日本電信電話株式会社(以下 NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、全国どこからでもマルチキャスト*1集配信を経済的に実現できる「ダイレクトマルチキャスト衛星通信システム」を開発しました。
本システムは、複数の地点から同時にハイビジョンクラスの映像やIPデータをダイレクトに配信できることから、時と場所を選ばずに全国へ向けての情報発信を自由に行うことが可能です。また、システムの初期導入費用を抑えながらトータルコストも削減可能な衛星通信装置の小型経済化を実現しました。このため、コンテンツ(ライブ映像、ストリーミング映像)集配信サービス、企業内イントラネット、遠隔医療支援、遠隔研修サービス、電子政府、自治体災害対策システムなど、国内外を問わずに多様な分野での活用が考えられます。また、国内においては、離島・山岳地などにおける情報通信インフラ(基盤)への活用など、e-Japan重点計画に関連したデジタルデバイド*2解消ツールとしての利用も期待されます。 |
<開発の背景>
衛星通信は、地球上のあらゆる地点間を接続可能であるため、地上通信網の整備が困難な地域、あるいは災害対策用通信システムとして適用されてきました。また最近では、多数の情報受信地点に対して同時に情報を配信できる同報性を生かして、マルチキャスト衛星通信システムなどに多く利用されています。
現在商用化されているマルチキャスト衛星通信システムは、1箇所のセンターHUB*3と各地の小型地球局VSAT(Very small aperture terminal)*4で構成されるスター型と呼ばれるシステムが主で、配信は必ずセンターHUBから行われていました。このため、各地の情報発信拠点からセンターHUBまでは集信用回線として地上専用回線などが個別に必要となり、そのコストがユーザにとっての負担となっていました。また、集信用回線にVSATを用いた衛星回線を使用する構成では、VSATからHUBへの回線の通信帯域が限られており十分な通信速度を確保することができませんでした。また、衛星通信において利用できるトランスポンダ*5帯域は限られているため、複数送信局によりトランスポンダ帯域を効率的に共用することが求められていました。 |
<システムの特徴>
NTTサービスインテグレーション基盤研究所は、センターHUBを介することなく各地のVSATからダイレクトに、全情報受信地点へ向けた大容量マルチキャスト配信を経済的に行うためのシステム開発に取り組み、上記の課題を克服した「ダイレクトマルチキャスト衛星通信システム」の開発に成功しました。(図1)
本システムは、NTT未来ねっと研究所の考案した「マルチキャリア/マルチレート変復調技術」*6を基に開発した、複数拠点からの集配信を可能とした「グループ変復調装置」と、多地点のVSATで衛星のトランスポンダ帯域を共用して必要な回線容量を効率的に自動割り当てする「高効率衛星回線制御プログラム」により構成されます。また、マルチキャスト用アプリケーションとして、衛星マルチキャスト配信を高信頼に効率良く実現する「高信頼マルチキャストプログラム」も新たに開発しました。
本システムでは、複数のVSAT送信局から全国に向けてダイレクトに情報配信が可能であることから、センターHUBへの集信用の専用回線を必要とせず、あわせて、受信局では複数の送信局から発信された複数の配信情報を同時に受信することが可能ですので、複数情報を多重してセンターHUBからの信号を受信するのと同様の機能を実現できます。また、従来の変復調装置を用いて複数送信局からの信号を受信する場合、通信回線分の装置数が必要でしたが、グループ変復調装置では1装置で複数回線に対応することができるので、経済的で小型化も実現した高機能な衛星マルチキャストネットワークの構築が可能となります。 |
<新たに開発した技術> |
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| 1. グループ変復調装置 |
| 本システムのキーとなる装置であり、従来の変復調装置では1対地/1送受信(1装置あたり)でしたが、グループ変復調装置では、映像・IPデータ・音声の各々の通信を複数の対地と任意の伝送速度で同時に行うことができ、最大32送信地点からのIPデータ同時受信、最大256波の同時変復調などを1台の装置により可能としています(図2)。さらに、トランスポンダの不連続な空き帯域を集めて1つの通信回線として利用する「分散収容技術」を世界で初めて実現しトランスポンダ帯域の有効利用を図っています。
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2. 高効率衛星回線制御プログラム |
| 複数地点の送信局によるトランスポンダ帯域共用を効率的に実現する回線制御プログラムであり、3階層による階層化制御により、スケーラビリティ確保とコストパフォーマンスの最適化を可能にし、グループ変復調装置の特徴を生かした多地点の複数送信局によるダイレクトマルチキャストを実現しています(図3)。
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3. 高信頼マルチキャストプログラム |
| 新たに開発した「ユーザ局収容アルゴリズムと応答抑圧アルゴリズム」により、降雨時の情報不達通知の集中を抑えるなど、数万ユーザ規模への高信頼で効率のよい衛星マルチキャスト配信を実現します。(図4)
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<今後の予定>
VSATを用いた経済的なダイレクトマルチキャスト衛星通信システムを活用し、新しい衛星通信市場を開拓し、新事業の創出に寄与していきます。
また、衛星通信ビジネス全体の動向に注視しながら、市場ニーズに合ったシステムや新技術をタイムリーかつスピーディに提供していきます。 |