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「つなぐコラム」 “人と自然”

第6回 ぶんぶんバチはどこへ行く?道家 哲平

みなさん、ハチ(蜂)と聞いて何を想像するでしょうか。「刺す」「怖い」という言葉を想像する人もいれば、ハチミツの甘さを思い出す食いしん坊の人もいるかもしれません。童謡「ぶんぶんぶん」が頭に浮かんだ(あるいは、口ずさんだ)人も多いのではないでしょうか。

この童謡「ぶんぶんぶん」は、もともとチェコ西部のボヘミヤ地域の童謡で、歌に出てくるハチは、ミツバチの仲間という説と、マルハナバチの仲間という説があります。人を刺すこともあるスズメバチのように、つるっとしていて細長の怖い顔つきとは異なり、両者とも毛が生えていて丸みをおびた体型と顔をしています。マルハナバチのほうがミツバチよりやや大きく、ブーンという羽音が目立ち、かつ、穏やかな性格という点が歌の雰囲気によくあうため、私はマルハナバチ説を推しています。

マルハナバチの仲間の写真

マルハナバチの仲間(写真:奥山雄大)

マルハナバチは、欧米ではとても愛される存在です。ハリウッド映画「トランスフォーマー」に登場する、人類の味方となる愛嬌あるおしゃべりなロボットの名前は、英語でマルハナバチを意味する「バンブルビー(Bumblebee)」です。同じく映画「ハリー・ポッター」にも、マルハナバチに由来する名前を持つ重要な人物が出てきます。それは、主人公ハリー・ポッターが通う魔法学校ホグワーツ校長「ダンブルドア」先生です。ダンブルドア(Dumbledore)とは、古いイギリス英語でマルハナバチのことです。原作者J・K・ローリングは、鼻歌を歌いながら学校を歩き回る校長先生をイメージして、マルハナバチの名前をあてたと説明しています。

マルハナバチには、ある特殊能力があります。マルハナバチもミツバチも、花粉を花から花へと運び、受粉をさせるという重要な役割を生態系の中で担っています。ですが、ミツバチでは花粉を取り出せない植物があります。それは、トマトやブルーベリーの仲間です。マルハナバチは、ブーンという羽音を生み出す羽の振動によって、トマトやブルーベリーの花からも花粉を集めることができるのです。美味しいトマトケチャップやブルーベリージャムが私たちの食卓にあるのは、マルハナバチのおかげなのです。

世界には250種のマルハナバチの仲間が確認されています。しかし、このマルハナバチも、絶滅の危機にあるのではないかと言われています。欧州ではすでに調査が行われ、欧州に生息するマルハナバチの仲間の4分の1が絶滅危惧種ということがわかっています。アメリカでもほぼ4分1が絶滅危惧種ではないかと言われています。農薬による影響、気候変動による気温上昇によって、マルハナバチの住みやすい環境が減ったことが原因と考えられていますが、正確なところはまだ良く分かっていません。

国際自然保護連合(IUCN)では、調査のために寄付を集めながら、急ぎ全種を調査することをめざして活動しています。このIUCNの調査で、絶滅危機の原因も突き止められるのでないかという期待が高まっています。

「ぶんぶんぶん」という羽音が聞こえたら、ちょっと注目してみてください。生態系や私たちの暮らしを支えてくれている可愛いマルハナバチに出会えるかもしれません。

道家 哲平 (どうけ てっぺい)

公益財団法人 日本自然保護協会 経営企画部 副部長

国際自然保護連合(IUCN)日本委員会 副会長 兼 事務局長

生物多様性条約の NGO における第一人者。国際的な情報収集・分析を行い、生物多様性保全の底上げに取り組んでいる。特に、国内では、2020 年までに日本から愛知ターゲットの達成を目指し、企業や団体、自治体など多分野のセクターのネットワーク化を行いながら、地域や企業の生物多様性戦略、「にじゅうまるプロジェクト」などを推進。 大学院で研究していた哲学という異色の専門を活かし、世界の自然保護の問題を理解し、日本の課題・解決策に活かす、「世界のコトを日本のコトに」をモットーに奮闘中。プライベートでは、かわいい子どもたちの子育てが趣味という3児のパパ。

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