2004年3月3日
(報道発表資料)
日本電信電話株式会社
エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社


光コネクタの新しい現場組立技術を開発
−新開発の瞬間接着剤と小型高速研磨機により工事現場での光配線工事を
簡易に短時間・低コストで実現 −


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、NTTフォトニクス研究所とNTTマイクロシステムインテグレーション研究所が培ってきた通信用光コネクタ技術を応用し、これまで工場以外での作業が難しかった光コネクタの工事現場での組立て作業を短時間かつ低コストに実現できる技術を開発しました。
 この技術は、2003年7月に発足した、NTTの優れた研究成果の事業化を直接推進していく「総合プロデュース機能」*1によって製品化され、光コネクタ関連技術の開発・販売で実績の有るエヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社(以下NTT−AT、本社:東京都新宿区、代表取締役社長:田崎公郎)が製造し、3月10日から販売開始します。
 本製品は、新たに開発した瞬間接着剤と小型高速研磨機からなり、従来から利用されている低コストな光コネクタの部品をそのまま用いながら、組立工数の削減により作業時間を1/5に短縮するとともに、電力供給の無い工事現場での組立作業も可能としました。本製品により、光コネクタ取付け作業が大幅にコストダウンできるとともに、これまで融着などの永久接続技術が使われていた接続箇所をコネクタ化できるなど、光配線工事の自由度を広げることができます。さらに、端面を損傷した光コネクタや旧型のPC研磨された光コネクタ端面を低反射PC研磨に再研磨するなど、既存設備の有効利用の点からも大きな効果が期待できます。


<開発の背景>
 FTTHシステムの工事や、構内光LAN配線工事においては、宅内やビル内で光ファイバケーブルに光コネクタを取付けた上で機器と接続する必要が生じます。一方、光ファイバケーブルの先端に光コネクタを取付けるためには、フェルール*2という部品を光ファイバ先端に接着し、フェルール端面を精密に研磨する工程が必要です。従来は、接着にエポキシ系接着剤*3を用いるために10〜30分を要し、その後10分程度の研磨工程が必要で、高度な工程管理を要するものでした。そのため工場で多数本を一括処理することによりコスト単価を下げてきましたが、電力を必要とする加熱器や大型研磨機が必要であり、同じ作業を工事現場で行うことはできませんでした。
 そのためFTTHシステムのお客様宅における工事の際には、予め工場で組立てた片端に光コネクタをつけた光ファイバコードを現場に持って行き、お客様宅内に引き込んだ光ファイバケーブルと持ち込んだ光ファイバコードをスプライス*4(永久接続)する手法や、スプライス機構を持った研磨済みの簡易組立光コネクタプラグを用いる手法が取られていました。しかし、どちらの手法も、接続・切り離しを行うための光コネクタによる接続点の他にスプライスによる接続点がもう一箇所増えることにより、接続損失とともにコストの増大が避けられませんでした。
 これまで20年余に渡り通信用光コネクタの開発を続け、SC形光コネクタ*5を始めとして現在世界の主流となっている光コネクタを世に送り出してきたNTTフォトニクス研究所と、光コネクタの研磨技術を開発したNTTマイクロシステムインテグレーション研究所では、光学接着剤や光コネクタ用研磨機の開発・販売で高い実績を有するNTT−ATの協力を得て、工事現場で簡単かつ短時間・低コストで光コネクタの取付けができる技術の開発に取組んできました。今回は、FTTHシステムにおけるNTTビル内の設備に採用している小形のMU形光コネクタ*6の現場組立技術を完成させ、同コネクタの適用領域をビル構内や宅内へ拡大させることを狙いとしています。


<製品のポイント>
 本製品は、短時間で硬化する瞬間接着剤、誰でも同条件で接着作業ができる組立ツール、および小型高速研磨機から構成されます(図1)。
(1)短時間で硬化する瞬間接着剤
 新たに開発した瞬間接着剤は、主剤を塗布したフェルール内に、硬化剤を付けたファイバを挿入することによって1分で硬化します。接着剤は空気中に放置すると劣化するため、本接着剤は1回毎の使い捨て容器に入っており、いつでも同じ条件での作業が可能です。
(2)誰でも同じ条件で接着作業ができる組立ツール
 組立ツールは、フェルール保持具、接着剤塗布容器、ファイバ挿入ガイドから構成されます。瞬間接着剤の特性上、決められた量の接着剤をフェルールに塗布することがポイントとなりますが、本フェルール保持具と塗布容器を用いることによって、単純な操作で熟練を必要とせず一定量の塗布が可能となります。また、ファイバガイドを用いることによって、細いフェルールにも容易にファイバを挿入することが可能です。
(3)小型高速研磨機
 小型高速研磨機は、ゆっくりと自転運動しながら高速の公転運動を行う研磨板を有することが特徴です。この運動によって、小面積の研磨シートを効率的に利用しながら高速かつ高精度な研磨が可能となりました。粗研磨、凸球面加工、超仕上げの3工程、合計90秒の研磨時間により、反射減衰量*750dB以上の低反射PC研磨*8が実現できます。従来の多数本取り研磨機は10分程度の研磨時間が必要なため、1人の作業者が1本の研磨を行うには非効率でしたが、本研磨機は小型な上、研磨時間の点からも現場作業に適しています。また、乾電池で駆動でき、片手で持てる大きさなのでどんな場所でも作業が可能です。

