報道発表資料
平成13年7月6日

独立行政法人通信総合研究所
文部科学省国立天文台
文部科学省宇宙科学研究所
日本電信電話株式会社


世界最高速の実時間VLBI実験に成功
─ 実時間VLBI・データ速度1ギガビット毎秒を達成 ─

 通信総合研究所(以下CRL、理事長:飯田尚志)、国立天文台(台長:海部宣男)、宇宙科学研究所(所長:松尾弘毅)、および日本電信電話株式会社(以下NTT、代表取締役社長:宮津 純一郎)は共同して、世界最高速のデータ速度1ギガビット*1(1024メガビット)毎秒での実時間VLBI*2実験に成功しました。実験は2001年6月23日、CRL鹿島34mアンテナと宇宙科学研究所臼田64mアンテナを使って行いました。臼田アンテナで受信した電波星*3からの信号を高速デジタル信号に変換し、臼田−NTT武蔵野−鹿島間を結ぶ超高速光回線によって実時間で鹿島まで伝送し、鹿島34mアンテナで受信した信号と1ギガビット毎秒の速度により実時間で合成することに成功したものです。実時間合成処理はCRLが開発した世界で唯一の技術によって初めて得られたものです。この成功はNTTによるギガビットクラスで安定したデータ転送が可能な超高速ネットワーキング技術の有効性を実証すると同時に、極微弱天体の観測を可能にするという意味で国立天文台および宇宙科学研究所の研究にとっても大きな飛躍となるものです。極微弱天体の実時間検出は、CRLが進めている「宇宙における時空標準基盤技術の研究」*4にとっても重要な課題です。今回の成功により、地球姿勢*5の実時間および高時間分解能決定に関する研究をさらに進めていくことが可能となります。


<背景、位置づけ>
 CRLは首都圏周辺の地殻変動の精密モニターを行うために独自の超高速ネットワークを用いた実時間VLBIシステムをNTT情報流通プラットフォーム研究所(以下、NTT−PF研)と共同で開発し、1997年から定常運用を行っています。一方、国立天文台、宇宙科学研究所も同時期にNTT−PF研と共同で臼田64mアンテナおよび野辺山45mアンテナの信号データを超高速ネットワークを用いて結合するシステムの開発を行い、実時間VLBIによる電波天体観測を開始しました。
 これら、両者のネットワークを接続することにより、関東・信越圏の複数の大型アンテナを利用した世界最高の観測能力を持つ巨大バーチャル電波望遠鏡*6(直径約200km)の構築が可能となります。このための実験グループがCRL、国立天文台、宇宙科学研究所、およびNTT−PF研の研究者で構成されました。CRLはこの実験を「宇宙における時空標準基盤技術の研究」に必要な要素技術の確立として位置づけています。また、NTTはギガビットクラスで安定したデータ転送が可能な超高速ネットワーキング技術の有効性の実証として位置づけています。1998年には、臼田64mアンテナと鹿島34mアンテナの間でデータ速度256メガビット毎秒の実時間VLBI実験に成功しました。今回の実験は同じ実験グループによる高速化への挑戦です。


<今回の試み、本成果の特徴>
 実験は、CRL鹿島の34mアンテナ、宇宙科学研究所臼田の64mアンテナを使って、2001年6月23日に行われました。臼田のアンテナで受信した準星*7からの電波(8GHz帯)を1ギガビット毎秒の高速VLBIデータ(デジタル信号)に変換しました。このデータを臼田−NTT武蔵野−鹿島間を結ぶ2.4ギガビット毎秒の超高速光回線(ATM*8方式)によって実時間で鹿島まで伝送しました。鹿島では、臼田から送られてきたVLBIデータと、自局で臼田と同様にして生成するVLBIデータを用いて信号合成処理を行いました。その結果予想通りの合成結果を得ることに成功しました。このことは、超高速ネットワークがギガビットクラスの実時間VLBI観測にも有効であることを実証したものといえます。
 2つのアンテナの信号を合成して実現されるバーチャル電波望遠鏡の感度は、データ速度が速ければ速いほど高くなります。今回の成功により、同じアンテナの組み合わせでも今までの2倍の感度での観測が可能となります。電波望遠鏡の感度が高くなるほど、短時間で地球姿勢を決める観測も可能となり、宇宙飛翔体の位置決定精度の向上につながります。また、極微弱天体(例えば非常に弱くて未だほとんど観測することができずにいる恒星のコロナからの電波など)の観測を可能にするという意味で電波天文学の発展にも大きく貢献します。


