News Release


(報道発表資料)

2001年10月26日


世界初、市販PCで非圧縮ハイビジョン映像の実時間伝送に成功
HIKARIブロードバンド時代の高品位映像配信を可能とする
超ギガビットストリーム処理技術を開発


 日本電信電話株式会社(NTT)では、光ソフトサービスの実現を目指して1.5Gbpsの大容量の非圧縮ハイビジョンHDTV(注-1)映像データを、インターネット上で実時間で転送するシステムを開発し、これを用いた遠隔転送実験に成功しました。
 NTT未来ねっと研究所で開発したインターネット非圧縮HDTV転送システムは、市販のサーバ用PCに、同じく市販の非圧縮HDTV映像データ入出力インタフェースと、同研究所で開発した超高速ネットワークインタフェースを搭載・チューニングしたものです。これを、NTT武蔵野R&Dセンタ(東京都武蔵野市)と、約20km離れた電気通信大学(東京都調布市)の大学院情報システム学研究科(伊藤秀一教授)に置き、2.4Gbpsの実験光回線を用いてインターネット接続してHDTV映像のIP転送を行い、安定した転送が可能であることを確認しました(図1)。市販PCを用いて非圧縮ハイビジョン映像の長距離IP転送に成功したのは世界初です。
 1.5Gbpsの非圧縮HDTV映像データのストリーム(注-2)処理能力の実現は、BSデジタル放送のHDTV品質(22Mbps)で70ストリーム、DVD品質(5〜10Mbps)で150〜300ストリームが可能であることを示し(図2)、将来の高品質映像配信を可能とする技術です。
 NTT未来ねっと研究所では、今回のシステム開発と転送実験の成果を11月14日から16日にわたって幕張メッセで開催される国際放送機器展(InterBEE 2001)に出展する予定です。


〈開発の背景〉
 急激なインターネットのブロードバンド化に伴い、家庭やオフィスのパソコンでストリーム映像の配信を受けることが可能となってきました。現在のデータ速度は数10kbps〜数Mbps程度で、通常のテレビ放送に比べてやや劣る品質ですが、アクセス回線の高速化やPCの性能向上によって、将来は家庭やオフィスのPCに、HDTVクラスの高精細映像をユーザのオンデマンドで配信することが可能になると予想されます。
 ユーザへ大容量のストリームを安定して配信するためには、特にトラフィックの集中する配信ネットワーク側の対応が必要となります。ネットワーク上で大容量のデータを効率的に配信するための技術にCDN(注-3)があります。CDNは、ネットワーク上にキャッシュ(注-4)やミラー(注-5)と呼ばれる機器を複数配置してネットワークやサーバにかかる負荷を分散化し、高速なコンテンツ配信を可能とする技術です。NTTでは、高性能なCDNを安価に提供するためのさまざまな研究開発を進めてきました。その一環として、NTT未来ねっと研究所では、非常に高いストリーム性能の要求される非圧縮ハイビジョン映像の転送に挑戦しました。


〈技術のポイント〉


汎用PC/OSベースでの高効率プロトコル処理
 将来のCDNにおいては、ネットワーク上に置かれるキャッシュやミラーの高性能化、新しいサービスに対応するための汎用化、そして、低価格化が求められます。開発したシステムでは、PC本体、非圧縮HDTVインタフェースカードに市販品を用いることで実際の低価格を図ると同時に、OSにLinuxを用いることでPCとしての汎用性を高め、トータルでのコストダウンを実現しています。
 市販品のPCでGbpsクラスのストリームデータを取り扱えるようにするため、メモリコピーの削減、内部バススケジューリングの最 適化、マルチプロセッサによる並列処理の利用など、独自の高速化技術をOSとアプリケーションプログラムに適用しました。また、IPプロトコル処理において長大パケットサイズを利用し、プロトコル処理の負荷の軽減を行い、市販PCでGbpsクラスの転送を実現しました。このシステムは、将来的に映像の転送だけでなく加工処理を行うことも可能です。


高速、長距離伝送、マルチポイント接続の対応
 ネットワークへの接続には、NTT未来ねっと研究所で開発した2.4Gbps対応超高速ネットワークインタフェースを使用しています。同インタフェースは電話の基幹網の光伝送規格であるSDH(注-7)規格に対応し、既存の電話基幹網を用いた長距離の伝送が可能です。また、NTTが開発したプロトコルMAPOS(注-6)にも対応しマルチポイントの接続にも対応します。ネットワークの上位レイヤにはインターネットプロトコル(IP)を用いており、スイッチやルータを介して複数のPCをIP接続することが可能で、非圧縮HDTV映像データ以外にもさまざまなデータを混在して転送することができます(図3)。



〈今後の展開〉
 今回の開発および実証実験によって、現時点でのPCの性能でも高品質映像のストリーム配信が可能であることが確認されました。NTT未来ねっと研究所では今後、今回の転送実験をさらに継続し、Gbpsクラスのストリーミングプロトコル処理に関する評価を続けるとともに、本技術を大容量ストリーム配信ネットワーク構築のためのキャッシュ、サーバ、ミラーなどへの応用を進めて行く予定です。


〈用語解説〉
○HDTV(注-1)
High Definition Television。ハイビジョンのことです。

○ストリーム(注-2)
映像のように、データをすべて受け取り終わる以前に受信側が再生を始めるデータの形式です。

○CDN(注-3)
Contents Delivery Network。コンテンツ配信用の仕組みをもつネットワークのことです。コンテンツの配信事業者が、ネットワーク内にコンテンツ配信用のサーバを複数設置し、ユーザにとって最適なサーバに接続できる仕組みを提供するものです。

○キャッシュ(注-4)
ネットワーク上のサーバとクライアントを結ぶ経路の途中に設置し、上流のサーバから下流のクライアントに対して送られるデータを一時的に蓄え(キャッシュ)、下流のクライアントから同じデータへのアクセスが発生したとき、上流のサーバの代わりにデータを供給するものです。サーバの負荷軽減と、上流のネットワークのトラフィック軽減がおこなえます。

○ミラー(注-5)
同じ内容のサーバ(ミラーサーバ)をネットワーク上の複数の位置に分散して配置することにより、クライアントからのアクセスを分散しサーバの負荷を軽減するものです。また、クライアントに近いサーバからデータを供給することにより、安定した配信が可能となります。

○MAPOS(注-6)
Multiple Access Protocol Over SONET/SDH。インターネットの世界では通信プロトコルを階層モデル化しますが、MAPOSは超高速データ通信向けにNTTで開発した第2層(データリンク層)のプロトコルで、第1層(物理層)にSONET/SDHを用いていること、SONET/SDH上でマルチポイントの接続を可能とすることを特長とします。SONET/SDHを使用することにより、LANから広域のネットワーク(WAN)にまで適用可能な高速ネットワークプロトコルです。

○SDH(注-7)
Synchronous Digital Hierarchy。155Mbps, 622Mbps, 2.4Gbps, 10Gbpsの速度規格をもつ光の超高速専用線規格で、電話の基幹網で用いられています。



図1.実験システム図
図2.各種映像形式のデータ速度
図3.MAPOSプロトコルの位置付け




<本件に関する問い合わせ先>
NTT 先端技術総合研究所 企画部
相原、活田、甕、佐々木
Tel: 046-240-5152
E-mail: st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp



News Release Mark
NTT NEWS RELEASE