News Release

2003年12月17日


新構造光ファイバ「ホーリーファイバ」の実用化に見通し
〜超大容量光通信に向けての低損失値の世界記録樹立と、
配線工事の低コスト化の実現など新構造光ファイバの研究が急速に進展〜


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、従来の光ファイバでは実現が困難だった光学特性をもち、次世代の伝送媒体や光機能素子として注目される新構造光ファイバの実用化研究を飛躍的に進展させました。
 新構造光ファイバは「ホーリーファイバ」(*1)と呼ばれ、従来「コア部」と「クラッド部」で構成されてきた光ファイバのクラッド部に結晶格子のように整然と並んだ空孔を有しています(図参照)。
 空孔の大きさ、数、間隔、配列などを工夫することで、「極めて広い波長域での単一モードの動作」「曲げ損失の大幅低減」「高い偏波保持特性の実現」など、従来の光ファイバでは実現しえなかった数々の光学特性を実現します。また、曲げ損失の大幅低減の実現により、曲げると光が通らなくなる従来の光ファイバと違い、配線工事時の“扱い易さ”が格段に向上できるため、アクセス系などへの適用にあたって特別な配線工事が不要で、よりフレキシブルな布設・配線が可能となります。
 本格的なブロードバンド時代の到来を迎え、Bフレッツに代表される光サービスが急速に拡大している中、NTTの先導的な研究開発成果であるホーリーファイバは、お客様への低コストかつ迅速な光サービスの提供に資するものとして期待されています。


<研究の背景>
 光ファイバは、成長を続けるIT社会を支えるインフラの構成要素として広く使われており、基幹系ネットワークのみならずアクセス系ネットワークへとその適用範囲が拡大しています。
 しかし、石英系ガラスに添加物を加えて導波路構造を形成する従来の光ファイバでは、光学特性上、現行の波長域での光通信の大容量化が極限状態にあります。加えて、曲げ損失や接続損失の問題など、配線工事時における“扱いにくさ”につながる課題も指摘されていました。
 そのためNTTでは、バックボーンの超大容量化によるネットワークの経済化を目指し、従来の光ファイバよりも優れた伝送特性や曲げ損失特性を備えたホーリーファイバの研究開発を進め、数々の先導的な成果を挙げています。
 なかでも、数十個の空孔を設けたフォトニック結晶型光ファイバでは着実に低損失化を実現しています。2003年3月、NTTアクセスサービスシステム研究所は低損失値の世界記録(0.37dB/km)を樹立し、半年後の9月には、その記録をさらに自ら塗り替える(0.28dB/km)など、石英系ファイバの損失限界(0.14dB/km)に迫る勢いで、将来のホーリーファイバの導入に向けて研究開発を推進しています。
 また、数個の空孔を設けた空孔アシスト型光ファイバでは、曲げ損失の低減に加え、従来の光ファイバと同等の接続損失を実現する基本構造も明らかにしています。


<新構造光ファイバの特色>
 ホーリーファイバのなかでも、NTTがこのたび低損失値で世界記録を樹立したフォトニック結晶型光ファイバは、主に次のような特徴を備えています。
  ・ 極めて広い波長域での単一モード(*2)動作
  ・ 曲げ損失の大幅低減(事実上、ゼロにできる)
  ・ さまざまな分散特性(*3)の実現
  ・ 光非線性(*4)の柔軟な制御
  ・ 高い偏波保持特性(*5)の実現
 単一モードの波長範囲が広がることで、光通信の超高速大容量化・高機能化を実現する将来のフォトニックネットワーク(*6)において、WDM(*7)で利用される波長領域の拡大も期待されています。これは、可視域から近赤外域までの波長域を用いた超大容量光通信を予感させるものです。
 また、空孔アシスト型光ファイバの登場で、曲げても損失の少ない光ファイバの実現に道を開いたことにより、オフィスやお客様宅におけるアクセス系の高速通信インフラの構築を迅速かつ低コストで行える可能性が広がりました。


<今後の展開>
 今後は、フォトニック結晶型光ファイバにおいては、広波長域での伝送特性の解明とその高性能化の検討、試験技術・接続技術・ケーブル化技術の確立など、将来の通信媒体としてのフィージビリティ検討を継続して行います。空孔アシスト型光ファイバでは、曲げ耐性以外の新しい特徴や応用の可能性を引き続き検討していきます。
 また、曲げに強い光ファイバに関しては、その他の構造も含めて現在検討中であり、早期の適用を目指して研究開発を推進していく考えです。



<用語解説>
*1 ホーリーファイバ(Holey fiber)
 空孔構造の光ファイバの総称。代表例に、空孔アシスト型(高屈折率コア、数個の空孔)、フォトニック結晶型(石英ガラスコア、数十個の空孔)、フォトニックバンドキャップ型(中空コア、数十個の空孔)などがある。
*2 単一モード
 伝搬可能な波の種類(モード)が1つである状態。単一モード光ファイバは多モード光ファイバに比べて高速伝送に向く。
*3 分散特性
 光の波長によって光パルスの伝搬速度が異なること。
*4 光非線形
 光の強度が大きい場合に屈折率が光の強度に応じて変化する現象。
*5 偏波保持特性
 光の振動面(偏波面)を一定の方向に保ちながら光を伝搬させる性質。
*6 フォトニックネットワーク
 大容量通信に対応した次世代の光ネットワークの総称。電気信号に変換しないで光信号のままで通信することで高速化を実現する。
*7 WDM
 波長分割多重。1本の光ファイバで異なる波長の複数の光信号を多重化して伝送する技術。フォトニックネットワークを実現するキーテクノロジとして注目される。近年では、高密度WDM(DWDM)の研究開発も盛んに進められている。



図 ホーリーファイバの断面写真




【本件に関するお問い合わせ】
NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 遅塚(ちづか)、佐野、井田
TEL:0422-59-3663
E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp


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