ページの先頭です。
コンテンツエリアはここからです。

NTT Network Innovation Laboratories NTT未来ねっと研究所

組織紹介

マイクロ波無線LAN(マルチユーザMIMO技術)

●どんな技術?

 従来の無線通信システムでは、電波干渉の問題から、同一周波数における複数信号の同時通信は困難でした。すなわち周波数資源の有効利用(周波数利用効率の向上)が困難であると同時に、無線伝送速度そのものの高速化にも限界がありました。
 MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信は、送受信局に複数のアンテナを装備し、同一周波数で異なる信号系列の同時空間多重化伝送を可能とする通信です(図1参照)。図1に示しますように、MIMO通信では、電波が建物の壁や床などに反射して到来する特徴をいかしています。MIMO技術には大きくわけて図2に示す3種類に分類することが可能です。
(a)の方法では、もっとも基本的な方法として知られていますが、受信側で干渉を取り除く方法が必要となり、高い性能を出すためには端末側で複雑な信号処理が必要となります。これに対し、(b)の方法では送信局側であらかじめアンテナ指向性を制御することで、端末側の負荷を軽減することができます。この方法では、基地局の指向性形成をどのように実現するかが重要となります。
 さらに(b)の方法を発展させ、複数の端末局との通信を可能としたものが、(c)のマルチユーザMIMO(MU-MIMO)技術です。MU-MIMO技術によって、(a)(b)の方法(区別のために、シングルユーザMIMO:SU-MIMOと呼びます)よりもシステム全体で高い伝送容量が簡易端末で実現することが可能です。しかしながら、(a)→(b)→(c)に向かうにしたがって、技術的なハードルが高くなります。MU-MIMOを実現するためにはさまざまな課題がありますが、未来ねっと研究所では、今後このマルチユーザMIMO技術の実現可能性を深く模索していくことによって、無線通信の可能性を「高速化」だけでなく、「大容量化(同時アクセス増加)」の観点からも追求しています。

図1 MIMO通信の概念図
図2 MIMO技術の分類と特徴

●ここが骨太!

・マルチユーザMIMO技術と実験装置を用いた評価結果

 ユーザ端末は、そのサイズやコストの問題のために実装可能なアンテナ数が限定されています。この場合、従来のMIMO技術では基地局側をいくら高機能化しても、ユーザ端末のアンテナ数の限界によって達成できる伝送速度に限界がありました。マルチユーザMIMO技術では複数ユーザの端末の信号を同時に送信または受信することによって、多数のユーザのアンテナを同時に利用します。これによって、仮想的に大規模(基地局と複数端末局のアンテナ素子数が多数となる)なMIMOチャネルを構成することが可能になり、従来のSU-MIMOに対し、システム全体では飛躍的な伝送速度向上を見込むことができます。  実際のマルチユーザMIMOの特性を把握するためには、さまざまな条件で柔軟に運用可能な伝搬実験装置による伝搬データの蓄積、限界性能の検証が必要になります。そこで未来ねっと研究所では、16×16アンテナ対向のマルチユーザMIMO伝送実験装置を開発しました(図3、4/文献[1][2]参照)。送信アンテナ素子を16とし、4ユーザを仮定し、各ユーザあたりのアンテナ数を4とした場合の下りリンク伝送試験の結果、43.5/50bits/s/Hz(@平均SNR=31, 36dB)というマルチユーザ伝送としては世界最高速度を実現することを確認しました。さらに、端末アンテナ数が2、4といった少ない場合においてもSU-MIMOよりも著しく高いシステムスループットが得られることを示しました(図5、6参照)。これは、無線LAN 規格IEEE802.11aの帯域である20MHz帯域を用いた場合にそれぞれ伝送レートに換算すると870Mbps、1Gbpsに相当します。また、実際の使用で想定されうるPCカード上に複数のアンテナ素子を実装する技術(図7/文献 [3][4] 参照)や、屋外における複数基地局を用いたマルチユーザMIMO伝搬実験を実施しております(図8 /文献[5][6] 参照)。さらに、MU-MIMO実現に向けたさまざまな基盤技術をこれまでに開発してきました(文献[7]〜[16]参照)。

図3 16×16マルチユーザMIMO伝送実験装置の構成
図4 16×16マルチユーザMIMO伝送実験の写真
図5 測定環境と復号された信号点
図6 実験結果
図7 小型MIMOアンテナの構成
図8 屋外試験の様子

●どんな未来?

