News Release


2001年9月20日



コスト半減と3倍の計測精度向上を実現した
「光ファイバひずみ計測装置」を新たに開発

―光ファイバセンサを用いた各種モニタリングシステムの構築に拍車―


 日本電信電話株式会社(以下NTT:東京都千代田区・代表取締役社長 宮津純一郎)では、光ファイバを用いて、トンネルなどのコンクリート構造物、河川堤防、道路斜面の劣化や損傷のモニタリングが行える「光ファイバひずみ計測装置」を新たに開発しました。新しい散乱光検出システムを採用したことで、従来の装置に比べ今回の装置では、大幅なコスト削減と計測精度の向上が図られています。これらにより、光ファイバセンサを利用した各種モニタリングシステムとして、幅広く普及すると期待されています。

 21世紀を迎え、より安全な生活環境を実現するために、建築物・トンネル・乗り物などの経年劣化、あるいは、道路斜面などの崩壊危険性を予防医学的に診断するモニタリングシステムの確立が望まれています。特に、光ファイバセンサを利用したモニタリングシステムは、ひずみを線あるいは面で計測でき、敷設作業も容易なことから、常時監視システムに適しており、国土交通省関連の重点研究テーマ(*1)に数えられるなど、高い注目を浴びています。しかし、これまでは「光ファイバひずみ計測装置」のコストが高ったことから、幅広いニーズに応えることができませんでした。

 NTTアクセスサービスシステム研究所では、平成9年に「光ファイバを用いた地盤や建造物のひずみ計測技術」(BOTDR *2 図1参照)を開発しました。これをベースに、光ファイバセンサを利用したモニタリング技術の確立に努めてきました。BOTDRは、光ファイバにレーザ光を通したときに生じる特殊な散乱光(ブリルアン散乱光)の変化に着目して、光ファイバに生じている“ひずみ”を計測する技術です。今回新たに開発した「光ファイバひずみ計測装置」も基本となる原理は同じですが、散乱光を検波するシステムに新方式を導入することで、コストの大幅な圧縮(従来装置の約1/2)と計測精度の向上(従来装置の3倍)を実現しています。新装置は、約10kmの範囲で光ファイバのひずみ計測が可能です。 ビル、トンネル、河川堤防、道路斜面はもとより、ダム、船舶、航空機など幅広いモニタリングシステムへの適用が想定されます。(図2参照


<主な特徴>

新装置は、従来装置に比べて、以下の点で優れています。

  (1) コストの大幅な圧縮:従来装置の約1/2近くにまで低減

  (2)

計測精度:

従来装置が誤差0.01%だったのに対し、その3倍(0.003%)の精度向上を実現

  (3)

計測時間:

従来装置の約1/2に短縮(約10分から約5分に)

 また、計測できる光ファイバの距離は、従来装置と同様で約10kmです。
 なお、土木学会で定められているコンクリートの許容ひび割れは、0.1mm幅から規定されています。新装置はこの規定を満足するもので、ひび割れ発生の早期発見や監視をシステム化することで、事故防止、メンテナンスコストの低減が実現できます。


<技術のポイント> 【図3参照

 新装置では、ブリルアン散乱光の検波システム=ヘテロダイン検波(*3)=に新技術を投入しました。

 従来装置では、レーザ光源から分岐された光を基準信号に用いて、光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光を光ヘテロダイン検波して信号を検出していました。信号検出を容易にするために両者の光周波数差を小さくする必要があり、そのため光ファイバに入射する光に予め周波数変換処理を施していました。周波数変換回路では、光の周波数を10数MHzシフトするとともに光を増幅することを繰り返し、約10GHz周波数を上げていました。しかしながらこの周波数変換回路を用いた構成では、(1)コストがかかる、 (2)計測が不安定になりやすい、 (3)計測に時間がかかる、といった難点がありました。

 新装置では、光周波数変換回路を取り除き、ブリルアン散乱光の検出に新しい方式を採用しました。この方式は散乱光検出の際に、光と電気信号に対して2段階のヘテロダイン検波を行うものです。はじめに従来装置と同様に光ヘテロダイン検波を行っていますが、光ファイバに入射するパルス光に周波数変換処理を施していないので、中間出力は10GHzを越える高い周波数帯域を持った電気信号になっています。次に、この中間出力に対して発振器より出力される安定した信号を用いて電気ヘテロダイン検波を行っています。このような構成を採用することにより、装置の低コスト化と計測の安定性向上が実現できました。


<今後の予定>図4参照

 NTTでは、これまでに政令指定都市を中心に通信用トンネルを構築してきましたが、これらのトンネルに生じるひび割れなどの変状を監視する「構造物監視システム」へ適用し、来春より、名古屋、大阪、東京エリアの中心部に必要に応じて順次導入する予定です。


<用語解説>

*1 国土交通省関連の重点研究テーマ
 国土交通省が新道路技術5ヶ年計画(平成10〜14年度)の中で重点研究開発項目の一つとする「岩盤・斜面崩壊のリスクマネジメント技術」。具体的には、独立行政法人土木研究所およびNTTを含む民間14社で、平成11年度末より行っている共同研究「光ファイバセンサを活用した道路斜面モニタリングに関する研究」。
*2 BOTDR : Brillouin Optical Time Domain Reflectmetry
 光ファイバの片端から測定用のパルス光を入射し、光ファイバの中から戻ってくるブリルアン散乱光の周波数分布を測定・解析することで、光ファイバに生じている長さ方向のひずみを高精度に計測する技術。
*3 ヘテロダイン検波
 干渉(うなり)を利用する計測手法で、無線通信の分野で検討されてきた技術。基準信号を受信したい信号に重ねることで両者の差の(一般的には受信信号より低い)周波数をもった信号を生じさせ、その信号から受信したい信号の性質を読みとる。高い受信感度が得られる利点がある。



図1 光ファイバひずみ計測技術(BOTDR)
図2 光ファイバひずみ計測技術の主な適用分野
図3 技術のポイント
図4 NTT通信用トンネルの構造物監視システム




【本件に関するお問い合わせ】
NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 倉嶋、佐野、池田
TEL:0422-59-3663
E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp



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