(報道発表資料)
2006年2月20日
日本電信電話株式会社
国立成育医療センター


研究教育ネットワーク連携による日米間遠隔胎児医療の実験を開始
〜超高速実験ネットワークGEMnet2を利用した
3次元超音波スキャナ動画像などの伝送評価〜


<概要>
 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)と国立成育医療センター(以下成育センター、東京都世田谷区、総長:秦順一)は、我が国の少子化傾向の打開策の一つとしても世界的に普及が期待されている胎児医療の遠隔診断・遠隔治療の実現に向け、NTTが運用している超高速実験ネットワークGEMnet2(※1)と外部の研究教育ネットワークを相互接続し、超高速ネットワーク技術を用いた胎児の3次元超音波スキャナ(※2)動画像、内視鏡画像などの日米間での伝送実験を2006年3月1日から2007年3月31日まで実施します。
 当初参加する医療機関は、日本側が成育センター、米国側がカリフォルニア大学サンフランシスコ校(以下UCSF、カリフォルニア州サンフランシスコ市)ですが、更にボストン小児病院(マサチューセッツ州ボストン市)の参加が計画されています。


<経緯>
 本実験に先立ち、2005年2月〜12月まで、UCSFとNTT武蔵野研究開発センタ間での画像伝送試験、成育センターのGEMnet2接続ならびにNTT武蔵野研究開発センタ間との画像伝送試験などを実施し、基本的なネットワーク性能を確認しています。
 少子高齢化の進展に伴い、介護・医療が社会的課題として重要性を増している中で、NTTでは「NTTグループ中期経営戦略」において、“安心・安全”な社会の実現に向けた取り組みをテーマの1つに掲げています。
 本実験で用いられるNTTの超高速ネットワーク技術は、健康モニタリング・映像問診による遠隔医療の実現に向けたアプリケーションとして適用することにより、海外の先進的医療施設からの遠隔診断・遠隔治療を受けることが可能になるなど、少子化対策としての胎児医療にも十分貢献し得る先進的な研究開発成果です。


<実験の背景>
 胎児医療は、臓器などに異常があり生命の危険が高い妊娠10週台後半〜30週の胎児に対して、内科的治療や外科手術を施して生命を救うという医療ですが、我が国では、胎児医療の需要が増加しているにもかかわらず、専門医が少ないため、望んでも受診できない場合が多いのが現状です。
 そこで、遠隔医療の試みとして、専用回線や一般のインターネット網を利用した遠隔医療システムがこれまでにも開発されてきましたが、コストがかかるうえに、高精細な映像を瞬時に送受信して診断を下すには、ネットワークの品質や医療情報セキュリティ確保の面で問題が多いとされてきました。
 こうした中、NTTでは、遠隔胎児医療の可能性を模索していた成育センターとの共同検討に着手し、高品質で超高速のネットワーク技術を利用することにより大容量・低遅延の信号伝送が可能になることから、超高速実験ネットワークGEMnet2を用いた遠隔胎児医療の実現に向けた実験を実施することになりました。
 GEMnet2は米国西海岸の研究ネットワークのハブPacific Wave(米国ワシントン大学、ワシントン州シアトル市)を介して、Abilene(米国Internet2プロジェクト)、CENIC/CalREN(カリフォルニア州大学連動研究ネットワーク)などの外部研究教育ネットワークとの相互接続を行っており、2005年2月には、胎児外科医療の第一人者であるマイケル・ハリソンUCSF教授によるリアルタイムでの診断・治療の実現に向け、UCSFとNTT武蔵野研究開発センタ間でGEMnet2による接続試験も実施しました。ここでは、GEMnet2と協力関係にある米国のネットワーク測定器ベンダSunrise Telecom社(カリフォルニア州サンノゼ市)の協力を得て、複数の研究教育ネットワークを介する場合のネットワーク性能試験を実施した他、NTTが開発したMPEG2コーデック(※3)を用いた3次元超音波スキャナ動画像の伝送試験などを行い、胎児医療へのネットワーク適用に関する日米間での検討も開始しました。
 さらに2005年3月には、成育センターとNTT武蔵野研究開発センタとのGEMnet2接続を完了し、MPEG2による接続試験ならびに3次元スキャナの映像エンコーダ接続確認(ローカル伝送試験による基本品質の確認)も終えました。
 そしてこのたび、これらの成果に基づき、外部の医療機関・学術機関・研究教育ネットワークとの連携による日米間の国際協力のもとで、成育センタ、UCSFの医療倫理委員会の審査を経て3次元超音波(3Dエコー)スキャナ動画像、内視鏡画像などの伝送によって遠隔胎児医療の実証実験を実施することとなりました。


