News Release

2006年9月29日


世界最大容量、毎秒14テラビットの光伝送に成功
―ハイビジョン映画約140本分を1秒で転送可能に―


  日本電信電話株式会社(以下NTT、東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)は、1本の光ファイバで毎秒14テラビット(テラは1兆)の超大容量データを160km伝送することに成功しました。この14Tbps(111Gbpsx140ch)という値は、今までの最高値約10Tbpsを大幅に上回り、世界最高となるものです。
  今回の成果は9月24日からフランスカンヌで開催されたヨーロッパ光通信国際会議のポストデッドラインペーパとして報告されました。


1.背景
 現在の基幹光ネットワークでは、約4THzの光増幅中継帯域を用いて、1波長あたり10Gbps容量の光信号を多チャンネル波長多重することにより、約1Tbps容量の基幹光トランスポートネットワークが実用化されています。一方、近年のブロードバンドアクセスの急速な普及とともに、通信トラヒックは年率2倍で増え続けており、基幹光ネットワークには通信インフラとしての信頼性を維持しつつ、さらに経済化と大容量化を両立していくことが求められています。
 これまでに、実験室レベルでは1本の光ファイバで10Tbps容量の伝送が達成されていますが、光増幅帯域の制限から、各光増幅中継器において10Tbps波長多重信号を複数種類の異なる信号帯域に分割して個別に光増幅する必要があり、伝送容量の更なる拡大をする上で、高密度多重伝送技術と増幅帯域の拡大技術が求められていました。


2.伝送実験の概要
 本実験では、CSRZ-DQPSK*1多値変復調符号化技術と広帯域一括光増幅中継技術を用い、7THzの1つ光増幅中継器の帯域内に100GHz間隔でチャンネル容量111GbpsのCSRZ-DQPSK信号を70チャンネル高密度波長多重しています。更に信号偏波の2つの自由度を利用した偏波多重分離技術を併用することにより、1本の光ファイバで111Gbps信号を140チャネル多重伝送し伝送容量を合計14Tbpsとしています(図1)。今回、これらを一括光増幅中継することにより、160kmの距離を伝送することに成功しました。
 本実験の成功により、10Tbps以上の大容量光ネットワークにおいて、OTN*2フレームが具備する誤り訂正符号*3バイトや、波長多重管理用オーバヘッドバイトとともに、チャンネル容量100Gbpsクラスの高速信号をそのままの形で長距離伝送できる可能性を初めて示しました。


3.技術のポイント
(1) 複数の100Gbpsクラスの信号を、高密度に波長多重し、長距離伝送を可能にするCSRZ-DQPSK変復調符号化技術とその高速光・電子デバイス技術(図2)。
 DQPSK符号は、4値の多値位相変調方式であり、従来の2値の強度変調方式(ON OFF keying)に比較して帯域圧縮と高感度化が同時に実現可能な優れた特徴をもつ光変復調符号です。このDQPSK信号に、NTTが開発したパルス変調(CSRZ)することにより高密度波長多重化とさらなる高感度化が図れ、長距離伝送を可能としています。一方で、100Gbps以上のCSRZ-DQPSK方式の実現にあたっては、従来の2値強度変調方式に比較して、送受信機構成が複雑になるためその高速化が課題となっていました。
 変調回路の高速化については、2値強度・位相変調器として、従来ニオブ酸リチウム(LN)変調器を用いたマッハツェンダ干渉型変調器が実用化されていますが、駆動電圧と帯域にはトレードオフがあり、より構成が複雑となるDQPSK変調では、100Gbps以上の高速化に課題がありました。
 今回、新たに、複雑な光回路をコンパクトに集積化したシリカPLC回路*4と、LN変調器という2つの異なるデバイスをハイブリッド実装したPLC-LN変調器を用いて、DQPSK変調としては最高速の111Gbps変調を実現しました。具体的には、DQPSK変調に伴う構成の複雑さをPLC回路部分で容易に実現することより、LN変調器の設計の自由度を向上させ、帯域と駆動電圧のバランスをとることを可能としました。
 また復調回路の高速化については、従来の2値強度変調方式では、1つのフォトダイオードで直接検波していましたが、DQPSK方式では、2つの均一な高速フォトダイオードを集積化・モジュール化したバランス受信回路が2ペア必要であり、フォトダイオードの低容量化、高速化ならびに高感度化、さらには均一化が課題でした。今回、高速化と高感度化を両立可能な受光素子構造を実現し、バランス受信回路として50GHz以上の広帯域動作を可能としました。
 更に、電気多重/分離回路および波形整形部に50GHz以上の高速動作が可能なInP ICを適用し、111Gbpsの多値位相変調信号を合成するために必要な波形品質を実現するとともに、受信回路においては高感度識別デジタル回路動作を可能とました。

