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「つなぐコラム」 “人と自然”

第7回 合言葉は「Nature For All」道家 哲平

「人と自然の関わりがどんどん失われている」という危機感のもと、「自然の楽しさ、大切さを伝えたい」という思いは、日本だけでなく、世界各国の自然保護に関わる人々が共有しているものです。先進国・途上国を問わず、当たり前のようにあった身近な自然が、ビルなどのコンクリートに変わり、河川には工場や家庭からの排水や廃棄物が流れ込み、子どもの遊び場・大人の憩いの場が失われるということが、これまでに起こってきましたし、今も起きているところもあります。

日本では、1960年代中ごろから1980年代にかけて、急速に都市が拡大し、同時に河川環境の悪化、大気汚染も全国で広がりました。都市で育った40代くらいの方は、夏の盛りには毎日のように光化学スモッグ注意報が町中に響き、外遊びを控えるよう注意された記憶があるのではないでしょうか。

その後は環境に関するさまざまな規制が行われ、現在では、大気・水質の汚染状況は大幅に改善されましたし、さまざまな自然保護の取り組みも行われるようになりました。

しかし、子どものときに「川は汚染されているので近づいてはいけない」と言われ、自然の中で遊び、自然とふれあう機会をもてなかった世代にとって、次の世代に自然との関わり方を伝えることは簡単なことではないでしょう。こうして「人と自然との関わりの喪失」が、次世代、次々世代へと引き継がれてしまう可能性があります。

最初に書いたように、これは日本に限らず世界的な課題となっています。IUCN(国際自然保護連合)では、「Nature For All(あらゆる人々に自然とのふれあいを)」というキャンペーンを2016年に立ち上げました。人と自然のかかわりを取り戻すため、自然の面白さや不思議さを体験する機会を世界各地で作ろうというキャンペーンです。

アメリカの人口15万人弱の都市フォートコリンでは、「10分歩けば自然と出会える町」を目標とした緑の町づくりが始まりました。

東欧のアルメニアでは、太陽の子どもエコクラブという子ども向け写真教室を開催しています。毎年100人の子どもが、レンズを通して今まで見たことのない自然を発見しようというプログラムに参加しています。

フィリピンでは、絶滅の恐れのあるワニについての教育プログラムを、小中学校で実施しています。怖いのでいなくなれば良い、という悪いイメージではなく、ワニは「自然豊かな地域の象徴であり、地域の誇り」であると教えるこのプログラムでは、どうすれば人は変化を恐れないようになり行動をするようになるかといった、行動科学などの最新の社会科学の知見も活かされています。この教育プログラムは、地域で12頭にまで減ってしまっていたワニが、15年で100頭にまで回復するという成果を出しました。

(公財)日本自然保護協会も、「Nature For All」の日本のパートナーとして多くの取り組みを行っています。例えば、子育て中のママやパパを対象とした、子どもに自然の面白さや不思議を伝えるチカラを磨くセミナーのほか、障がいのある人でも一緒に参加できる自然観察会(ネイチュアフィーリング)の開催にも力をいれています。また新しい取り組みとして、在留外国人や海外からの観光客に対し、日本の自然観や自然との付き合い方を楽しく体験しながら学べるツールを製作し、その普及活動にも努めています。

自然観察会の様子の写真

自然観察会の様子の写真

自然観察会の様子(写真提供:日本自然保護協会)

自然と身近にふれあってもらえるように、私たち(日本自然保護協会)に限らず、日本全国でさまざまな活動が行われています。第3回 変わる動物園のコラムでお話したように、動物園や水族館でもいろんな取り組みが行われています。

合言葉は「Nature For All」。みなさんも自然とふれあってみませんか。

道家 哲平 (どうけ てっぺい)

公益財団法人 日本自然保護協会 経営企画部 副部長

国際自然保護連合(IUCN)日本委員会 副会長 兼 事務局長

生物多様性条約の NGO における第一人者。国際的な情報収集・分析を行い、生物多様性保全の底上げに取り組んでいる。特に、国内では、2020 年までに日本から愛知ターゲットの達成を目指し、企業や団体、自治体など多分野のセクターのネットワーク化を行いながら、地域や企業の生物多様性戦略、「にじゅうまるプロジェクト」などを推進。 大学院で研究していた哲学という異色の専門を活かし、世界の自然保護の問題を理解し、日本の課題・解決策に活かす、「世界のコトを日本のコトに」をモットーに奮闘中。プライベートでは、かわいい子どもたちの子育てが趣味という3児のパパ。

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