News Release


平成12年9月7日

日本電信電話株式会社


肉声品質と遜色のない歌唱音声合成技術'HORN法'を開発
〜あなたの声を基にコンピュータが歌います〜


 NTTでは、楽譜と歌詞から高品質な歌声を生成する歌唱音声合成技術'HORN(Harmonic Overtones + Residual Noise)法'を開発しました。
 'HORN法'は、NTTがこれまで培ってきたテキスト音声合成技術のノウハウを生かすと同時に、歌声特有の倍音(ハーモニックス*1)を高品質で再現するために、正弦波*2を重ね合わせて音声を合成する、正弦波重畳方式というモデルを応用した新しい技術です(図-1)。
 楽譜とテキスト情報の歌詞を与えると、あらかじめサンプリングしてある人の歌声データベースによって自然な歌声を合成することができます。本技術によって自作の歌詞や曲をパソコンに自由に歌わせる事が可能となり、例えば、歌詞コンテストサービス、歌声付きメッセージカードサービス、あるいはゲームキャラクターなどに自作の歌を歌わせるなど、マルチメディアコンテンツ製作分野に全く新しい広がりを提供します。


○ 開発の背景
 文字情報を自然な合成音声で読上げるテキスト音声合成技術は、コンピュータと人間のより円滑なインタフェース実現のために広く研究されている技術です。NTTでは自然で明瞭な音質の合成音声を実現する音声合成技術FinalFluetを開発してきました。しかし、インターネットの急激な普及によって、音声合成技術に対してもただ単にテキストを音声に変換するだけでなく、例えば、親しみ易いキャラクタや口調によるメール読上げなど、より多様な機能が求められるようになりました。このようなニーズに向けて、NTTでは1998年に、合成音声に個性をあたえるための音声デザインツール'Sesign'を開発して応えてきました。
 このような技術の蓄積の上に、音声合成のさらに新しい応用分野開拓の一環として「音楽」をとりあげ、肉声品質とほとんど区別できない高品質な歌声合成を可能としたのが 'HORN法'です。


○技術のポイント図-1,2
(1) 歌声の重要な特徴である倍音を忠実に表現するために正弦波重畳方式を応用
  <1> 有声部分への正弦波重畳方式の採用
 通常のテキストを読上げる音声合成の多くでは、肉声の音声波形(1ピッチ程度)を重畳する「波形重畳方式」が利用されています。この方式は明瞭性も高く、人の話す音域(70Hz〜300Hz程度)では自然性も高い高品質な音声合成を可能としますが、歌声のように音域が広くなると (200Hz〜700Hz程度)、音声の高さ(ピッチ)の制御量が大きくなるため品質が劣化してしまう傾向があります。
 また、歌声の、話す声に対する特徴として「倍音成分(Harmonic Overtones)」が非常に重要ですが、「波形重畳方式」は音声の局所的な波形特徴に重点を置いているため倍音をうまくモデル化できません。そこでHORN法では、歌声に特徴的な倍音を高品質で再現するため、純音*3である正弦波を多重に重畳する「正弦波重畳方式」 を採用しています。

  <2>

人間の肉声に含まれるノイズ成分を付加
 正弦波重畳方式だけで合成すると「楽器(トランペット)のような」不自然な合成音声になってしまいます。そこで、人間の肉声に含まれるノイズ成 分を付加することによって単純な正弦波重畳方式と比べ飛躍的に肉声らしい歌唱音声を実現しています。


(2) 無声部分への波形重畳方式の適用
 無声部分など明瞭性が重要である部分については、波形重畳方式を適用するなどハイブリッドな合成方式を適用しています。


○ 今後の展開
 NTTでは今後、特定の人物の歌い方、すなわちビブラートの入れ方・コブシまわしなどの「歌唱スタイル」を学習する方式の検討をすすめていく予定です。




*1 倍音(Harmonic Overtones)
 ある音(基音)を楽器で演奏したとき、その音の整数倍の振動数の音が同時に鳴る事を指します。例えば、100Hzの音を出せば、200、300Hzの音も同時に鳴ります。基音に対してどんな倍音がどの程度の割合で含まれているかで、その音の音色が決まります。なお、歌声も楽器音の一つとみなすと理解しやすいと思われます。

*2

正弦波
 三角関数のひとつである、正弦関数によりあらわされる波動。音としては純粋かつ単調で、楽器ではフルートの音が最も近いといわれています。

*3

純音
 倍音などを含まない音。音叉を軽く叩いたときに発する音。



別紙
図-1 各種音声合成方式の特長
図-2 HORN法による音声合成の流れ




<本件問い合わせ先>
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所
情報戦略担当 坂本、甕(もたい)
TEL:0468-59-2032
e-mail:ckoho@tamail.rdc.ntt.co.jp



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