(報道発表資料)
2004年9月2日
日本電信電話株式会社
NTTエレクトロニクス株式会社


医療用光干渉断層計の適応領域を広げる光源として
高出力・広波長帯域スーパールミネッセントダイオード(SLD)光源を製品化


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)とNTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL、本社:東京都渋谷区道玄坂、代表取締役社長:戸島知之)は、医療用光干渉断層計(注1)技術に最適な光源の製品化を進めてきましたが、このたび高出力・広波長帯域スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode;以下SLD(注2))光源を9月13日からNELより販売開始します。

 本製品は、NTTフォトニクス研究所が培ってきた光通信用光源の設計・製造技術を応用して製品化に成功したものであり、NTTが2003年7月に開始した取り組みである「総合プロデュ−ス機能」(注3)に基づき、NELと事業化を進めてきたものです。

 尚、本製品に関する情報は、9月5日からスウェーデン・ストックホルムにて開催されるヨーロッパ最大の光通信技術国際会議「ECOC2004 (European Conference on Optical Communication)」(注4)において紹介します。


1.開発の背景
 広い波長帯域を持つSLD光源は、幅広い産業分野への活用の途が拡がっておりますが、特に近年では、医療用機器である光干渉断層計(Optical Coherence Tomography;以下OCT)に用いられております。このOCTは、光干渉断層イメージング技術を活用した、無侵襲生体断層計測として、眼科臨床の分野で、810nm帯のSLDを用いて、すでに実用化されておりますが、今後は、内視鏡と融合し、臓器表皮のみならず断層情報も組み合わせることで、ガンの早期発見・治療への活用が期待されており、より長波長帯の光源が求められています。OCT装置の性能は、そこで用いられるSLD光源の性能に依存しており、より鮮明かつ精細な断層画像を得るには、トレードオフの関係にあるSLD光源の広波長帯域化と高出力化が必要でした。
 NTTとNELではこれまで光通信システムの大容量化の要求に応えるために、光通信用半導体レーザ光源の高性能化に努め、高度な設計技術・製造技術を蓄積してきました。ここで培った技術をSLD光源へと応用することで、広い波長帯域と高い光出力を両立させることを可能としました。


2.製品の特長
 本製品(別紙:図1)は、光通信用光源で最も一般的に用いられている14ピンバタフライパッケージ(注5)に実装されております。パッケージには温度モニター・制御機能が搭載されておりますので、使用環境に左右されない安定な光出力が得られます。また、ユーザーアプリケーションへのカスタマイズも可能ですので、別途ご相談に応じます。

 本製品は以下の特長を有しています(別紙:表1)。

(1)発光波長
 水とヘモグロビンは、生体の構成要素の中で、最も光吸収の大きな物質ですが、本製品の中心発光波長は、水とヘモグロビンによる光吸収が共に最小で、光散乱体による散乱の影響を受けにくく、生体透過性が最も高い1310nm帯の赤外領域です。このため、生体の表皮から深い部分まで到達することができ、深い断層の情報を得ることができます。

(2)高い光出力
 本製品はこれまでのSLD光源に持たれていた「光出力が低い」というイメージを払拭する、50mW以上の空間出力、30mW以上のシングルモードファイバー結合出力を実現しています。通常、生体の光干渉断層撮影においては生体からの情報信号が弱くノイズに埋もれてしまうため、高精度な情報信号を得るためには高い光出力の光源が必要でしたが、本製品では、十分に高精度な情報信号を得ることが可能です。
 また、通常、光出力を高くすれば、SLDの端面からの光の反射により、波長スペクトルの細かな周期の波(以下、リップル)が発生します。このリップルはOCT装置では断層撮影像のゴーストやコントラストの低下に結びつき、大きな問題とされていました。しかし、本製品では独自の反射防止端面構造を採用することで、この反射の問題を解決することができました。

(3)広い波長帯域
 波長帯域と光出力とはトレードオフの関係にあり、高い光出力と広い波長帯域を同時に実現したSLD光源はありませんでした。本製品では、発光の心臓部ともいえるSLDデバイスの活性層構造を最適化することにより、空間出力50mW以上の高出力動作においても、50nm以上の広波長帯域を実現しています。光源の波長帯域幅はOCT装置においては断層像の分解能を左右しますが(注6)、本製品の広い波長帯域は分解能を高め、より精細な画像を生み出して、細かな生体組織の観察を可能とします。

