News Release

2004年2月2日


電子ビームリソグラフィによる3次元ナノ加工技術を実現
− 解像度100倍で世界最小の地球儀(ナノグローブ)を作製 −


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、世界最高のナノ(1ナノは10億分の1)レベルで試料を3次元加工できる電子ビーム(EB)リソグラフィ(*1)システムの開発に成功しました。3次元のパターン形成や加工技術のデモンストレーションとして、球体試料にEBで描画した世界最小の地球儀(ナノグローブ)を作製しました。
 この技術は、近い将来、広範な産業の糧となると期待されているナノテクノロジ(*2)の分野で、様々な応用が可能な重要な基盤技術になると考えております。


<技術の特徴>
ナノレベルの3次元超微細加工・描画を実現
試料を2軸回転して正確に位置を制御する駆動システムを開発
EBの焦点を微調整できる高さ測定装置を開発、焦点誤差を1〜2ミクロン(1ミクロンは千分の1ミリメートル)以下に制御
描画位置の調整のため、透過電子により試料の輪郭を検出する手法を開発、精度を10〜30ナノに制御
従来の3次元加工法より解像度が約100倍向上


<開発の背景>
 EBリソグラフィはこれまで、半導体集積回路などを作製するための2次元加工技術として研究・開発が進められてきました。数十ナノメートルから数ナノメートルまで微細化されています。これに対して2次元よりも応用範囲の広い3次元構造物を加工する従来の技術は加工速度や解像度が不足していました。例えば、3次元のナノ構造を作製する「荷電粒子ビームによる材料堆積技術」では材料を堆積させるため構造作製に時間がかかり、より複雑な構造を作製することは困難でした。また、複雑な3次元構造が作製できる「マイクロ電気機械システム(MEMS、*3)」の技術では、パターン形成のために光やX線を用いているため、回折限界等(*4)により解像度が低くなり、その最小構造寸法は1ミクロン程度でした。
 今回開発した技術は、光やX線よりも解像度が約100倍高いEBのナノリソグラフィ装置に試料を回転駆動するシステムを組み込むことで、これまでよりも高速に3次元のナノレベルでパターン形成や加工ができるようにしたものです。この技術を用いて世界最小の地球儀を作製しました。また、立体構造のナノフィルタも実現しています。


<技術のポイント>
 本技術のポイントの1つは、試料を2軸回転駆動することにより3次元試料の任意のポイントにEBを照射できるようにしたことです。そのために、EBナノリソグラフィ装置の中で試料を回転する2軸の回転駆動システムを開発しました(図1参照)。この回転駆動システムは、図のR軸の回りに360°、T軸の回りに最大45°試料を回転でき、その精度を0.1°以下に抑えました。半導体ウエハなどを載せるホルダと同様の外形をしており、EBナノリソグラフィ装置に簡単に出し入れすることができます。
 もう1つのポイントはEBナノリソグラフィで電子を一点に収束させる手法です。3次元の位置決めは、従来の半導体ウエハなどに用いていた縦横のXY情報だけでなく高さのZ情報も必要になります。
 今回のシステムはまず、このZ情報を得るため共焦点レーザ顕微鏡(*5)を用いた高さ測定装置を新たに開発しました。これは試料で反射したレーザ光線の強さから、高さを割り出す仕組みで、回転させた小さな3次元試料でも高さ誤差を1〜2ミクロン以内に抑えることができました(図2参照)。
 次に、XY情報について、試料の下に透過電子検出器を配置して、EBに対する試料の影を計測することで、試料の輪郭位置を検出、20〜30ナノメートルの高い精度で位置決めすることに成功しました(図3参照)。
 世界最小のナノグローブは、図4に示した様に、球状の樹脂の表面に世界地図のパターンを形成することで作製しました。その直径は60ミクロン程で、髪の毛の太さよりも細いものです。ナノグローブ上に形成された最小パターンの寸法は10ナノメートル程度で、これは実際の地球上では2kmに相当します。
 超微細ナノフィルタは、図5に示した様に、EBによるパターン描画と現像を繰り返すことで作製しました。つまり、1回目のEB描画と現像で、枡状の枠組みを削り出し、2回目のEB描画と現像で、枠組みの側面に微細な穴の列を形成しました。図に示した様に、30ナノメートル程度までの微細な穴を有するナノフィルタが作製できました。


<今後の展開>
 今後は、半導体など様々な材料の3次元ナノ加工技術を確立し、高機能ナノ電子デバイスの作製などへの応用を展開していく予定です。


<用語解説>
*1 電子ビームナノリソグラフィ
 半導体集積回路を作製するために、電子ビームを用いて微細なパターンを形成する技術。電子ビームをなるべく小さく収束させることで、数ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)のビームが得られ、10ナノメートル以下のパターンが形成できる。電子ビームに感光するレジスト材料を試料表面に塗布し、電子ビームでパターンを描画した後に、現像液に浸すことで、パターンが形成される。

*2 ナノテクノロジ
 1ナノメートルから百ナノメートル程度の微細な構造に関係する技術の総称。近年、その様な微細ナノ構造を作製・評価・応用する様々な技術の研究が盛んになっている。その中でも、ナノ構造の作製技術は中心的な研究分野となっている。

*3 マイクロ電気機械システム(MEMS)
 半導体集積回路を作製する技術を応用して、微細な機械部品や電気制御できる様々な微小デバイスやシステム。また、その作製技術。複雑な3次元構造も作製できる。

*4 回折限界
 微細なパターンを形成したり観察したりする場合、用いる手段(光、X線、電子ビームなど)の波長によって、その解像度・分解能の限界が原理的に決まってしまう。可視光の波長は、数百ナノメートルだが、電子ビームでは0.01ナノメートル以下の波長が容易に得られる。

*5 共焦点レーザ顕微鏡
 像面(焦点位置)に微細な絞りを配置することで、試料の高さ方向の分布が測定できる顕微鏡。高い輝度のレーザ光を用いることで、10ナノメートル以下の高さ方向の分解能が得られている。



別紙:図1〜図5




〔本件問い合わせ先〕
NTT先端技術総合研究所
企画部 情報戦略担当
澤木、甕(もたい)
TEL: (046)240-5152
E-mail: st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp


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