2005年9月27日
(報道発表資料)
慶應義塾大学
日本電信電話株式会社
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD/ Calit2)
イリノイ大学シカゴ校(UIC/EVL)
Pacific Interface Inc.


4Kデジタルシネマ映像の
太平洋横断(15,000km)リアルタイム伝送実験に
世界で初めて成功



 慶應義塾大学(塾長:安西祐一郎)、日本電信電話株式会社(代表取締役社長:和田紀夫、以下:NTT)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD/Calit2)(*1), イリノイ大学シカゴ校(UIC/EVL)(*2)、Pacific Interface社は、共同で、国際会議“iGrid2005”(*3)において、HDTVの4倍の解像度を有する4K(800万画素)超高精細映像の太平洋横断(慶應義塾大学〜カリフォルニア大学サンディエゴ校)リアルタイム配信実験を世界で初めて成功させました。
 これは、4Kデジタルシネマ規格(*4)の超高精細映像を地球規模のギガビットIPネットワークでライブ配信し、学術・教育・医療・文化面で利用できることを実証するものです。



1.実験内容

(1)4K ライブ映像のリアルタイム伝送実験

  4Kライブ映像は、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(以下:DMC機構)の工房において、4Kデジタル動画カメラで撮影され、NTT未来ねっと研究所が開発したリアルタイムJPEG2000コーデック(*5)により約6Gbpsのストリームは200M-400Mbpsにリアルタイム圧縮され、1GbpsのIP回線を通じて伝送されました。“iGrid2005”のセッションでは、安西祐一郎 DMC機構長・慶應義塾塾長とカリフォルニア大学サンディエゴ校Marye Anne Fox総長が4Kライブ映像によってつながり、最先端のネットワークと映像技術における研究・教育で、両者が今後協力関係を強めることを確認しました。

 上記伝送実験においては、日米間で総延長15,000kmにも及ぶ光回線をイーサネットレベルで直結し、地球規模のギガビットIPネットワークが構築可能であることを実証しました(図1)。NICTが運営するJGNII日米回線(*6)と、StarLight (シカゴ)から Pacific Northwest GigaPOP(シアトル)を経由しUCSD(サンディエゴ)へ接続する米国内光伝送路(CAVEwave)(*7)とをイーサネット機器のみで接続し、遅延時間が少なく、レスポンスの良いライブ中継を実現しています。

(2)4Kコンテンツのマルチキャスト配信

 また、“iGrid2005”の期間中(日本時間27〜29日)、4K動画で撮影された映像、リアルタイムで合成される4KのCG映像、35o又は65oフィルムからスキャンされた4Kデジタルシネマなど、様々な分野の蓄積型4K映像コンテンツを発信する際に、NTT未来ねっと研究所が開発したフレックスキャスト(Flexcast)技術(*8)を用いて、世界初の4K映像ストリーム(200M〜400Mbps)太平洋横断マルチキャスト配信実験を行います。

 上記の配信実験には、上述したJGNII日米回線とCAVEwaveに加えて、北米とアジアの学術ネットワークの接続拠点となっている Pacific Wave(*7)の提供するレイヤ2(イーサネット)ファシリティー、および、CENIC(*7)の運用する先端研究用光波長ネットワークを利用します。慶應義塾大学三田キャンパスより、カリフォルニア大学サンディエゴ校Calit2に設置された2拠点にフレックスキャストで配信し、長延化及び大容量化時の性能の評価を行う予定です。

2.今後の予定

 慶應義塾大学DMC機構、NTT未来ねっと研究所、UCSD/Calit2、UIL/EVL、Pacific Interface社は、今後も連携して、高速ネットワークを用いた高品質デジタルコンテンツの流通や制作に関する研究や、学術・教育・医療・文化面での利用技術に関する研究を進めていく予定です。

3.協力関係

 本実験のうち、慶應義塾大学の参加部分は主として文部科学省科学技術振興調整費の支援により実施されました。また実験の一部は、総務省「次世代型映像コンテンツ制作・流通支援技術の研究開発」の一環として行われました。
 さらに、これらの実験はデジタルシネマ実験推進協議会(DCTF)(*9)、ディジタルシネマ・コンソーシアム(DCCJ)(*10)の後援を受け、太平洋横断ネットワークとしてJGNII(*6)の支援を受けました。
 

(参考)●本実験に関する協力機関等一覧
(4Kデジタル動画カメラ):オリンパス
(4Kプロジェクタ):Sony Electronics USA
(4K非圧縮画像サーバ):日本SGI
(コンテンツ、機器、回線など): NICT、凸版印刷、東京工科大学、竜の子プロダクション、三菱電機、アストロデザイン、UIUC/NCSA、SGI、南カリフォルニア大学(USC)、SDSU、The Pixel Farm、Yamaha USA、DALSA、Miranda、 BAPS Swaminarayan Sanstha、Skywalker Sound, a Lucasfilm Ltd. Company、San Francisco State University Institute、 Youth Radio、CAVEwave、Pacific Wave、CENIC、StarLight、Pacific Northwest GigaPOP、UCOP