(4)低消費電力
 本製品では従来のSLD光源と比較して、低消費電力で高い出力を得ることができます。これはNTTとNEL社の培ってきた光デバイスの高度な設計技術・製造技術と光ファイバーとの高い結合を実現できる高度なモジュール化技術によるものです。SLD光源の低消費電力化は、OCT装置の低消費電力化にもつながり、装置の低コスト化、小型化に効果を発揮します。


3.主な用途
 本製品の用途としては以下を想定しています。

(1)OCT
(2)センシングシステム(注7)
(3)OTDR(注8)等光学部品の評価、測定

 また、ユーザーアプリケーションへのカスタマイズも可能ですので、別途ご相談に応じます。


4.販売価格等
 販売価格:約30万円(仕様、数量等により変わります)


5.今後の展開
 本製品のさらなる経済化や高性能化を進めるとともに、光学式血糖値モニタリング(注9)のような光吸収を利用した用途にも適用できるよう1700nm帯、1550nm帯と順次波長帯のラインアップを取り揃えていく予定です。さらに、総合プロデュ−ス機能のもとで、市場創造・拡大を進めていく予定です。



■用語の説明
(注1) 光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomographyの略)
光の干渉を利用した断層撮影装置です。無侵襲生体断層計測として、眼底検査用にはすでに実用化されており、皮膚検査、内視鏡用の装置の開発が精力的に行われています。尚、現在医療現場で使用されている断層撮影装置としては、主にX線を用いたCT(Computerized Tomography;X線断層撮影装置)、MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴断層撮影装置)が用いられています。
(注2) スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode;SLD)
発光ダイオード(LED)とレーザーダイオード(LD)の利点を併せ持つ素子で、レーザーダイオードに比べると、低コヒーレント(注10)光源であるためにアイセーフ上は安全性が高く、かつ高速伝送が可能です。
(注3) 総合プロデュ−ス機能
総合プロデュ−ス機能とは、事業化の責任者として指名されたプロデュ−サーがNTTグループ内外の企業と協力しながら、NTT研究所の研究成果の事業化を直接推進していく取り組みであり、2003年7月から開始しました。NTTは今後も総合プロデュ−ス機能により、さまざまな研究開発成果を幅広く事業化推進していく予定です。
(注4) ECOC(European Conference on Optical Communicationの略)
毎年1回開催されるヨーロッパで最大の光通信技術国際会議です。会議の他に通信事業関連会社等からの展示も行われ、世界中から関係者が集まります。会期は2004年9月5日〜9日、スウェーデン・ストックホルムで開催されます。
(注5) 14ピンバタフライパッケージ
光通信用光源で用いられている標準的なパッケージです。パッケージの側面から左右各7本、全部で14本のピンが蝶の羽のように伸びているためこのように呼ばれています。各ピンにはSLDデバイスに電流を供給する端子、内部の温度を計測する端子、温度制御する端子等それぞれに役割があります。
(注6) 干渉断層計(OCT)の分解能
OCTの深さ方向の分解能は、用いる光の波長(中心発光波長)の2乗に比例し、波長帯域幅に反比例します。コヒーレンスが低い程、光の波長帯域は広くなりますので、分解能は高くなります。
(注7) センシングシステム
分子やガスはある特定の波長に鋭いピークの吸収を示します。SLD光源の広い波長帯域の光は分子やガスの吸収の影響で、スペクトル形状が変わります。この形状変化から分子やガスの濃度計測を行うシステムです。
(注8) OTDR(Optical Time Domain Reflectmetersの略)
光学部品において故障により光損失が生じた場合、その故障個所を同定する測定です。この測定でも低コヒーレンス光干渉を利用しているため、光源には広い波長帯域が望まれています。
(注9) 光学式血糖値モニタリング
センシングシステムの中で最も精力的に開発が進められているものの内の一つです。これまでの血糖値モニタリングは指先等から採血をして、直接血液を分析していましたが、光学式モニタリングは血管等を傷つけることなく皮膚に機器の一部をあてるだけで血糖値を測定することが出来ます。
(注10) コヒーレンス
コヒーレンス(Coherence)とは、もともと「首尾一貫してバラバラでないこと、統一」という意味の英語です。これが転じて、光などの波が互いに助け合って大きくなったり小さくなったりする現象(干渉)のしやすさを表す言葉として使われています。「可干渉性」とも呼ばれます。レーザ光のように位相や振幅の揃った光のことは「コヒーレント光」と呼ばれます。



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