<今後の発展>
 長時間の実験を行い、ギガビットクラスのVLBIデータ実時間合成処理の安定性に関する評価を行うと共に、実際に地球姿勢決定観測を行い、その精度の評価も行います。また、より微弱な天体を観測できるように、データ速度2ギガビット毎秒の実時間VLBI観測システムの開発を行います。さらに、信号処理の分散化および他機関との接続性向上を目指した開発も行っていきます。



<用語の説明>
*1 1ギガビット:10億ビットのこと。ビットとは情報量の基本単位の事で、二進法による数の一桁を表す。10億ビットは、通常の新聞紙面約半年分に相当。したがって1ギガビット毎秒というデータ速度は1秒間に新聞半年分の情報を送る速度に相当する。

*2 VLBI:超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometry)。2つ以上のアンテナで受信した電波星からの信号を合成することにより、アンテナ間の距離を高精度に測定したり、電波源の高分解能観測を行う計測システム。

*3 電波星:電波を強く放射している天体の総称。

*4 宇宙における時空標準基盤技術の研究:CRLが進めているプロジェクトで、宇宙空間における信頼性の高い時間・周波数標準及び位置基準(時空標準)を構築することを目的とした基盤技術の研究。その要素技術の一つとして、宇宙飛翔体の位置を高精度に決定するために地球姿勢*5を実時間かつ短時間で決定する技術が必要とされている。

*5 地球姿勢:地球の自転軸の方向および自転角度の総称(まだ一般的な表現ではない)。精密な測定を行うと、地球自転軸の方向や自転角度(速度)は一定しておらず、地上から宇宙飛翔体の位置を精密に測定するには、地球姿勢についても精密に知る必要がある。

*6 バーチャル電波望遠鏡:干渉計の原理により2つ以上のアンテナで受信した信号を合成することにより実現される電波望遠鏡のこと。それぞれのアンテナ間の距離を直径としたパラボラアンテナと同等の空間分解能を有することからバーチャル(仮想)電波望遠鏡と呼ぶ。

*7 準星:クェーサー。数10億光年彼方の宇宙の果てにある恒星状で強い電波を放射している特殊な天体で、銀河の中での特に中心部が明るいもの。

*8 ATM:Asynchronous Transfer Mode(非同期転送モード)。データをセルという単位に分割することによって、多様な情報を柔軟に伝送/交換する通信方式。セルは53バイト固定長であり、ヘッダ部5バイトおよびデータ部48バイトから構成される。



図.実時間VLBI実験システム




(問い合わせ先)   独立行政法人通信総合研究所
電磁波計測部門宇宙電波応用グループ
近藤哲朗、中島潤一
Tel: 0299-84-7137, Fax: 0299-84-7159

文部科学省国立天文台
電波天文学研究系 藤沢健太
地球回転研究系 川口則幸
Tel: 0422-34-3643, Fax: 0422-34-3869

文部科学省宇宙科学研究所
衛星応用工学研究系
村田泰宏、平林 久
Tel: 042-759-8346, Fax: 042-759-8485

NTT情報流通基盤総合研究所 企画部広報担当
倉嶋利雄、佐野鎮雄、池田裕二
Tel: 0422-59-3663, Fax: 0422-59-5582
E-mail: koho@mail.rdc.ntt.co.jp



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