2006年2月24日
(報道発表資料)
国立情報学研究所
日本電信電話株式会社


『書籍とインターネットを融合』した
小学生向け情報教育の共同研究を開始
〜子供向け情報教育書籍とWebサイトの提供によるコミュニケーション動態調査〜


 国立情報学研究所(以下NII、東京都千代田区、所長:坂内正夫)と日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、2月24日(金)から書籍とインターネットという2種類のメディアを連携させた小学生向けの新しい情報教育に関する共同研究を開始します。
 本共同研究は、ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)の活用法だけでなく、その功罪両面を学び、ICTがもたらす未来像という大きな課題を考える力を養うための小学生向けの全く新しい情報教育環境の構築を目指します。
 また、この研究の過程で得られるネット上の子供たちのコミュニケーションやコミュニティ形成などの動態調査・分析を行い、より良い情報教育のためのコンテンツやプラットフォームの研究開発、さらに、子供たちを含めた幅広いユーザを対象としたICTサービスのあり方の調査・研究を実施します。


1.背景
 近年のインターネットや携帯電話の発達により、ブログやソーシャルネットワーキングサイト(SNS)※1など、さまざまなテーマに関するインターネット上のコミュニティが形成されてきました。これらは、情報交換の機会を増加させ、社会活動に影響を及ぼしはじめています。このような状況は、子供たちにとっても例外ではなく、インターネットをはじめとするICTの功罪両面の子供たちへの影響が心配され、小中学校における情報教育の取り組みへの強化が喫緊の課題となっています。
 このような背景を踏まえ、NIIでは、情報学の公共・社会貢献の一環として、e-ラーニングや市民活動支援システムに資する情報学研究、およびICT導入による功罪とICT社会のガバナンスのあり方に関する研究を進めています。
 一方、NTTコミュニケーション科学基礎研究所では、各種ICTサービスの研究開発に加えて、ICT社会の人間への正と負の影響を、人間情報科学、社会情報科学、心理学などの面から調査・研究しています。


2.本研究の目的
 本共同研究は、小学生がICTの『利便性』『危険性』の功罪両面を学習できる情報教育実現への貢献を目的とします。従来、利便性は、さまざまな学習の場面で体験的にインターネットを活用することで自然に享受できますが、同様の方法では、危険性を学習することは困難でしたが、本共同研究では、利便性だけでなく危険性や情報モラルの学習を重視しています。
 NIIとNTTは、これまでに研究開発したコンテンツとプラットフォームを情報教育の現場に導入することによって、子供たちとICTとの関わりやインターネット上でのコミュニケーションの調査・分析を行い、より良い情報教育に役立てます。また、功罪両面を持つICTによって形成される情報化社会の『今と未来』をさまざまな側面から考える力を養い、『未来を創るのは自分たち』であるという意識を培うことが長期的な目的です。


3.共同研究の概要等
(1) 情報教育書『未来をさがそう』を全国小学校宛(約23,440校)に送付
NIIとNTT研究所のメンバーが中心に編集
ICTの功罪という今までの情報教育では取り扱いにくかった課題も掲載
子供たちにも理解し易いよう、身近な題材を例に、情報化社会の『今と未来』の姿を『なくなってほしいな』『なくならないでほしいな』『どっちがいいのかな』『どうなっているのかな』の4つの視点で考える構成

(2) 情報教育Webサイト『インターネット相談室』を開設
書籍『未来をさがそう』の内容について、語り合い、考えながら学ぶことができるように設計・構築 (URL http://www.miraisoudan.com)。
相談室の利用者は、子供たちだけでなく、教師や保護者も想定し、書籍の内容に関する意見、質問、回答などによる利用者間のコミュニケーションの場としてWebサイトの活用が可能

(3) 総合的な情報教育環境の構築
 書籍とインターネット相談室とを連携させて、NIIで研究開発し、e-ラーニング機能とグループウェア機能とを備えた情報共有基盤『NetCommons』※2の小学校情報教育への導入・利用を推進
 (NetCommonsは、すでに、千葉県総合教育センター、世田谷区教育委員会をはじめとする数多くの教育機関、小学校に導入され、『総合学習』『緊急連絡網』『不審者情報の配信』などに利用されている)

(4) 本研究によって得られる結果でICTの性質や特徴を研究
 書籍、インターネット相談室、NetCommonsなど連関利用環境の提供によって得られる子供たちのコミュニケーションの状況や子供同士のコミュニティ・人間関係形成の動態を調査・分析すると共にICTのさまざまな側面に対する理解の過程について、その性質や特徴を研究します。


4.今後の展開
(1) 『ビスケット(Viscuit)』※3や『語彙数推定テスト』※4をWebサイトに導入
 子供たちのさまざまなICTサービスの体験を促進するため、NTT研究所で開発した、絵でプログラムを作って絵を動かすツール『ビスケット(Viscuit)』や子供用の『語彙数推定テスト』をWebサイトに導入し、情報教育環境の充実を図ります。

(2) あるべき情報教育の姿とその実現に向けた学際的な研究の推進
 書籍、インターネット相談室、NetCommonsの連関利用環境の小学校情報教育へのさまざまな形態の導入を促進し、これによってもたらす結果の調査・分析結果に基づいて、利用環境の改良に継続的に取り組むとともに、ICTやインターネットの利用に関する子供たちの現状や考え方を把握し、あるべき情報教育の姿とその実現のための要件の解明に向けた学際的な研究を進めます。


 今後はこのような研究を通して、ICT社会が人間へもたらす功罪、特に子供たちへの影響を探求し、あるべき社会へ向けての指針作りとそれに応えるサービスの提供を実現することで世の中に貢献します。また、これらの影響を考慮した教育のあり方を明らかにしていきます。


《用語解説》
※1 ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)
 コミュニティ型のWebサイトで、参加者が友人を紹介し合うことによって、友人関係とコミュニティを広げることを目的に開設されます。

※2 NetCommons
 NIIで研究開発した情報共有基盤で、約100団体をモニターとして2003年に開始した運用実験を経て、2005年にはオープンソースとして公開されました。小中学校から大学にわたる学校教育のe-ラーニング基盤、中小企業の社内グループウェア、コミュニティサイト構築ツールを含む広範な用途に利用されています。
(http://www.netcommons.org/)

※3 ビスケット(Viscuit)
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所で研究開発した『絵を動かすために絵でプログラムを作る』ツールです。ビスケットを使えば、コンピュータ専用の言語を知らなくても、アニメーション、ゲーム、動く絵本などを簡単に作ることができ、プログラムの楽しさを知ることができます(http://www.viscuit.com/)。

※4 語彙数推定テスト
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所が調査研究した単語親密度に基づいて設計されたテストで、各自の知っている語彙数が簡単に推定できます。



(別紙)図.情報教育Webサイト『インターネット相談室』:トップページ



[本件に関する問い合わせ先]

国立情報学研究所
広報普及課
小野/早川
Tel: 03-4212-2135
e-mail: kouhou@nii.ac.jp

NTT先端技術総合研究所
企画部広報担当
為近/甕(もたい)
Tel: 046-240-5152
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact


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