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2001年3月30日 | ||
単電子CCDを用いた電子1個の操作・検出に成功 | ||
NTT物性科学基礎研究所は、新たな素子構造の提案により電子1個を操ることが可能な単電子CCD(電荷結合素子※)を発案し、実際にシリコンウエハ上に試作し、その動作を確認しました。 このデバイスの動作機構は、現在デジタルカメラの撮像素子に用いられているCCDと似ており、電子1個の転送が可能であるとともに、電子1個でも検出できる高い検出感度も持ち合わせています。 これまでNTT物性科学基礎研究所は世界に先駆けてシリコンの単電子トランジスタを開発してきました。今回実現したデバイスにより、究極の省エネルギー化に向けて、単電子トランジスタ以外の選択肢を増やし、単電子トランジスタとの併用も含めて、デバイス応用の幅を広げる大きな一歩を踏み出したことになります。 本研究成果は、1個の電荷を自由に操ると共に1個の電荷の移動を検知する事に成功した点を評価されて、英国の科学誌「nature」3月29日号に掲載されました。 "Manipulation of elementary charge in a silicon charge-coupled device" by Akira Fujiwara, Yasuo Takahashi (NTT Basic Research Laboratories)
<背景と経緯> NTTでは、通信機器、端末(携帯電話なども含む)の省エネルギー化を促進することにより、環境に優しく、継続的な発展が可能な、高度情報化社会の構築を目指しております。しかし、近年の情報通信量の増加はめざましく、通信に伴うエネルギー量も増加の一途をたどっている状況です。 一方、従来技術の改良では、通信に伴うエネルギー消費量の削減を10分の1程度に抑えるのが限界です。これを打破し、エネルギー消費量を1万分の1以下に低減可能とする方法は、電子1個を操ることが可能な単電子トランジスタの使用のみであると考えられておりました。 電子1個の操作は、単電子トランジスタ(SET)に代表されるいわゆる単電子トンネル素子によって実現できます。単電子トンネル素子は、伝導性の島とトンネル障壁(トンネル性絶縁膜)で構成される複雑な構造で、制御性良く作製するためには、特殊な技術を必要とします。NTT物性科学基礎研究所では既に、パターン依存酸化法と呼ばれるSi島とトンネル障壁を自動的に形成する手法を開発し、単電子トランジスタ、単電子インバータ回路、単電子パストランジスタ論理回路等、単電子トランジスタおよびそれを使用した回路の実現において着実な成果を積み上げてきましたが、将来の集積回路応用を考えた場合、ウエハ上への大規模集積化に適したより作製が容易な素子が望まれていました。 今回、NTT物性科学基礎研究所では、単電子トンネル素子とは別のタイプで、単電子を操作でき、大規模集積化により適したデバイスの試作に成功しました。新しい素子は、単電子トンネル素子では不可欠であったトンネル性絶縁膜を用いていないのが大きな特徴で、いわば超小型のCCDと呼ぶことが出来るものです。 今回試作した素子は、T字型Si細線を覆う2本の電荷保持ゲート(図1)で構成されます。まず、片方の電荷保持ゲート直下のSi細線部に1個の正孔(正の素電荷)を発生させ保持します。次いで、2本の電荷保持ゲート間で、1個の正孔を行ったり来たり移動させます。1個の正孔の位置は、それぞれのSi細線を流れる電流信号により検知が可能となります(図2)。1個の電荷の高感度検出には今回新たに開発した手法を用いております。具体的には、Si細線という極微細構造に電圧勾配を導入することにより、電荷(正孔)が保持される領域と、正孔を検出する電子電流の領域に分離するという手法です。 従来の単電子トンネル素子を用いた単電子転送では、電子1個を1秒間に100万回以上転送することにより流れる電流(いわば転送電子数の和)を測定することにより実際に単電子の転送が行われていることを確認しておりました。今回のように1個の電荷の転送をリアルタイムで検出したのは、本成果が初めてです。また、今回は素子作製上の都合で、正の電荷である正孔を操作致しましたが、負の電荷である電子の操作も原理的には全く同様に実現することができます。 <今後の予定> 今回の素子は、構造が単純で、トンネル障壁を作り込む必要がないため、ウエハ上にゲート電極を自在に配置し、任意の方向への単電子(正孔)転送が可能であり、さらに大規模集積化にも適しております。ただし、今回の成果は基礎的な素子動作を確認した段階であります。そのため、単電子トンネル素子との性能比較(単電子操作の誤り率、室温動作化の可能性、単電子転送速度など)を今後行っていく必要が有ります。今回実験的に確認した素子動作温度は絶対温度25Kであり、実用回路で要求される室温動作のためにはより微細なパターンに対応できる加工技術の開発が不可欠です。 また、この素子の機能は、今回初めて実現できたものであり、その応用に関しましては単電子転送をはじめ、単電子メモリ、電子を多数個、数を把握して転送する電流標準(電子を多数個、数を把握して転送)等の実現なども考えられます。これらを含めて新たな応用についても検討を進める予定です。 | ||
![]() 図1.Si単電子CCDの電子顕微鏡写真 ![]() 図2.単電子の転送と検出 |
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別紙 ・単電子CCDを用いた電子1個の操作・検出に成功 ・単電子素子とは ・単電子CCDと単電子トランジスタの違いは? ・単電子CCDと単電子トランジスタの違いは? ・単電子CCDの概観 ・単電子CCDの構造と動作 ・単電子CCDによる正孔(電子)の転送と検出 ・成果の特徴 | ||
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![]() NTT NEWS RELEASE |