ページの先頭です。
コンテンツエリアはここからです。

「つなぐコラム」 “人と自然”

第3回 変わる動物園道家 哲平

絵本や図鑑に出てくる生きものが歩き、えさを食べる様子を目の前で楽しめる、子どもに人気の場所である動物園。幼稚園や小学生の遠足コースの定番にもなっています。最近では、テレビやインターネットで簡単に珍しい生き物を見ることもできますが、やっぱり実物を見たいという方も多いのではないでしょうか。誰もが一度は行ったことがあるであろう動物園が、今、自然保護の拠点へと変わりはじめています。

動物園を、遊園地などのように、テーマパークのひとつと考える人も多いかもしれません。確かに、動物園がつくられはじめたのは、珍しい生き物を見たいという人間の好奇心を満たすためでした。近代的な動物園の始まりといわれるオーストリア・ウィーンのシェーンベルン宮殿動物園(1752年設立)は、女帝マリア・テレジア(世界史の教科書にもでてきます)のために作られたと言われています。

しかし、時代が進むにつれ、「自然の中で生きていた動物を、人間が勝手に連れてきて見世物として楽しんでよいのか」「動物園とはどういう存在であるべきなのか」という議論が生まれます。このような議論を通じ、1960年ごろから一部の動物園が野生生物の保全に力を入れるようになっていきます。1993年には、世界中の動物園・水族館が加盟する世界動物園水族館協会(WAZA)が、世界動物園保全戦略を発表しました。自然保護活動の強化を打ち出したこの戦略は、全世界の動物園・水族館に対し、「環境教育・絶滅危惧種保護・研究」の機能を高めることを呼びかけています。

上野動物園の白熊写真

上野動物園のホッキョクグマ
(写真提供:日本自然保護協会)

多摩動物園のイヌワシ写真

多摩動物園のイヌワシ
(写真提供:日本自然保護協会)

日本各地の動物園で、動物の姿形を見せる「形態展示」に加え、自然界での振舞い(に近い行動)を見せる「行動展示」(旭山動物園が有名です)や、夜に活動する動物の姿を見るナイトZoo、園内の絶滅危惧動物を学習する解説ツアーなどが盛んに行われています。これらは環境教育の一環として実施されています。

ツシマヤマネコ、ライチョウなどの絶滅危惧種を飼育・繁殖させ、自然界に戻す事業も環境省などと協定を交わしながら実施されています。上野動物園・多摩動物園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園を運営する東京動物園協会では、募金を集め、調査や保全活動を行うNGOを支援する基金も運営しています。

企業やNGOなどと連携した活動も展開されています。例えば日本自然保護協会と多摩動物園の連携による絶滅危惧種のイヌワシをテーマにしたセミナー・ワークショップや、国際自然保護連合日本委員会と大阪市天王寺動物園の連携による生物多様性の大切さを伝えるイベントなどが開催されています。

多摩動物園でのイベント写真

多摩動物園でのイベント
(写真提供:日本自然保護協会)

大阪天王寺動物園でのイベント写真

大阪天王寺動物園でのイベント
(写真提供:日本自然保護協会)

日本では毎年4,000万人が、そして世界では毎年6億人が、動物園に訪れているといわれています。この動物園を訪れるたくさんの人たちに対し、動物への理解や愛着をもつきっかけをつくり、危機的状況を伝え、そして動物たちを守るための行動を呼びかけることを動物園がはじめています。

9月20日から26日は、動物愛護週間です。それにあわせ、体験や学習イベントを企画する動物園も数多くあります。みなさんも「動物園」に行ってみませんか。

道家 哲平 (どうけ てっぺい)

公益財団法人 日本自然保護協会 経営企画部 副部長

国際自然保護連合(IUCN)日本委員会 副会長 兼 事務局長

生物多様性条約の NGO における第一人者。国際的な情報収集・分析を行い、生物多様性保全の底上げに取り組んでいる。特に、国内では、2020 年までに日本から愛知ターゲットの達成を目指し、企業や団体、自治体など多分野のセクターのネットワーク化を行いながら、地域や企業の生物多様性戦略、「にじゅうまるプロジェクト」などを推進。 大学院で研究していた哲学という異色の専門を活かし、世界の自然保護の問題を理解し、日本の課題・解決策に活かす、「世界のコトを日本のコトに」をモットーに奮闘中。プライベートでは、かわいい子どもたちの子育てが趣味という3児のパパ。

フッタエリアはここからです。