(2) 広帯域一括光増幅中継技術(図3
 1本の光ファイバで10Tbps以上の伝送容量の光増幅中継を実現するには、1つの光増幅中継器がもつ帯域制限を克服する必要があります。光ファイバ自体は10THz以上の帯域をもつのに対して、1つの光増幅中継器がもつ帯域は従来、実用的には4THz程度であったため、2バンド(CおよびLバンド)あるいは3バンド(S、C、Lバンド)*5の複数の波長帯にわけて個々に光増幅し、再びバンドごとの光増幅信号を多重してから中継する必要がありました。従来のバンド多重分離による構成の複雑さや雑音特性を改善するため、光増幅中継器に用いる増幅媒体と増幅器構成を工夫することにより、低雑音増幅特性を維持したまま、1つのバンドとして利用可能なLバンド帯域を従来の1.75倍(7THz)のに拡大することに成功しました(拡張Lバンド光増幅中継技術)。


4.今後の予定
 将来の経済的かつ高品質な10Tbps級の大容量基幹光ネットワークの実現を目標として、100Gbps級の高速チャネルの長距離トランスポート技術の実用化をめざします。


<用語解説>
*1:CSRZ-DQPSK符号
 CSRZ DQPSK符号(Carrier Suppressed Return to Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying符号)、4値の差動位相変調信号をCSRZパルス変調した高密度波長多重長距離伝送に適した光伝送符号。

*2:OTN
 Optical Transport Networkの略。国際電気通信連合(ITU-T)で標準化された波長多重技術を用いた光ネットワークの国際標準(ITU-T G.709勧告)。

*3:誤り訂正符号
 送信側で、あらかじめ送信データを下に演算をおこなった結果を付加して一緒に送信することにより、伝送路で生じたビット誤りを、受信側で検出、訂正するための符号。国際標準ITU-T G.709勧告では、高品質伝送するための誤り訂正符号として、リードソロモン(255、239)符号を使うことが勧告されている。

*4:シリカPLC
 石英ガラスを光導波路とした平面型光集積回路(PLC:Planer Lightwave Circuit)、波長多重における波長合分波器や、マッハツェンダ型光スイッチなど種々の複雑な受動光部品をコンパクトに集積化できる。

*5:Cバンド、Lバンド、Sバンド
 ITU-Tで標準化された光通信で用いられる信号波長帯域分類の定義、C(Common)バンドは1530nm-1565nm、L(Long)バンドは1565nmから1625nm、S(Short)バンドは1460-1530nmである。Lバンドで現在実用的な帯域は1590nm付近を中心とする35nm(約4THz)程度である。



図1 10Tbps級大容量伝送を実現するための技術
図2 帯域圧縮・高感度化を実現するCSRZ-DQPSK符号と高速デバイス技術
図3 拡張L帯光増幅中継技術による1バンド光増幅中継帯域の拡大



<本件に関するお問い合わせ先>
NTT先端技術総合研究所 企画部
為近、甕(もたい)、飯塚
TEL:046-240-5152
FAX:046-270-2357
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact


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