日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、標準TVを越える高画質*1対応のコンシューマ向けCODEC*2LSI (開発コード名:ISIL)構成技術を開発しました。これにより、従来、専用チップを複数個用いて実現していたMPEG-2*3準拠の480/60P(プログレッシブ)の高画質映像のエンコード(圧縮)/デコード(伸張)の同時処理(全二重*4)が、世界で初めて1チップ上で可能となりました。エンコード(圧縮)/デコードどちらかのみの処理(半二重*4)であれば、高解像度の720/30Pまで対応できます。
今回開発に成功したチップは、様々な用途の映像、あるいは映像通信機器に対応できる柔軟性と高機能性を同時に実現しています。また、1.5W以下という低消費電力化と低コスト化が図れたことにより、幅広いコンシューマ向け機器への組み込みを可能としました。家庭用デジタルビデオカメラや、双方向映像通信端末、モバイルCODEC機器への搭載により、標準TVを越える高画質映像環境がより身近なものになります。これにより、コンシューマ向け双方向の多種多彩なコンテンツ開発を促進し、高画質でのビジュアルコミュニケーション社会が一気に加速することが見込まれます。 |
○開発の経緯 |
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NTTサイバースペース研究所では、従来からブロードバンドネットワークを活用した高画質映像配信等のサービスを実現するため、標準TV映像のエンコード処理を実現するチップ(SuperENC)を始め、そのチップを用いた名刺サイズの超小型MPEG-2エンコーダPCカードなどの開発に取り組んできました。
ブロードバンド時代の本格的な到来に向け、高画質映像コンテンツの作成と映像通信を促進するために、様々なコンシューマ向け機器などへ組込み可能な、低消費電力で動作し、低コストな標準TVを超える高画質対応のMPEG-2 CODEC LSIが必要とされていました。 |
○技術のポイント |
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1.480/60P映像の全二重CODEC処理の1チップ化を実現:(別紙1参照)
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480/60P映像の全二重CODEC処理を行う上では、エンコーダとデコーダでそれぞれ膨大な演算の必要があり、それを1チップ内部で実現するため、チップ内に独立に動作するエンコーダコア*5/デコーダコア*5を搭載し、それらのコアへ独立に高速なデータ供給を実現するデュアルメモリ方式を開発しました。これにより、エンコーダとデコーダの同時動作が可能で片方向のみならず双方向のアプリケーションにも展開できます。また、これに必要な3千万個のトランジスタを、商用0.13- m CMOS*6テクノロジーにより、1チップへの集積を実現しました。 |
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ハード/ソフト最適化設計による低消費電力化・経済化および各種CODEC機器への容易な組込みを実現:(別紙2参照) |
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ハードとソフトの役割分担の最適化を図り、標準TVを超える高画質のCODEC処理を消費電力1.5W以内に抑えつつ、標準TVの480Iの他、480/60Pや720/30P形式の高画質な映像規格にまで柔軟に対応しています。さらに、オーディオのエンコーダ/デコーダや、マルチプレクサ*5/デマルチプレクサ*7もすべて内蔵しているため、AD/DA変換器*8やストリーム入出力回路などの簡単な外部回路を付加するだけで、多様な高画質モバイルCODEC機器に組込み可能であり、コンシューマ用途として幅広いアプリケーションに適用することができます。 |
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○今後の予定 |
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今後、本格化するブロードバンド時代に向け、今春を目途に本ISILチップをコンシューマ向けビデオカメラや映像通信端末など、ユビキタスなモバイルCODEC機器へ組込み、商品化を進め、標準TVを超える高画質映像でのTV電話やTV会議などのアプリケーションの活性化と普及による光ネットワークの拡大を目指します。なお、本ISILチップは、エヌティティエレクトロニクス株式会社(東京都渋谷区、代表取締役社長:伊澤 達夫)から製品名‘SuperENC-III’として販売されます。また、光ネットワークを活用した将来の多種多様なサービス展開を図るため、本ISILチップのさらなる小型化・高品質化を図りつつ、多種多様な機能に対応可能な次世代のCODEC技術の開発に取り組んでゆきます。 |
<用語解説> |
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*1:標準TVを越える高画質 |
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従来の標準テレビ(毎秒30フレームで有効走査線480本のインタレース方式:480I方式)に比べ、フレームレートを2倍の毎秒60フレームに引き上げ滑らかな映像を実現するプログレッシブ方式(480P方式)や、フレームレートは毎秒30フレームで有効走査線数を1.5倍に引き上げ高解像度な映像を実現するプログレッシブ方式(720/30P方式)など、映像の精細度を改善した映像方式。
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*2:CODEC(COder and DECoder) |
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映像や音声データを所定のストリームに圧縮するエンコーダ(Coder)と、逆に圧縮されたストリームから映像や音声データに伸張するデコーダ(Decoder)の、両方の機能を有するもの。デジタルの映像や音声はデータ量が膨大となるため、適切なCODECを用いてデータを圧縮することが大切です。 |
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*3:MPEG-2(Moving Picture Experts Group-2) |
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MPEGは動画像圧縮に関する国際標準方式。そのうちMPEG-2は、HDTVを含むテレビ映像など高品質な映像の標準符号化方式で、DVDやデジタルテレビ放送にも適用されています。 |
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*4:全二重(Full Duplex)/半二重(Half Duplex) |
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エンコード(圧縮)処理とデコード(伸張)処理を同時動作させること。これにより、片方向のみならず双方向のアプリケーションが実現できる。なお片方向の処理を半二重と呼ばれる。 |
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*5:エンコーダコア/デコーダコア |
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MPEG-2のビデオのエンコード処理やデコード処理を実現する基本部分で、チップ上で映像情報を圧縮や伸張を実現します。 |
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*6:0.13- m
CMOS |
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CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductor の略で、高速かつ低消費電力に特徴がある半導体製造方法です。パソコンのCPUからメモリまで、現在の半導体は、ほとんどがCMOS方式である。また、0.13- mはその最小線幅を示しており、最先端の微細加工プロセステクノロジです。 |
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*7:マルチプレクサ/デマルチプレクサ |
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マルチプレクサは、MPEG-2規格に準じて、入力されたビデオの圧縮ストリームとオーディオの圧縮ストリームを、ひとつのストリーム(トランスポートストリームあるいはプログラムストリーム)に多重化して出力する。その逆に、デルマプレクサは、入力されたひとつのストリームを、ビデオの圧縮ストリームとオーディオの圧縮ストリームに分離して出力する。 |
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*8:AD/DA変換器 |
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アナログ信号をデジタル信号に、あるいは逆に、デジタル信号をアナログ信号に変換する電気回路。 |
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