News Release


2002年5月30日


周囲の雑音を消去できるエコーキャンセラを開発
〜騒がしいオフィスでのテレビ会議や走行中の車内でのハンズフリー通話が快適に〜


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮津純一郎)は、周囲に雑音のある環境下でも、マイクロフォンとスピーカーを用いたハンズフリー通話を快適におこなえる、雑音消去機能付きエコーキャンセラを開発しました。
 今回の開発の特徴は、通話音声にひずみを生じさせず周囲の雑音を十分に消去するという、従来のエコーキャンセラでは出来なかった機能が盛り込まれたことです。これまでは、イヤホンと口元マイクロフォンからなるヘッドセットを使用するか、静かな室内でないと明瞭なハンズフリー通話が出来ませんでした。
 今回の開発により、騒がしいオフィス内でもパーソナルコンピュータ(以下、PC)を使ったテレビ会議が快適に行えるようになり、また、走行中の自動車内での携帯電話利用などでも明瞭なハンズフリー通話が可能となります。このように、ビジネスからパーソナルまで幅広いシーンでの活用が見込まれます。


○開発の背景
 現在、一般ユーザレベルまで普及してきた高性能のPCによるテレビ会議は、通常のオフィス内で使用する場合、マイクロフォンにはエコー※1に加えて、空調音、PCの冷却ファン音や人のざわめきといった通話音声以外の雑音までもが混入し明瞭な会話を妨げます。また、自動車内の携帯電話によるハンズフリー通話においても、エンジン音など走行に伴う雑音がマイクロフォンに混入し耳障りな音となります。
 周囲の影響を受けず、さまざまな環境下で使用できるハンズフリー通話を実現する技術の開発が待たれていました。


○技術のポイント(参照)
 マイクロフォンとスピーカーを用いた拡声通話を行う場合、マイクロフォンに入力されるのは自分の通話音声、エコー、そして周囲の雑音の3種類です。従来のエコーキャンセラは、混じりあったこれら3種類の音の中からエコーを取り除く技術です。
 具体的には、相手の通話音声と、その通話音声から生じるエコーから両者の関係を逐次学習し、相手の通話音声がどのようなエコーになるかを推定します。そして、自分側のマイクロフォンに入力される3種類の混ざった音の信号の中から推定したエコーを差し引く処理を行います。しかし、その際、自分側の周囲の雑音は、エコーと同様な方法では推定できないため処理の対象外となり、取り除くことはできませんでした。また、雑音より小さい(雑音に埋もれた)エコーも取り除ききれないという問題もありました。
 これに対し、今回、NTTサイバースペース研究所が開発した雑音消去機能付きエコーキャンセラでは、以下の技術を用いて周囲の雑音およびその雑音に埋もれたエコーまでも消去を可能としました。

1.

通話音声と雑音の時間・周波数特性の違いを利用した高精度な雑音消去
 空調音など、オフィス内の定常的な雑音は人間の通話音声とは異なって、信号の時間的な変化が穏やかで、また通話音声よりも幅広い周波数成分を含むという特徴があります。この特徴を利用して、定常的な雑音だけを抽出して推定します。その後、マイクロフォンに入力された雑音の混じった通話音声から直前に推定した雑音の周波数ごとの大きさに見合った量を差し引くことで雑音を消去します。本技術では、音圧レベルで最大20dBの消去を実現します。これは、騒々しい工場内でハンズフリー通話を行った場合に、静かな会議室で行ったのと同じくらい明瞭な通話が可能となります。

2.

2段構成による高性能なエコー消去
 今回開発したエコーキャンセラでは、まず従来手法で周囲の雑音よりも大きいエコーを消去します。次に周囲の雑音に埋もれ消去できなかった小さなエコーに対して、残響の周波数特性とエコーの元となる音声の周波数特性を利用し、エコーを推定します。そしてマイクロフォンに入力されたエコーの混じった音声から、推定したエコーの周波数ごとの大きさに見合った量を差し引くことでエコーを消去します。

3.

人間の聴覚特性を利用した処理音声の歪み発生防止
 人間の耳に聞こえるある音の最小の音圧レベルが、他の音の存在によって上昇する聴覚に関する現象(マスキング)を利用して、エコーおよび雑音を必要最小限の消去量で聞こえなくなるようにします。これは、通話音声に対して過剰な消去処理を行わず、自然な音声での通話を可能にするためです。


○今後の展開
 今後、ネットワークのブロードバンド化に伴ってオフィスや家庭、自動車内などさまざまな場所を結んだコミュニケーションや遠隔地コラボレーション(共同作業)が行われることが予想されるため、早期の実用化に取り組みます。また、更なる臨場感を出すためのステレオ化や利便性向上のための多地点化への検討を行っていきます。


[用語解説]
(※1)エコー: 相手の通話音声がスピーカーから出て壁などに反響し、マイクロフォンに入り込む音をいいます。



図-1 雑音消去機能付きエコーキャンセラ利用イメージ
図-2 雑音および雑音に埋もれたエコーの消去の仕組み




<お問い合わせ先>
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所
企画部 広報担当 山下・坂本・萩野
TEL:0468-59-2032
e-mail:ckoho@lab.ntt.co.jp



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