]

2016年にクウェートで摂氏54度、米国デスバレーで52度を記録するなど、世界全体で温暖化が進んでいます。日本でも、2013年に高知県四万十市で国内の観測史上最高気温である41度を記録したのを覚えている方も多いと思います。新しい気象用語として「猛暑日」が使われるようになったのは2007年の4月からです。猛暑日とは1日の最高気温が35度以上の日のことを言いますが、同じ年の7月には、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で、当時の観測史上最高となる40.9度を記録しました。温暖化の進行とともに猛暑日の日数も増えていくと予測されています。

さて、日本では「地球温暖化」という言葉が使われることが多いですが、国際的には「気候変動」と呼ばれることが多いです。温暖化が進むとただ暑くなるだけではなく、気候システムも影響を受け、干ばつや熱波、大雨などの異常気象のリスクが高まるためです。

たとえば2012年、米国で歴史的な大規模干ばつが起こり、穀物の生産が大打撃を受け、欧州でも熱波が続きました。その一方、中国北部の北京や天津などでは、猛烈な豪雨による大洪水が深刻な被害をもたらしました。このように気候変動というのは、単に気温が上昇するだけに留まらず、極端な気象現象を引き起こすようになること、さらには穀物の生産量の低下や生物多様性の喪失、世界経済への損失など、気候や気象だけでなく私たちの暮らしにも幅広い影響をもたらすことを忘れてはなりません。

ところで最近、温暖化による影響の顕著な事例として、北極海の海氷が減少しているという報道をよく目にします。海氷の減少によって、北極海に新航路が開けたり海底資源が獲得できたりなど、新たな機会につながるといった話もありますが、良いことばかりを考えていても大丈夫でしょうか。実は、海氷が大きく減少すると、温暖化を加速してしまう恐れがあるのです。

地球の平均気温が何らかの原因で上昇すると、水の蒸発が促され大気中の水蒸気の量が増えます。すると、北極域では降雪が増えて、北極海の海氷も成長します。海氷は太陽の光の大部分を反射し、宇宙空間へと逃がします。北極海の海氷が成長すると、太陽光の反射量が増加し、結果として気温を下げる効果をもたらします。つまり北極海の海氷は、地球の平均気温が上昇した場合に、それを和らげる役割を担っているのです。

というのが、地球の収支が合っている場合です。

ところが、人間活動による急激な気温上昇は、北極海の海氷を成長させるどころか、逆に海氷を溶かしどんどん減少させてしまいます。海氷が溶けると海水が表面に現れます。海水は、海氷とは反対に太陽光の大部分を吸収するため、地球上に熱が蓄えられ、温暖化を加速させるのです。つまり、今後さらに気温が上昇していくと、気温の上昇を和らげていた北極海が、その気温の緩和機能を徐々に失い、逆に気温の上昇を加速させる側へと変わっていく恐れがあるわけです。

平均気温が上昇、大気中の水蒸気増加、極域の降雪増加、北極圏の氷が成長、気温が低下、緩和。

北極海の海氷による気温の調整機能
[出典:WWFジャパン]

平均気温が上昇、大気中の水蒸気増加、極域の降雪増加、北極圏の氷の成長が止まる、北極圏の氷が減少、気温が更に上昇、温暖化の加。

温度上昇が急激だと、海氷は成長しない
[出典:WWFジャパン]

気候変動を食い止め、地球の収支を合わせるために、私たちにできることは何でしょう。

二酸化炭素を減らすことは、石炭や石油を使う量を減らすことです。まずは、エアコンの設定を緩めにする、使わない電気は消すなどの簡単な省エネ活動から始めてみてください。電球をLEDに代える、電気自動車を選ぶなど、より省エネ性能の高い商品を選ぶことも大切です。さらに一歩進んで、温暖化対策に積極的に取り組んでいる企業の製品を優先するといった選び方にも挑戦してみてください。

今後、日本もパリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいこうとしています。皆さんもそうした国の動きに注目し積極的に行動してみませんか。

池原 庸介(いけはら ようすけ)

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 気候変動・エネルギーグループ プロジェクトリーダー。
自動車メーカーで環境関連業務に従事した後、英エディンバラ大学において、気候変動科学の研究(炭素循環)に従事。2008年から現職。企業の温暖化対策ランキングプロジェクトやScience Based Targets(SBT)、クライメート・セイバーズ・プログラムなどを通じ、主に気候変動分野における企業協働に取り組んでいる。グリーン電力証書制度 運営委員。法政大学人間環境学部 非常勤講師。

写真:池原 庸介(いけはら ようすけ)
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