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2001年6月14日 | |||||||||||||||
光通信システムの低コスト化を可能とする『半導体レーザ』を開発 〜100分の1の電流で動作する光通信用面発光レーザ技術を確立〜 | |||||||||||||||
日本電信電話株式会社(以下NTT、東京都千代田区 代表取締役社長: 宮津 純一郎)では、世界最小電流で単一の波長で室温連続発振する1.55 従来、高性能・低コストを実現できることで注目されている面発光レーザは、光ファイバが低損失になる光通信波長である1.55 今回、抜本的に低電流化が図れる素子を開発し、室温において世界最小電流(0.38 mA)で連続発振させることに成功し、さらに発振波長は単一で、ビーム形状も単一スポットである等、中長距離の光ファイバ通信に広く使われている単一モードファイバでの伝送に適用できる実用上重要な特性を確認しました(図1)。これは、ウエハ融合技術と半導体埋込み技術を両立した独自の「薄膜化ウエハフュージョン技術」により、GaAs(ガリウムヒ素)系半導体の高反射率光反射層と、InP(インジウム燐)系半導体の低損失発光層で構成したことによるものです。 光通信波長帯の面発光レーザを実用化すれば、現在の光ファイバ通信システムで使われている端面発光レーザに比べ100分の1以下と抜本的に低消費電力化が可能で、かつ端面発光レーザのように半導体ウエハを割らなくても発光面が得られるので製造歩留まりが向上しLSI並に低コスト化できる可能性があります。今後、高性能化に向けて素子構造を改良していくとともに、さらに実用化に向けて完成度を高めていく考えです。 <開発の背景> 光ファイバ通信では、光源に半導体レーザが使われています。従来の半導体レーザはいわゆる「端面発光型」と呼ばれ、半導体ウエハを切断した側面から発光します。一方、近年になって半導体ウエハの表面から発光する「面発光レーザ」が、2桁程度も低い電流で発振し、かつ低電圧や高速変調動作可能といった高性能な素子を低コストで実現できることから、革新的なレーザ光源として注目されています。 面発光レーザの研究開発は、GaAs(ガリウムヒ素)を用いた近赤外域の波長0.85 <技術のポイント> 今回、NTTフォトニクス研究所が開発した素子は、GaAs系の半導体で構成される光反射層と、InP系の半導体で構成される発光層を独自の半導体プロセス技術(薄膜化ウエハフュージョン)を用いて結合したこと(図2)を第一の特徴としています。GaAs系の光反射層を用いることにより、99 % 以上の反射率が容易に得られるとともに、発光層からの放熱がスムーズになります。InP系の発光層は信頼性が高く、さらに本構造はレーザ波長を正確に設定することが可能です。第二の特徴は、発光層の周りが半絶縁InP層で埋め込まれていることです。電極から注入した電流が、周囲に洩れることなく有効に発光層に流れこみます。また発生した光がこのInP層の存在によって発光層内に有効に閉じ込められるため、低損失でレーザ光が取りだせます。 以上のように、高反射率のGaAs光反射層、及び洩れ電流の少ない半絶縁InP埋め込みの採用により、光通信波長帯では世界最小の0.38 mAで室温連続発振させるることに成功しました。また光出力が最大となる電流印加時にも、発振スペクトルは単一ピークであり、また実際のレーザビームも単一スポットでした(図3)。このことは、この面発光レーザを、中長距離の光ファイバ通信に広く用いられている単一モードファイバでの伝送に適用できることを意味しています。 <今後の展開> 今回の開発において、独自に開発した光通信波長帯の面発光レーザで、世界最小電流で室温連続発振させることに成功しました。これにより、今後の高出力、高速動作の実現に向けた検討が可能となり、実用化に向けて大きく前進しました。当面の応用としては、LANよりもさらに広範囲なMAN、WANにおける光データリンク用の低コスト光源が考えられますが、その低消費電力性から並列光インターコネクト、すなわちコンピュータ内のボード間の超並列光配線にも適用されていくものと思われます。また、面発光レーザの特長を活かして多波長アレイ化を図ることにより波長分割多重(WDM)ネットワーク用の光源としても期待される等、将来のフォトニックネットワークにおいていろいろな応用があり、深く浸透していくものと考えられます。 <略語>
<用語> 単一横モード発振: 光の進行方向に垂直な方向に強度分布を持つ光の発振モードが単一であること。光ビームの中心が強度が強く周辺が弱くなる分布をとるため、光ファイバとの結合に適している。 薄膜化ウエハフュージョン法: 基板上の薄膜を、格子間隔の異なる別の基板に直接接着する際に、いったん別の基板に仮接着して基板を完全に除去し薄膜化した後に、別の基板に融合する方法。InP発光層薄膜は同系統のInP系基板上では高品質に形成することが可能であり、半導体埋込み成長後の凹凸のある薄膜を反射率と熱放散に優れるGaAsミラー基板上に貼り付けることを可能にするキーとなる技術。 面発光レーザ: 半導体ウエハ表面に垂直な方向に発光層と反射層が積層されたレーザで、ウェハ表面に垂直な方向に発光する(図1左上)。端面発光レーザに比べて利点が多く、将来主流になると考えられている。 端面発光レーザ: 半導体ウェハ表面に平行な方向にストライプ状の発光層と反射面が形成されたレーザで、ウェハを切断した端面からウェハ表面に平行な方向に発光する図1左下)。現在光通信に多く使われているタイプ。 | |||||||||||||||
・図1 光通信波長帯半導体レーザに技術革新 ・図2 面発光レーザーの断面とその電子顕微鏡写真 ・図3 面発光レーザーの特性 | |||||||||||||||
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