(報道発表資料)

2002年4月2日


「高品質ダイヤモンド半導体」作製技術を開発
〜高出力・高効率な通信衛星用デバイスも可能に〜


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮津純一郎)は、高品質ダイヤモンド半導体薄膜結晶の作製技術を開発しました。これは次世代半導体への第一歩となるものです。
 NTT物性科学基礎研究所では、作製条件の高精密化、原料ガスの高純度化を可能にする技術を開発し、マイクロ波プラズマCVD法(*1)を用いて残留不純物、結晶欠陥を従来の数百分の一にまで飛躍的に低減できました(図1)。これにより、評価結果では高い結晶品質が得られ、これまで理論的に予測されていたダイヤモンド半導体の優れた特徴を実証しました。この成果は世界で初めての実証例です。
 ダイヤモンドは、現在広く使われているシリコンに比べ5倍の高温動作、30倍の高電圧化を可能とするポテンシャルを持っています。今回作製した高品質ダイヤモンド半導体をデバイスに適用することで、宇宙においても、安定に動作する、高出力・高効率な通信衛星用デバイスの実現が可能となります(図2)。


<高品質ダイヤモンド半導体の特徴>
従来の結晶と比較すると、結晶欠陥が2桁以上も飛躍的に低減(図3)
不純物を含まないため、肉眼でも鏡面で透明の結晶であることがわかります(図4)
半導体結晶品質の指標であり、デバイス動作速度を決定するキャリア移動速度(*2)は、従来の約20倍の1300cm2/Vsの高い値を示しました(図5)。


<技術のポイント>
 第一段階として、キャリア移動速度を決定する要因は残留不純物、非ダイヤモンド(グラファイト)成分、結晶欠陥(*3)であることを明らかにしました。
 第二段階として、原料ガス中に含まれている残留不純物を特定し、原料ガスの高純度化を行ないました。
 第三段階として、650℃から750℃の間で、ダイヤモンドを作製すると、キャリア移動速度が最も高い、高品質のダイヤモンド薄膜結晶が得られることがわかりました。
 これらの段階を経て、飛躍的に高品質のダイヤモンド薄膜結晶が得られるようになりました。


<今後の展開>
 キャリア移動速度の一層の増加を目指すとともに、高キャリア移動速度の特徴を生かした電子デバイスの開発、さらに高品質薄膜結晶を使ったダイヤモンド固有の物性物理の解明を進めていきたいと考えています。



<用語解説>
*1 マイクロ波プラズマCVD法
 CVDは化学気相堆積法(chemical vapor deposition)の略です。ダイヤモンド薄膜結晶を作製する一般的な方法です(図1)。原料ガスには、メタンなどの炭化水素ガスと水素ガスを使います。マイクロ波によって原料ガスの中にプラズマを発生させます。プラズマ内で、炭化水素ガスは分解し、炭素原子ができます。その炭素原子が4本の化学結合の状態になり、基板上で次々に結合していくとダイヤモンドになります。この方法では、ダイヤモンド薄膜結晶は、基板とプラズマの両方から加熱されるため、ダイヤモンド薄膜結晶の温度の制御が困難であるという短所があります。

*2 キャリアの移動速度
 キャリアとはデバイスの機能を司る担体(電子、正孔)です。結晶品質が高いほど、キャリア移動速度が高くなり、デバイスの動作速度が増大します。

*3 残留不純物、非ダイヤモンド(グラファイト)成分、結晶欠陥
 ダイヤモンド結晶に炭素以外の異種原子が混入すると、それは残留不純物になります。理想的なダイヤモンド結晶は炭素原子が隣の炭素原子と4本の化学結合で結び合ってできています。ある炭素原子が、隣の炭素原子と3本の化学結合で結び合うと非ダイヤモンド(グラファイト)成分ができます。またある炭素原子が本来の規則的な原子配列構造と異なる構造を取ると、結晶欠陥ができます。またこれら残留不純物、非ダイヤモンド(グラファイト)成分、結晶欠陥はいずれもキャリア移動速度を著しく減少させることがわかりました。



図1 結晶作製技術の開発
図2 ダイヤモンドデバイスの特徴
図3 薄膜結晶の特徴;結晶欠陥が低減
図4 薄膜結晶の特徴;鏡面
図5 薄膜結晶の特徴;移動速度20倍




<本件に関する問い合わせ先>
NTT先端技術総合研究所 企画部
相原、甕、佐々木
Tel: 046-240-5152
E-mail:st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp



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