News Release

2004年12月1日


毎秒100メガのブロードバンド無線アクセスを実現する
多入力多出力伝送技術「MIMO-OFDM伝送技術」の実証実験を開始
−ホットスポットや新世代モバイル通信の大容量化も可能に−


 日本電信電話株式会社(NTT;本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、次世代のブロードバンド無線アクセスに求められる毎秒100M(メガは100万)ビットという大容量の無線伝送技術として期待される、多入力多出力伝送技術「MIMO*1-OFDM*2伝送技術」の開発に成功しました(図1)。本技術のフィールド実験を平成16年12月から平成17年3月まで、神奈川県横須賀市周辺エリアを中心に実施します(図2)。同技術が確立されると、オフィスのLAN(構内通信網)環境を無線化できるだけでなく、駅や空港、ファストフード店舗内などのホットスポットで大容量の無線LAN環境を簡易に安価で構築できます。さらに毎秒100Mビット以上の大容量、高速通信を実現する新世代モバイル通信の大容量化技術として適用できると考えております。


<開発の背景>
 ブロードバンドによる大容量のデータ伝送時代を迎え、オフィスなどでのLAN環境も毎秒100Mビットレベルの伝送速度が普及しつつあります。また、端末の設置場所が限定される有線LANよりも、オフィス内で場所を選ばずに端末を使用できる無線LANの需要が増しております。しかし、無線LANは有線に比べ速度が遅く、通信品質にも不安がありました。


<技術のポイント>
 MIMO-OFDM伝送技術は、NTT未来ねっと研究所が研究を進めてきたもので、複数の送信アンテナを持つ送信機と複数の受信アンテナを持つ受信機とを配備したシステムを構築するMIMO技術とOFDM技術とを融合させました。
 MIMO技術は、無線基地局と端末の双方が複数のアンテナを持ち、それぞれのアンテナで送受信する技術で、理論的にはアンテナの数だけ伝送容量を増やすことができるため、数倍の伝送速度が実現できるとされています。今回の実証実験では、毎秒100Mビット以上の伝送速度を実現するため、MIMO技術のひとつであるSDM*3伝送方式を採用しました。
 OFDMは、地上波デジタル放送や無線LANにも使われる変調方式の一種で、送受信アンテナ間で発生する「周波数選択性フェージング現象*4」に対して優れた伝送特性が得られます。
 このMIMOとOFDMを組み合わせることで、劣化を解決、伝送容量、周波数利用効率および通信品質の向上を図ります。
 これまでの研究では毎秒108Mビットの伝送速度で送受信アンテナ数が各2のMIMO―OFDM装置の試作に成功しており、今後、日本で初めてとなるフィールド実験により、ブロードバンド無線アクセスへの利用が期待されている5G(ギガは10億)Hz帯での伝送特性を評価し、システム化技術を確立していきます。
 なお、この技術は、米国標準化組織IEEE802委員会で審議中の次世代無線LAN規格「IEEE802.11n」における有力な無線伝送技術でもあります。


<実験の内容>
1. 実験期間
平成16年12月1日〜平成17年3月31日
2. 実験場所
神奈川県横須賀市周辺エリア(横須賀リサーチパーク、横須賀市役所周辺など)
3. 実験内容
(1) 無線LAN・ホームネットワークを想定し、屋内の会議室・オフィス・廊下など比較的近距離で反射波の多い環境における伝送特性を評価
(2) 駅や空港、店舗などホットスポットを想定し、多数の人や車が往来する環境における伝送特性を評価


<今後の予定>
 実証実験による技術検証を踏まえて、公衆無線LANサービスの高速化・広帯域化を検討するほか、適用領域を拡大し、新世代モバイル通信や次世代FWA(固定無線アクセス)方式への適用可能性を検討します。



<用語解説>
*1 MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術
 MIMOとは、一般に多入力多出力の伝送を意味しますが、特に無線通信システムでは、複数の送信アンテナを持つ送信機と複数の受信アンテナを持つ受信機とを配備したシステム構成を指します。

*2 OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)
 OFDMは地上波デジタル放送にも使われる変調方式の一種。変調とは、データを電波に乗せるための方法のこと。無線通信では必ずこの変調作業が必要になります。

*3 SDM(Space Division Multiplexing)伝送技術
 それぞれ複数のアンテナを持つ2つの無線局により、両者間に複数の通信路(MIMOチャネル)を形成し、それぞれのアンテナから同一時刻・同一周波数で異なるデータ系列の信号を送信する技術。受信側で推定したチャネル行列を基に、個々のアンテナから送信されたデータ信号同士の干渉を除去し、元の送信信号に分離する必要があります。理想的にはアンテナ数をNとすると、1チャネルあたりの信号帯域幅を拡大せずにN倍の伝送速度が実現できます。

*4 周波数選択性フェージング
 送信アンテナと受信アンテナの間に存在する遮蔽物(壁、など)により、送信アンテナから送られた無線信号はさまざまな経路を通過して受信アンテナに到達し、そこで合成されます。このとき、異なる経路を通過した複数の無線信号間に時間差(遅延差)があるため、例えば、テレビの受信障害であるゴーストのような現象が生じます。これを周波数選択性フェージングといい、無線通信における主要な劣化要因となっています。



図1 MIMO-OFDM技術の概要
図2 MIMOシステム実証実験の概要




<本件に関する問い合わせ先>
 NTT先端技術総合研究所
 企画部 情報戦略担当
 為近、甕(もたい)
 Tel: 046-240-5152
 E-mail: st-josen@tamail.rdc.ntt.co.jp


NTT ニュースリリース

Copyright(c) 2004 日本電信電話株式会社