<実験の内容>
・主な参加機関
NTT、成育センター(東京)、UCSF(サンフランシスコ)、ボストン小児病院(ボストン)、Sunrise Telecom社(サンノゼ)
・主な実験
医療画像伝送評価実験として、
 <1> MPEG2コーデックを用いた3次元超音波スキャナ動画像、内視鏡画像伝送の評価
 <2> HDTV伝送による高精細な医療動画像伝送の評価
また、ネットワーク技術の観点から、
 <3> 医療情報の秘匿性を確保するための暗号技術適用法、品質確保技術の検討・評価


<実験の意義>
 本実験は、遠隔胎児医療技術の確立とともに、資源共用型インターネットにおけるクリティカルアプリケーションの実現法に関して実アプリケーションを用いた検討(品質、セキュリティ確保)、および外部学術機関や研究教育ネットワーク、機器ベンダとの連携による国際協力の促進など、我が国にとって非常に意義のある実験です。


<今後の展望>
 NTTでは、お客さまが“より高速で快適”、“安心・安全”、“いつでも、どこでも、何にでもつながる”ブロードバンドユビキタスサービスを提供するネットワーク環境の実現を目指し、グループトータルでの取り組みを推進しています。
 このような取り組みのもと、世界をリードする先進的な超高速ネットワーク技術を持つNTTとしては、本実験の成果を踏まえ、ネットワーク品質・セキュリティ確保などに関するさらなる検討を進めるとともに、欧州の医療機関との連携を目指しDANTE(EU諸国の研究ネットワークバックボーン)との相互接続を行うなど、海外教育研究ネットワークとの一層の連携強化を図り、少子高齢化問題の解決にも貢献する遠隔医療の普及に向けて、よりグローバルな見地から研究開発ならびにコーディネート活動を進めていきます。
 成育センターでは、本実験を通して胎児医療における関連医療機関との有用な情報交換、ネットワーク構築を行なうことを目指しています。また、先進的な米国の胎児医療情報の取得と我が国における普及を目指し遠隔胎児医療の広範な基礎作りを行うと共に、最先端ネットワーク技術の胎児医療への応用に関する研究を推進していきます。


<用語解説>
※1 GEMnet2 (Global Enhanced Multifunctional Network)2
NTTが、武蔵野・横須賀・厚木の各研究開発センタ間を数10Gbit/sの超高速度で接続して構築した新しい実験用ネットワーク。実ネットワーク上でグローバルな情報流通サービスの検証を行うために1998年から運用してきた研究用ネットワークGEMnetの構成を見直し、WDM(波長分割多重)技術と波長ルーティング技術を適用した。NTT研究所内の研究開発利用の他に、外部の研究・教育ネットワークとの連携により、国内外の研究機関との共同研究が可能である。国内では、スーパーSINET、JGN2の二つの研究教育ネットワークと相互接続を行い、海外は米国経由で世界各国の研究教育ネットワークと相互接続を行っている。

※2 3次元超音波スキャナ
ディジタル画像処理により3次元画像をリアルタイム表示可能とする次世代型超音波画像診断装置。プローブを動かすことなく、体内の横断面、縦断面、平行面の3つの直交断面をスキャンし、3次元動画像をリアルタイムで表示する(3次元/4次元超音波)ことができる。主に産科領域(胎児観察)や心臓疾患の診断等で用いられている。胎児の観察においては、その形態・動態診断のみならず、従来は困難とされていた重要臓器疾患の早期診断も可能にすることが期待されている。

※3 MPEG2コーデック
リアルタイムで映像信号をDVDビデオ等で用いられているMPEG2映像データ圧縮方式に変換/復元する装置。本実験では、NEL(NTTエレクトロニクス)社製の低遅延、小型コーデックを利用して、インタラクティブな応用を可能としている。



図 本実験のネットワーク構成図



【本件に関するお問い合わせ】
NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 遅塚(ちづか)、佐野、中村
TEL:0422-59-3663
E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp

国立成育医療センター
佐々木、千葉
TEL:03-3416-0181 (ext. 5120, 7169)
E-mail:sasaki-m@ncchd.go.jp


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