News Release

2003年10月20日


次世代ブロードバンドサービスを実現するマルチキャストMPLS技術を世界に先駆けて開発
〜1対1接続や多地点接続の高品質・高信頼な映像コミュニケーションを全国規模で実現可能に〜


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、米国Motorola社(*1)と共同で、世界に先駆けて、既存のIPマルチキャストでは実現できなかった高品質・高信頼のマルチキャスト型配信サービスやインタラクティブ・マルチメディアコミュニケーションサービスを提供することができるマルチキャストMPLS(*2)プロトコルを考案し、このプロトコルを実現するルータソフトウェアの開発に成功しました。

 マルチキャストMPLSプロトコルは、MPLSのQoS保証(*3)機能とTE(トラフィックエンジニアリング)機能(*4)を用いて、従来IP技術では困難であった、高性能の1対1用の転送経路や、ネットワークコピー機能による多地点接続用の転送経路を同時に設定可能な画期的なMPLSプロトコルです。これにより、次世代ブロードバンドサービスとして期待される様々な映像コミュニケーションを全国規模のユーザに高品質・高信頼で提供可能となります。


<開発の背景>

 情報流通サービスは今、モバイルとブロードバンドという大きな流れの中で、「競争の激化」と「ニーズの多様化」という事態に直面しています。「高品質」「高信頼」「速く」「安く」をキーワードに、VOD、IP/TV(*5)、ライブ配信といったコンテンツ配信サービス、IP-VPNや広域LANサービスの法人向けプライベートネットワークサービス、VoIP、TV会議、ビデオチャットといったインタラクティブマルチメディアサービスなど、さまざまな次世代ブロードバンドサービスが考えられています。(図1−1、図1−2

 それに伴って、1対1通信と多地点通信に対する大規模で、高性能な配信能力が求められており、マルチメディアサービス提供能力と品質制御能力の2つが主要な課題となっています。しかし、既存のIPマルチキャストの場合、経路の変更が自動的に発生する上に、ノード間での多くの情報のやり取りが必要で、なおかつ品質の劣化が発生します。また、全国レベルの配信を行うほどの拡張性がないなど、数々の課題がありました。
 そこで、NTTネットワークサービスシステム研究所では、これらの課題を解決するため、次世代ブロードバンドサービスに求められるコアネットワーク機能の検討を進めてまいりました。そして、この度、Motorola社と共同で世界に先駆けて、MPLS技術を基本としたマルチキャストMPLSプロトコルの開発に着手し、この画期的なプロトコルを実現するルータソフトウェアの開発に成功致しました。
 本技術は、10月26日〜28日に米国ワシントンD.C.で開催される国際会議「MPLS2003」において動態展示を実施するとともに、10月27日にMotorola社からのプレスリリースを予定しております。


<マルチキャストMPLSプロトコルとルータソフトウェアの特徴>

(1)全国レベルのマルチキャスト配信機能
 マルチキャストMPLSは、既存のMPLSの利点を生かしつつ、次世代ブロードバンドサービスに必要不可欠なマルチキャスト配信機能を持たせた世界初の画期的な技術です。これにより、どこからでも、手軽に全国レベルのユーザを対象にしたマルチキャスト配信を行うことができます。MPLSで実現されているサービスネットワーク上に、IP/TV、ライブ配信、個人放送局、ビデオチャットなどのマルチキャスト型サービスを実現することができます。

(2)マルチサービスに対してQoSを提供
 サービス毎やユーザ毎のニーズに応じたQoSを提供することができ、様々なブロードバンドサービスを高品質・高信頼に提供できるようになります。ユーザは、ヘビーユーザなどのトラフィックに邪魔されることなく、映画などの配信映像を楽しむことができます。

(3)ルータへの実装が容易
 今回、開発を行ったルータソフトウェアは、市場展開されたルータソフトウェアからの拡張のため、ソフトウェアの追加によってルータへのマルチキャストMPLSの実装を容易に実現できます。