 本製品は、以上の特徴を有しているため、工場組立て品と同等の部品コスト、同等の性能・信頼性(図2)を有する光コネクタを、1端子当り5分程度の作業時間で組立てることが可能となりました。


<適用分野>
 本製品の適用分野として以下を想定しています。
ビル内のLAN等光配線工事
光アクセス網の宅内側光配線工事
 また、小型高速研磨機は現場組立の他、以下の用途にも応用が可能です。
汚れが取れない、あるいは傷がついた光コネクタ端面の再研磨
反射減衰量25dB程度の既設置PC光コネクタを、その場で反射減衰量50dB以上の低反射PC研磨にアップグレード


<今後の展開>
 本製品はMU形光コネクタの現場組立キットとして2004年3月10日よりNTT−ATから販売を予定しており、今後はSC形光コネクタへの展開など、適用領域の更なる拡大を推進して行きます。



<用語解説>
*1 総合プロデュース機能
総合プロデュース機能とは、事業化の責任者として指名されたプロデューサがNTTグループ内外の企業と協力しながら、NTT研究所の優れた研究成果の事業化を直接推進していく取り組みであり、2003年7月から開始いたしました。NTTは今後も総合プロデュース機能により、さまざまな研究開発成果を幅広く事業化推進していく予定です。

*2 フェルール
光コネクタでは光ファイバをフェルールと呼ばれる心棒の中心に接着固定し、端面を研磨して互いにつき合わせ、整列させることにより接続します。そのためフェルールは光コネクタの性能を左右する最も重要な部品であり、真円度やファイバを固定する孔の外径に対する偏心量など、サブ・ミクロン・オーダの高い寸法精度が要求されます。現在ではジルコニアセラミックにより作られたジルコニアフェルールが主流です。

*3 エポキシ系接着剤
金属、ガラス、セラミックス等に対して強い接着力を発揮する2液性の接着剤で、高い信頼性を要求される通信用光コネクタにおけるファイバとフェルールとの接着には専らエポキシ系接着剤が使われてきました。主剤と硬化剤を混合すると硬化が始まるため、作業の直前に混合しなくてはならないこと、硬化には加熱を要することから、工程管理された工場での作業に適しています。

*4 スプライス
接続・切り離しを自由に行える光コネクタ接続に対し、一旦接続したら切り離し・再接続ができない永久接続作業をスプライスと呼びます。アーク放電によりファイバ先端を溶かして接続する融着接続、V溝上で2本のファイバを整列させ、マッチング・ジェルによって接続点の屈折率を整合させた上で機械的に固定するメカニカル・スプライスが用いられています。

*5 SC形光コネクタ
1986年にNTT研究所で開発され、ジルコニアフェルールとプッシュプル結合型のプラスチックハウジングを初めて取り入れた光コネクタです。通信用光コネクタとして高い性能・信頼性・操作性・低コスト性を有することから広く普及し、世界の全光コネクタの中で70%のシェアを有すると言われています。

*6 MU形光コネクタ
MU形光コネクタは1993年にNTT光エレクトロニクス研究所(現フォトニクス研究所)において開発され、同年事業導入が開始された光コネクタです。モジュール接続、FTTH用高密度端子盤から伝送、交換装置におけるバックプレーン接続まで、光通信システムのあらゆる領域に適用可能な小形・低コストの光コネクタであり、1999年11月にNTTでは今後の通信システムに全面的に採用していくことを決定しています。
http://www.ntt.co.jp/news/news99/9911/991130.html

*7 反射減衰量
光コネクタ接続点のように何らかの形で屈折率の変化があると、光ファイバを伝搬する信号光の一部が反射して戻り光が生じます。反射減衰量は信号光の強度に対する反射戻り光の強度の比をdBで表したもので、10万分の1の強度が反射する場合、反射減衰量は50dBとなります。反射減衰量は接続損失とともに、光コネクタの性能を表す基本的なパラメータです。

*8 低反射PC研磨(PC: Physical Contact)
PC研磨はフェルール端面を凸球面形状に研磨し、接続するファイバ端面同士を密着(Physical contact)させることによって接続点から空気層を無くし、屈折率不整合による反射戻り光を小さくする方法ですが、端面研磨時に生ずる加工変質層によって若干の反射が残ります。低反射PC研磨は、加工変質層をほとんど作らない研磨方法により反射光を通常のPC研磨の場合の1/100程度に抑えるもので、AdPC、SPC、UPC等の名前で呼ばれており、現在はほとんどがこのタイプです。



図1 本現場組立技術の組立工程
図2 本技術により組立てたMU形光コネクタの特性




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