 マルチユーザMIMO技術は、基地局アンテナ数を増やすことによって、周波数帯域、変調多値数を増加させることなく無線伝送速度を向上させることが可能です。従って、今日周波数資源の枯渇が叫ばれつつあるマイクロ波帯(現在、携帯電話や無線LANで利用され、移動通信に適している)において、有線伝送とシームレスなブロードバンド無線伝送の実現を可能にする技術として期待されています。また、多数のユーザを同時に接続することができるため、同一エリア内の無線端末局数が増加した場合でも、「遅い」「つながりにくい」という無線通信特有の問題の解決が期待できます(図9参照)。

図9 サービスシーン

【文献】

[1] K. Nishimori, R.Kudo, N. Honma, Y. Takatori, A. Ohta, K.Okada, “Experimental evaluation using 16x16 multiuser MIMO testbed in an actual indoor scenario,” 2008 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, CD-digest, July 2008.

[2] K.Nishimori, R.Kudo, Y.Takatori, A.Ohta, K. Tsunekawa, "Performance Evaluation of 8x8 Multi-User MIMO-OFDM Testbed in an Actual Indoor Environment," Proc. of PIMRC2006, pp.1-5, Sept, 2006.

[3] N. Honma, K. Nishimori, Y. Takatori, A. Ohta, and K. Tsunekawa,"Proposal of compact three-port MIMO antenna employing modified inverted F antenna and notch antennas," 2006 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, pp.2613-1616, July 2006.

[4] N. Honma, K. Nishimori,Y. Takatori, A. Ohta, S. Kubota, "Antenna Selection Method Employing Orthogonal Polarization and Radiation Patterns for MIMO Antenna," The 1st European Conference on Antennas and Propagation (EUCAP 2006), ESA SP-626(609.1), Sept. 2006.

[5] N. Honma, R. Kudo, K. Nishimori,Y. Takatori, A. Ohta, S. Kubota, "Antenna Selection Method for Terminal Antennas Employing Orthogonal Polarizations and Patterns in Outdoor Multiuser MIMO System," IEICE Trans. Commun., vol E91-B, no.6, pp.1752-1759, June 2008.

[6] N. Honma, R. Kudo, K. Nishimori,Y. Takatori, A. Ohta, S. Kubota, "Proposal of antenna selection method for terminal antenna with orthogonal polarizations and patterns for outdoor multiuser MIMO system, " 2007 IEICE International Symposium on Antennas and Propagations, 4C1-4, Aug. 2007.

[7] N. Honma, K. Nishimori,Y. Takatori, A. Ohta, S. Kubota, "Proposal of compact MIMO terminal antenna employing Yagi-Uda array with common director elements," 2007 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, pp.2405-2408, June 2007.

[8] N. Honma, K. Nishimori,Y. Takatori, A. Ohta, S. Kubota, "Compact and Low-Profile MIMO Terminal Antenna Employing Bidirectional Yagi-Uda Array," The 2nd European Conference on Antennas and Propagation (EUCAP 2007), MoPA.045 , Nov. 2007.

[9] T. Yamada, W. Jiang, Y. Takatori, R. Kudo, A. Ohta, S. Kubota, "Enhanced Simplified Maximum Likelihood Detection (ES-MLD) in Multiuser MIMO Downlink in Time-Variant Environment," Proc. of ISAP2007,pp. 1346-1349, Aug., 2007.

[10] R. Kudo, Y. Takatori, K. Nishimori, A. Ohta and S. Kubota, "New downlink beamforming method for cooperative multiple access point systems," IEICE Trans. on Commun., vol.E90-B, No. 9, pp.2303-2311, Sept., 2007.

[11] R. Kudo, Y. Takatori, K. Nishimori, A. Ohta and S. Kubota, "User Selection Method for Block Diagonalization in Multiuser MIMO Systems," in Proc VTC 2006-Spring Vol. 5, pp. 2216 - 2220, May 2006.

[12] R. Kudo, Y. Takatori, K. Nishimori, A. Ohta and S. Kubota, "Low Complexity Capacity Estimation Method for Multiuser Block Diagonalization Transmission," in Proc., VTC2007-Spring, 22-25, pp. 1836 - 1840, April 2007.

[13] R. Kudo, Y. Takatori, K. Nishimori, A. Ohta and S. Kubota, "New Simple Capacity Estimation Method for Multiuser Block Diagonalization Transmission," in Proc., VTC2007-Spring, 22-25, pp. 1836 - 1840, April 2007.

[14] K. Ishihara, Y. Takatori, and S. Kubota, “Multiuser detection method for single-carrier transmission in uplink multiuser MIMO access,” Proc. 66th IEEE VTC-07 Fall, pp. 566-570, Oct. 2007.

[15] K. Ishihara, Y. Takatori, K. Nishimori, and K. Okada, “Multiuser detection method robust against timing offset for OFDM uplink transmission,” Proc. 67th IEEE VTC-08 Spring, pp. 1463-1467, May 2008.

[16] K. Ishihara, Y. Takatori, K. Nishimori, and K. Okada, “Weight estimation and multiuser detection for asynchrous single-carrier multiuser MIMO uplink,” Proc. 11th International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communication (WPMC), Sept. 2008.

フッタエリアはここからです。