(4)次世代光ネットワークへの適応
 GMPLS(*6)などを使った光網との親和性が高いことから、次世代光ネットワークを含む幅広いネットワークへの適応が可能です。


<技術のポイント>

(1)マルチキャストパス設定機能
 各ルータは、1つのメッセージをやり取りすることで、ツリー構造をしたパスを設定することができるため、配信先の増大に対する拡張性に優れています。

(2)QoS機能(図2
 パスごとに必要帯域を確保できる機能を備えており、1対多の通信においても、帯域保証型や帯域共有型サービスを提供できます。

(3)マルチキャストTE機能(図3
 送信側ルータで経路を指定できるため、QoSを保証しながら、輻輳回避や障害回避ができます。これにより、ネットワークの使用効率を高めると同時に、信頼性向上を図ることができます。マルチキャストMPLSでは、1対1だけでなく、1対多のパスに対してもTEが可能となります。

(4)トラフィック状況と連携した経路計算(図4
 ユニキャスト用のルーティング機能を使ってネットワークのトポロジー情報、リンク属性情報、残余帯域を収集し、QoSを保証する最適ツリーを経路計算エンジンが計算します。各ノードが経路計算エンジンを搭載し、自律分散制御で最適計算をすることで、どこがソースになっても最適経路でのマルチキャスト配信が可能となります。

(5)部分ツリー修正機能
 マルチキャストMPLSでは、マルチキャストパス設定時に部分的に失敗した場合、ツリー全体を再設定するのは非効率なため、既設定部分に修正ツリーを部分追加することができます。また、部分的な削除も可能です。こうすることにより、ユーザ全体に影響を与えることなく安定的にパスの部分修正が可能となります。


<今後の展開>

 様々なブロードバンドサービスを提供することができるコアネットワークが必要とされる中、NTTはマルチキャストMPLSプロトコルのIETF(Internet Engineering Task Force)での標準化作業を精力的に推進しております。
 NTTはこれらの技術開発によりブロードバンド市場における更なる競争力獲得のため、プロトコルベンダならびにルータベンダとの連携をさらに密にし、今後は次世代光ネットワークを含む幅広い将来ネットワークへの適用を検討していきます。



<用語解説>

(*1) Motorola社
 米国に本社を持つ、通信機器や電子デバイスの製造販売を手掛けるグローバル企業。本開発を手掛けたMotorola社のComputer Groupは、ルータソフトウェアを多くのルータベンダに提供し、組み込み市場において世界的な影響力を持っている。

(*2) MPLS(Multi-Protocol Label Switching)
 従来のルータの動作とは異なり、あて先IPアドレスを見る代わりに、「ラベル」と呼ばれるパケットに付けられた目印のみを見てフォワーディングを行う技術。 急速に進展するブロードバンドインターネットを支える基盤技術として採用されている。

(*3) QoS (Quality of Service)
 ネットワークに関する通信品質のこと。快適な通信を保証するための帯域の確保、一定した伝送速度の提供、トラフィックの優先順位付けなどの機能をネットワーク上で提供すること。中でも、インターネットに関連するQoSは、近年急速に強化されている。

(*4) TE(Traffic Engineering)機能
 IPネットワークでの経路指定技術を可能とする技術であり、ある特定の経路へのトラフィックの集中という問題を解決し、ネットワークの能力を最大限に引き出すことが可能となる。

(*5) IP/TV
 IPネットワーク上で高画質な動画や音声をテレビ放送のようにネットワーク上に配信する技術やサービス。

(*6) GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)
 MPLSを低いレイヤである光波長や光ファイバなどに拡張したプロトコルの総称。



図1 サービスイメージ(次世代光ネットワークへの適応例)
図2 QoS機能
図3 マルチキャストTE機能
図4 トラフィック状況と連携した経路計算




【本件に関するお問い合わせ】
NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 井田、佐野、遅塚
TEL:0422-59-3663
E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp


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