News Release


2001年7月3日

土を出さずに管路を敷設する世界初の
“無排土高速モグラロボット”を開発

― 次世代エースモール工法で管路工事を完全非開削化し
交通渋滞や環境問題もすっきり解消 ―


 日本電信電話株式会社(以下NTT:東京都千代田区・代表取締役社長 宮津純一郎)では、“モグラロボット”を用いて道路を掘り返さず、硬い地盤でも土砂も出さずに地下管路を敷設する、全く新しい非開削工法を開発しました。新工法は、徹底したコストダウンと高速化、小型化により従来の推進工法の技術を革新し、管路工事を完全に非開削化(NO−DIG化)して、これまでの管路工事につきものだった交通渋滞、騒音振動、環境破壊といった問題を格段に軽減することができます。

 NTTアクセスサービスシステム研究所では、道路を掘り返して管路を埋める開削工法のもつ問題を解決するため、1986年、“モグラロボット”を用いて管路を敷設する「エースモール工法」を開発・実用化しましたが、工事費が開削工法と比較して必ずしも経済的でないことや適用場所を制限される場合があること、推進機の操作に熟練が必要なことなど、完全な非開削化を実現する上で幾つかの課題を抱えていました。

 次世代エースモール工法は、現行のエースモール工法あるいは同種の非開削工法には見られない全く新しい技術を導入しています。推進機が地中の土を微小に振動させることで硬い土でも削らずに進んでいく世界初の動的圧入推進技術、新材料を使った小型立坑技術、管接続作業のロボット化技術、知識データベースと最適制御理論に基づいたオペレーションシステム技術を導入し、「いつでも」「どこでも」「誰でも」「美しく」管路敷設ができる最新鋭の非開削工法を確立しました。


<開発の背景>
 開削工法による管路工事は、工事の騒音・振動や長区間の路上占用がもたらす交通渋滞などにより生活環境や社会活動に悪影響を与えることから、道路掘削の規制や路上工事の縮減に対する施策が一段と強化されています。こうした規制は工事の実施場所や時間帯の制限、工事能率の低下、夜間工事の増加等を招き、掘削にかかわる工程が大部分を占める開削工法によっては、抜本的なコスト改革は今後ほとんど不可能とされています。
 さらに、開削工事に伴う交通渋滞がもたらす時間やエネルギーの損失、排気ガスによる大気汚染や粉塵問題、山や河川からの土砂の採掘等、個人や社会、自然環境に対する負荷の増大が大きな社会問題としてクローズアップされています。
 開削工事に起因する種々の問題に対しては、従来の開削工法の改善・改良だけではその解決策は見いだせず、唯一NO−DIG化が将来に明るい展望を開くことができます。
 こうした背景から、管路工事の完全な非開削化“オールNO−DIG化”を目標に、土木技術、メカトロ技術、情報通信技術、センシング技術、材料技術等NTTの最先端技術を結集した成果が「次世代エースモール工法」です。今後、管埋設工事を実施する各事業分野に大きな一石を投じる新しい非開削工法と考えています。


<主な特徴>
1. 次世代エースモール工法のパフォーマンス【図1参照】
 次世代エースモール工法は、これまでの小口径管推進工法にはなかった数々の新技術を導入したことにより優れたパフォーマンスを発揮します。
 次世代エースモール工法は、現行のエースモール工法と比較して工事費を半分以下までコストダウンし、地方都市の開削工事並の工事費で施工ができます。
 さらに、推進工事全ての工程のスピードアップを図り、工事期間を開削工事の半分以下まで短縮するとともに、小型化による工事実施上の制約の解消や無排土化による徹底した排出土の抑制を図り、周辺環境、自然環境への負荷も大きく軽減できます。

2. 次世代エースモール工法の主な特徴【図2参照】
1) 硬土質地盤での無排土推進の実現
 推進機が地中を進む際に、推進機前面の土に振動を与えながら貫入させていく動的圧入推進技術の確立により、これまで地中の土を掘削し土砂を外に運び出す掘削推進が必要だった硬い土質の地盤(N値が15〜30程度まで)でも土を出さずに高速で地中を推進できます。これにより、岩盤、レキ地盤などを除くほとんどの地盤で無排土推進が可能となり、掘削・排土の工程を伴うために工事費が高く推進スピードも遅い掘削推進方式にとって変わることができます。
(N値:土質の硬さを表す尺度で、N値が4〜10は人力で掘れる程度の土の硬さを示します。)

2) 推進作業の高速化の実現
 推進管および推進機の動力供給ホース・制御ケーブルの接続延長作業の高速化・自動化を図ったため、推進作業が飛躍的に高速化しました。推進管とケーブル類の接続は、多くの推進工法が人手による作業となっており、現行のエースモール工法でも立坑内で2、3人の作業者によって20〜30分程度の時間がかかる作業となっているのに対し、自動化ロボットの開発により作業を無人化し、わずか4〜5分で作業が完了します。こうした作業のロボット化を可能にした大きな理由の一つに、幅広い土に適用できる動的圧入推進技術の確立があります。つまり、土を掘るために必要な大きな動力を推進機に与える太径の油圧ホースや、土を運び出すためのパイプが不要となったことにより、容易に安くロボット化を実現しています。

3) 高精度な長距離曲線推進の実現
 現行のエースモール工法は長距離曲線推進を大きな技術的特長としていますが、これを可能としている技術に電磁界による推進機の位置検知技術があります。計測時は推進機を止め、推進機から発信される磁界を地上で計測します。直線区間でも、曲線区間でも位置検知ができますが、数メートル間隔の断続的な位置の計測となっています。光ファイバジャイロは航空機等の高速移動体の位置計測に応用されていますが、低速(数十cm/分)で移動する地中推進機での実用化を図ったことにより、高精度でリアルタイムかつ連続的に位置計測が可能となり、長距離曲線推進において、推進機の高精度な制御を行うことができます。