【語句説明】
 
*1 Calit2 (California Institute for Telecommunications and Information Technology)
 カリフォルニア通信情報機構。カル・アイティー・スクェアード(Calit2)と発音。カリフォルニア大学が、サンディエゴ校(UCSD)およびアーバイン校(UCI)にまたがって設置した通信および情報技術に関する研究機関。
 
*2 EVL(Electronic Visualization Laboratory)
 電子ビジュアリゼーション研究所。イリノイ大学シカゴ校(UIL)コンピュータ科学学部に所属する、工学とファイン・アート学とを融合させた研究機関。
 
*3 iGrid2005 (International Grid 2005) http://www.igrid2005.org
 超広帯域ネットワークを必要とする先端アプリケーションの開発を推進する、国際的なコラボレーションによる共同実証実験イベント。1998年より2から3年毎に開催。今回は4回目。
 
*4 4Kデジタルシネマ規格
 ハリウッドのメジャースタジオで組織するDCI(Digital Cinema Initiative)が劇場公開映画のコンテンツ配信用に定めた規格。JPEG2000方式(*5)を採用。なお、今回のライブ中継など、劇場公開以外の用途のことをDCIではODS (Other Digital Stuff)と呼んでいる。
 
*5 JPEG2000コーデック
 ディジタル化された映像信号を、高品質符号化方式JPEG2000フォーマットで、符号化もしくは復号する装置。JPEG2000は、1画面(フレーム)単位でディジタル情報量を減らす圧縮符号化方式。フレーム間の相関を用いるMPEGに比べて圧縮率は低いが品質に優れている。
 
*6 JGNII(Japan Gigabit Network II)
 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が平成16年4月より運用を開始した全都道府県ならびに米国にアクセスポイントを持つ研究開発テストベッドネットワーク。次世代高度ネットワークを国内外の産・学・官・地域連携によって早期実現させ、我が国、経済社会の活性化と国際競争力の向上を目的としている。
 
*7 米国内光伝送路
StarLight: 最先端科学アプリケーションの実証実験をサポートする、国際的な学術ネットワークの接続拠点。シカゴのNorthwestern大学に設置されている。
Pacific Northwest GigaPOP:
  環太平洋の学術ネットワーク間接続を提供する非営利のネットワーク接続拠点(Point of Presence)
CAVEwave: イリノイ大学(シカゴ)からワシントン大学(シアトル)、カリフォルニア大学(サンディエゴ)に到達する研究用10ギガビットイーサネット回線。
CENIC(The Corporation for Education Network Initiatives in California):
カリフォルニア州の学術教育ネットワークを運用する非営利企業。
Pacific Wave: Pacific Northwest GigaPOP とCENIC の共同プロジェクト
 
*8 フレックスキャスト(Flexcast)技術
 通常のIPユニキャスト網上で自律的に経路を構築してマルチキャスト機能を実現する方式(図2)。ゲートウェイを介して、IPマルチキャストプロトコルをサポートする端末を接続できる。IPマルチキャストがサポートされていないネットワークを介してのマルチキャスト配信が可能で、トラヒックの増大やビジネス戦略にしたがい段階的に導入できることが特徴。テレビ会議サービスに講義型のマルチキャスト配信機能を付加する技術として利用され始めている。
 
*9 デジタルシネマ実験推進協議会(DCTF)
 総務省の協力のもと、情報通信研究機構(NICT)、ディジタルシネマ・コンソーシアム(DCCJ)(*10)及び映像関連の企業・団体・個人を中心に、2004年5月に設立された協議会。超大容量のデジタルシネマをネットワーク流通における重要なデジタルコンテンツと捉え、「4K」規格のデジタルシネマの流通技術、品質評価技術、セキュリティ技術の確立を目指す実験、国際連携等を推進。
http://www.scat.or.jp/dctf/index.html
 
*10 ディジタルシネマ・コンソーシアム(DCCJ)
 2001年1月に設立された NPOであり、世界で初めて4Kデジタルシネマの必要性を提唱した。実際、当コンソーシアムに所属する企業グループが世界で初めて開発した4Kディジタルシネマシステムを用いてハリウッドを始め世界各地でデモを行い、4KがDCI標準(*4)で採用されたことに大きく貢献をした。
http://www12.ocn.ne.jp/~d-cinema/



(図1)日米ネットワーク回線図
(図2)Flexcast紹介図




[本件に関するお問い合わせ先]

慶應義塾大学
デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC機構)事務局
TEL:03−5418−6432
   
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所企画部
為近、甕(もたい)
電話:046−240−5152


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