News Release

2004年7月8日


10ギガビットイーサネット用LSIに
保守監視機能を実装することに成功

−SDH/SONET並みの高信頼な広域イーサネット網を安価に構築−


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、10ギガビットイーサネット用標準LSIに、保守監視機能を実装することに成功しました。さらに、本LSIを光トランシーバモジュールに実装することにより、イーサネットを用いたネットワークの高信頼化を可能としました。従来、LANの標準的な技術であるイーサネットは、保守監視機能が脆弱であるなど、信頼性の面で中長距離ネットワークへの適用が困難とされてきましたが、今回、インターフレーム・リンク・シグナリング(ILS*1)技術を応用し、イーサネットの低コスト性及び使いやすさを継承しつつ、中長距離系(WAN*2/MAN*3)の標準的な技術であるSDH/SONET*4と同等の保守監視機能を実現できるようになりました。
 ILS技術は既にイーサネットサービス事業に利用されていますが、今回、ILS機能を標準LSIの内部に盛り込むとともに本LSIを着脱型の光トランシーバモジュールへ実装したことで、市販のスイッチ、ルータ、メディアコンバータ(中継器)などのイーサネット対応ネットワーク機器に本モジュールを実装でき、光ファイバでの伝送品質のモニタ、障害発生場所の特定、故障時の回線切替などの保守監視機能が付加された光ネットワークや広域イーサネット網を安価に構築することが可能となります。

光トランシーバモジュール


<開発の経緯>
 現状のデータ通信向けネットワークにおいては、伝送規格として、LANなどの短距離系ではイーサネット、WAN/MANなどの中長距離系ではSDH/SONETが主流です。したがって、遠距離のLAN間で信号を送受する場合には、イーサネットフレームをSDH/SONETのフレームに載せた伝送方式が主となりますが、この場合信号処理の増加によるコスト、遅延時間の増大、イーサネットの帯域を上限まで使い切れないなどの問題点があります。
 また、イーサネット機器の低価格性に着目し、イーサネットフレームを用いた通信方式により中長距離伝送するという手段もありますが、イーサネットの保守監視機能は脆弱であることから、信頼性維持のため、保守監視用ネットワークを別途構築したり、故障箇所の特定には人手によるところが多いという課題があるのが現状です。
 一方で、近年のインターネット需要の急増に伴い、ネットワーク機器を構成する部品・装置についても、高速電気デバイスや光デバイスの低コスト化が進んだことから、100Mbit/s、1Gbit/sはもとより、10Gbit/sといった高速データ伝送対応機器の低価格化が進んでいます。
 このような状況のもと、NTTでは、イーサネットの汎用性、低価格性に着目し、イーサネットにSDH/SONET並みの保守監視機能を盛り込むことにより、中長距離系(WAN/MAN)においてもイーサネットを安価で高信頼に適用できないかと考え、研究開発を進めてきました。今回の成果は、10ギガビットイーサネット用ILS技術を応用し、これを10ギガビットイーサネット用標準LSIの内部に実装するとともに、市販のイーサネット機器に簡単に設置できるように、本LSIを着脱型の光トランシーバモジュールへ実装することに成功したものです。


<技術のポイント>
 ILSは、イーサネットの光インタフェースに物理層*5を保守監視する信号伝達チャネルを追加します。これにより、イーサネットのみでLAN/WANシームレスなネットワーク環境が構築できるようになります(図1)。この信号伝達(リンク・シグナリング)は、イーサネットフレーム間に必ず存在する空き領域を利用して実現することから、ユーザ帯域を完全に保証し、10ギガビットイーサネット規格との互換性を担保します。また、制御信号の種類や送受信周期などはSDH/SONETと同等としました。この結果、階層化障害検出、遠隔ループバック、電源断通知、DCC*6帯域確保といった保守監視機能(図2)を実現できます。
 ILS機能が搭載された光トランシーバモジュールをレイヤ2/レイヤ3スイッチ、ルータ、メディアコンバータ(中継器)などの汎用イーサネット機器に実装することにより、光ネットワークの保守監視機能に優れた広域イーサネットサービスを低価格で提供することが可能となります。また、本技術により、従来のSDH/SONETを用いた場合とは異なり、フォーマット変換せずに、10ギガビットイーサネット信号のまま、WDM*7等の光ネットワークへ乗り入れることが可能となります。
具体的な特徴は、以下のとおりです。
ユーザ帯域を完全に保証したままで、保守監視情報を付加することが可能
LAN/WANシームレスで、SDH/SONET機能と同等の光リンク保守管理機能がある
LANで汎用のイーサネット技術がベースのため、WAN/MANにおいても安価にサービス提供が可能
10ギガビットイーサネット標準(10GBASE-Rシリーズ*8)との互換性あり


<適用分野>図3
超高速イーサネットサービス事業(高信頼な10ギガビットイーサネット系サービス)
広域イーサネットサービス事業
イーサネットソリューション事業


<今後の展開>
 本LSIおよび光トランシーバモジュールの製品化を進めていく予定です。また、本技術を用いた、新たな10ギガビットイーサネットサービスやシステムの検討・提案を行っていく予定です。



<用語解説>
*1 ILS(Inter-frame Link Signaling)
イーサネットフレームなどのフレーム間の空き領域(インターフレーム・ギャップ)に、保守監視情報などを挿入して伝達(シグナリング)する技術のことで、NTTが考案しました。

*2 WAN(Wide Area Network)
LANに対置される用語で、一般には国内、国際間へ広がった広域ネットワークのことです。

*3 MAN(Metropolitan Area Network)
都市規模のエリア(数十km)をカバーする地域ネットワークのことです。

*4 SDH/SONET(Synchronous Digital Hierarchy / Synchronous Optical Network)
高速中継速度体系の国際規格で、主に高速基幹ネットワークに用いられ、光ファイバネットワークの保守管理に適した信号伝達手段を備えています。米国では、SONETと呼ばれています。

*5 物理層(PHY)
OSI参照モデルの第1層に位置し、ネットワークの物理的な接続・伝送方式を定めたもので、ケーブルの材質やコネクタ形状、データと電気信号の相互変換方式などが該当します。

*6 DCC(Data Communication Channel)
ユーザ帯域とは別の帯域に、制御信号などのデータを伝送するために使用できるチャネルのことです。

*7 WDM(Wavelength Division Multiplexing)
波長分割多重技術で、光信号の伝送容量やチャネル数を増加させるため、波長の異なる複数の光信号を光合波器や光分波器を用いて一本の光ファイバに多重して伝送する方式のことです。

*8 10GBASE−Rシリーズ
10ギガビットイーサネット規格の10GBASE-SR、10GBASE-LR、10GBASE-ERからなり、LAN-PHYとも呼ばれています。(http://www.10gea.org/ 参照)



図1 ILS技術の特徴
図2 ILSの代表的な機能
図3 ILS機能を用いたサービス例




<本件問い合わせ先>
 NTT先端技術総合研究所
 企画部 情報戦略担当
 澤木、甕(もたい)
 TEL: 046-240-5152
 E-MAIL: st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp


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