4) 立坑の小型化と高耐力構造の実現
 工事の拠点となる立坑は、道路上につくることから交通の流れの妨げを最小限にするために、また、地下埋設物による設置場所の制約を極力受けないために最小化が必要です。
 新設計の立坑は、先ず現在のマンホールのケーブル収容方法を変えてスペースを最小化し、その内空間を立坑として利用します。構造材料には、独自開発した高強度レジンモルタルを使用し、立坑に対して負荷される巨大な推進反力に耐える構造を実現しています。
 地中への設置方法は、小分割したブロックを順次地中に沈めブロック間を接着して素早くつくり上げ、推進が終わればそのままマンホールとします。これらによって工事費と工事期間は格段に縮小されるとともに、排出する土の量や車や人の通行への影響も最小になります。

5) 推進トラブルの防止と普及促進の実現
 推進機制御の「職人技」を詰め込んだサイバーコントロールシステムや方向制御量と推進軌跡の予測を逐次提示するオートナビゲーションシステムを導入して、誰でも簡単に推進機を操作することができます。また、通信ネットワークを介した遠隔支援システムにより現場オペレータをサポートする体制を整えているため、トラブルの未然防止や発生したトラブルの早期正常化を図ることができます。
 従来の小口径管推進工法のほとんどは、その操作をオペレータの技能に頼っており、技能の向上やオペレータの増員には多くの時間と費用がかかっていました。また、判断や操作ミスによる人為的トラブルも発生し余分な工事期間や費用がかかることも少なくありませんでした。このような諸問題をほとんど解決してより早く、より広く技術を普及していくことができます。


<技術のポイント>
 次世代エースモール工法には、数多くの新技術が導入されています(図2参照)。その中核となるのが、硬い地盤での無排土推進を可能とした動的圧入推進技術、高強度レジン材料により実現した立坑構造技術、誰でも簡単に推進機を操作できるサイバーコントロールシステム・オートナビゲーションシステム・遠隔支援システムからなるオペレーションシステム技術です。

1) 動的圧入推進技術の確立
 土の掘削と排出をしないで地中で推進機を進める方法には、立坑内に置いた元押装置によって圧力をかけて推進機を押し入れる方法(圧入推進方式)がありますが、従来の静的な力だけによる圧入(静的圧入)では硬い地盤を推進させることができません。次世代エースモール工法では、推進機の先端を振動させながら圧入する動的圧入推進技術を世界で初めて開発したことから、これまで不可能とされていた硬土質地盤(N値15〜30程度まで)での圧入推進を実現しました。これは、土の種類によって最適な振動加速度を与えて推進機前面の土粒子を局所的に流動化させることで、推進機の入り込む隙間を作り出す技術です。いわば、極めて小さな地震を起こして地盤の一部を液状化させる状態に似ています。この動的圧入推進技術によって、推進機前面の地盤抵抗力を静的圧入の場合に比べて約30%低減させることができ、N値30程度の地盤での動的圧入の地盤抵抗力は、N値15程度の地盤での静的圧入の地盤抵抗力程度にまで低減されます。

2) 高強度レジン材料を用いた立坑構造技術
 推進時の立坑には、巨大な推進反力に耐えうる立坑壁の構造が要求されます。これを実現したのが高強度レジン材料の技術です。高強度レジン材料は、一般のレジン材料に比べて約1.5倍の強度(曲げ引張強度)を持つとともに、レジンモルタルが硬化時に鉄筋と一体化することによって、鋼材の破壊強度を超える強度が発揮できる等、鉄筋コンクリートの強さの限界を越える性能を持っています。さらに、レジン構造材相互の高い接着性能により、小分割ブロックを接合してできる立坑壁は一枚壁と同等になり、壁面の広い範囲で推進反力に対抗できることから、小型立坑でも鉄筋コンクリート構造の立坑に比べて2倍以上の力に耐えられる構造を実現し、現行のエースモール工法と同様に長距離推進が可能となります。

3) 知識データベースと最適制御理論を組み込んだオペレーションシステム技術
 卓越した推進ノウハウを持つ熟練オペレータの技能を集積した知識データベースにより、制御状態の良否を判定し、不良状態が検出された場合はトラブル発生に至る前に正常化する最適な制御方法をオペレータに提示するサイバーコントロールシステムや推進中に推進機の地中での方向制御効果を自己学習する機能を持ち、推進機の最適な方向制御量とそれによる位置予測をリアルタイムにオペレータに提示するオートナビゲーションシステムのサポートにより、誰もが簡単に、的確に推進機を操作できます。さらに技術支援センタ(仮称)から、通信ネットワークを介してデータや映像を共有しながら現場オペレータへのコンサルティングや推進機のコントロールができる遠隔支援システムによりタイムリーな現場サポートができます。これらのシステムにより、これまでの小口径管推進工法では実現し得なかった万全なサポート体制を提供するとともに、施工トラブルの防止と円滑・迅速な普及を進めることができます。


<今後の予定>
 次世代エースモール工法は、平成13年度秋頃からNTT関係の工事に使用していく予定です。
 NTTアクセスサービスシステム研究所では、今後、他のライフライン(下水道管路等)整備事業など幅広い分野で貢献できる技術としていくための研究開発にも取り組んでいく予定です。




図1 次世代エースモール工法のパフォーマンス
図2 次世代エースモール工法の主な特徴




【本件に関するお問い合わせ】
  NTT情報流通基盤総合研究所
  企画部 広報担当 倉嶋、佐野、池田
  TEL:0422-59-3663
  E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp



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