News Release

2003年9月17日


通信拠点間の接続を自在に構築できる
「任意トポロジ対応ネットワーク」を開発

−インターネットライブ配信など急激な通信量の増大にも瞬時に対応−


 日本電信電話株式会社(以下、NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、スター型、リング型、メッシュ型など様々なトポロジ(接続形態)のネットワーク同士をシンプルなスター網で接続できる「任意トポロジ対応ネットワーク」を開発し、基本動作を確認しました。これにより、災害時など急激なトラヒック需要の増大に対応、危険情報などの途絶を回避できるほか、市町村合併、企業内の本支店、部署の統廃合に伴う通信網の再構築、インターネット上の人気コンテンツの配信容量増強などをネットワーク管理者の手元で瞬時に実現できるようになります。また、ネットワーク再構築の際に必要であった光ファイバ敷設や機器設備のための費用と時間を大幅に削減できるものと考えております。
 NTTフォトニクス研究所が、今回新たに開発した「任意トポロジ対応ネットワーク」は、1本の光ファイバで複数の信号を伝送する光波長多重(WDM(*1))技術と、この信号を振り分けるフルメッシュ波長多重ネットワーク技術(AWG-STAR(*2))を土台に、信号経路を自在に制御できる技術を開発したものです。
 これにより、スター型、リング型、メッシュ型など様々なトポロジのネットワーク、およびこれらが混在したネットワークでもシンプルなスター型の光ファイバ配線でメッシュ接続を実現できました。
 また、トポロジの変更およびネットワークのなかに新たな通信拠点を瞬時に追加・移動することができます。さらにこの技術は、インターネット接続事業者同士が、通信需要の一極集中による通信の遅延を避けるために行っている次世代分散IX網(*3)の広域展開に役立つほか、セキュリティの高い分散iDC網(*4)などへの適用が期待されています。


<技術の特徴>
スター型のファイバ接続形態をもつWDMシステム
スター型接続、リング型接続、メッシュ型接続、あるいはそれらが混在したネットワークを構築できる
光信号の波長制御技術により、通信経路、接続先を柔軟に設定できる
新たな通信拠点の追加、移動、入れ替えなどが瞬時に実現できる


<開発の背景>
 近年インターネットでは、ブロードバンド利用者の急激な増加に伴い、ライブコンサートの映像配信などコンテンツそのものが大容量化しておりトラヒックが増大しています。特に人気の高いコンテンツなどでは一時的に配信需要が高まり通信量需要予測を超えた負荷が発生し、配信不可能になる事態もたびたび引き起こされています。
 また、企業のリストラクチャリングにより、本支店・部署の統廃合などが進展しており、企業ネットワークの再構築が盛んに行われています。最近では、自治体は市町村合併の機運が盛り上がるとともに、その情報発信機能の強化を目指して、自治体間や本庁舎、出張所、学校、図書館、消防署などとのネットワークの相互接続を活発化させています。
 このようネットワーク接続需要の課題を解決するためには、トラヒックが常に均等になるように経路を新設するなどの物理的ネットワークを構築しなければなりません。しかし、そこでさらに問題となるのは、既存のネットワークの形態がスター型、リング型、メッシュ型など異なるほか、信号方式、運用形態などもそれぞれ異なることが挙げられます。このため、新規増設のためにシステム全体を再設計する必要がありました。またさらには、新たなファイバ網の敷設など、大規模な設備工事が必要となり、その間のサービスも停止せざるを得ませんでした。


<技術のポイント>
 NTTフォトニクス研究所では、これまでに本システムのベースとなるAWG-STARを開発しています。AWG-STARは、WDMと、AWG(アレイ導波路回折格子(*5))ルータを用いた経路選択技術の2つの技術を融合したもので、WDM信号を波長によって経路を振り分ける機能を有するネットワークです。
 ここで、AWG-STARは光信号を電気信号に変換せずに光信号のまま経路選択できるため、信号処理による遅延がほとんど無く、信号方式や伝送速度の混在したネットワークでも使用できます。さらには、この厳密な経路選択性を利用し、セキュリティの高いプライベートネットワークを構築できます。
 またAWG-STARネットワークでは、各通信拠点に設置したWDM装置によって光波長を制御して通信経路を選択することにより、スター型、リング型、あるいはメッシュ型のいずれの接続形態でも単独、あるいは混在した構成が可能になります。
 今回開発した任意トポロジ対応ネットワーク技術は、光信号の波長を異なる波長に制御することにより、通信経路を柔軟に、しかも秒単位の短い時間で変更するものです。このことは、伝送速度や信号方式などに縛られず、どのようなネットワークでもシンプルなスター型接続に変換できることを意味します。このため、通信拠点の増設、異なる接続形態間での通信拠点の移動、入れ替えも可能になります。
 このように本技術は、波長ごとに経路を自在に指定できるため、スター型接続によるファイバ接続にもかかわらず、各端末がそれぞれすべての端末と相互接続するフルメッシュ接続(*6)を可能にしています。またコンサートやイベントなど、一時的なトラヒック需要が無くなった場合には、接続形態を元に戻すことも容易で、ネットワークの規模や用途に応じて最適なネットワークを、所用の時期だけ構築できるなどの経済的メリットも生まれます。


<今後の展開>
 今後、システムの基本動作検証結果を踏まえて、実用化に向けた技術課題の抽出などの検討を行ってまいります。




<用語解説>
*1 光波長多重(WDM)通信
(Wavelength Division Multiplexing)
 波長の異なる複数の光信号を重ね合わせ、1本の光ファイバで大容量の情報を送ることができる技術です

*2 AWG-STARネットワーク
 AWG(*5)ルータを中央に、通信拠点を周囲に配置し、光ファイバで接続したスター構成のネットワークです。各通信拠点から送られてきた波長多重光信号を、光のまま、波長ごとに行き先を経路選択し、宛先の拠点に振分けることにより、拠点間のフルメッシュ接続を実現します。

*3 分散IX
(Internet eXchange)
 IXはインターネット接続事業者がネットワークを相互に接続する設備です。一部地域へのトラヒック集中によるネットワークの遅延を避ける為に、相互接続地点を複数地点に分散して配置します。

*4 分散iDC
(Internet Data Center)
 iDCは顧客のサーバを預かったり、自らが用意したサーバを顧客に貸し出して、インターネットへの接続回線や保守・運用サービスなどを提供する施設です。トラヒック集中によるサーバの負荷を分散したり、設備を多重化して障害に備えるため、複数箇所に分散して配置します。

*5 AWGルータ
(AWG: Arrayed-Waveguide Grating,アレイ導波路型回折格子)
 入力された波長多重光信号を、波長によって経路選択する機能をもった装置です。

*6 フルメッシュ接続
 同じネットワークに属する他の全ての相手と直接通信できる接続形態です。通信経路が他の拠点を経由しないため、セキュリティの高いネットワークが構築できます。




〔本件に関する問い合わせ先〕
 NTT先端技術総合研究所
 企画部 澤木、甕(もたい)
 TEL:046-240-5152
 E-mail:st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp


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