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「つなぐコラム」 “人と自然”

第2回 つかめるか!?ウナギの未来道家 哲平

「ウナギのように掴みどころがない」という比喩があります。文字どおりにぬるぬるの体が掴みにくい、というだけでなく、ウナギは正体不明の謎の動物と考えられてきました。そんなウナギの正体がつかめてきたのは、2000年以降のとても最近のことなのです。

ウナギの仲間は世界に16種います(ということが学問的に確立したのも、つい最近の2009年ごろでした)。私たちの口に入るウナギは、この16種のうち、主にアメリカウナギとヨーロッパウナギとニホンウナギの3種です。アメリカウナギ、ヨーロッパウナギの産卵場所は1920年代には分かっていたのですが、ニホンウナギは、2005年に東京大学海洋研究所が初めて発見するまで、産卵場所も分かっていなかったのです。

2013年7月名古屋山崎川の野生のうなぎ写真

2013年7月名古屋山崎川の野生のうなぎ(写真提供:日本自然保護協会)

ウナギを夏に食べる習慣は古く、万葉集(7世紀中ごろ)の歌にまでさかのぼります。そこから、21世紀までの1400年近く、私たちはウナギを食べ続けてきました。この1400年の間、どこで卵を産んでいるかも分からなかったというのですから、掴みどころがない(謎が多い)という比喩ができるのもなるほどと思います。

まだまだ謎が多いウナギですが、分かってきたこともたくさんあります。ウナギは、毎年4月から8月ごろにマリアナ諸島近くの海で産卵・孵化し、太平洋の海流に乗って日本や東アジアの海辺にやってきます。海岸、河口、川、さらには、湖、沼などで数年から十数年かけて40〜50センチ以上の大きさに成長した後、また海流にのって産卵場に向かい繁殖をする、という一生を送ります。

このようにウナギの暮らしぶりが分かってきた一方で、2008年にヨーロッパウナギが、2014年にニホンウナギとアメリカウナギが、IUCNレッドリストで「絶滅危惧種」に分類され、危機的な状況にあることも分かってきました。ニホンウナギはこの30年の間に、控えめに見積もっても個体数が50%以上減少しています。

ニホンウナギの回遊イメージ(図提供:日本自然保護協会)

ニホンウナギの回遊(図提供:日本自然保護協会)

IUCNは、個体数の減少の一番の理由を捕獲のし過ぎ(人間が取り過ぎている)としています。自然で捕り過ぎているなら、養殖したウナギだけ食べればよいと思うかもしれません。しかし、ウナギは、繁殖させ、卵をとり、孵化させ、成長させるという完全な養殖はまだ研究段階です。今の養殖ウナギは、シラスウナギというウナギの幼魚を河口や川で捕まえて、生簀のなかで効率的に大きくしているだけで、自然から捕るのとなんら変わらないのです。

技術が進めば、いずれウナギの完全養殖はできるようになるでしょう。しかし、捕獲のし過ぎ以外にも、生息地の損失、回遊ルートの障害、汚染が減少の原因になっているとIUCNは説明しています。つまり、ウナギが住める自然豊かな(汚染されていない)川や湖沼がなくなってしまったことに加え、ウナギが住める新たな場所(回遊ルート)もなくなっていることが問題であると指摘されているのです。

早淵川(神奈川県)(写真提供:日本自然保護協会)

早淵川(神奈川県)(写真提供:日本自然保護協会)

物事が急激に上がっていくことを「うなぎ上り」といいますが、実際のウナギは、川の堰(用水路などへ水を取るためなどに作られる、水をせき止める構造物)の高さが40センチより高くなるとそこから上流に登ることが難しいということも分かってきました。

(公財)日本自然保護協会では、身近な川がウナギも上流に登れる川かどうかを観察する「自然しらべ」を、たくさんの方と一緒に進めています。

2017年の土用丑の日は7月25日と8月6日。「暑い、ばてた、ウナギ食べたい」というだけでなく、ウナギの正体をつかむ「自然しらべ」に、みなさんもウナギ目線で参加してみませんか。

まだまだその正体を掴みきれないウナギですが、ウナギが暮らせる川や海のある未来を掴めるかどうかは、私たちの手にかかっています。

※子どもからお年寄りまで誰もが気軽に参加できる自然環境調査。毎年、しらべるテーマを変えながら実施しています!
自然しらべ2017 うなぎ目線で川・海しらべ!当該ページを別ウィンドウで開きます

IUCNやレッドリストについては、前回のコラムを参照ください。

道家 哲平 (どうけ てっぺい)

公益財団法人 日本自然保護協会 経営企画部 副部長

国際自然保護連合(IUCN)日本委員会 副会長 兼 事務局長

生物多様性条約の NGO における第一人者。国際的な情報収集・分析を行い、生物多様性保全の底上げに取り組んでいる。特に、国内では、2020 年までに日本から愛知ターゲットの達成を目指し、企業や団体、自治体など多分野のセクターのネットワーク化を行いながら、地域や企業の生物多様性戦略、「にじゅうまるプロジェクト」などを推進。 大学院で研究していた哲学という異色の専門を活かし、世界の自然保護の問題を理解し、日本の課題・解決策に活かす、「世界のコトを日本のコトに」をモットーに奮闘中。プライベートでは、かわいい子どもたちの子育てが趣味という3児のパパ。

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