News Release


平成12年7月12日



世界初、電源不要な超小型光マイクロ波変換モジュールを開発
−光信号を直接電波に変換し、
高速無線アクセスを実現する光ファイバ無線部品−


 NTTは、高速の無線アクセス実現のため、新しい動作原理のフォトダイオードを用い、電源を一切必要とすることなく光信号を直接大きなパワーのマイクロ波(※1)に変換し空間へ放出する無給電光マイクロ波変換モジュールを世界で初めて開発しました。
 この変換モジュールだけでファイバ無線通信システムのアクセスポイント(※2)として機能するため、アクセスポイントを超小型化、無電源化、低コスト化できることになり、高速/広帯域の特徴を持つファイバ無線通信システムをITS(※3)や無線LAN等へ導入することをうながすためのキー部品として大いに期待されます。
 今回開発した無給電光マイクロ波変換モジュールは、新開発のフォトダイオードとアンテナを一体化し、5.8GHzのマイクロ波を放出するように設計しております。モジュールの大きさは、50mm×20mm×10mmとなっており、従来の無線アクセス用ターミナルに比べ大きさで数十分の一と極めて小型化され、無電源で動作するようになっております。
 高速ワイヤレスLANやモバイルマルチメディアなどへのファイバ無線通信システムの導入が実現されると、ワイヤレス通信の柔軟性・機動性を活かしたまま、動画情報を含む大量のデータを瞬時のうちにやりとりできるようになり、通信の世界がさらに大きく拡がります。モバイルコンピュータや歩行者、高速走行中の自動車への高ビットレートのアクセスを実現する無線アクセス技術として期待されます。

<背 景>
 アクセス系ワイヤレス通信システムは、柔軟性が高く、ポータビリティに優れているため携帯電話や無線LANシステムなどに広く用いられています。
 しかし、現在実用化されているシステムでは、高速な通信にはあまり向かないという問題点があります。そこで、使用される周波数帯域を大きく引き上げ、高速大容量化をはかる方法が考えられています。そのためには、ホスト局−アクセスポイント間に使われるインフラとして、広帯域特性を持ち損失が少ない光ファイバを使用することが必要になってきます。
 レーザ光を無線信号で変調してホスト局−アクセスポイント間の伝送に光ファイバを使用する、いわゆる「ファイバ無線通信」では、マイクロ波〜ミリ波(※4)帯の高い周波数領域の特長を活かしやすく、大量のデータをやりとりするのに適するという特長があります。一方、多くの人が同時に通信できるようにする為には、一つのアクセスポイントがカバーする領域を狭め、多くのアクセスポイントを設置することが必要となります。
 そのため、将来のアクセス系ワイヤレス通信の形態としては最も有望と考えらるファイバ無線通信を普及させる為には、アクセスポイントを簡単に低コストで設置できるようにすることが大変重要になってきます。
 ファイバ無線通信システムにおけるアクセスポイントでは、光ファイバ中を通ってきた光信号を電気信号に変換し、十分な出力で無線信号として空間に放出します。このとき、光信号を電気信号に変換するにはフォトダイオードが用いられますが、従来のフォトダイオードでは、大きな出力の電気信号を取り出すためには、高価なマイクロ波 (ミリ波) 用の電気増幅器が必要でした。そのため、従来はアクセスポイントに内蔵された増幅器用の電源が必要になるなど、低コストで設置することは困難でした。

<技術の詳細>
 NTTでは新たに単一走行キャリア(※5)フォトダイオードという新しい構造を持つフォトダイオードを開発しました。この単一走行キャリアフォトダイオードでは、高速の電子のみが半導体の中を移動するという構造を実現しています。その結果、高速に移動できる電子のみを主に使うことで、高速な動作(従来の2〜3倍)が可能になりました。
 また、半導体中を移動する電子が高速であるので、従来構造のフォトダイオードにおいて出力飽和の要因であったキャリアの蓄積を抑えることができ、その結果、フォトダイオードから大きな出力を取り出すことができます。また、キャリアの蓄積が起こりにくいことはフォトダイオードに電圧を加えなくても正常に動作できることに結びつき、電源を用意しなくても良い(無給電動作が可能)という新しい特徴を持つことになります。そのため、超高速電気信号用の増幅器が不要で、フォトダイオードに電源や電気増幅器等の他のデバイスを付加することなしに光信号から高出力の電気信号が直接取り出せるようになるのです。新開発の本フォトダイオードは、さらに周波数の高いミリ波帯でも電源を用意することなく高出力動作が可能であり、将来有望と期待されているファイバ無線通信において、電源やミリ波増幅器を必要とすることなく超小型軽量のアクセスポイントを増やすことに最適なデバイスと言えます。
 今回開発した無給電光マイクロ波変換モジュールは、この単一走行キャリアフォトダイオードにより実現したものであり、5.8GHzのマイクロ波を放出するように設計しました。
 5GHz帯は、これからのワイヤレス通信で注目されている周波数帯域であり、無線LANシステムやITSなどに使われる可能性が高い周波数となっております。この無給電光マイクロ波変換モジュールは、電源なしで1mW以上のマイクロ波を放出することができ、30m程度の伝送能力を持っております。本モジュールを用い、9MHzのアナログTV画像信号の無線伝送の応用実験にも成功しています。
 本無給電光マイクロ波変換モジュールは、移動体通信、無線LAN、ITSにおける路車間通信等での高ビットレート化の要求に応え得る、ファイバ無線通信システムにおけるアクセス用キー部品になると期待されます。

<用語解説>
※1 マイクロ波 
1〜30GHzの高周波。PHSやBS放送で使用されているように、高速あるいは広帯域の通信、放送に適している。このため近年利用が盛んになってきた。

※2 アクセスポイント 
光ファイバ中を通ってきた光信号を電気信号に変換し、十分な出力で無線信号として空間に放出するアンテナ局。

※3 ITS
高度道路交通システム (Intelligent Transport System)。道路や自動車のインテリジェント化により、渋滞解消や交通事故の削減を目指す構想である。今年実用導入される自動料金収受システム(ETC)はその一例である。

※4 ミリ波
30〜300GHzの高周波で、波長が1〜10mmであることがその名のゆえんである。マイクロ波以上に広帯域の通信が可能である。非常に高い周波数のために増幅器等を作成するのが難しい。現状では、民生用としてはほとんど使用されておらず、軍用レーダーなどで一部使われている程度。

※5 キャリア
電荷を担う電子または正孔のこと。



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